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2022年12月21日 14:31 更新

便利なWebサービスを駆使してケンカ激減! 夜は互いの趣味時間に充ててリフレッシュ 田辺夫妻の場合 #共働き夫婦のセブンルール

世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。

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【左】田辺俊二さん(仮名/38歳/IT/経営) 【右】田辺麗奈さん(仮名/35歳/IT/エンジニア)

麗奈さん22歳、俊二さん25歳のときに、新卒で入社した会社の同期として出会ったふたり。エンジニア同士ということでお互いの仕事への理解があり、当時から尊重しあえる関係だったという。

4年付き合ったあとに結婚し、同時に俊二さんが独立して仲間と起業。3年後に長女、さらに2年後に次女を授かった。現在は、子どもたちを保育園に通わせながら、麗奈さんが時短勤務をし、夫婦でそれぞれ協力しながら家庭を回している。

事前のアンケートで興味深かったのは、エンジニア夫婦らしく、育児中に不足しがちな夫婦間のコミュニケーションをさまざまなWebサービスで補完しているということ。取材中のにこやかなふたりの様子を見ると、そのコミュニケーションはうまくいっているようだ。これはぜひ聞いてみたいと、Webサービスやお金、家事分担に関する夫婦の7ルールを伺った。

7ルール-1 家事・育児はゆるい担当制

朝は家族全員ほぼ同時に起きるという田辺家。そこから2人の子どもたちを登園させるまでが、1日の最初の夫婦共同タスクだ。

「妻が朝食を準備して、僕がその間に子どもを着替えさせ、朝食が済んだら僕が保育園に連れていきます。妻はその間に掃除をしてくれています」(俊二さん)

そして1日の仕事をこなし、夕方になると時短勤務中の麗奈さんが17時に子どもたちのお迎え。公園に寄り道しながら帰宅し、夕食の準備をスタートする。

「今は夫もリモートワークがメイン。夫は子どもたちが帰ってきたらいったん仕事を中断し、遊び担当をします。ここからは子どもが寝る時間まで、タイムアタックですね。私は子どもたちをお風呂に入れて、上がったら夕食作りの仕上げ。夫が子どもに食べさせている間に私は髪を乾かして、ササっと食べたら洗い物。夫が部屋を片付けて、21時ごろに家族全員で寝室に行き、私が下の子、夫が上の子の寝かしつけをします。そのあと、夫は自室で仕事に戻ることもあります」(麗奈さん)

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食事作りは出産前から麗奈さんが担っている。ただし麗奈さんが料理をしている間は俊二さんが子どもたちの身支度をするなど、無駄のない協力体制が不可欠だ

育児中の共働き家庭において、朝と夕方はどこもバタバタだが、田辺夫婦はお互いの守備領域をある程度決めることで回している。

お互いに忙しいときは、「まずは支度をしよう、片付けはあと!」など即時に優先順位を共有し、担当範囲を超えて対応することでトラブルを減らしているという。この「即時の優先順位の共有」と解決がなかなか難しいものなのだが……。

「いや、うちもこまめに喧嘩しながら、今の状態にたどり着いた感じですよ(笑)」と俊二さん。

つい最近も、俊二さんが子どもたちを遊ばせている時間に、姉妹が平和に遊んでいたのでスマホを見ていると、「スマホ見てるなら洗濯機のホース片付けてよ」と麗奈さんに言われ、すごすごと従ったという。「仕事の連絡でスマホを見ていたのですが、まあ急ぎではなかったので……」と俊二さん。

「私のほうが、すぐイライラしてしまうかもしれません(笑)。自分のメンタルヘルスにかかわるので、思ったことがあればすぐ言います」(麗奈さん)

一方で、

「僕のほうが細かいことを言えずにため込んでしまって、モヤモヤするタイプですね」(俊二さん)

そんなモヤモヤをためないためにも、俊二さんが提案したのが冒頭のWebサービスの活用だ。

7ルール-2 Webサービスを活用する

育児中の夫婦のもめごとの多くは、「言った」「聞いてない」、あるいは「言ってくれなきゃわからない」という意思疎通の齟齬による。

同じく育児中の我が家でも、何度このやり取りをしたことか。しまいには「言った」といわれても「へぇ、私は全然聞いてなかった!」と開き直る、まったく建設的でないやり取りをしている。

田辺家では、こうした不毛なやり取りを解消するため、予定やタスクはカレンダーアプリの「TimeTree」で共有。夫婦それぞれの予定、子どもの予定、家族全員での予定をそれぞれ色分けして管理している。

「メモ機能も使って調味料などの買い物リストを作り、次に買い出しに行ったほうがそれを見て買ってきます。家族でよく行くケーキ屋さんの休業日や、次の休みにやりたいこと、『iDeCoを始める』など検討したいと思ったことも記入して共有しています」(麗奈さん)

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TimeTreeで共有している買い物リスト。購入済みの品物にはチェックを入れて、完了させる。調味料が切れて、夫婦で「帰りにあれ買ってきてって言ったのに」「切れてから言わないでよ」というよくある不毛なやり取りを解消してくれる、便利なツールだ

出産準備リストや家族の旅行計画は、主に麗奈さんがGoogleのスプレッドシートで作成。保活の進捗状況の共有にもスプレッドシートを活用したという。

「子どもの写真はGooglePhotoや自宅のNAS(ナス ※)で共有し、家計は家計簿アプリの『マネーフォワード』。共有のログイン情報はパスワード管理サービスの『1Password』で管理しています」(俊二さん)

