「ママ、パソコンばかり」と息子に言われたことも…。4人を育児中の村田夫妻、妻が起業も副業もできた理由 #共働き夫婦のセブンルール
世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。
育児と仕事との両立は、子どもの人数や状況にかかわらず大変なものだ。
とはいえ、3男1女の育児中に、夫婦共働きの女性が税理士として起業し、アルバム・アドバイザーの副業までこなしていると聞けば、やはり「すごい!」と感心してしまう。
村田さん夫婦は祐輔さんが29歳、麻美さんが23歳のときに勤め先の飲食店で出会う。その店を退職後、数年ぶりに再会してから交際が始まり、結婚。翌年に長男を妊娠・出産してから、3年おきに4人を出産した。子どもたちは現在、11歳、9歳、6歳、3歳になる。
結婚当初、麻美さんは税理士事務所に勤めていたが、長男出産を機に副業としてアルバム・アドバイザーとしての活動を開始。次男を出産してから8ヶ月後に独立して、税理士事務所を設立。2018年にはコンサルティング会社も設立している。
尊敬を通り越して、「一体、どうやって……?」と、もはや異世界のような気もしてくるが、当の麻美さんはいたって穏やかで、あくせくしているようには見えない。小学生2人と園児2人を抱えるワーママとは思えない落ち着きぶりに、どうやって今の状況を作ってきたのか、村田さん夫婦に俄然興味が沸いてきた。
7ルール-1 貯金はパパ、家計はママ、投資は2人でそれぞれ楽しむ
麻美さんは税理士だが、貯金するのは苦手だそうだ。「税理士の仕事と貯金は別ものです(笑)」と麻美さん。
祐輔さんも「お金のことは妻のほうが得意だろう」と信じて、給料をすべて渡して任せていたそう。だが、10年経っても、お金はまったく貯まっていなかった。麻美さんは、赤字にこそすることはないが、あれば使ってしまうタイプなのだ。「相手はこういう人だから、きっとこうだろう」と決めつけて分担するとうまくいかないことの好例だろう。
「2、3年前にこれじゃだめだと気づいて、僕が貯金担当になりました。といっても、勤め先に給料を天引きしてもらい、僕が負担する分の生活費を妻に渡す形にしたんです」(祐輔さん)
麻美さんも生活費の一部を負担し、その中で日常の支出をやりくりする。家計担当は麻美さんだ。
ただ、投資はお互いがそれぞれに楽しんでいるという。NISAやiDeCo、投資信託や金など、麻美さんが先に始め、祐輔さんもそれに続いた。
「お互いにいくら投資しているかも知らないですが、『今、売りどきなんじゃない?』というような情報交換はしています。大損していなければお互いに自己責任ということでいいかな、という感じですね」(麻美さん)
祐輔さんも「多少は失敗しても、勉強代だと思っています」と同意見。
投資している家庭は少なくないが、夫婦それぞれで楽しんでいるというのは、お互いに自立しているということの現れかもしれない。
7ルール-2 家事を「やってあげる」ではなく主体的に行う
家事をするのは家族の一員として当然だから、「お手伝い」ではなく、主体的にする。たとえばゴミを捨てに行くだけでなく、家のゴミ箱すべてを整理して、ゴミをまとめてから捨てに行くなど、全体の流れを考えて行動する。
家事分担の話では頻出のテーマだ。「うちの夫、ゴミ捨てに行くだけなんだから」なんて言っている女性も多い。
村田さん夫婦の場合は、麻美さんが「ゴミ捨てに行くだけ」になりがちな側だ。
「今はほとんどの家事を夫が夜、帰ってからしているのですが、たまに私が自分で家事をすると、全体を見ないでやるので夫に怒られます(笑)」(麻美さん)
たとえば、気を利かせたつもりで洗濯機をまわしておいたとき、帰ってきた祐輔さんに「順番を考えてまわさないと、夜のうちにぜんぶ洗濯しきれないでしょ」と言われてしまったそう。
祐輔さんは深夜に帰宅してから食器洗いや洗濯、簡単な掃除をしてから就寝する。コロナ禍で勤め先の飲食店がお休みになった時期は夕食も祐輔さんが作っていたが、「あまりになにもしないでいると家事ができなくなりそう」と感じ、麻美さんも料理をするようになったという。
結婚当初は麻美さんが家事をしていたが、長男の育休が終わって仕事復帰したとたんに回らなくなった。
「夫が朝、子どもを保育園に送ってくれるようになったのですが、『私は前の日から早く寝かせたり、洗濯したり、持ち物の準備をしたりしているんだよ!』と言ったら、一回で理解してくれて。その日から、前日の保育園の準備をしてくれるようになりました」(麻美さん)
すばらしい。冒頭で一体どうやって4人の育児と仕事を両立しているのかと書いたが、早くも答えが出た。夫婦ともに、お互いの状況を理解して、補完し合うことができているのだ。
