産後1ヶ月で仕事復帰した妻とバトンタッチ。パパ店長が挑んだ3ヶ月のワンオペ育休で見えたもの#男性育休取ったらどうなった?
育児休業を経験し、子育てに奮闘している当人の声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は人気ブランドショップの店長職を務めながら、第二子誕生時に3ヶ月の育休を取得したパパにお話を聞きました。
第二子のときに3ヶ月の育休を取得した鵜飼ファミリー
今回のパパ
鵜飼紀之さん(仮名)/42歳/株式会社ゴールドウイン リテール本部 東日本リテール販売部 販売2グループ スーパーバイザー
●ご家族
妻:実加さん/37歳/美容師(個人事業主)
長女:菜々ちゃん/6歳
次女:寧々ちゃん/3歳
※ご本人・ご家族の名前は仮名です。また、年齢・月齢は取材時のものです。
●鵜飼家のパパ育休
THE NORTH FACE Sphereの店長を務めていた2024年4月に、第二子が誕生。産後1ヶ月で仕事復帰した妻・実加さんから引き継ぐ形で、5月から3ヶ月の育休を取得。ワンオペ育児に向き合った。現在も夫婦で協力しながら、仕事と家事・育児を両立している。
鵜飼さんの育休中の、ある日のタイムスケジュール
■妻が産後1ヶ月で仕事復帰。パートナーを支える決断
――まずは、育休を取得しようと思った背景から教えてください。
鵜飼さん いちばん大きな理由は、美容師として個人事業主で働く妻のことがありました。顧客の来店サイクルを維持するため、産後1ヶ月という早い段階で現場に復帰せざるを得なかったんです。そこでまず彼女から「育休、取れそう?」という相談がありました。
正直に言うと、 1人目のときは、まだ社会全体も「男性育休」を当たり前に受け入れる空気ではなく、僕自身も取得は考えていませんでした。
だけど今回は、世の中の推進の流れや、社内でも全社配信メールで制度の詳細が周知されたり、周りにも育休を取得する男性社員が現れたりするなど、風土そのものが変わりつつあるのを感じていて……。だから、妻から相談があったときも「前向きに検討します!」と返しました(笑)。
早速、当時のエリア長に相談したところ「いいんじゃない」と背中を押してもらうことができ、最終的には3ヶ月の育休を取得することになったんです。
――当時は店長職だったと聞いています。責任ある立場での長期不在。不安はありませんでしたか?
鵜飼さん 正直、不安はかなりありました。 業務はかなり属人化していて、勤怠管理や会社との取り次ぎ、商品の打ち出しに関するプラン作りやイベントの調整窓口など、僕がすべて担当していたんです。 だからこそ「自分がいなくなってお店は大丈夫か」「スタッフに負担をかけすぎてしまわないか」と、考えていましたね。
――不安はどう解消し、また、引き継ぎをどのように進めましたか。
鵜飼さん 僕はどちらかというと仕事を抱え込むタイプだったのですが、育休取得を機にエイ!と「無理やり引き剥がす」決心をした感じです。引き継ぎは業務をすべてリストアップし、店長代行のスタッフに細かくフローを伝えました。 一部のメンバーからは「お店が回るのか」という不安の声も出ましたが、この「任せる」ことが結果的に組織に良い変化をもたらすことになったと思います。
■新生児育児と引っ越し、保活。「並行ミッション」の過酷な日常
――実加さんは復帰されているわけですから、育休中の生活は、まさに「主夫」としてワンオペ状態だったということですね?
鵜飼さん はい。妻が復帰した産後1ヶ月目からは、僕が家事・育児の9割を担いました。普段はご飯作りをほとんどしなかったので、毎回の献立を考えるのがこんなに苦労するなんて思いも寄らなかったですね。作りたいものばかり作っていたら、使いきれなかった食材がどんどん溜まってしまって……。家にある食材を生かしながら、栄養バランスとか、長女の好き嫌いとかも考えながら、何を作るか考えるのって大変ですが、おかげで家事力もだいぶついたと思います。
――1人目の誕生直後はどうされていたのですか。
鵜飼さん 実は1人目のときはコロナ禍真っ只中の里帰り出産で、妻は実家に半年以上留まることとなり、戻ってきたときには長女はだいぶ大きくなっていたんです。だから、低月齢のお世話はほとんど経験したことがありませんでした 。そうしたこともあり、ミルクの作り方も沐浴も、最初はすべてが手探り。夜中に何度も起きてミルクを作り、寝かしつける……その過酷さを身をもって知りましたね。
――この時期に引越しもされたとか?
鵜飼さん そうなんです! いざ、4人で暮らし始めると当時の家は狭いね、となり……。
――妊娠中から決めていたわけではなかった?
