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2021年10月15日 14:33 更新

【医師監修】妊娠中はくしゃみが出る⁉腹痛・尿もれ、赤ちゃんへの影響は?

ふいに襲うくしゃみの大きさに自分でびっくりしてしまうことがあります。鼻粘膜の刺激などによって起こるくしゃみは、筋肉を使う反射的な激しい運動になるので、妊婦さんにとってもお腹の赤ちゃんへの影響は心配になるでしょう。そもそも妊娠するとくしゃみは増えるのでしょうか。専門医に取材しました。

妊娠したらくしゃみがとまらないのはなぜ?

妊娠してくしゃみが出やすくなった女性
Lazy dummy

妊娠してからくしゃみをすることが増えたという感想をもつ妊婦さんは少なくないようです。それはなぜでしょうか。

「妊娠したら、くしゃみが増えた」はホルモンの影響も

くしゃみは鼻粘膜への刺激に対する反射的な反応ですが、妊娠すると鼻粘膜がむくんで刺激に対して敏感になっていることも「くしゃみ増」の一因になります。

妊娠するとプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増えます。プロゲステロンには体に水分を蓄える作用と末梢の血管を拡張させる作用があるので、妊娠期間中、女性の体をめぐる血液量は大きく増え、大変むくみやすい状態になるのです。むくみやすいことは妊娠による生理的な変化が原因ですから、妊娠経過が順調ならば心配することはありません。

「妊娠するとアレルギーになりやすい」ということはない

くしゃみは風邪症状のひとつでもありますが、なんといっても花粉やハウスダストなどによるアレルギー疾患の代表的な症状のひとつです。

とはいえ、妊娠したからといって急にアレルギー疾患になるというわけではありません

妊娠によって起こるホルモン分泌の変化は、アレルギー症状を起こしやすいメカニズムをいくらか促すはたらきが確認されていますが、アレルギー疾患を起こすタイミングは人によって違います。

つまり、アレルギー疾患は大人になってから発症するケースも多く、その人のアレルギー疾患が出るタイミングが妊娠期と重なることはあり得るものの、妊娠に関連して起こるは一概にはいえないのです。

妊娠後の薬の中止・変更の影響も

アレルギー疾患の中でも患者数の多い「アレルギー性鼻炎」や「スギ花粉症」の患者の内訳を見ると、20〜40歳代の有病率は3割超と大変多くなっています[*1]。

そのため、妊娠前にアレルギー疾患の診断を受け、薬での治療をしていた人も少なくないと考えられますが、妊娠で薬物治療を中断したり、薬を変えたりすると症状が悪化したと思うこともあるでしょう。

また、先にも述べた通り、妊娠で女性ホルモンの分泌が変化することが、アレルギー症状のメカニズムに影響する場合もあるので、そうしたことが重なると悪化したと感じるような状態になることも考えられます。

くしゃみでかかる腹圧…流産の原因になる?

妊娠してくしゃみをする女性
Lazy dummy

鼻粘膜への刺激に対して反射的に出るくしゃみは不随意運動(ふずいいうんどう)のひとつで、つまり自分ではなかなかコントロールができないものです。

くしゃみと同時に大きな呼吸も行い、一気に粘膜を浄化しようとします。このとき、上半身の筋肉をふいに緊張させ腹圧をかけることになるので、上半身には激しい運動ともいえ、何度もくしゃみが出れば「お腹が痛い」という感覚を覚えることもあるのです。

くしゃみと破水、流産、早産とは無関係

くしゃみが頻発しても、くしゃみによって破水したり、流産や早産の直接の原因になったりすることはまずありません。

ただし、先にも述べた通りくしゃみは上半身の激しい運動なので、度重なれば体を疲れさせてしまいます。生活上のストレスが緩和され、健やかに妊娠期間を過ごせるよう、主治医とよく相談してみましょう。

今からでも遅くない予防&体力アップ

生活の中でアレルゲン対策をすることも大切です。

花粉症対策などのためにも、外出するときはマスクを着用し、帰宅したら室内にアレルゲンを持ち込まないように玄関先で上着を脱ぎ、花粉やホコリを落としてから入室します。

生活空間のアレルゲンをなるべく除去するため、清掃はこまめに丁寧に。加湿など、一般的なアレルギー疾患対策のセルフケアを行って、症状を予防・軽減しましょう。

さらに、「アレルギー性鼻炎」や「スギ花粉症」、「アトピー性皮膚炎」など病気は違ってもアレルギー疾患が起こるメカニズムは同じで、免疫バランスが崩れているときほどアレルギー症状は出やすくなります。

「栄養・運動・休養」など生活環境を整えることは、とても大切です。こうした健康づくりの点でも、何か心配なことや不安があるなら、主治医にアドバイスをもらいましょう。

妊娠中期・後期、くしゃみをすると尿漏れしてしまう!

