妊婦のエクササイズ!家でできる目的別マタニティ体操【産科の理学療法士解説】
妊娠中は無理のない範囲で体を動かすことが大切です。でも、天候などの関係で外になかなか出られない時期もあるでしょう。そんな時は妊婦でも自宅で簡単にできるマタニティエクササイズを試してみましょう!「骨盤底筋」「腰痛」「肩こり」「足のむくみ」と目的・部分別に対策のための体操をご紹介します。
やっておきたい!妊娠中の骨盤底筋のエクササイズ
妊娠すると子宮の重みを受けて、骨盤底筋には負担がかかり引き伸ばされて行きます。妊娠中から継続した骨盤底筋のエクササイズをしておくことで、妊娠後期から産後にかけての尿もれのリスクを減らすことも期待されています。また、分娩後にベッド上で行うことができる最初のエクササイズでもあるので、今から少しずつ練習をしてみましょう。
(1)「あぐらで骨盤底筋エクササイズ」
骨盤が後ろに傾いていると骨盤底筋が動かしにくいので、まずは骨盤を立てて座る
(両方の腰骨と恥骨が床に垂直になり、腟が床に接する角度が骨盤が立った状態)
自分で保つのが難しい場合は、お尻の後ろ側にタオルをかませて骨盤を安定させましょう!
腟やお尻の穴を恥骨の方に持ち上げるようにイメージしながら引き締めていく
お尻や内もも、お腹が動かないのが正しいエクササイズの方法です。
(2)「椅子を使った骨盤底筋エクササイズ」
椅子を前においてあぐらか正座で座り、椅子に頭をおいて上半身の体重を預ける
Let's エクササイズ
腟やお尻の穴を恥骨の方に持ち上げるようにイメージしながら引き締めていく
妊娠中は骨盤底筋にお腹の重みがかかっているため、動かしているはずなのに動かせている感覚が感じられない場合も。
その場合は、このように姿勢を変えてエクササイズを行ってみると、わかりやすいことがありますよ。
腰痛を防ぐ効果が期待できるエクササイズ
妊娠中期以降にお腹が大きくなってくると、腹筋が伸びて使いづらくなります。すると、重たくなったお腹を支えるために背中や腰に負担がかかることで、痛みを生じることがあります。立って家事をしている時やウォーキングした時に背中〜腰がつらいなと感じるような時にぜひやってみてくださいね。少し動かすだけでもスッキリするかもしれません。
(1)「座って骨盤と背骨を動かすエクササイズ」
① 骨盤を後ろに倒して背中の力を抜きながら丸める
② 次にお腹を突き出すようにして骨盤を前に倒しながら背中を反らす
を数回繰り返します。
背骨を丸めたり反らしたりすることで、背中〜腰の筋肉を柔軟に動かしていくエクササイズです。便秘対策にも効果的です。
頭の位置はあまり変えないように気をつけながら行いましょう。
(2)「深呼吸でインナーマッスルのエクササイズ」
お腹のインナーマッスルである腹横筋は大きくなったお腹を下から支える役割があります。お腹の重みで変化した姿勢を整えることができるため、腰への負担を軽減することができます。また、腹横筋は骨盤を安定させる働きもあるため、骨盤痛の予防にも繋がります。
お尻の後ろにタオルをかませて骨盤を安定させ、あぐらで座る
Let's エクササイズ!
① 胸の位置を少し高くするように意識して、上に伸びるように背骨を整える
②「はぁ〜」と呼吸の音がするように息を吐ききる
背中が丸まらないように上半身はキープしたまま息を吐くようにすると、腹横筋が働かせやすくなります。
息を吐くと自然にお腹が持ち上がってくるのが正しい方法です。
肩こりを解消するエクササイズ(二の腕もほっそり!?)
猫背になっていると肩周りの筋肉は常に伸ばされてしまい、肩がこりやすくなります。肩を揉むとその時は心地よく感じられるのですが、実はこれは一時しのぎに過ぎず、猫背が続いている間は肩こりが繰り返されてしまいます。背骨(胸椎)や肩甲骨を動かすことで、根本から肩こりをスッキリさせていきましょう。
エクササイズ「背骨のストレッチ」
肩甲骨の間の背骨(胸椎)を伸ばすストレッチで猫背を解消していきましょう。
足を広げた状態で膝を立て、スネ(膝に近い部分)に手を置く
Let's エクササイズ!
① 膝が開かないように注意しながら、息を吐いて胸を前に突き出す
※後頭部を後ろに引くようにすると、更に背骨を伸ばすことができます
② 3〜5秒保持したら力を抜いて少し背中を丸めて休憩する
猫背は肩甲骨の間が広がってしまう猫背では肩こりになりがち。胸も縮まることで腕に向かう血管も圧迫してしまいます。
肩甲骨の間の背骨(胸椎)を伸ばすストレッチで猫背を解消していきましょう。
エクササイズ2「タオルで肩甲骨エクササイズ」
あぐらで座り、タオルを肩幅くらいの幅で持つ
Let's エクササイズ!
① タオルをピンと張ったまま首の後ろに持っていく
※手首が曲がらないように注意しましょう
② 腰をそらさないようにしながら、タオルを持った手を天井の方に伸ばしていく
③ ①②を10回ほど繰り返す
少しきついと感じる場合は、手の幅を少し広げると楽になりますよ。
足のむくみをやわらげるエクササイズ(足痩せ効果も!?)
妊娠週数が進むにつれてお腹が大きくなってくると、ソケイ部も圧迫されていきます。ソケイ部には足(脚)の方に行く大きな血管が通っており、ここが圧迫されることで血流が悪くなると足に水分が溜まってむくみ、だるさを感じる妊婦さんも多いです。
エクササイズ「足首を動かすエクササイズ」
長座の姿勢で座る
Let's エクササイズ!
① つま先を天井の方に向けてふくらはぎをしっかり伸ばす
② つま先を軽く倒してふくらはぎの筋肉を少し使う
③ ①②を10往復1セットとし、数セット行う
足首を動かしてふくらはぎの筋肉を使うことで、心臓へ血液を戻す力を助けることができます。
ふくらはぎの筋肉のポンプ作用を使って、足のむくみを少しずつやわらげましょう。
妊婦がエクササイズを行う際の注意点
妊娠中のエクササイズは健康的な妊娠・出産のために奨励されていますが、方法や体の状態によってはリスクも考えられるため、いくつか注意点があります。
いつから行う?
つわりで気分が悪い時は無理をせず、いわゆる「安定期」であっても妊婦健診で医師から運動の許可が出てから行ってください。
妊娠中はNGなポーズは?
仰向けで気分が悪くなる人は無理をせず、時々横向きになって休みながら行いましょう。
水分を補給しつつ、無理せず体調に合わせて
高温多湿な場所での運動は避けて、こまめに水分補給をしながら行ってください。
また、出血・お腹の張りや痛み・羊水流出感・息苦しさ・めまい・頭痛・胸の痛み・ふらつき・筋肉疲労・ふくらはぎの痛みや急な腫れ・胎動が少なくなった……などの症状が見られる時は、エクササイズをやめて速やかにかかりつけの産院に連絡をしましょう。
まとめ
肩こりや腰痛、むくみといったマイナートラブルが軽い運動で緩和されることがあります。妊娠中は無理のない範囲で妊婦さんに適したエクササイズを行ってみるといいでしょう。
(文・撮影:近藤可那先生、構成:マイナビ子育て編集部)
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