鵜飼さん そうです。結構、思いつきで(笑)。「時間があるからお願いね」と妻から言われ、物件探しから契約、荷造りまで自分一人で進めました 。生後2ヶ月の次女を抱っこ紐に入れて、物件を見に行く日々。引越し業者の手配や荷解きもワンオペ育児と並行してこなしたのは、今振り返ってもなかなかハードでしたね 。その間、保活もありましたから。
――保活についても鵜飼さんが主導されたのでしょうか?
鵜飼さん そうですね。 自分の復職タイミングが決まっていたので、最短での入園が必須でした。ただ、長女の通う園には空きがなく、ほかの認可園にも空きは見つからない状況で……。右も左もわからないまま認証保育園や認可外保育園を3〜4件、次女を連れて見学に行きました。低月齢で預けることもあって、月齢の基準をクリアするのになかなか苦労しましたが、最終的にはなんとか認可外園に入ることができました。ただ、その園は家や長女の保育園とは反対方向の、動線の悪い場所にあったので、復帰後の送迎が大変でしたね……!
■「共通言語」が夫婦の絆を強くした
――育休を取得して、ご夫婦の関係に変化はありましたか?
鵜飼さん 妻との「共通言語」が増えました。育休を取るまで、乳児期の育児の大変さを十分には分かっていなかったと思います。育休中は日々の出来事や娘たちの成長を妻に伝えるようにしていたのですが、おかげで会話もさらに増えて。「こんなに大変なんだ」という共感が生まれたことで、妻のパワフルさが改めてよく分かって感謝しましたし、妻からも「"分かる"が増えて嬉しい。共感が増えて、コミュニケーションも活発になった」と言ってもらえて、育休を取って本当に良かったと感じています。
――仕事の面でも、気づきはありましたか?
鵜飼さん 「僕がいなくても、お店は立派に回る」ということに気づけたのが大きな収穫でした 。僕が業務を抱え込まずに任せたことで、スタッフたちが自律的に問題を解決してくれるようになり、大きな成長を果たしてくれたんです 。属人化を解消することが、結果として組織の強化に繋がるんだな、ここまで任せても大丈夫なんだなと感じました。
■ファミサポやシッターも。外部サービスをどんどん利用!
――現在は店舗職を離れ、複数店舗を管理するスーパーバイザーとして多忙な日々を送られていると聞きました。今の両立の状況はいかがですか?
鵜飼さん 現在は東京都心エリアの店舗を回る日々ですが、基本的には僕が「朝」の家事・育児を、妻が「お迎えから夕食以降」を担うサイクルが定着しています。ただ、あえて役割をガチガチに固定しすぎないようにしていて、お互いの仕事の状況を尊重しながら「できる方が、できるタイミングでやる」というポリシーを大切にしています。
――お子さんの急な発熱など、突発的な事態にはどう対応されているのでしょうか。
鵜飼さん 妻は施術中に電話に出たり、途中で帰宅したりするのが難しい仕事なので、保育園からの呼び出しや子どもの急な体調不良への対応は、主に僕が担当しています。会社の理解もあり、とてもありがたいですね。
ただ、夫婦二人だけで何もかもをやりきろうとは思っていません。我が家は保育園のほか、自治体のファミリーサポートや民間のベビーシッターといった外部サービスを積極的に活用してきました。会社の福利厚生で使えるオンライン診療サービスも活用するなど、頼れるものは迷わず使うようにしています。
――仕事と育児を両立させている先輩として、社内で相談されることもあるのでは?
鵜飼さん ありますね。とくに育児休業の体験談は聞かれます。制度の具体的な内容を質問されることもあれば、「取って良かったですか?」という漠然とした質問も……。不安な人が多いみたいです。自分からは「もちろん、取ってよかったよ!」と背中を力強く押す言葉をかけるようにしています。
――最後に今育休を検討中の読者の方にもメッセージをいただけますか。
鵜飼さん 育休中の家族と過ごす時間は、本当に最高です! とくに子どもの新生児〜乳児期の一瞬一瞬は、貴重な時間。僕自身は育休を取ったことで、子どもや妻との距離が縮まりました。
もちろん、悩むことも多いと思います。だからこそ、楽しいことも悩みも、夫婦や家族、自治体など周りの人にどんどん話して相談していくことをおすすめします。話すことで、楽しい経験はより鮮やかな記憶に、悩みは解決の糸口が見えたり、深刻に感じていたことが和らいだりするのではないでしょうか。
ぜひ、人生の大切な期間を家族と一緒に過ごし、自分たちらしい道のりを築いていってください。
(取材・文:江原めぐみ、イラスト:ぺぷり)