妊娠してくしゃみするとき尿もれを起こすことも
Lazy dummy

骨盤底筋群の衰えが主な原因でくしゃみや咳などがきっかけで起こる尿漏れは「腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)」といい、特に産後の女性にも多い症状です。

妊娠中は尿を溜めておきにくい

妊娠中、とくに中期以降にお腹が大きくなってから頻尿になるのはやむを得ないことで、排尿をがまんすると尿漏れしやすくなります。

膀胱は風船のように膨らんで尿を溜める仕組みになっており、妊娠中は子宮が大きくなる分、すぐ下の膀胱が膨らむ余地が小さくなります。つまり尿を溜めておける量が減ってしまうのです。小まめに出すことが必要になるため、排尿回数が増えることになりますが、それは膀胱の機能異常などで起こる頻尿とは分けて考えなければなりません。

もともと女性の泌尿器が尿漏れしやすい構造ともいえます。風船のように膨らみながら尿を溜める膀胱の先、尿道はわずか3~4cmしかないので、膀胱のすぐ先に出口があるような構造です。くしゃみなどのきっかけで腹圧がかかり、尿道を閉めている筋肉の力がゆるむと、尿が漏れてしまうのです。

がまんは禁物&尿漏れ対策は必須

膀胱に尿を溜められる量が少なくなるので、トイレに行きたくなったらがまんせず、用を足すことが尿漏れ予防になります。

健やかな妊娠経過を維持するため、水分摂取を控えるのはよくありません。普段通り水分をとり、トイレに行きたくなる間隔を大まかにチェックしておき、それより長時間トイレに行けないようなスケジュールを立てないようにしましょう。

また、いざというときに慌てないよう、尿漏れが心配なときはあらかじめ尿漏れパッドをつけておくなど、備えの対処をしておくと安心です。なお、生理用品よりも尿漏れ専用品の方が、経血のような粘度がない尿の吸収に適しています。

関連記事 ▶︎量が少ない破水と尿もれとの見分け方

骨盤底筋体操(ケーゲル体操)で尿漏れ対策

尿道の開閉を支える骨盤底筋群が弱っていると尿漏れは起きやすくなります。骨盤底筋は加齢とともに衰えるほか、出産の際に引き伸ばされて尿道を支える力が弱ります。

そこで骨盤底筋群を鍛える体操を行うのに適したタイミングは産後となりますが、妊娠中も行うこともできます。

回数はあくまで目安ですので、回数にこだわらず、無理のない範囲でやってみましょう。

やり方
1. 深呼吸やストレッチをして、まずリラックスする
2. テーブルや背もたれのあるイス、台所のシンクの縁など安定している場所につかまり、つかまった手に体重を預けるようにして立つ
 ※足幅、手の幅は肩幅程度にし、背筋を伸ばし、正面を見る
3. 肩やお腹の力は抜いて、肛門や尿道・腟だけを3〜5秒間強くしめ、次いでゆっくりゆるめる 4. 3を10回繰り返す
5. 4を1セットとし、しばらく時間を置いて、もう2セット/日行う

関連記事 ▶︎骨盤底筋を鍛えて尿もれを予防「ケーゲル体操」
関連記事 ▶︎妊婦のエクササイズ!マタニティ体操(骨盤底筋体操も)

まとめ

くしゃみが頻発すると疲れるうえ、尿漏れなど生活に支障をきたすトラブルにもつながります。原因はアレルギー疾患とは限らず、妊娠中の生理的な変化によるものである可能性もありますが、いずれにせよ主治医に相談すると、治療や個別に適したセルフケアについてもアドバイスを得ることができます。不快な症状はなるべく軽減して、心も軽やかにマタニティライフをお過ごしください。

(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]米倉修二ほか,妊娠中の鼻過敏症亢進 妊娠とアレルギー性鼻炎アレルギー:アレルギー, 63(5)661-8, 2014

日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2017」
宋美玄「妊娠・出産パーフェクトBOOK」(内外出版社)
アレルギーケアフォーラム「大人のアレルギーの現状」
山西友典監修「尿トレ」(方丈社)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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