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2022年09月23日 05:58 更新

なぜ「爪を噛む癖」はやめられない?心理的背景と家庭でできる対処法【心理カウンセラー解説】

子供が爪を噛む行為は、よく見られる癖の1つです。3歳くらいから始まり、小学生になると増えると考えられています。中には大人になっても爪噛みが治まらず、常に深爪状態の人も。子どもの場合だと、親が注意を繰り返しても、なかなか直らないことも少なくありません。爪噛みをしてしまう心理と対処法について心理カウンセラーが解説します。

爪を噛む癖が起こりやすい3つのシーン

まずは子どもが爪噛みをしやすい状況から見てみましょう。

1. 不安を感じたとき

家族や先生に強く叱られたり、お友だちとの生活の中で、自分の気持をうまく伝えられなかったり、とても恥ずかしいと感じたりした出来事がきっかけになることがあります。
「寂しいな」「怖いな」「辛いな」といった気持ちが生まれ、心がストレスを感じてしまったときに、安心感を得たくて爪を噛むと考えられています。

Lazy dummy

通園や通学、引っ越し、弟や妹の誕生など、環境の変化が影響することもあります。
(大岡)

2. 眠気を感じたとき

「もっと集中していたいのに、ふっと眠気がやってきた」……大人でもそういう瞬間がありますね。ぼーっとしてきたかと思えば、やりかけていたことに急に意識が戻ったり。そんなときに、つい口元に指がいってしまうことがあります。

3. 退屈さを感じているとき

場所や人に慣れてくると、時には刺激が足りず、意識を向ける対象が見つけられなくて退屈することがあります。そのもやもやした気持をすっきりさせたくて爪を噛むお子さんもいます。

Lazy dummy

活発なタイプで、よく動きたがるお子さんは特にそうなりやすいでしょう。習慣になってしまい、無意識に繰り返していることもあります。
(大岡)

どうして「子どもの癖」は直りにくい?

爪噛みのほかにも、お子さんが覚えてしまいやすい癖があります。
最も早い時期に見られる癖は指しゃぶりでしょう。3歳くらいからは、頻繁なまばたきや鼻をフンフンと鳴らす行為や咳払い、いわゆるチックがあります。無意識に自分の髪を抜く、自分自身や大人の身体の一部を触る行為も癖の1つです。

こういった癖はどうしてやめられないのでしょうか。

口唇部分の刺激で安心感を得られるから

指しゃぶりと爪噛みは、口唇の欲求と関係がある点で似ています。赤ちゃんや小さな子供は、空腹を満たしたいという欲求と同時に、お母さんの温もりや匂いに包まれて安心したいという欲求を持っていますが、それが満たされるときに重要な役割を担っているのが口唇部分なのです。

離乳してから何年も経っていても、ふとした瞬間や眠くなったときなどに、何の心配もなくおっぱいやミルクを飲みながら眠りに落ちた感覚や記憶は、深い安心とつながっています。

癖は「安心したい気持ち」のサイン

口唇に関係しない癖も、不安や寂しさを感じたとき、ストレスを受けたときなどに起こりやすいと考えられています。
自分の足で歩いて移動できるようになり、さらに家庭以外の場所での集団生活も経験していく中で、心身の栄養基地ともいえるお母さんとの距離は離れてしまいます。がんばってもうまくいかないこと、対人関係での辛いことなどはいくらでも起こります。安心させてほしい、甘えさせてほしいという気持ちが高まったときのサインとして受け止めてあげましょう。

「癖とイライラ」はセットで発生しがち

安心したい、甘えたいという気持ちは言い換えると「依存心」です。依存は、満たされないときに怒りに変わることがあり、寂しさや不安を感じると同時にイライラしている可能性もあります。

Lazy dummy

甘えとイライラはセットだと知っておくことは、癖が激しく出たり、癖と同時に攻撃的になるお子さんを理解する上で役立ちます。
(大岡)

爪を噛む癖にはどんなリスクがある?

