【医師監修】生理痛だと思っていたら妊娠してた!? 生理前と妊娠初期症状の違い
妊娠が確定する前の、いわゆる妊娠超初期と呼ばれる期間には、人によってはさまざまな妊娠の兆候が現れることがあります。このとき、「生理痛のような症状」を感じる場合もあるのでしょうか。下腹部痛を含む妊娠超初期症状、妊娠初期と生理前の違い、妊娠の有無の確認方法・タイミングと併せて解説します。
- 妊娠超初期に「生理痛に似た痛み」が起こることもある?
- おなかの張りや下腹部の違和感を覚える人も
- 妊娠超初期に現れるかもしれない10の兆候
- 1.眠気
- 2.全身の倦怠感(だるさ)
- 3.食欲の増大または食欲不振
- 4.気分が沈む・イライラする
- 5.頭痛
- 6.吐き気
- 7.唾液の増加
- 8.便秘
- 9.においに敏感になる
- 10.頻尿・尿漏れ
- 生理前の不調が原因の場合も
- 妊娠初期と生理前の違い
- 妊娠検査薬が陽性になる
- 基礎体温で高温期が17日以上続く
- 生理のような出血があるけど妊娠していることもある?
- それが生理ではないなら可能性はある
- 妊娠しているか確認する方法とタイミングは?
- 「生理予定日の1週間後」に妊娠検査薬を使う
- 陽性が出たら受診して「超音波検査」を受ける
- まとめ
妊娠超初期に「生理痛に似た痛み」が起こることもある?
生理予定日より前の妊娠のかなり早い時期を指して、俗に「妊娠超初期」と呼ぶことがあります。
この時期、妊娠によって、生理痛のような痛みが起こることもあるのでしょうか。
おなかの張りや下腹部の違和感を覚える人も
妊娠超初期に、「おなかの張り」や「下腹部のチクチクした痛み」など、生理痛のような症状を覚える人もいるかもしれません。こうしたおなかの違和感は、子宮が大きくなることによって起こる可能性があります。
妊娠していない時の子宮の大きさは鶏の卵くらいですが、妊娠するとこれが急激に大きくなっていきます。そして妊娠3ヶ月末になるころには握りこぶしくらいの大きさにまで成長します[*1]。
その時、子宮では血流が増えて筋肉が伸びるという変化が生じ、子宮を支える「靱帯(じんたい)」や「広間膜(こうかんまく)」といった周辺組織も子宮の成長に伴って引っ張られていきます。こうした子宮やその周辺組織の変化が、生理痛のようなおなかの張りや違和感となって現れることがあるのです。
安静にしていたらすぐにおさまるようであれば、基本的に心配する必要はありません。
妊娠超初期に現れるかもしれない10の兆候
生理痛のような痛み以外にも、妊娠超初期に生じる可能性のある10の兆候を解説します。
1.眠気
眠気は妊娠初期症状のひとつです。「日中、眠くて仕方ないと思っていたら、その後、妊娠が分かった」という体験もよく聞きます。
妊娠初期に眠気を感じるのは、妊娠によって増加する女性ホルモンの一つ、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が関係しているといわれています。
2.全身の倦怠感(だるさ)
プロゲステロンには基礎体温を上げる働きもあります。その影響で妊娠初期は体温の高い状態が続くことから、ボーッとしたり倦怠感(だるさ)を感じたりすることがしばしばあります。
3.食欲の増大または食欲不振
妊娠によって食欲に変化が生じることもよくあります。食欲不振になることもあれば、逆に食欲が増すこともあります。
これには、妊娠による「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン」などのホルモン変化が関わっているのではと言われています。
4.気分が沈む・イライラする
気分の落ち込みやイライラといった気持ちの変化を、妊娠超初期に感じる人もいるようです。これも「エストロゲン」と「プロゲステロン」の、分泌量やバランスの変化が関わっている可能性があるといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
5.頭痛
妊娠前から生理の際に頭痛が起きやすかった人は、妊娠超初期や初期症状でも頭痛の症状が出やすいかもしれません。また、食欲不振の症状がある人は、食事が十分にとれないことから低血糖を起こしており、その症状として頭痛が生じる場合もあります。
妊娠の可能性があり、日常生活に支障をきたすような痛みがある場合は、自己判断で市販の鎮痛薬などを利用せず、産科や頭痛外来を受診し、相談しましょう。その際、妊娠の可能性が高いことを忘れずに伝えてください。必要に応じて妊娠中でも服用可能な薬が処方されます。
6.吐き気
吐き気や嘔吐(おうと)はいわゆる「つわり」の症状です。「つわり」は、50~80%[*1]の妊婦さんが経験するとされ、妊娠超初期・初期症状の中でも一般的な症状です。
7.唾液の増加
妊娠超初期や初期に唾液の増加を感じる人もいるかもしれません。
これは俗に「よだれつわり」と呼ばれることもあるようで、あふれ出る唾液をしょっちゅう吐き出さないといけなかったり、飲み込むと吐き気が出てしまう、といった症状に悩まされる妊婦さんもいます。
8.便秘
妊娠超初期症状のひとつとして、便秘に悩む人もいるかもしれません。
妊娠するとホルモン分泌に変化がある影響で、腸の蠕動(ぜんどう)運動が妨げられ、動きが悪くなるため、腸内に便が停滞しやすくなります。
9.においに敏感になる
つわりの時期に「においに敏感になる」「においが気になる」といった変化を感じる人もいます。
コーヒーやごはんの炊けるにおいなど特定のにおいが苦手になる人もいれば、いろいろなもののにおい全般が苦手になることもあり、人によってさまざまです。
10.頻尿・尿漏れ
妊娠すると体内の水分量が増加します。それに伴い、おしっこの量や回数も増加します。
尿漏れについてはどちらかというと、おなかが大きくなって膀胱が圧迫される妊娠中期以降に起こることが多いでしょう。
生理前の不調が原因の場合も
ただし、ここまでで解説した症状の多くは、生理前にさまざまな不調が現れる「月経前症候群(PMS)」によっても似た症状を起こすことがあります。
また、妊娠によってこれらの症状が必ず起こるわけではなく、感じ方も人それぞれなので、これらの症状の有無で妊娠したかどうかを知るのは困難です。
妊娠初期と生理前の違い
では、妊娠初期と生理前ではっきり異なるのはどんな点なのでしょうか。
妊娠検査薬が陽性になる
妊娠初期の場合、適切な時期に使用すれば妊娠検査薬が陽性になります。妊娠検査薬は妊娠女性に特有のホルモンが尿に出ているかどうかで、妊娠の有無を判定するからです。
ただし、使用する時期にはポイントがあります。くわしくはのちほど解説します。
基礎体温で高温期が17日以上続く
日ごろから基礎体温を記録していて、低温期と高温期が二相に分かれている人では、「高温期が17日以上続いていると妊娠の可能性が高い」です。
生理のような出血があるけど妊娠していることもある?
生理痛のような痛みとともに「出血」が見られた場合は、やはり妊娠していないのでしょうか。
それが生理ではないなら可能性はある
その出血が本当に「生理」による出血なら、妊娠はしていません。ただ、「生理に似た別の原因による出血」の場合は妊娠している可能性もあります。
例えば、受精卵が子宮に着床する際に起こることがある「着床出血」の場合、通常、出血量は少ないと言われますが、いつも生理の量が少ない人では、着床出血を通常の生理と勘違いするかもしれません。
「生理のような出血があったけれど妊娠している可能性があるのかどうか」について、くわしくは下記の記事も参照してください。
妊娠しているか確認する方法とタイミングは?
生理予定日前の妊娠超初期に何か体調の変化があると「妊娠した!?」とソワソワしてしまいますね。妊娠したかどうかを確実に知るにはどうすればよいのでしょうか。
「生理予定日の1週間後」に妊娠検査薬を使う
まずは生理予定日の1週間後になったら、妊娠検査薬を使ってみましょう(早期妊娠検査薬といって、生理予定日から使えるタイプもあります)。
妊娠検査薬は「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンが尿中にあるかどうかで妊娠の有無を判定しますが、あまり使用時期が早すぎると、実際は妊娠しているのに「陰性」と出ることがあります。適切な時期に使用するのが大切なポイントです。
陽性が出たら受診して「超音波検査」を受ける
妊娠検査薬で陽性が出たら、産婦人科を受診して超音波検査で子宮の適切な位置に「赤ちゃんを包む袋(胎嚢)」があるか確認してもらいましょう。
妊娠検査薬で陽性が出ても、その後うまく育っていけない箇所に受精卵が着床してしまう場合(異所性妊娠。子宮外妊娠とも)などもあるからです。陽性が出たら、あまり放っておかずに、産婦人科で超音波検査を受けることも大切です。
まとめ
妊娠超初期は、今感じている症状が妊娠によるものなのか、それとも生理によるものなのか、判断が難しい微妙な時期です。ちょっとした変化に一喜一憂するよりも、正確に判定できる時期を待って、妊娠検査薬を使って妊娠の可能性が高いかどうか、確かめてみましょう。
(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)
※画像はイメージです
[*1]メディックメディア「病気が見えるvol.10産科編」(第4版)p.6, 39, 86, 94, 2018.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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