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2021年05月23日 09:00 更新

【医師監修】陣痛を和らげる呼吸法は?ソフロロジー法とラマーズ法の違い、痛みの逃し方も解説

初めての出産だと未知なことが多く、不安が大きいですよね。少しでも痛みを和らげ、落ち着いた気持ちで陣痛を乗り越える方法があれば、取り入れたいところです。今回は陣痛の時の代表的な2つの呼吸法・出産方法とともに、簡単にできる陣痛の痛みの逃し方について説明します。

陣痛の痛み緩和に役立つ「呼吸法」

陣痛が来ている妊婦

呼吸法は全国の母親学級などで紹介されることもあり、陣痛の痛みの緩和に効果的だと言われています。呼吸法とはどんなものなのか、またその効果について紹介します。

呼吸法とは

分娩後のママに「痛みを逃すためにやってよかったこと」を尋ねると、呼吸法がよく挙げられます。

ここでいう呼吸法とは、分娩の進行に合わせて呼吸の仕方を変える方法です。主に長く息を吐く呼吸は分娩中によく使われます。呼吸は自分の意思でコントロールできるため、ある程度練習すれば呼吸が乱れがちになる陣痛中でも実践しやすいのも特徴です。

分娩時の呼吸法の効果

分娩の時に行う代表的な呼吸法としては、ソフロロジー法とラマーズ法があります。

両方に共通するのは、長く息を吐くという呼吸法。これに加え、イメージトレーニングや体操などを行います。

分娩中に恐怖心や緊張があると体がこわばり、さらに痛みを強く感じやすくなってしまいます。ソフロロジー法もラマーズ法も、こうした分娩中の緊張感をほぐし、リラックスすることで分娩の痛みが軽減されることを目指します。

陣痛緩和に役立つ呼吸法(1)ソフロロジー法

ソフロロジー法を実践している妊婦

2つの呼吸法のうち、まずはソフロロジー法について紹介します。

ソフロロジー法とは

「ソフロロジー」は、1960年にスペインの精神科医によって提唱された「精神の安定と調和」を得るため学問で、ヨーロッパで分娩にも導入されたのち、日本には1980年代末にもたらされました[*1]。産婦人科だけでなく、精神科や循環器科、消化器科、歯科など様々な医学分野で活用されています。

出産のようなストレスの多い初体験のできごとが起こると、人間は本能的に緊張したり恐怖や不安を感じたりします。こうした恐怖心や不安感を軽減するように、ソフロロジー法では妊娠中に妊娠・分娩の経過を説明し、イメージトレーニングや体操、呼吸法の練習を行います。

フロロジー法の基本的なやり方

あぐらをかく妊婦

ソフロロジー法では妊娠中から、ソフロロジー法の音楽を聴きながら、呼吸法やイメージトレーニング、体操などをします。これを繰り返すうちに、自分自身の緊張と緩和を意識できるようになり、どうすれば自分がリラックスできるのかがわかるようになってきます。

実際の分娩中にはあぐらをかき、陣痛の時には深くゆったりとした腹式呼吸を繰り返します。また、この呼吸とともにプラスの(ポジティブな)イメージも思い描き、全身リラックスして分娩に取り組めるように目指します。

やり方をレクチャーしている産婦人科も多いので、かかりつけの産婦人科や母親学級などでやっていないか確認してみてくださいね。

陣痛緩和に役立つ呼吸法(2)ラマーズ法

ソフロロジー法の他にも有名な呼吸法としては、ラマーズ法があります。こちらについても知っておきましょう。

ラマーズ法とは

ラマーズ法は、ソビエト(当時)で行われていた精神予防性無痛(和通)分娩を、フランスの産科医が改良・提唱して生まれた方法です。日本では1960年代末から行われるようになりました。

ラマーズ法ではリラックスして自然分娩ができるように、お産の仕組みを学ぶことで分娩への不安を解消します。また、力を抜いて緊張をほぐすための弛緩法(筋肉のコントロール法)や呼吸法も練習します。

可能であればパパも一緒に呼吸法や弛緩法を練習し、分娩の際には立ち会ってもらって呼吸をリードするなどの役目をしてもらいます。

ラマーズ法の基本的なやり方

呼吸法は陣痛が進んで子宮収縮が強くなってから始めるのではなく、陣痛が始まった時から始めましょう。

ラマーズ法の基礎になる呼吸法
まずは30~60秒に6~12回くらい、「静かに長く息を吐いていく」ようにします。息を吸うのは自然に任せましょう。
舌の先は上顎につけ、目は少し開いて1点を見つめます。声は出さず、呼吸に集中して、それ以外のことは考えないようにしましょう。
痛みが強い時ほど静かに強く息を吐くと効果的です。
早く激しい呼吸は過換気症候群につながるので、やらないように気をつけましょう。
ヒー・フー式
子宮口が3~5cmくらいまで開き、痛みが少し強くなった頃に行います。
ヒーと短く息を吐き、息を吸ったのち、次はフーと長めに吐きます。息を吸うのは自然に任せます。
ヒー・フー式
肛門の方につっぱった感じがしたり、いきみたくなってきたら、ヒッまたはフッと短く息を吐き、フーーーとできるだけ長く息を吐きましょう。
息を吐きながら、肩からおへそのあたりまで全身の力を抜くようにします。
リズミカルに続けるうちに、自然に起こる子宮収縮を生かして分娩を進めていくことができます。
フー・ウン式
たくさん吐いてもいきみを逃せなかったり、出産まで時間がかかりそうな時には、フー・ウン式を行います。
フーと息を吐き、喉から上に向かって小さくウンと声を出していきみを逃しましょう。

赤ちゃんの頭がママの体の外に出始めてきたら、短くフーと吐き、約1~2秒だけ肛門に向かっていきみます。おへそのあたりを引っ込めながら、肛門付近をお腹の方に向けていきみましょう。
この時、長くいきむのは、赤ちゃんが強く圧迫されたり、産道が裂けやすくなってしまうので避けます。
フー・フー式
赤ちゃんが出てくる時には、フー・フー式でいきまずにゆっくりと赤ちゃんを出しましょう。
1の基礎呼吸法よりもさらに深く、ゆっくり全身の筋肉から力を抜ききるように心がけながら、フー、フーと息を吐きましょう。吸うのは自然に任せます。
静かに、ゆっくりとした呼吸を心がけましょう[*2]。

呼吸法以外にも!知っておきたい陣痛の痛みの逃し方

リラックスして心と体の緊張をほぐすことは、陣痛の痛みを和らげるとともに、分娩の進行にも影響します。

体をこわばらせて緊張したままでは、産道が閉まってしまい、赤ちゃんが出てきにくくなってしまいます。また、緊張して全身に力が入っていると、ママの体力も消耗してしまい、赤ちゃんを押し出す力を十分出しにくくなってしまいます。

リラックスして心と体の緊張を和らげることはメリットがたくさんあるのです。
呼吸法以外にもできる、痛みを逃すのに役立つリラックス方法を紹介します。

楽な姿勢を見つける

四つん這いの妊婦

自由な姿勢で過ごすことは、分娩の痛みを緩和すると考えられています。分娩が始まったけれどまだ陣痛室で待機している時には、自由に自分が楽と思える姿勢を取るようにしましょう。

椅子に座ったり、人や物に寄りかかったり、前かがみになるなど、どんな姿勢でもいいので、自分にとって少しでも快適な姿勢を探してみましょう。

監修:直林先生よりコメント
横になっているだけよりも、あぐらをかいたり、四つん這いになったり、安楽椅子に座ったりすると、痛みを逃しつつ分娩が進むと考えられます。
なお、陣痛中のバランスボールについては、過去に陣痛中のベット上使用で重篤な事故が起きており、使用する際は監督者が必要です。

温める

国内外の研究結果によると、子宮口が全開大になる前に入浴したり、子宮口が全開大になってから会陰部(腟と肛門の間)を温めるとお産の痛みは緩和することがわかっています。
衛生面に注意しながら、ほどよい温度の湯たんぽなどを使って会陰部を温めてみるのもいいでしょう。

腰や背中をマッサージしてもらう

陣痛中の背中指圧

腰や背中をマッサージすると、体の力が抜けてリラックスしやすくなります。ママがマッサージグッズを使って自分をマッサージするのも効果的ですが、パートナーなど他の人にやってもらうと、さらにお産の痛みが軽減するという研究報告もあります。楽と感じる場所と強さを見つけて、その通りにマッサージしてもらいましょう。

ただし、人によっては陣痛中に触れられることに抵抗を感じることもあるでしょう。
大切なのはママが心地よく感じ、リラックスできることなので、自分でマッサージした方がいいと感じたりマッサージ自体が嫌だと感じたら、我慢せずに他の方法を考えてくださいね。

肛門を押してもらう

陣痛の時のテニスボール

子宮口が全開大になると、赤ちゃんの体の一部が子宮から出て下に降り始めるので、外陰部から肛門のまわりが特に強く痛むようになります。特に赤ちゃんが生まれる間際には、外陰部から肛門のまわりの痛みはピークとなります。

こうした痛みを感じたら、テニスボールやゴルフボール、こぶしなどで肛門付近を押すと、痛みが楽になることがあります。痛みが軽くなるかどうかは個人差になるので、痛みが強くなってきたらまずは試してみてくださいね。

まとめ

陣痛が始めると、分娩の進行とともにだんだん痛みは強くなり、痛みを感じる頻度も増えていきます。心身ともに緊張していると、こうした痛みはさらに強くなってしまいます。
ソフロロジー法やラマーズ法では、リラックスしながら分娩に臨めるように分娩の進行について学んだり、呼吸法などを使って心と身体の緊張をほぐしてスムーズな分娩に繫げていきます。
その他にも、楽な姿勢をしたり、体を温めたり、マッサージや肛門を押してもらうなどの方法で痛みを少し和らげることができます。どの方法がいいかは妊婦さんによって違うので、分娩の時に楽な方法を見つけてやってみましょう。
分娩は痛みを伴うことが多く大変ですが、お腹の赤ちゃんもママと一緒にがんばっています。また産院のスタッフも妊婦さんを支えてくれるはず。赤ちゃんが生まれるまでのひと時を、工夫しながら乗り越えていってくださいね。

(文:大崎典子/監修:直林奈月 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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