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2025年03月26日 10:31 更新

1カ月の育休を取得した管理職パパ。復帰後、部下たちが目を見張る成長を遂げていて…!#男性育休取ったらどうなった?

育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は2人目出産を機に男性育休を取得したフィットネスクラブの管理職パパにお話を聞きました!

パパが1カ月の育休を取得した前田ファミリー

今回のパパ
前田勝志さん/39歳/野村不動産ライフ&スポーツ メガロス事業部 管理職
●ご家族
妻:透子さん/39歳/看護師 
長女:伊織ちゃん/5歳 
次女:美織ちゃん/1歳 
※本人以外の家族の名前は仮名です。

●前田家のパパ育休
2023年12月に次女が誕生。出産後すぐからおよそ1カ月間の産後パパ育休を取得した。妻の透子さんは育休中で4月復帰予定。

勝志さんの育休中のタイムスケジュール

■2人目で初の育休を取得。手厚い会社のサポートに感謝

――勝志さんは第二子の誕生時に、初めて1カ月の育児休業を取得されたそうですね。取得した理由を教えてください。

勝志さん ちょうど年始が次女の出産予定日だったのですが、出産後の家族のスケジュールを考えた際に、退院後は長女の幼稚園がまだ冬休みで子ども2人の面倒を見ないといけないこと、また長女の冬休みが明けた後は、長女の送迎等もあるので、妻のワンオペは無理だと判断し、取得を決意しました。

――周囲の反応はいかがでしたか?

勝志さん とても温かい反応が返ってきました。支配人である上司は男性育休の取得について初めての経験だったそうです。しかし「自分も勉強するところから始めるので、一緒に考えていこう」と寄り添いの言葉をかけてくださり、その言葉にとても安心しました。

周囲のスタッフは、特に出産や育児を経験している女性キャストから「前田さんが育休を取得すれば次の人が取得しやすくなる。現場は任せて思い切って休んでください」と心強い言葉をかけられましたし、実際に快く送りだしてくれました。

――素晴らしいですね! 

勝志さん はい。ほかにも会社からのサポートが手厚く、とても助かりましたね。私自身は育休取得に関する知識もなく、手続きなど何をどうすればいいのかよくわからず、不安だったのですが、ちょうど当時、会社として男性育休取得のサポート体制を強化するタイミングと重なったんです。人事部が産休・育休を取得する女性社員と同様、事前に個人面談やメールで育休取得のサポートをする男性社員の第一号が私だったそうで、しないといけない作業や提出する用紙について、きっちり教えてもらい、とても助かりました。また、そのときの人事部の担当者がちょうど女性社員で、女性目線で“夫にやってほしいこと”のアドバイスをもらえたのも、役に立ちました。

――皆さん温かく迎えてくださったとのことですが、育休取得を相談する前はドキドキしたのではありませんか?

勝志さん それはなかったですね。自分の中では「必ず取得する」と心に決めていたので。ただ、自分が一ヶ月抜けることで同僚たちに負荷がかかることは承知していたので、そのことはすごく意識して協力をお願いしました。

育休中は長女ちゃんと過ごす時間が長かったという勝志さん。「今はお母さんが大変だから、困ったことあったらお父さんに言ってねと伝えていました。長女も自分をたくさん頼ってくれました」(勝志さん)

■いちばんの不安は「業務の引き継ぎ」。数カ月かけ、段階を追ってバトンタッチ

――仕事の引き継ぎについてどのようにされたか、お話を聞かせてください。 

勝志さん 部下への仕事の引き継ぎは、当時、育休取得に関しての一番のハードルだと感じていました。私は当時「メガロス」というフィットネスクラブの中にある、テニススクールセクションのチーフマネージャー職についており、テニスレッスンを行うヘッドコーチ業務とそのスクールの営業面の数字管理業務をメインに担当していたのですが、普段は自分一人で動かしている、要は自分にしかわからないような業務項目がたくさんあったんです。

そのため、まずは取得の数カ月前に業務の一つ一つを洗い出し、一覧としてまとめるところから始めました。その一覧を支配人と、マネージャーである部下に共有。部下には「この業務はこういう背景があって、こうした対応をするんだよ」と1つずつ説明し、取得前月には実際に2人でその業務を行い、取得する少し前には彼女1人でやってもらって、それを私が見てチェックするといった段階を踏みました。支配人には週次のミーティングで引き継ぎ状況を報告していましたね。

――とても丁寧に引き継ぎをされたのですね。不安は解消できましたか?

勝志さん はい。実務的なところで、マネージャーに自分しか把握していなかった業務を任せて大丈夫だと思えるところまでは落とし込み、共有できたので、安心して育休に入ることができました。

育休中は幼稚園が終わったら、公園にも寄って長女ちゃんと遊んでいたという勝志さん。「時には長女の友人も一緒に鬼ごっこをして、子どもたちを追いかけていました!」(勝志さん)

■夫婦の会話が増えた育休中。“自分への不満”も意識的に聞くように

――育休中のお話を聞かせてください。育休中は主に家庭内でどんなことを担当されていましたか?

勝志さん 事前に妻は食事・次女の授乳とお世話、私は掃除・洗濯・長女の面倒を見ることをメインにしようと話し合いました。そのほかの細かいことはできる方がやると決めていましたが、とにかく妻には体調を安定させてもらうことが一番なので、「自分が動けるところはできるだけやるから」と妻に伝えていました。

――そのお話は妊娠中にされたんですか?

