【医師監修】子供の肥満はどんな問題がある? 基準や受診の目安、解消法は?
現代は肥満の子供が増えて、肥満にともなう健康上の問題が心配されています。子供は成長すればやせるだろうと放置するのではなく、肥満の基準やリスク、解消法を知って、肥満の傾向があれば早めに対処することが大切です。
肥満の子供は意外と多い
肥満とは体に脂肪が過剰に蓄積した状態。肥満に伴う健康障害があるなど医学的な管理が必要な肥満を「肥満症」と呼んでいます[*1]。
平成30年度の学校保健統計調査報告によると、肥満度が20%以上の肥満傾向児の割合は平成15年度からおおむね減少傾向にあります。ですが年齢別に見ると、平成30年度は10~12歳の男子の1割以上が肥満傾向にあり[*2]、10人に1人が肥満ということになります。
子供の肥満の基準
子供の肥満の基準は大人とは異なります。肥満かどうか判定する方法を見てみましょう。
子供の肥満度の計算方法
子供の肥満度は次のように計算します[*3]。
肥満度=(実測体重-標準体重)÷ 標準体重×100(%)
結果の評価は年齢によってわかれます。
幼児の場合
肥満度15%以上……太りぎみ
20%以上……やや太りすぎ
30%以上……太りすぎ
学童の場合
肥満度20%以上……軽度肥満
30%以上……中等度肥満
50%以上……高度肥満
母子手帳を利用した確認方法
母子手帳に載っている発育曲線で肥満かどうかを確認できます。子供の身長と体重をグラフに記入してみましょう。色付きの帯の部分や、一番上のラインから上は肥満になります。
成長曲線に沿って体重が増えているかどうかも大切です。たとえ今は肥満のラインを越えていなくても、急に体重が増加していてそのままのペースで増えると肥満になりそうなときは、やはり注意が必要です。現時点でどうかだけで考えずに、記録をつけていくようにしましょう。
小学校高学年から中学生は下記の成長曲線が参考になります。
■厚生労働省 成長曲線を描いてみましょう
医療機関を受診する目安
子供の肥満はなるべく早い段階で専門家の指導を受けた方が改善しやすいものです。明らかに体重が多い場合、体重が急激に増えている場合は医療機関を受診した方がよいでしょう。
高度肥満は受診して検査や指導、治療を受けましょう[*4]。福島県教育委員会は「学校における肥満対応ガイドライン」で中等度から医療機関の受診を勧めており、軽度でもかかりつけ医や学校医への相談を勧めています[*5]。
肥満によって起こる問題
子供が肥満になると、次のような問題が起こる可能性があります。
肥満に伴う病気のリスク
子供の肥満は、肥満症として医学的な異常や健康障害が出るだけでなく、成人後に2型糖尿病や心筋梗塞などの生活習慣病の発症リスクを高める可能性があります[*1]。
また子供にも大人と同じようにメタボリックシンドロームの症例がみられます。そのため小児メタボリックシンドロームの診断基準も作られています。子供のメタボリックシンドロームは、成人後に心筋梗塞や脳血管障害などの動脈硬化性疾患を招きやすくなります。動脈硬化の過程は子供のころから始まってしまうのです[*6]。
幼児期の肥満は学童期、思春期の肥満につながりやすい
学童期や思春期の肥満は、幼児期から少しずつ体脂肪が蓄積されて起こります。5歳で肥満だった場合、そのうちの 59%が12歳でも肥満のままで、5歳で肥満だった子供の41%しか肥満が改善していないという調査結果もあります[*1]。幼児期から肥満に注意が必要です。
子供の肥満の原因は?