麻美さんも夕方の園のお迎えから夕食作り、子どもたちの寝かしつけを担当しているのだから、決してラクではない。むしろ、4人の子どもの相手をするほうがずっと大変なはずだ。週末も祐輔さんの休みは日曜だけなので、土曜は麻美さんが1日かけて子どもたちそれぞれの習い事の送迎をする。
大変でも、お互いに全力で努力していることがわかっているから、不平不満にはつながらない。
「勉強になります」と称賛したら、「いや、お互いに文句も言ったり、言いたいことを言ったりしながら、少しずつ調整してきただけですよ」と祐輔さん。仕事後の深夜に家事をすべて担うなんて、当たり前にはできないことだが、4人もの育児をしているパパだからこそ、いい意味で肩の力が抜けていると感じた。
7ルール-3 会話を常にするように心掛ける
仕事と同様、夫婦の間でもチームでうまくタスクを回すためには情報共有や現状確認が欠かせない。
村田さん夫婦は、帰宅が遅い祐輔さんの仕事の関係で夫婦一緒にいる時間が少ないため、たまに祐輔さんが早めに帰宅したときなど、機会があればできる限り会話をしてコミュニケーションをとるようにしているという。
「朝は朝食を夫が作り、私が子どもたちの支度をしているのですが、その朝の短い時間が貴重な会話の時間です」(麻美さん)
最近は、子どもたちの行事のスケジュール管理に一苦労。きょうだいで運動会などの予定が被るときは夫婦で手分けして見に行くため、情報共有は不可欠だ。麻美さんが学校からのお便りなどで把握し、祐輔さんに伝えているが、あまり早めに言い過ぎても祐輔さんが覚えていられなくなるそう。
「お便りで予定を確認したときに夫に伝えても、『言った』『言っていない』の不毛なやり取りになるので、だいたい1週間前に伝えるようにしています」(麻美さん)
祐輔さんは決まった家事は淡々とこなすが、仕事が忙しくなると頭が回らなくなりがち。それを責めるのではなく、相手に合った方法を見つけるのが村田家流だ。
「お互いがいっぱいいっぱいなので、欠点を言ってもしかたない。徐々に合わせていけばいいかな、と思っています」(麻美さん)
祐輔さんもうなずく。
「子どもも、1回言っただけではできないですよね。繰り返し言ってようやくできるようになる。夫婦も同じで、言いたいことは言うけど、1回でできなかったからといって文句は言わないし、お互いにフォローする方法を考えます」(祐輔さん)
大人だからといってなんでもできるわけではない。村田夫婦のような柔軟性は、共働き夫婦が家事・育児と仕事を両立するためには不可欠なのだ。
7ルール-4 写真はエピソードや感想とともに共有する
麻美さんは実母が早くに亡くなったため、自分の幼少期のアルバムがほとんどないという。さらに、長男が生まれたときには東日本大震災もあり、「自分に何かあったときに、子どもに何も残せなかったらかわいそう」と感じたそう。
そこで、アルバム作りを学び、家族のアルバムを10年ほど手作りで作り続けている。
すべての写真にエピソードやコメントを入れて残すことで、何があったか詳しく振り返ることができる。
「子どもたちが寝た後に夜な夜な作業して、年間5冊くらい作っていますね。アルバム・アドバイザーとしても活動するようになり、一緒に作る仲間がいるから続けられています」(麻美さん)
祐輔さんはそんな麻美さんを見て、「最初は『忙しいのに、今やらないといけないの?』とも思ったのですが、大変と言いながら気が休まる部分もあるのかな、と思って任せています」と言う。
麻美さんも「特にスマホで撮った写真は、自分が子どもを『かわいい!』と思った瞬間に撮っていることが多いので癒されます」と笑顔だ。
祐輔さんが子どもたちを連れて出かけたときの写真には、コメントも祐輔さんに書いてもらうそう。
「たとえば、近くの公園でクローバーを探したときの写真を見返したときに、『何で探したんだっけ?』と、写真を撮った背景を忘れることもあって。アルバムにしてコメントを付けておくと、あとになってもエピソードとともに残しておけるのでいいですよ」と麻美さん。
旅行中の写真などを子どもたちと一緒に見返すのも楽しいそうだ。
7ルール-5 健康的な食事を心掛ける
多忙な村田家では、基本的には無理をしない。だが、将来に繋がることは別だ。特に、心掛けているのが健康的な食事。
「野菜を取り入れたり、添加物を避けたりして、おいしくて健康に良い食事を心掛けています」(祐輔さん)
手の込んだものを作るのではなく、サラダはドレッシングではなく塩とごま油で食べるなど、シンプルで素材の味を楽しめるものを用意する。
「野菜はなるべくオーガニックで、肉は国産。調味料もいいものを選びます。外食よりは安いからいいかな、と」(祐輔さん)
