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2022年12月07日 12:44 更新

【医師監修】産後の腹痛はいつまで続く?よくある腹痛の原因4つと注意すべき症状

陣痛を乗り越えて出産を終えた安堵もつかの間、再び始まるお腹の痛み。その痛みの多くは「後陣痛(こうじんつう)」と呼ばれる問題はないものですが、ときに治療が必要な病気が原因となっていることもあります。ここでは、それらの違い・特徴をまとめます。

出産後の腹痛、これは何?

産後の腹痛で横たわる女性
Lazy dummy

お産の陣痛でお腹が痛むのはよく知られていることですが、産後にも腹痛が起こることは意外と知らない人も多いかもしれません。ここでは、産後に起こるお腹の痛み、「後陣痛」について紹介します。

多くの人に起こる「後陣痛」は子宮収縮による痛み

多くの妊婦さんが経験する産後のお腹の痛みに「後陣痛」というものがあります。痛み方や程度は人によってまちまちです。

これは妊娠によって大きくなった子宮が不規則に収縮し、妊娠前の大きさにもどろうとしているために起こる痛みで、胎盤などが剥がれた部分からの出血を止めるはたらきもある生理的な現象です。

出産を終えて疲労しているときにこのような腹痛が起こるのはつらいものですが、これは体の回復を促すために必要な痛みで、産後の体の回復が始まっている証なのです。

(松峯先生)

辛い数日間を過ぎればおさまる

後陣痛の痛み方や程度には個人差がありますが、経産婦、多胎妊娠、羊水過多などの場合は通常より子宮が大きくなり、また疲労の程度も大きいので、子宮を元の大きさにもどすためにはより強い収縮が必要になり、後陣痛が強くなる傾向があります。

とはいえ、痛みが強い期間は一般的に産後3日間程度で、その後落ちついてくることがほとんどです。

なお、母乳をあげている人は、赤ちゃんがおっぱいを吸うことで分泌が増えるホルモンのひとつ、オキシトシンの作用により子宮の収縮が強まるため、授乳時に後陣痛が強くなります。

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後陣痛について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎後陣痛はいつまで?初産婦より経産婦はひどい?

痛みの強さによっては医師に相談を

後陣痛は生理的に起こる問題のない症状なので、基本的治療は行われません。しかし、産後の女性は体力回復のため、睡眠を十分にとることが大切なので、眠れないほど痛む場合などには治療の対象となることもあります。痛みが強いときは主治医に相談しましょう。

産後は後陣痛が起き、子宮が縮んで悪露が出る

妊娠・出産によって変化した子宮が回復することを「子宮復古(しきゅうふっこ)」といいます。

産後の子宮は、内側の剥離面(胎盤などが剥がれて出血している部分)を埋め込むようにして止血しながら急速に収縮(退縮)し、残った血液成分などは「悪露(おろ)」として排出します。

子宮の大きさは
・産後2〜3日:約1,000g
・1週間後:約500g
・2〜3週間後:約300g
・4週間後:約100g
・6週間後:約70g
(ほぼ非妊娠時の大きさ)
という具合に回復していきます[*1]。

悪露は最初のうちは血液成分が多いので赤色ですが、子宮復古が進むにつれ褐色→淡黄色→白色と変色していくのが一般的で、子宮復古が完了すれば悪露もなくなります

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悪露について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産後の悪露はいつまで出る?時期ごとの悪露の色や量を解説

長引く赤い悪露、38℃以上の高熱などには要注意

子宮の回復が遅れている状態を「子宮復古不全」といいます。
原因はさまざまで、状況によっては発熱、下腹部痛、貧血といった症状が出ることもあります。

<器質的な原因>子宮のなかに邪魔なものがあるために収縮できない

・胎盤や卵膜が出きっていない
・悪露が排出されず、子宮内に残っている
・子宮筋腫や子宮腺筋症
・子宮内膜炎などの感染
※子宮内膜炎などの感染は、他の原因による子宮復古不全の結果として起こることもあります


<機能的な原因>子宮が疲労しすぎていて収縮できない

・多胎妊娠や巨大児の妊娠により子宮が伸び切っている状態
・出産に時間がかかり(遷延分娩)子宮の筋肉が疲労している
・何らかの薬の影響
・子宮の収縮を促すオキシトシンの分泌不足
・母体の疲労や精神的なショック
・過度の安静

産後1〜2週間を過ぎても血のように赤い悪露が出続ける場合は、出産した産院に相談しましょう。

また、腹痛以外に
 ・臭い悪露が出る
 ・38℃以上の発熱が2日以上続く
(産後10日以内ぐらい)
 ・血圧が高く、頭痛やむくみなどがある
 ・激しく痛む
 ・痛みがどんどん酷くなる
 ・吐き気など他の症状を伴う

といった場合は産後子宮内膜炎や産褥熱、妊娠高血圧症候群などの可能性がありますので、産院に連絡しましょう。

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産褥期のママの体について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産褥期ってなに?産後の肥立ち?産褥期のママの心身と過ごし方

後陣痛以外の「よくある産後の腹痛」の原因は?

