【医師監修】妊娠8ヶ月の特徴とトラブル対策(妊娠28週、29週、30週、31週、妊娠後期)
いよいよ妊娠後期に突入。子宮が胃を圧迫し、再びつわりのような症状が出たり、夜に寝付けなくなったり、日々、さまざまな悩みが出やきすい時期です。妊娠8ヶ月のママと赤ちゃんの様子、さらに生活のポイントなどをまとめました。
妊娠8ヶ月のママに見られやすい症状は?注意点と対策
おなかの張りや胃のムカつき、妊娠線など、ママの体に不快な症状が出やすい妊娠8ヶ月。この時期に起こりやすいトラブルと、その対処法についてまとめました。
頻繁におなかが張るように
妊娠後期に入ると、大きくなったおなかが堅く張っているのを感じる人が増えてきます。張りの原因 はいろいろありますが、妊娠後期ではお産に向けた準備で子宮が収縮するときに張りを感じる人が多いようです。
生理的なものなので神経質になる必要はありませんが、しばらく休んでもなかなか張りが治まらないときや、いつもより強い収縮の痛みや出血や破水 を伴うようなときはすぐ医療機関を受診しましょう。
貧血も見られやすい時期
個人差はありますが、妊娠3~4ヶ月ごろから増えていた心拍数は妊娠7~8ヶ月ごろに最も多くなります[*1]。また妊娠30週以降になると、体内をめぐる血液の量は妊娠していないときに比べて30~40%も増加します[*2]。
そのため、赤血球の割合が減って血が薄まったような状態となり、軽い貧血症状を感じる人もいますが、生理的なものなので多くの場合、 心配はいりません。
普段の食事では鉄分を多く含んだ食材を、意識して取るようにしましょう。
食欲不振になることも
妊娠後期は大きくなった子宮が胃を圧迫するため、食事をとると胸やけや吐き気などを感じやすくなります。中には、後期つわりやつわりのときのように食欲不振になる人もいるでしょう。
とはいえ、この時期は赤ちゃんの成長が著しい時期。たんぱく質やビタミンA、鉄、カルシウムなどの栄養を含んだ食材をバランスよく組み合わせることが必要です(ビタミンAはとくに妊娠初期での過剰摂取には注意が必要です) 。
一度の食事でたくさんの量を食べると、つわりのような症状が出やすいので少しずつ、こまめに食事を取ることを心がけましょう。
夜中に何度も起きてしまう妊婦さんも多い?
妊娠後期には大きなおなかで横になる姿勢がつらく、また赤ちゃんの胎動が気になるという身体的な理由やホルモンの影響で、夜なかなか眠れなくなる人が増えると言われています。
夜に眠れないことを気にしすぎると余計にストレスがたまる可能性もあります。日中も楽な姿勢で体を休めたり、仮眠を取ったりして休息を心がけましょう。
妊娠線ができる人も
妊娠8ヶ月以降、おなかや乳房、太もも、おしりなどの皮膚に長さ5~6㎝にわたって、皮膚が裂けたような線が見られることがあります。これは「妊娠線」と呼ばれるもので、皮膚が急に伸ばされることが原因でできるものです。
一般的には双子の赤ちゃんを妊娠しているときなど、おなかが大きくなる場合にできやすいようです。しかし個人差も大きく、妊娠線予防用のクリームも含めて医学的に立証されている予防法はありません。
妊娠中は赤褐色の線だった場合でも、産後は白いしわに変わり、だんだんと目立たなくなるので、あまり神経質にならない方が良いでしょう。
妊娠8ヶ月の赤ちゃんはどんな様子?
これまですくすく成長してきた赤ちゃんですが、ようやくこの時期になると、人として生きられる機能が備わってきています。妊娠8ヶ月の赤ちゃんの様子についてまとめました。
赤ちゃんの見た目の変化
妊娠31週末の赤ちゃんは身長約40㎝、体重約1500gです[*3]。産毛が全身にあって皮膚は紅色、老人のような顔つき をしています。
人として生きられる機能が備わってくる
31週ごろには心臓、肺、腎臓などの内臓器官や中枢神経の機能が完成に近づきます。また目の網膜が完成し、明るさを感じられるようになります。
妊娠8ヶ月にやっておきたいことは?
妊娠後期に入り、日に日に出産の日が近づいてきています。産後の生活を考えて、この時期に手続きしておくことなどを再確認。また里帰り出産を予定している人は、いつでも帰れるよう準備を始めましょう。
産休・育休のための引き継ぎや手続きの確認を
産休(産前休業と産後休業)は誰でも取得できる権利です。産前休業は出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求すれば取得できます。請求方法は会社によって違うので、どのような手続きをすれば良いのか、確認しておきましょう。
一方、育休(育児休業)は会社に申し出ることで子どもが1歳になるまでの間(延長も可能)で希望する期間を、育児のために休業できる制度です。産後休業(出産の翌日から8週間)は誰でも取得できますが、育休を取得できる人の要件は決まっているので確認が必要です。
また、育休の申し出は法律で、休業開始予定日の1ヶ月前までと定められています。産後休業に続けて育休を取得するときは、産前休業に入る前や、産前休業の間に申し出を行う必要があります。
これらの制度は要件を満たせば利用する権利は法的に認められていますが、上司や同僚などの仕事に影響を及ぼすこともあります。休業中にできるだけ迷惑をかけないよう仕事の引き継ぎ準備はしっかり行い、職場でも普段から円滑なコミュニケーションを心がけるようにしましょう。
里帰り出産の準備も進めよう
里帰り出産を予定しているときは、いつ転院して受診するかを指示されることがあります。一方、早産の傾向があるときなどは、予定よりも早く里帰りするよう勧められるかもしれません。急に里帰りすることになっても慌てないよう、転院・移動の準備は早めに 進めておきましょう。
長距離の移動は体に負担がかかるため、安定した時期に行うのが望ましいです。飛行機を利用する場合は航空会社ごとに、出産予定日まで28日を切っているなら医師の診断書が必要 、など搭乗条件が設けられています。あらかじめ、いつ、どの交通機関で里帰りするか、予定を立てておきましょう。
まとめ
妊娠後期に入り、いよいよ妊娠生活も終盤へ。子宮が胃を圧迫するせいで、あまり食べられなくなってしまう人もいますが、おなかの赤ちゃんのためにも栄養はしっかり取るようにしたいものです。おなかが張ったり、貧血のような症状を感じたり、マイナートラブルも起きやすい時期ですが、妊娠9ヶ月に入っても神経質になりすぎず、できるだけ気分よく過ごせるよう工夫しましょう。
(文:剣崎友里恵、監修:中林稔先生)
※画像はイメージです
[*1]荒木勤・2008年・『最新産科学 正常編』・文光堂・p97
[*2]公益社団法人 日本産科婦人科学会『Babyプラス』p30
[*3]医療情報科学研究所/編・2014年・『病気がみえるvol.10 産科 第3版』・メディックメディア・p10
日本産婦人科学会監修『Baby+お医者さんがつくった妊娠・出産の本』
厚生労働省パンフレット『職場でつらい思いしていませんか』
厚生労働省パンフレット『あなたも取れる!産休&育休」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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