子どもたちも、お菓子やケーキには興味がないようで、おやつには焼き芋やトマトを食べることが多いそう。
麻美さんは「食材を切るのが嫌」と時短できるミールキットも使うが、味付けは自分ですることが多いそう。
「お惣菜は買うなら唐揚げや餃子などのメインで、野菜のおかずはだいたい作っています。いろいろな調味料を常備しているので、野菜を手でちぎって、その日の気分でサッとあえて出すことが多いですね」(麻美さん)
7ルール-6 【夫】自転車通勤でリフレッシュ
祐輔さんは勤め先の飲食店まで、片道50分ほどの距離を自転車通勤している。
「体を動かす時間がなかなか取れないので、マウンテンバイクを買って自転車通勤することにしました。最初はしんどいな、と思うこともありましたが、自転車を乗るようになってから調子が良くなりました」(祐輔さん)
気ままに自転車を漕ぐ時間は、満員電車に乗って移動するよりずっといい。
「自転車を漕いでいるときは、何も考えていないことが多いですね。それがリフレッシュになるみたいです。帰りに買い出しに行くこともあって、寄り道しやすいのもいいですね」(祐輔さん)
深夜に帰宅してから家事の大部分を担い、朝食作りもするという祐輔さんの睡眠時間は短い。それでも元気に仕事と家事を担えているのは、自転車通勤でしっかり自分だけの時間を確保し、ひたすらペダルを漕ぐという「無になる時間」で気分をリフレッシュできているからだろう。もちろん、4児のパパとして安全運転もしっかり心掛けて!
7ルール-7 【妻】 家でアルバム・アドバイザー以外の仕事はしない
麻美さんは朝9時過ぎに出勤し、18時半に保育園に迎えに行く日々。もう少し仕事がしたいと思う日もあるが、自宅には税理士の仕事は持ち帰らないと決めている。
「長男が2、3歳のころ、『ママ、パソコンばっかり見てこっち見てくれない!』と言ったんです。ハッとしましたね。仕事が好きなので、仕事をし始めちゃうと家でも止まらないくらい集中してしまうんです。これはよくないと思い、自宅ではしないと決めました」(麻美さん)
それからは、仕事の予定の組み方を最大の8割に留める、常に余裕をもった状態にするなど、日中の仕事の仕方も変えたという。「仕事の効率はよくなりましたね。時間内で終わらせることがうまくなりました」と麻美さん。
起業したことで子どもの行事などでは休みやすくなったが、何かあったときに代わってくれる同僚もいないため、責任感は増したという。
「事務所の立ち上げのときは、次男が0歳だったので大変でした。子どもが4人もいると実家に頼るのは迷惑になってしまうので、区のファミリーサポートを利用しました。私が打ち合わせで外に出るときなど、週に3~4回はその方のお宅に子どもを預けていましたね」(麻美さん)
ファミリーサポートは使ってみたくてもなかなか行動に移せなかった、という人もいる。村田家の場合、事前にお願いする人に会って決めたので安心感があったそうだ。
「幼稚園の先生だった方で、子どもたちの扱いに慣れていたし、娘さんも子ども好きだったので子どもたちと遊んでくれて。帰るときには『さびしい~』と言ってくれるくらい、子どもたちもなついていました」(麻美さん)
唯一、アルバム・アドバイザーの仕事は心に余裕を持ってできるので、家でもやっていいことにしているそう。メリハリをつけることで、子どもたちにも後ろめたい思いをせずに仕事に打ち込めるようになった。
彼らの7ルールを一言で言うと……?
麻美さんのママ友たちは、「村田家はママが2人いるもんね」と言うそう。
確かに、家事は主体的にするし、休みの日は子どもたちと積極的に遊ぶから、子どもたちもパパが大好き。「ママが2人」というスーパーな環境だからこそ、麻美さんは4人を育てながら起業や副業ができているのだろう。
そんな村田夫婦のモットーは、「ストレスを溜めないこと」。そのために、言いたいことは我慢せずに言い、できないことは無理してやらない、お互いに完璧を求めないといった暗黙のルールもできている。
「正解」に飛びつくのではなく、家族でああだ、こうだ言いながら、徐々にその方向に向かっていけばいい。そんな柔軟性があるから、ギスギスしないでうまくいく。
「夫婦の間だけじゃなく、子どもにもひとりの人として向き合い、話をするようにしています。それでもだめなときは、お酒を飲みますね(笑)。寝たら忘れるタイプなので」と麻美さん。
ちなみに我が家は3人育児中なので、さらに上をいく4人育児と聞いたときには率直に「大変そう!」と思った。だが、気負わず、無理せず、楽しく日々を過ごす村田夫婦を見ていると、「人間、まだまだ、やればできるものなのだな」と妙に納得してしまった。
(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)