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2022年08月04日 10:30 更新

臨床心理士監修|子どもの自己肯定感は低いとどうなる? 高める方法は?

近年よく耳にするようになった「自己肯定感」という言葉。自己肯定感が低い子の特徴とともにこれを高めることがなぜ大切で、そのために必要なことは何か。幼稚園や保育園で実際にあったエピソードとともに、子どもの自己肯定感を高めるためにおすすめの方法を紹介します。

「自己肯定感が低い子」の特徴は?

遊具で遊ぶ幼児

「自己肯定感が低い」というと、どのような印象でしょう? マイナス思考? 自信がない……?

保育現場で見てきた、自己肯定感が低いのかな?と感じた子の例を挙げつつ、説明していきます。

新しい遊びや制作はやりたがらない

クラスに一人は、おとなしく引っ込み思案なタイプの子どもはいるでしょう。しかし、それはただ、自分のペースで取り組む慎重派な性格という可能性もあります。

一方で、自己肯定感が低いことによって、初めてのことを頑なに拒否したり、どうしてもやりたがらなかったりし、集団の中で、少し目立ってしまうことがあります。

自分の非を認めず友達とトラブルに

「水をこぼす」というよくある小さな失敗も認められず、ごまかそうとしたり他人のせいにしたりすることも。

当然、友達とのトラブルでも自分の非を認めないため、些細なけんかもこじれてしまい、コミュニケーションは苦手なことが多いかもしれません。

友達の悪いところ探しをする

自分が満たされていないため、友達のいいところを素直に認めることができません

「Aくんはこんなところがすごい!」と先生や友達が口にしても、認めるどころか「でもAくんは○○ができない」と否定的な言葉を言うことも。友達の悪いところばかり探してしまう子もいます。

自己肯定感が低いとどうなるの?

紙芝居を聞く子供たち

自己肯定感が低いと、自分が苦しむだけでなく、友達にも悪く思われ悪循環になることがあります。幼稚園や保育園での例を挙げてみます。

自分を否定するように

「自己肯定感」とは、「ありのままの自分を受け止め、自己の否定的な側面もふくめて、自分が自分であっても大丈夫という感覚」とされています。 これが低いと、自分に対して自信がなく、さまざまなことを否定的に捉えてしまいます。

「自分にはどうせできない」と挑戦しない子に

初めての遊びや制作は、まず拒否。また、「失敗=自分はダメだ」と捉えてしまうため、一度失敗しようものなら人生が終わるかのように落ち込みます

そのため、できるだけ失敗をしないようにという考えに繋がり、「自分の頭の中でイメージできることしかしない」「できないと思うことはしない」「やったことがないのに苦手だと思い込む」……などなど、新しいことへの挑戦を避けるようになります。

ドッジボールや鬼ごっこなどの集団遊びに入ろうとしなかったり、折り紙や自由工作などの簡単な制作遊びも嫌がり、なかなか取り組めなかったりという姿がありました。

他人から「否定的に見られている」ように感じる

友達がよかれと思ってしてくれたことも、「自分ができないからだ」と否定的に捉えたり、「なんでそんなひどいことを言うんだ!」と憤慨したりします。

何気ない友達の言葉が、自分の悪口に思えて、早とちりで怒ってしまう子もいます。

他人にも否定的に

自己肯定感が低いと、自分に対してだけでなく他人に対しても否定的になります。それがまた人からの評価の低下に繋がり、悪循環に陥ります。

先生や友達のアドバイスを受け入れられない

折り紙をしているとき、友達に「ここが違うよ」と教えてもらっても受け入れられず、その時点で作るのを投げ出して遊びだしてしまったという子もいました。

ほんの少しのミスでも、指摘されると自分を全否定されたように感じてしまうようです。

また、友達は親切で教えてくれたのですが、“意地悪を言われた“と捉えてしまうこともありました。

友達を落として自分を上げようとする

ある子は、いつも友達の悪いところを探していました。「○○ちゃんがこんな悪いことをしている」と、先生や友達にいつも告げ口して回ったり、大声でみんなに知らせたり。その結果、友達から「○○くんは意地悪だ」と言われていました。

自分が認められたい気持ちはあるけれど自信がもてないため、他人の価値を下げることで自分の価値を上げようとしてしまうのです。

大人の社会にも似たような行動をする人はいますが、気分がいいものではないですよね。

自己肯定感が低くなるのはなぜ?