爪噛みを注意しても、すぐに直せないことも多いですね。ちょっとしたきっかけで止まることもありますが、癖は無意識に続けてしまいがちです。もし直らない場合、どんなリスクにつながるのでしょうか。

体への影響|歯や爪の異常、感染症など

長期間にわたり爪噛みを続けていると、オープンバイトなど歯や歯茎の位置や形状に異常をきたしてしまう可能性が高まります。爪まわりの組織から感染症を引き起こし、場合によっては全身の病気につながることもあると考えられています。
爪の形がギザギザしたり、表面がデコボコになってしまうこともあります。深爪で極端に爪が短くなってしまい、なかなか本来の長さまで伸ばせなくなってしまうこともあるでしょう。

心への影響|自尊心の低下、劣等感など

思春期以降になっても爪噛みの癖が続くと、見た目が美しくないことや、指を口に持っていく行為が子供っぽく見られるといったことが影響して、自尊心が低くなり、劣等感や悩みが増えてしまうことも考えられます。
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関連記事:愛情不足の子供の3大特徴と将来のリスクとは?恋愛や人間関係で困る大人も【心理カウンセラー解説】

爪を噛む癖を直す方法は? 親ができる4つの対処法

このように、様々なリスクにつながる爪噛み。直すにはどんな方法があるのでしょうか。

① 状況や気持ちを理解する

癖を発見したときは、つい注意したり叱ったりしてしまいがちですね。でもこれは逆効果ですので、ぐっと我慢してください。衛生面の心配からみたら確かにダメだと言いたくなりますが、不安や緊張を感じてしまうこと自体はダメなことではありません。お子さんは区別ができないので、ダメを言われ続けると寂しさや怖れ、イライラがかえって増えてしまう可能性があります。

まず、噛み始める前に起きたことや状況を振り返りましょう。何となく退屈なだけなのか、何かストレスにつながる出来事があったかなどを確認します。爪噛みにつながった原因を解決することが、ひいては癖の改善につながります。
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関連記事:HSCは繊細な子供のこと?4つの特徴と23のチェックリスト【心理カウンセラー解説】

② スキンシップで癖に気付かせる

子どもが爪を噛み始めたら、そっと近付いて背中や頭を撫でたり、抱っこしたりして寄り添います。そして歯が指を傷付けてしまわないように注意しながら、指を口から離してあげましょう。唾液が気になれば拭き取り、指先や手全体を包み込むようにすると、お子さん自身が爪を噛んでいたことに気が付きます

③ 気持ちを受け止め、代弁する

「どうして爪を噛むの?」ときいても、不安やストレス、退屈などの気持ちは無意識の中にあって自覚するのは難しいので、自分で説明できるお子さんは少ないです。誰それが何をして、自分が何をしたらどうなったなどと、事実関係を説明できるようであれば、よく聞いて受け止め、「悲しくなっちゃったのかな?」「嫌だったんだね」などと気持ちを言葉にしてあげることはとても効果的です。

④ 遊びを取り入れる

ただ手持ち無沙汰で、眠いときなどに噛みやすいのであれば、遊びを取り入れてみましょう。絵本の読み聞かせは、知識を増やし考えたり感じたりする力も伸ばしてくれます。爪噛みをテーマにした絵本であれば、なぜいけないのかをスムーズに理解させることができ、一石二鳥です。

柔らかいボールを掴んだり投げたりする行為や、お互いに指を一緒に動かす手遊びもおすすめです。手や指がどれだけ私たちのために働いてくれているのかを知り、楽しい遊びに意識を向けさせることで効果が期待できます。

まとめ

子供の爪噛みはよく見られる癖で、自然に治ることもあり、珍しいものではありません。でも、長い人生を生きていく上での基盤となる安定した発達という視点で見た場合、今、少し丁寧に寄り添ってあげると将来のための安心貯金になりますよと教えてくれるサインかもしれません。焦らずに向き合ってみてくださいね。

(文:うららか相談室 大岡みほ/構成:マイナビ子育て編集部)

参考文献
小此木啓吾, 精神分析セミナーⅤ発達とライフサイクルの観点, 岩崎学術出版社, 1985
Przemystaw Pacan et al, ””Onychophagia is Associated with Impairment of Quality of Life””, ActaDV, Acta dermato-venereologica,

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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