子供が肥満になる背景には、単純な食べすぎのほかにさまざまな原因があります。
食べすぎや食事内容の偏り、早食いなど
子供の肥満はたいてい摂取エネルギーが消費エネルギーを上回るために生じる原発性肥満(単純性肥満)です。
摂取エネルギーが多くなる原因として、
・食事やおやつ、ジュースの過剰摂取
・バランスの悪い食事内容
があります。
さらに
・朝食を抜く
・早食い
・遅い時間の夕食
・複数回のおやつ
・つまみ食い
といった習慣が幼児期にできてしまうと、肥満を悪化させてしまいます。
運動不足や活動性の低下
運動不足はもちろん、
・長時間ゲームやテレビの視聴をして座っている
・俊敏に行動しない
・面倒くさがる
といった活動性の低下も肥満を悪化させる原因となります。
睡眠不足
国内外の数々の研究から子供は睡眠時間が短いほど肥満になる可能性が増加することがわかっています。また小学校高学年から中学生では肥満にともなう睡眠時無呼吸症候群がみられるようになっています[*7]。
心理的なストレス
心理的なストレスも食べすぎにつながります。また、「たくさん食べてえらいね」と褒められたことを思い出し、褒めてほしくて食べているうちに過食になってしまうことも。親子でコミュニケーションをとることが大切です。
まれに病気が原因で肥満になることも[*1]
中枢神経系や内分泌系などの病気によって肥満となることがあります。病気に由来する肥満は二次性肥満と呼ばれ、原発性肥満と区別されます。原発性肥満の子供は、幼児期でも学童期でも高身長を伴うことが多いです。低身長や身長の伸びが悪い肥満は二次性肥満の可能性があります。また、遺伝的な病気が原因の場合もありますが、その場合、多くは乳幼児期に肥満になります。
肥満を解消する方法
肥満の傾向があれば、できるだけ早く解消できるように取り組みましょう。
まずは生活習慣を見直して改善する
肥満を解消するためには、基本的な生活習慣を見直す必要があります。まずは早寝早起きの生活リズムを身につけましょう。食生活は1日3回の食事と1回の間食を基本にします。さらに下記の内容にも注意して生活習慣を改善していきましょう。
食生活の注意点
食事と間食以外でだらだらと食べないようにするとともに、栄養バランスがとれた食生活をすることが大切です。毎回の食事で次のことにも気を付けましょう。
・料理は大皿ではなく個別に盛り付ける
・献立は一汁二菜(主食、汁物、主菜、 副菜)を基本に
・子供がひとりで食べることは避けて家族で楽しく食事をとる
・野菜や海藻を使ったよく噛んで食べるメニューを増やす
・苦手な食材は楽しい食育を通して食べられるようにする
・塩分を控え、卓上で調味料をかけないようにする
・外食、甘い飲み物を控える
食事の栄養バランスについては下記も参考になります。
■農林水産省 親子で一緒に使おう! 食事バランスガイド
テレビやゲームの時間を制限する
テレビやゲームのために長時間座ったままにならないようにしましょう。アメリカ小児科学会は2~5歳の電子メデイアの使用は「質の高い内容を選び1日1時間までに制限するように」と提言しています。突然制限するのは難しいかもしれませんが、ルールを決めて少しずつでも減らしていきましょう。
1日60分以上体を動かす
1日60分以上は体を動かす習慣をつけましょう。子供が得意とする運動を取り入れ、楽しく長続きできることがいいでしょう。まずは5~10分くらいから始めて20~30分継続できるようにします。毎日の生活の中でも歩くこと、屋外で遊ぶことを基本にしましょう[*4]。安全に注意して運動してください。
睡眠時間を充分確保する
就寝時間と起床時間を決めて、 平日と週末で睡眠時間を変えないようにします。就寝前にスマホやタブレットを使わないようにする、寝室は快適な温度にして照明は暗く、静かな環境にするなどしてよく眠れるようにしましょう。毎日寝る前に同じ絵本を読むなど、入眠儀式を取り入れるのもいいでしょう。
家族一丸となって肥満対策を
子供は大人の食事の影響も受けています。パパやママはもちろん、同居の祖父母など周囲の大人が肥満にならない食生活をしてお手本になりましょう。また大人同士が協力し、食べたいものを食べたいだけ与えないことも大切です。祖父母は孫に食べさせたくなりますが、欲しがる子供に大人が折れることがないよう家族で団結しましょう。ご褒美や駆け引き、おとなしくしてもらうためにお菓子を使うこともやめましょう。
まとめ
肥満が心配ないのは乳児まで。幼児期の肥満は、学童期、思春期の肥満につながりやすく、将来の生活習慣病のリスクも高くなります。子供が肥満になる原因は偏った食生活や運動不足、睡眠不足などの生活習慣です。食事内容を変えて運動をするだけでなく、食べ方や食べる時間、ゲームをする時間、睡眠時間も見直して改善しましょう。中々改善しないときや中等度以上の肥満は早めに医師に相談を。
(文:佐藤華奈子/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
[*1]日本小児科学会「幼児肥満ガイド」
[*2]「平成30年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)の公表について」
[*3]日本小児内分泌学会「肥満」
[*4]徳島県医師会「幼児の肥満について」
[*5]福島県教育委員会「学校における肥満対応ガイドラインと肥満対応資料例」
[*6]加古川医師会「子どもの肥満を予防するための食生活について」
[*7]厚生労働省e-ヘルスネット「睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます