【医師監修】実はわたしも…妊娠中の痔の原因、予防&悪化防止方法
妊娠中から産後まで、女性のデリケートな悩みになりやすい「痔」の問題を、症状が起こる原因に合った対処で早期改善していきましょう。産後まで症状を持ち越さないケア法をまとめます。
「これって痔?」妊婦に多い痔
妊娠すると、なぜ痔ができやすいのでしょうか。まずその原因と、一般的な特徴をみていきましょう。
なぜ? 妊娠中のマイナートラブル「痔」
妊娠中、痔ができやすい原因は次の2つです。
(1)赤ちゃんの成長とともに大きくなる子宮が、骨盤の内側を通る静脈などを圧迫するので、下半身の血行がわるい状態となり、肛門周囲がうっ血しやすく、痔ができます。
(2)妊娠中はプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、その影響で腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が悪くなることにより便秘がちとなり、肛門周囲にうっ血による痔ができやすい状態です。
肛門の内・外に腫れが起こる「いぼ痔」
肛門の内側が腫れる内痔核(ないじかく)と、肛門の外側が腫れる外痔核(がいじかく)があり、それぞれ次のような特徴があります。
・内痔核
はじめのうちは痛みはあまりなく、排便時に出血のみがみられることが多いものの、悪化するといぼが肛門の外まで出てきて、痛みが強くなります。
・外痔核
出血はあまりみられず、いぼがまだ小さいうちから痛みが強いのが特徴です。
肛門の皮膚が切れる「きれ痔」
便秘のために硬くなった便が、排便のときに肛門の表皮を傷つけ、切れたり、裂けたりして出血します。切り傷なので、ズキズキする痛みが排便のときと、排便後にあります。
痔は出産で悪化する?
「これって痔?」と思っても、デリケートな部分のトラブルだけに対処に戸惑う人も多いかもしれません。症状に気づいたとき、どこに相談したらよいでしょうか?
いきみが悪化につながる
痔かもしれないと自覚したら、恥ずかしいなどと思わずに、すぐ産婦人科や肛門科で相談しましょう。松峯先生は「早期のうちは坐薬や軟膏を塗るなど、手軽な治療で改善することも多い」として、次のように話しました。
「放置すると、臨月が近づくほど下半身の血行不良が起きやすいことなどから痔が悪化することも多く、出産で強くいきむことで、排便するよりも強い力が肛門にかかり、痔が悪化する場合があります」。
自然な母体の回復力で治る⁉
症状が軽い痔の場合、出産後、血行が改善し、便秘も解消されると、自然に治ることも多いですが、大きいものや、多発している場合など、手術が必要になってしまうこともあります。症状を自覚したら放置せず、すぐに治療しましょう。
痔になったら、どうやって治す?
痔のひとつの原因が便秘で、便秘の人が必ず痔になるとはいえないものの、松峯先生は「痔の人の多くが便秘の悩みを抱えている」と話します。そこで、痔と便秘の治し方をみていきましょう。
早めのケアが重症化を防ぐ!
・痔のケア
先にも述べた通り、症状を自覚したらすぐに産婦人科か、妊娠している旨を伝えて肛門科を受診し、適切な治療を受けましょう。家庭では次項を参考にセルフケアを! とくに大切なことは、デスクワークの人など「座りっぱなし」に気をつけ、定期的に体を動かして、下半身の血流を促すことです。
・便秘のケア
便秘も恥ずかしがらず、がまんせず、産婦人科で相談し、医師処方の下剤で治療しましょう。
「便秘を放置すると、痔が悪化するうえ、便秘と下痢を繰り返す症状悪化につながり、さらに痔が悪化するという“負のスパイラル”にはまってしまうこともあります。便秘も妊婦さんのマイナートラブル(妊娠に伴って起こる不快症状)ですから、気軽に主治医に相談してください」(松峯先生)
ホルモンによる腸の機能低下を支えるため、セルフケアではぜひ腸活も! 腸のはたらきを活性化する善玉菌などを含む低脂肪ヨーグルトや食物繊維を意識してとる、朝食後などに排便のリズムをつくるなど、快便のためにできることを続けてみましょう。
こんなことも試してみよう!
デスクワークの人など、座位で長時間過ごす人は肛門を圧迫しない「ドーナツ型のクッション」を利用すると、うっ血の悪化を予防できます。
そして痔と便秘、両方のセルフケアで取り組みたいのは「下半身の血流改善」です。マタニティヨガやウオーキングなどの軽い運動やストレッチのほか、足浴、半身浴など、いろいろ試してみましょう。
これらは妊婦さんのマイナートラブルである冷えやむくみ、腰痛の予防、改善にも効果的です。
まとめ
デリケートな部分の出血や痛みをともなうつらい痔は、自覚したら早めに治療をするのがいちばんのようです。そして症状を悪化させないため、また、痔を繰り返さないために便秘の改善と、下半身の血流を促すセルフケアにも取り組んでみてください。
(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます