【医師監修】妊娠3ヶ月のママと赤ちゃんの様子(妊娠8週、9週、10週、11週)
つわりの症状がピークになることが多い妊娠3ヶ月。心身ともに不安定な時期で、どう過ごしたら良いか悩むママも多いのでは。赤ちゃんは引き続き、器官が形成される大事な時期です。妊娠3ヶ月のママと赤ちゃんの様子をご紹介します。
妊娠3ヶ月のママの体の変化と見られやすい症状
※画像はイメージです
個人差はありますが、つわりでつらい思いをするママが増えます。この時期のママの体や体調の変化について見ていきましょう。
妊娠3ヶ月はhCGの数値が最も高くなる時期
妊娠の維持に必要なホルモンで、妊娠検査の目安となる「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」。その分泌量は、妊娠8~10週ごろにピークを迎えます[*1]。hCGはプロゲステロン(黄体ホルモン)の産生を高め、その影響で、眠気やだるさが強まる人も多いようです。
一般的につわりの症状が重くなる傾向に
妊婦全体のうち50~80%[*2]の人が、つわりを経験すると言われていますが、その程度や症状は人それぞれ。吐き気や嘔吐(おうと)、食欲不振でつらい思いをする人が多く、妊娠3ヶ月ごろにつわりの症状が強まる傾向にあります。
頭痛やだるさ、唾液量の増加なども典型的なつわりの症状です。体調がすぐれないときは、無理せず安静に過ごすようにしましょう。
もし吐き気や嘔吐(おうと)のせいで食べ物を受け付けず、妊娠前より体重が5%以上減少[*3]しているときは「妊娠悪阻(おそ)」として治療が必要になります。悪化する前に医療機関を受診しましょう。
おなかの張りを感じることも
妊娠中は、なんとなくおなかが張っているように感じることがあります。妊娠初期は子宮への血流が増え、子宮を支えるじん帯や広間膜(子宮が左右に動くのを防ぐ膜)が引っ張られることで張りを感じやすくなっているのです。
少し休んで張りが治まるようなら、生理的なものなので心配はいりません。
一方、安静にしていても腹痛が強まったり、月経より多い量の出血が見られたりするときはすぐに医療機関を受診しましょう。
妊娠3ヶ月の赤ちゃんの特徴
「胎児期」に入り、健診の超音波検査で赤ちゃんの様子を見ると、ヒトらしい姿になってきているのが分かります。このころの赤ちゃんには、どのような成長が見られるのでしょう。
この頃の赤ちゃんはどんな様子?超音波検査での見え方
赤ちゃんはヒトらしい姿になり、妊娠8週以降は「胎児」と呼ばれるようになります(10週以上を「胎児」とする場合もあります)。このころの赤ちゃんは頭部が大きく、頭殿長(赤ちゃんの頭からおしりまでの長さ)の約半分を占めるほどです。また長くなった手足は折り曲げています。
なお、どんどん成長していく赤ちゃんの週数が最も正確に測定できるのは、9週ごろです。
妊娠10週ごろからは、しゃっくりをしていたり、手足を動かしたり、赤ちゃんが体を動かす様子も観察できるようになります。11週末ごろの赤ちゃんは身長約9㎝、体重は約20g[*4]くらいまで成長します。
妊婦健診でのチェック内容と行う検査
妊娠2ヶ月から3ヶ月の間に、だいたい3回の健診を行います。
すでに妊娠が確定したあとの妊娠3ヶ月の健診では、ママの血圧や尿検査、体重などを引き続き確認。また経腟超音波検査で赤ちゃんの様子を観察し、形態に異常がないか、心拍は確認できるか、などをチェックします。
頭殿長の計測で妊娠週数を確認
妊娠週数は最終月経が始まった日から数えます。しかし排卵が想定された時期より早かったり、遅かったりした場合、実際の妊娠週数がずれていることも考えられます。
そこで妊娠初期に行われるのが、赤ちゃんの頭殿長(頭からおしりまでの長さ)または児頭大横径(胎児の頭で一番幅広い箇所の直径)を測定し、正確な妊娠週数をチェックする検査です。
妊娠初期の赤ちゃんは発育の個人差が少ないため、例えば妊娠7週では頭殿長は平均10㎜、妊娠10週では平均30㎜[*5]といった基準値があり、これと実際の測定結果と照らし合わせて、妊娠週数を知ることができるのです。
妊娠中期になれば、赤ちゃんによって発育の違いが大きくなってくるため、妊娠初期に妊娠週数の確認を行う必要があります。もし最終月経の開始日から算出された妊娠週数と計測による妊娠週数に違いがあるときは、計測値での妊娠週数に修正されることもあります。
また、2人以上の赤ちゃんが子宮内に同時に存在することを「多胎(たたい)妊娠」と呼びます。多胎妊娠で妊娠初期に行われるのが、超音波検査による「膜性診断」です。
この時期の赤ちゃんは、絨毛膜(じゅうもうまく)と羊膜(ようまく)という二つの膜に包まれています。
双子の場合は二つ胎嚢(赤ちゃんの入っている袋)が確認できる場合と、一つの胎嚢の中に赤ちゃんが2人入っている場合があります。後者の場合、さらに羊膜で赤ちゃんの“お部屋”が分かれているときと、分かれていないときがあります。この違いによって、胎盤から栄養が十分に取れるか、お産のリスクはどうか、といったことが変わってきます。
妊娠週数が進むと絨毛膜と羊膜はくっついて判別できなくなるため、妊娠10週ごろが「膜性診断」を行う最適な時期とされています。
必要に応じて行う検査
通常の健診に加えて、妊娠中は必要に応じて受ける検査があります。
例えば妊娠初期には血液検査を行い、血液型や血算(白血球や赤血球、血小板などの数値)の確認が行われます。血液型の確認は輸血が必要になったときに備えるためと、まれにRh(-)の女性がRh(+)の子供を妊娠する「Rh式血液型不適合妊娠」で赤ちゃんに貧血などの症状が出る恐れがあるからです。
また血算はママに貧血がないか、体内で感染や炎症が起きていないか、出血しやすい・血が止まりにくいなどの傾向がないか、などを調べるために数値をチェックします。
ほかにも梅毒に感染していないか、風疹の抗体はあるか、といったことも血液検査で確認します。また、子宮頸部細胞診(子宮頸がん検診)も初期で行われることの多い検査です。
また、過去に染色体異常の子供を出産した経験がある人や、赤ちゃんに異常がある可能性があるときは、妊娠3ヶ月の時期に「絨毛(じゅうもう)検査」が行わることもあります。絨毛検査は出生前診断の一つで、夫婦から希望があり、十分なカウンセリングを行って同意が得られた場合のみ行われるものですが、検査するのが難しい場合もあります。
妊娠3ヶ月にやっておきたいことと生活の注意点
つわりで体調がすぐれない人も多い妊娠3ヶ月。この時期にやっておいた方が良いこと、また、まだまだ不安定な妊娠初期だからこそ、注意したい生活のポイントを押さえておきましょう。
妊娠届など各種手続きを行おう
厚生労働省では、「妊娠に気づいたら、お住まいの市町村の窓口にできるだけ早く妊娠の届け出を行ってください」と呼びかけています。多くは赤ちゃんの心拍が確認できたあと、医師から届け出を出すよう指示されます。
いつ届け出を出せばよいか分からないときは、健診のときに担当医師に聞いてみましょう。自治体によっては、届け出には医療機関で発行される妊娠証明書が必要になるところもあります。
妊娠の届け出を行うことで母子健康手帳が交付され、自治体によっては健診の無料受診券や受診補助券がもらえたり、さまざまな母子保健サービスの案内を受け取れたりします。妊娠の届け出方法は自治体によって違いますので、住んでいる区市町村のホームページなどから情報を入手しましょう。
母子健康手帳には健診結果を記録する欄があり、そのほかにも役立つ情報がたくさん書かれています。出産後も子供の健診や予防接種の記録を残していく大切な手帳です。
職場に妊娠の報告をして無理のない働き方をしよう
職場の上司や同僚に妊娠を打ち明けるのは安定期に入ってから、と考える人も多いことでしょう。しかし、つわりの症状や流産の心配がある妊娠初期こそ周囲のサポートが必要な時期です。
厚生労働省では妊娠中や出産後の女性で、健診結果などから通勤の緩和や休憩に配慮が必要なとき、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を医師に書いてもらい、事業主に提出するよう勧めています。事業主はその内容に従い、適切な措置を行う必要があります。母健連絡カードの提出がなくても、女性からの申し出によって必要な措置を取ってもらえることもありますので、まずは上司に相談してみましょう。
例えば妊娠中、満員電車でつわりの悪化や流産の恐れがあるのであれば、ラッシュアワーの混雑を避けたフレックスタイム制度の活用、勤務時間の短縮などの対応が考えられます。
また重いものを取り扱う業務や、有害ガスが発散する環境での業務など、妊産婦を働かせてはいけない具体的な業務についても、女性労働基準規則で定められています。
早期流産や切迫流産に注意しよう
医療現場においては、妊娠と診断された約15%に自然流産は起こるとされています。このうちの大多数が、妊娠5週以降12週未満に起こる早期の流産です[*6]。
初期流産のほとんどは胎児側に原因があるとされ、その中でも染色体異常が最も多い要因と言われています。そのため、いくらママが安静にしていても流産を止めることは難しく、たとえ流産になってしまったとしてもママが自分を責める必要はないことは心にとめておきたいものです。
妊娠初期に多量の出血、激しい腹痛があるときには流産が疑われます。診断の結果、子宮口が開き、赤ちゃんの心拍も確認できないときは残念ながら妊娠の継続はできません。
またママに出血や腹痛の自覚症状がなくても、超音波検査で赤ちゃんの心拍が確認できなくなることがあります。これは赤ちゃんが子宮内で死亡している状態で、稽留(けいりゅう)流産と呼ばれます。この場合も妊娠の継続は不可能です。
一方、少量の性器出血、軽い下腹部痛や腰痛があるものの、子宮口が開いておらず、胎児の心拍もある場合は「切迫流産」と診断されます。これは流産発生の危険がある状態で、その後、流産を回避できることもあります。絨毛膜下血腫を合併した切迫流産ではベッドで安静にすることで流産予防になる可能性があるともいわれていますが、その他の場合の切迫流産で確立された治療法はないとされています。
ママや赤ちゃんの状態によって対応は異なりますので、主治医の指示に従って過ごしましょう。
まとめ
妊娠2ヶ月に引き続き、3ヶ月に入ってもつわりや流産の心配など不安定さがあるものの、母子手帳を手にし妊娠の実感がわいてくる時期。赤ちゃんもようやく胎児となり、ヒトらしくなってきます。仕事をしていて支障や心配があるときは、上司や人事担当者に相談することも含め、無理なく働くように心がけましょう。
(文:剣崎友里恵、監修:中林稔先生)
※画像はイメージです
[*1]『病気がみえるvol.10 産科』p35
[*2]『病気がみえるvol.10 産科』82p
[*3]『病気がみえるvol.10 産科』p84
[*4]『最新産科学正常編』P59
[*5]『病気がみえるvol.10 産科』P51
[*6]厚生省心身障害研究班報告書(平成3~5年度)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
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