後陣痛以外にも、産後に腹痛を訴えるケースがあります。便秘やストレスなど、生活の中で改善できる部分は

1. 便秘|産後も便通トラブルが起きやすい

妊娠中に便秘に悩んでいた人は多いかと思いますが、産後は 会陰の傷や痛みが気になったり、 授乳による水分不足などから便秘が起きやすくなります。


産後の便秘は痔の原因にもなるので、悪化させる前に適切に便秘薬を使用することが大切です。

産後の入院中は医療スタッフに遠慮せず相談するようにしましょう。便を柔らかくする緩下薬を処方してもらえるでしょう。

退院後も産科やかかりつけの内科の主治医にできるだけ早めに相談し、ひどくなる前に解消しておきましょう。

(松峯先生)

授乳中はとくに脱水に気をつけて、水分と朝食をしっかりと摂り、腸内細菌を活性化する発酵食品や、便のカサを増し出やすくする食物繊維の豊富な食生活を心がける、問題のない時期になったら適度に体を動かすなど、生活習慣の工夫で予防を意識することも大切です。

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産後の便秘について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産後は便秘、原因と対処法

2. ストレス性胃痛|生活の変化で自律神経も不安定に

妊娠した際は心身の変化に戸惑ったかもしれませんが、出産によってもメンタル面や体が変化します。さらに、慣れない育児で大きなストレスを抱えることもあるでしょう。ストレスは自律神経に影響するので、産後は胃痛に悩むママも少なくないようです。

子育てはママが一人で抱え込むことではありません。ましてや産後は自分の体が回復途中。無理をしないで、と言っても難しいかもしれませんが、パートナー、親戚、子育てサービスなど使えるものは全て使って、自分の心と体をできるだけ労ってください。

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産後の胃痛について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産後に胃痛を引き起こす原因と疑われる病気とは

3. 生理痛|産後1〜2ヶ月程度で生理が再開することも

妊娠によって一旦お休みしていた生理(月経)。産後もしばらくは止まったままですが、授乳していないママの場合は早くて産後1〜2ヶ月から、授乳中のママであれば数ヶ月程度で生理が再開することがあります。

久々の生理痛に驚いてしまう人もいるかもしれませんが、痛みがひどいようであれば背景に子宮筋腫などの婦人科疾患がある場合もありますので、一度婦人科を受診しましょう。

なお、授乳中でも服用できる痛み止めもあります。医師に処方してもらうか、市販薬を使用する場合は薬剤師に相談の上購入しましょう。

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産後の生理について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎産後の生理っていつから?授乳中は来ない?
関連記事 ▶︎産後に生理痛が重くなったのはなぜ? 対処法と注意点
関連記事 ▶︎産後に生理の量は増える? 関係する要因と注意点

4. 帝王切開後|産後3週間ぐらいは軽い痛みも

帝王切開の麻酔が切れた後は、切った部位が術後3日ぐらいまでは強く痛むでしょう。その後は強い痛みは消えるものの軽い痛みやかゆみなどがあり、産後3週間をすぎたあとは徐々に症状が落ち着くでしょう。

なお、帝王切開でも後陣痛は起こります。

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帝王切開後の痛みについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎帝王切開による産後の痛みはいつまで?術後の過ごし方

産褥期の過ごし方「床上げ3週間」って?

出産後、体が妊娠以前の状態にもどるまでは「産褥期」と呼ばれます。出産を終えた女性の体は疲労困ぱいの状態ですから、回復するには十分な休養をとり、いたわる時間とケアが必要なのです。

医療機関によっては、産後外来や産後ケアセンターといった名称で、産後女性を専門的にサポートしてくれる施設を併設するところもあります。そういった施設が最寄りにあれば利用するのもいいでしょう。

日本では、昔から「床上げ3週間」と言って、産後の女性はこのくらいの期間は布団を敷きっぱなしにして、できるだけ体を横たえて無理しないほうが良いと言われてきました。とくに高齢出産や帝王切開での出産の場合などは、この3週間を、産後3ヶ月までに延長しようと訴える意見もあります。それだけ心身ともに回復に時間がかかるからです。

産後外来や産後ケアセンターが 身近にはない場合も、そのような施設があるほど「産後ケア」は大切なものと考えて、自身の心と体をいたわりながら過ごすようにしてください。

具体的には、母子の愛着が増すような、穏やかな生活を心がけることが大切です。ぜひこの機会に赤ちゃんとゆっくりコミュニケーションをとってください。

ただし、健康上の不安や発熱などの症状があるときは、健診時期を待たずに産科に連絡をしましょう。

(松峯先生)

まとめ

産後の腹痛の多くは「後陣痛」と呼ばれる生理的なもので、子宮復古に伴って数日で改善することが多いものです。ただし、背景に治療が必要な病気が隠れている場合もあります。あまりに痛みが強かったり、痛みが長引く場合は受診しましょう。出産という大仕事を終えたお母さんの体は満身創痍。やっと会えた赤ちゃんのお世話も大切ですが、くれぐれもひとりで頑張りすぎない、無理しないことが大切です。

(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気がみえる Vol.10産科, p367, メディックメディア, 2018.
[*2]病気がみえる Vol.10産科, p39, メディックメディア, 2018.
[*3]日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会「慢性便秘症診療ガイドライン2017」
[*4]日本産科婦人科学会:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, p104, 2018.
[*5]産婦人科診療ガイドライン―産科編2017/公益社団法人日本産科婦人科学会, CQ315産褥精神障害の取り扱いは?, p239
[*6]NPO法人 マドレボニータ, 2016年8月実施アンケート調査結果
・臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイドーいまのトレンドを逃さずチェック!, 医学書院, 2018.
・松峯寿美:やさしく知る産前・産後ケア, 高橋書店, 2019.
・山西友典監修:尿トレ, 方丈社, 2018.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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