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2022年01月28日 10:52 更新

【医師監修】妊娠初期の動悸は心配? 心臓がドキドキする5つの原因と対処法

妊娠初期にはつわりなどさまざまなマイナートラブルが起こりやすい状態になっています。妊婦さんの心臓がドキドキ、バクバクする動悸も、そうしたマイナートラブルのひとつ。妊娠初期の動悸の原因として考えられるものやリスク、対処法などを紹介します。

妊娠初期に動悸…心臓ドキドキバクバクはなぜ起こる?

妊娠初期の動悸で座り込む女性
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妊娠がわかってから、息が切れやすくなったり心臓がドキドキしたりすることが多くなったという人もいるかもしれません。動悸は妊娠初期によくみられる症状のひとつといわれています。

なぜそういわれるのかを正しく知るために、まずは動悸について、そして妊娠中の体の変化について理解しておきましょう。

動悸そのものは異常がなくても起こる

動悸(どうき)とは、心臓がドキドキしたり、バクバクしたりなど、普通に過ごしているときには自覚しない心臓の拍動を感じることをいいます。場合によっては心臓がふるえたり、脈が飛んだりするように感じられたり、胸の不快感や息切れなどの症状が生じたりすることもあるでしょう。

動悸そのものはごくありふれた症状で、とくに病気や異常のない人にも起こります。例えば運動をした際に心臓の鼓動が大きく感じられるのも動悸です。そのほか発熱、脱水などがあるとき、強い怒りや恐怖、不安といった感情を覚えたときにも心臓がドキドキすることがありますが、それらは心臓による正常な反応といえます。

妊娠中は血液量が増えると動悸が起きやすい

妊娠中は体の血流が変化するため、動悸やめまいといった症状が出やすいとされています。妊娠初期もそうですが、どちらかというと妊娠中期以降に動悸を感じる人が多いかもしれません。

妊娠中は、赤ちゃんに酸素や栄養を送るために、非妊娠時より血液の量が増えます。そして、心拍数も約10回/分増加すると言われています。心臓が1回の拍動で送り出す血液量も妊娠初期から増加し始めます[*1]。

お腹が大きくなり、体重も増え出す妊娠中期ごろからは増加のスピードがさらに速くなり、心臓に負担がかかるようになっていきます。このように妊娠中は、動悸を感じやすくなっているのです。

ただ、妊娠初期に動悸を感じやすくなる理由はほかにもあります。詳しくはこの後、解説します。

妊娠初期の動悸の原因
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原因1. 不安など心因性のもの

先ほどもお伝えしましたが、動悸は強い怒りや恐怖、不安といった感情を覚えたときにも起こるものです。妊娠初期に起こる心臓のドキドキも、基本的にはそうした感情の変化による心因性のものであることが多いでしょう。

ただし動悸が続く場合は、心臓に問題があるケースや後述する甲状腺機能に異常のあるケースも考えられます。そのようなときはかかりつけ医に相談しましょう。

原因2. 血液が下がりすぎる「起立性低血圧」の影響

起立性低血圧とは、立ち上がった時に血圧が下がりすぎること。これとともに動悸を感じることも、じつは少なくありません。起立性低血圧は妊娠初期に多いため、初期に起こる動悸の一因になっていると考えられます。

なぜ妊娠すると起立性低血圧が起こりやすいのか――それには妊娠すると血管の収縮がうまく働かなくなることが影響しています。座り姿勢から立ち上がる際など、体を動かすときには一時的に血圧と血流量が増加します。非妊娠時はそうした際に末梢血管が収縮し、血圧や血流量を維持します。

しかし妊娠時はこの調節がうまく働かず、脳が一過性の虚血状態になることがあります。それにより起立性低血圧となり、立ちくらみ、めまい、冷や汗などのほか、動悸を感じることもあるのです。

起立性低血圧を起こさないためには、長時間の座りっぱなしを避けたり、急に立ち上がったり、急に振り向くなどの急に頭を動かす動作をなるべく避けます。

原因3. 血が薄まる「鉄欠乏性貧血」の影響

貧血(鉄欠乏性貧血)が原因で動悸が起こることもあります。

妊娠中は貧血になりやすくなっています。それは血が薄まってしまうため。さきほど説明したように、妊娠中は血液の量が増加しますが、増加分の多くは血液の液体成分(血漿)で、赤血球はそこまで増えません。そのため、血液が薄まったような状態になり、貧血を起こしやすくなるのです。貧血になるとその症状のひとつとして、動悸を感じることもあります。

なお、あまりに貧血が悪化すると、赤ちゃんの発育が妨げられるなどの影響が出てきます。貧血の疑いがある場合は医師に相談し、放置しないように注意しましょう。

原因4. ホルモンの影響による「不整脈」

不整脈とは脈を打つ速さがゆっくりだったり、速かったり、不規則になったりすることをいいます。例えばスポーツをしたときに脈が速くなるのも、じつは不整脈の一種です。脈が1分間に50以下の場合を徐脈、100以上の場合を頻脈といい、頻脈になると動悸や息切れ、胸の痛み、めまい、失神といった症状が現れることがあります[*2]。

妊娠中は、妊娠初期と後期に不整脈が起こりやすくなることがあります。妊娠初期の不整脈は、妊娠によるホルモン分泌の変化が主な原因です。妊娠後期になると身体全体の循環血液量が増えるため、心臓に負担がかかりやすくなることによって不整脈が起こります。どちらも頻脈が起こりやすくなり、動悸やめまいなどが一緒に起こることもしばしばあります。

そうした症状が強く、日常生活に影響を与えるような場合は医師に相談しましょう。しかるべき対応をしてくれるはずです。

原因5. 甲状腺が過剰に働く影響

妊娠するとhCGという、妊娠中の女性に特有のホルモンが分泌されます。hCGは妊娠反応を検査する際にも検出されるホルモンで、主な役割は妊娠を維持するのに必要な黄体ホルモン(プロゲステロン)の産生を刺激することです。

しかし同時に、hCGには甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を促進するという作用もあります。こうして甲状腺が過剰に働くようになると、動悸が生じることがあります。

hCGの分泌量は妊娠8~10週くらいにピークを迎え、以降は低下していきます。これが原因の動悸であれば、hCGの低下に伴って、症状は改善していくでしょう。こうした妊娠による一過性の甲状腺機能障害は「妊娠時一過性甲状腺機能亢進症」と呼ばれています。

妊娠時一過性甲状腺機能亢進症とは

妊娠時一過性甲状腺機能亢進症は、先ほども説明しましたが、妊娠中の女性の胎盤でつくられるホルモン・hCGが甲状腺を刺激することで起こる、一過性の甲状腺機能障害です。hCGは甲状腺刺激ホルモン(TSH)と構造が似ていて、甲状腺を刺激する作用があります。妊娠初期(8~13週ころ)に起こりやすく、甲状腺に異常のない人にも発症します。

ただし、中にはもともと持っていた甲状腺機能の異常が妊娠中に顕性化して、甲状腺機能異常や亢進症を発症する方もいます。hCGの分泌量が低下する時期になっても動悸や不整脈が改善しない場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

妊娠初期に動悸が起きたときの対処法

動悸が起きたらまずは安静にしてみる
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最後に、妊娠初期に動悸が起きたときの対処法についても確認しておきましょう。

① まずは安静にして様子を見る

動悸や息切れを感じたときは、まず安静にして休み、症状が治まるかどうか、様子を見てみましょう。安静にしてドキドキが治まるようであれば、そのまま過ごして問題ないでしょう。ただし、また動悸が起こる可能性もあるので、ゆっくりと動作をするように心がけてください。

② 医療機関を受診し、原因を確認

安静にしても症状が改善しない場合やたびたび動悸を感じる場合は、かかりつけの産婦人科医に「胸が苦しい」「動悸がある」旨を相談しましょう。必要な検査などを行い、動悸の原因を確認し、適切な対策をとってくれるでしょう。我慢せずにまずは相談してみることが大切です。

なお、動悸で医療機関を受診するときには、

・どんなときに起こるのか(例:運動時、疲労時、就寝時、心配ごとがあるときなど)
・どのように始まり、どのように止まるのか(例:突然、徐々に強くなってくるなど)
・どれくらいの間、持続するのか(例:一瞬、数分、数時間、一日中など)
・1分間の脈拍はどれくらいか、乱れたり飛んだりすることはあるか


といったことをメモしておくと、状況を伝えやすいでしょう。

まとめ

妊娠中の動悸は珍しくなく、妊娠初期でもよく見られるマイナートラブルのひとつではありますが、だからといって何もせずほうっておいて大丈夫とは限りません。普段感じたことのない心臓のドキドキがあったときは、まず安静にして様子を見ましょう。それでも症状が治まらないようであれば、かかりつけ医に相談してください。治療の必要な異常がないか調べてもらったうえで、指導に従って、適切に対応しましょう。

(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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