不安げな幼児

日本人の若年層は、諸外国に比べ自己肯定感が低いことがわかっています[*1]。自己肯定感は何が理由で低くなるのでしょうか。

親に認めてもらえない

子どもたちにとって、親は絶対的な存在です。親に認めてもらえないと、「自分はダメな子なんだ」と思ってしまいます。逆に、親にさえ認めてもらっていれば、外でなかなか評価されなくても自己肯定感を糧に踏ん張ることができます。

虐待とは言わないまでも、親からいつも「あなたは計算が遅い」「かわいくない」「運動ができない」など、マイナスの言葉をたくさん浴びせられていると、自己肯定感は低くなります

両親の不仲や虐待

両親の仲が悪いと、家庭内の雰囲気が悪くなり、直接的でなくても子どもに影響します。「大好きなお母さんが大好きなお父さんの悪口を言う」「自分の好きな人を否定される」という不安が積み重なっていくのです。

また、虐待を受けた子は「自分には価値がない」という考えに陥りやすいものですが、虐待をしたのが最も信頼すべき存在である親であった場合はなおさらです。

このような環境で育つと、自分の存在そのものを否定されたような気持ちになり、自己肯定感が低くなる傾向にあります。

謙遜文化

日本には謙遜する文化がありますよね。良い評価をもらったとき「いえいえ私なんて」と応じたり、妻や夫を人前で良く言われても「しょうもない妻/夫ですよ」なんて返したりする方も多いのでは?

子どもは、そんな何気ない言葉もしっかりと聞いています。こうした謙遜の文化が自己肯定感を下げている可能性もあると言われています。 子どもの前では、ナルシストになるくらい、自分や自分の家族に自信をもちましょう。

親の自己肯定感が低いと、その環境で育った子どももまた自己肯定感が低くなりがちです。

自己肯定感が高いとなぜいいの?

楽しそうに遊ぶ子供たち

自己肯定感を高めよう、とよく言われますが、なぜでしょうか?

他人のいいところを「認められる」

幼稚園ではよく「互いに認め合う」という保育目標を立てます。幼稚園教諭をしていたとき、「互いに認め合う子を育てるには」という課題に実践的に取り組んだことがあるのですが、そのなかでわかったことは、

まずは、自分自身を認められているという満足感や自信が十分にあることが大切

ということでした。

自己肯定感という「土台」がしっかりあるからこそ、友達のいいところにも目が向き、認めることができるようになります。

これは、大人の社会でもとても大切なこと。互いに認め合う雰囲気があると、コミュニケーションが円滑になるだけでなく、いい雰囲気の中でお互いを高め合い、集団としての成長にもつながります。