勝志さん はい。育休を取得することが決まってから、徐々にですね。産後を想定して「これはどうする?」みたいな話題を何度か話し合いました。

――そもそも育休取得は透子さんの希望だったのでしょうか?

勝志さん いいえ。妻から相談されたわけではなく、私が「現実的に難しそうだから、育休を取得しようと思うよ」と妻に伝えました。

――どのような反応でしたか?

勝志さん とても助かると喜んでくれましたね。そこからすぐに「どれくらい取る?」という話になりました。妻からは「(我が家的には)長く取得する必要なく、仕事に支障のない期間を」との話があり、やはり産後一カ月は体調の変化が大きい期間だと長女の経験でわかっていたので、期間は一カ月と決めました。

育休終了後は「体調が安定しなかったのでワンオペでは絶対に無理だった。家事、育児を助けてもらったのも良かったし、家族の会話が増えた事が一番嬉しかった」と感想をもらいました。

――透子さんも出産直後はやはり体調が不安定だったんですね。

勝志さん 実は当時、そういった様子はあまり見られなかったんです。でも、辛さを出さないようにしてたんじゃないかな。妻はどっちかというと、大変なのを隠して頑張るタイプ。だからこそ、一カ月じゃなくてもう少し長い期間を取得したら良かったな……とは、後から感じたことです。

――「家族の会話が増えた」とありますが、夫婦の会話も増えましたか?

勝志さん はい。子どもたちが2人とも寝ている間など、お互いの余裕があるタイミングに「話せる?」なんて声を掛け合っていました。

――どんなことを話したか覚えていますか?

勝志さん ざっくばらんにいろいろな話をしましたね。「何か不満に思っていることない?」なんて聞いたり……。私は妻に対してまったく不満がないので言うことがないのですが、妻からはいろいろ出てきました(笑)。妻はそうして改めて聞かないと、言わないんです。なので、彼女の不満が溜まって爆発しないよう、ガス抜きがてら正直に話してもらうようにしていました。

育休中の深夜の次女ちゃんのお世話は、透子さんが授乳をして、勝志さんが寝かしつけを担当していたとか。「基本は全部やるつもりでやっていました。もちろん眠かったですが、世の中のお母さんは普通にこれをやってるんで、すごいなと感じました」(勝志さん)

■育休からの復帰後、部下の成長を感じた!

――育休を取得して良かったことはどんなことですか?

勝志さん 復帰初日に先ほど話をした部下のマネージャーと1on1を実施したのですが、彼女から「自身がマネージャーとしてもっと成長しないといけないと気付きました」という発言が出て、とても感動しました。ほかにもポジティブな発言が多く、1カ月で大きく成長したなと感じましたね。

また、彼女が必死にやる姿を見て、同じテニスのセクションチームにいるほかのメンバーも「彼女をサポートしてあげたい」という気持ちになったという話を聞いたんです。彼女の背中を見て、ほかのメンバーも奮起した流れが見えたので、それは個人的にとても嬉しかったです。

――チームの結束がより強くなったのですね。

勝志さん はい。普段は彼女も含め、私から一人一人に指示を出すことが多かったんですが、私の不在中はそれぞれが話し合って、チームとしてうまくいく方向に進めてくれたようです。また、テニスセクションの中に一人、新入社員がいたのですが、彼にも責任感が生まれ、「自分に何かできませんか」と声をかけていた……と後日談で聞きました。みんなが成長するいいきっかけになったと感じますし、もしかして自分がいないほうがいいチームなのでは? なんて思いました(笑)。とにかく職場のみんなが温かく送り出してくれ、さらに迎えてくれて、本当に感謝しています。

――家庭の方で良かったことはどんなことでしょう?

勝志さん 妻も言っていたように家族の会話が増えました。長女とも1カ月がっつり一緒にいたので、とても仲良くなりましたね。それまでは長女のハマっているものについて妻と長女で話しているのを聞いても、いつも「何それ?」なんて思っていたんです。それが育休中はプリキュアを一緒に見たり、流行っていたYOASOBIの「アイドル」を一緒に歌ったり踊ったりして、長女の好きなものが少しずつわかるようになりました。

――パパが自分の好きなことをよくわかってくれているって嬉しいですね。最後にこれから育休を検討している方にメッセージをお願いします。

勝志さん 私は育休を取得して、悪いことが一つもなかったです。長女の時になぜ取得しなかったのかと後悔しているくらい! ご家庭でさまざまな事情があると思いますが、機会があればぜひ取得してください!

ただし、育休取得には上司や周りの協力が必須。私の場合、後から聞いたところによると、普段店舗の支配人と自分とマネージャーが入る業務連絡用のLINEグループがあるのですが、育休中は私抜きのLINEグループを新たに作って、やりとりしてくれていたそうです。そのため、仕事の連絡が私に一切こなかったんですね。支配人がそう配慮してくれたと聞いて、周りのサポートをすごく感じ、さらにありがたく思いました。なので、育休を取得する方を取り巻く周囲の方やいろいろな会社、世の中も、そういったサポートを強化していく方向になってくれればと感じています。また、取得する側は取得前から取得後までの事前準備が大切だと実感したので、そこは頑張ってもらいたいですね。

(取材・文:江原めぐみ、イラスト:ぺぷり)

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