「自分は大切な存在」だと知っている

自己肯定感の高い子は、ありのままの自分が大切な存在だと知っています。それには「早く走れる」だとか「絵が得意」だとか言う理由はありません。

たとえ失敗しても、そんな自分も受け入れてもらえるとわかっているので、挽回できたり立ち直りが早かったりと、挫折に強い子になります。

自分の力を「信じられる」

「どうせ自分なんか」ではなく、「やってみたらできるかも」と思えるので、いろいろなことに挑戦しようとします。

幼少期は大人と違い、頑張ればできるようになることも多いので、成功体験をどんどん積み重ねていくことができます。

そして、先ほども書いたように、失敗しても大丈夫と思えるので、さまざまなことに挑戦して可能性を広げていくことができます。

生きやすくなる

何より大きな効果が得られるのは、“生きやすくなる”ことです。先に挙げた3つの項目と重なる部分もありますが、

・満たされていることで「他人を思いやれる」
 →コミュニケーションがうまくいく

・「ありのままの自分が愛されている」と感じる
 →「グレにくい」「キレにくい」子に

・何にでも「挑戦できる」
 →人生において「視野」も「チャンス」も広がる

・挫折に強い
 →受験や就職などで失敗しても「通過点の一つ」と思えやり直せる

・他人のアドバイスを「受け入れられる」
 →成長しやすい

などなど。

幼少期に培った自己肯定感は、大人になっても支えになります。

逆に、幼少期に自己肯定感が低かった人が、大人になってから取り戻そうとすると苦労します。

子どもの自己肯定感を高めるコツ

手をつないで歩く親子

ここまでで、自己肯定感の高い子に育てることがどれだけ大切かなんとなくわかってきたのではないでしょうか。

では、具体的にどのような行動をすれば自己肯定感を高めることができるのか、幼稚園・保育園での事例とともにご紹介します。

居場所を感じられるように

幼稚園や保育園の保育室には、クラスの子どもたちの絵を飾ってあることが多いです。単純に子どもたちの絵をいろいろな人に見せるという目的ももちろんあるのですが、これは実は自己肯定感を高めるのにも役立っています。

子どもにとって、「自分の作品=自分の分身」です。自分の作品が部屋に飾ってあることで、自分の居場所だという安心感が得られ、自己肯定感を高めるのに役立つそうです。絵だけでなく、子どもの写真を飾るのも効果があります。

3歳児クラスを担任した際、なかなか保育室にいられない子が、自分で作った作品が壁に飾られているのをきっかけに保育室に入れるようになったということもありましたよ。

ポジティブな言葉がけをする

とにかく、話しかけるのは肯定的な言葉を心掛けましょう。「そうだね」「うん」「いいね」「よかったね」など。

子どもが”猫”を見て「わんわんいた」と言ったとします。それに対して、「”違うよ”、にゃんにゃんだよ」と返すのと「”うん”。にゃんにゃんいたね」と返すのでは、子どもにとって印象がかなり違います。

「肯定してから」さりげなく正しい言葉でオウム返しすることで、否定されたとは思わず、正しい言葉を自然に覚えていきます。

いろいろな人と喜びの感情を共有し「勇気をもらう」

勇気とは「困難を克服する力」です。勇気づけとは、「ありがとう」「うれしいな」など、子どもの感情に共感の言葉で応答し、接することです。

年長児クラスでの例です。いつも友達に意地悪ばかりしていて、「○○くんはいじわるだ」と言われているし、自分でもそう思っている子がいました。担任だった私は、まずはクラスの中の彼の印象を変えなくては、と彼のいいところをとにかくたくさん、いろいろな角度から言葉にしました。

そうしていると、クラスの子どもたちも彼を意地悪だと言わなくなり、良いところを口にするようになりました。すると彼自身も変わり、「自分は親切だ」「作るのが得意だ」などと自信をもてるようになって、友達にも「いい自分」で接するようになりました。

子どもにとって、周りからの言葉の影響はとても大きいです。それは当然、家族内でも同じこと。

まずは子どもをけなすことをやめ、勇気づけの言葉のシャワーを浴びせましょう。

自己肯定感を下げる言葉を言わない

実は、これがいちばん大切です。どんなにたくさん意識して良いところを伝えても、普段の生活の中で自己肯定感を下げる言葉を使ってしまっては、意味がありません。

自己肯定感を下げる言葉とは、

「あなたは本当にだめね」

「どうせできないよ」

「○○ちゃんはできるのに」

などなど、子どもが「自分は劣っている」と感じてしまうものです。

「何かを上手にできなくても」
「良いことをしなくても」
「人より優れていなくても」
“ありのままの自分が無条件で愛されている“と感じられるようにしてあげたいですね。

まとめ

笑顔の男の子

「自己肯定感」という言葉だけが先走りしてしまい、実は「どんなもの」で「意識するとどんなメリットがあるのか」「何をしたらいいのか」よくわからない、なんて方もいたのではと思います。

自己肯定感が高いと、子どもにとっても親にとってもいいことだらけ。子どもだけでなく、親である自分自身のこともしっかり認め、ポジティブな雰囲気の中で子育てができるといいですね。

(文:mamaco/監修:渡邉 明子 先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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