※USB接続のハードディスクではなく、LANに接続して使用するネットワークハードディスク。複数のパソコンから同時に接続が可能

さすがエンジニア夫婦、使いこなしている。

「できるだけラクをしたいから、僕から提案することが多いですね。Webサービスを使うことで、時間がないときも夫婦のコミュニケーションを補完できるので、モヤモヤやもめごとは減っていると思います」(俊二さん)

7ルール-3 お互いの時間を大切に

Webサービスを活用して夫婦のコミュニケーションが取れていると、もめごとが減るだけでなく、もうひとつ、いいことがあるという。

それは、空いた時間を夫婦の意見のすり合わせや確認に費やさなくていい分、夫婦それぞれに自由時間が持てることだ。

「夫は仕事がなければゲーム、私は録画したドラマを観たりしていますね。仕事のことも育児のことも考えなくていい自由時間は、私にとってすごく大切です」(麗奈さん)

ちなみに田辺家ではいつも、2歳差の姉妹を寝かしつけることに苦労しているという。

「たっぷり睡眠時間をとらせたいから21時には家族そろって寝室に行き、私が下の子を、夫が上の子を寝かしつけるのですが、寝かしつけがいつも22時半ごろまでかかってしまうんですよね……」と麗奈さん。

暗闇で寝たふりをしながら、子どもたちが寝つくのをひたすら待ち続ける1時間半。俊二さんが仕事に出て遅くなり、ひとりで寝かしつけする日は「地獄ですね……」と疲れを見せる。

だからこそ、子どもたちが寝ついたあとの自由時間が必要なのだ。そんな貴重な時間を、夫婦の「言った」「言わない」に費やす必要がないことは、麗奈さんにとって大きな救いになっている。

「ふたりで一緒に映画を観たりすることもありますが、無理に夫婦の時間を作ろうとはせず、基本的にはそれぞれの自由時間を大切にしています」と麗奈さん。

日頃からコミュニケーションが取れているからこそ、安心してひとりの時間を満喫できるのだろう。

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お互いの自由時間を尊重しつつ、信頼関係が取れている田辺夫婦。Webサービスを駆使した密なコミュニケーションの賜物だ

7ルール-4 お金はリソース

日々の細かい対話だけでなく、家庭の価値観や方向性も共有することができている。

たとえば、お金のこと。

「貯めることが目的じゃなくて、お金はリソースであり、いい人生を送ることが目的という価値観を事前に共有しています。だから時間を増やすための家電や、子どもたちの経験のための習いごとにはお金を使うようにしています」(俊二さん)

普段の節約はしつつ、子どもたちの笑顔のために、クルマで行ける範囲の家族旅行も楽しむ。先日は初めてのグランピングに行き、バーベキューやアスレチックを楽しんだという。

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グランピングを楽しんだときの写真。子どもたちは大喜びで、保育園でもしばらく先生や友だちにキャンプの話をしていたという

「私はアウトドアが苦手なのですが、子どもたちの体験のために行きました(笑)。やってみたら楽しかったですし、子どもたちは喜んでいたのでよかったです。近隣のテーマパークに行くときにも、たっぷり遊べるように無理しないで前泊したりしています」(麗奈さん)

基本的な価値観が共有できているから、一つひとつのお金の使い方でもめることはなく、旅行も思い切り楽しめる。夫婦間の日常のストレスを減らすためにも、とても大切なことだろう。

7ルール-5 寝る前にかならず子どもたちに本を読む

節約という点でいえば、田辺夫婦は、絵本は図書館で借りる派だ。

田辺家では、寝る前にはかならず子どもたちに絵本を読むと決めている。

「忙しい生活のなかでも、せめて親子で絵本を読む時間を取るようにしたいことと、子どもたちが寝る前に穏やかな気持ちにするため、ということが理由です。現実は絵本を読んでもなかなか寝てくれないのですが、子どもたちが楽しみになっているようで、2人とも絵本好きに育ちました」(麗奈さん)

毎晩、姉妹それぞれが選んだ2冊を読み聞かせる。というとほほえましいが、単純計算で1週間に14冊、1ヶ月に60冊の絵本が必要になる。

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「お気に入りの絵本を見せて」とお願いしたところ、持ってきてくれたのは大人気の『バムケロ』シリーズ(文溪堂)。ほぼ毎週、図書館に通って新旧の絵本を借りているそう

「繰り返し読む本もあるので、私がひとりで図書館に行き、1週間に10冊ずつ借りています。気になったものや評判の絵本は予約して、あとは私の好みですね」(麗奈さん)

修行のように毎週通うのは大変なのでは、と思ったら、「保育園のすぐ近くに図書館があるから、お迎えの前に行けるんです。ひとりで図書館に行く時間も、リラックスできて気分転換になるんですよ」と麗奈さん。

絵本は夫婦どちらも読み聞かせるが、「子どもたちには、ママに読んでほしいと言われることが多いですね(苦笑)」と、俊二さんがちょっと寂しそうに教えてくれた。

7ルール-6 【夫】遅く帰ってきたら必ずお礼を言う

俊二さんは現在、リモートワークが中心で、週1~2日程度出社。帰宅は遅ければ23時過ぎになることもある。

遅く帰った日は必ず、麗奈さんに「今日はありがとう」と、夕方からのひとりでの家事・育児負担をねぎらうそうだ。

「帰宅したときに妻がまだ起きていたら、『ただいま』とともにお礼をして、『今日はどのくらい大変だったか』のエピソードを聞くようにしています。もし寝ていたら、翌朝に言いますね」(俊二さん)

自分のほうが仕事をしている時間は多いものの、「それは妻に時短を選択してもらい、家事・育児をしてもらっているからできていることだと忘れないようにしています」と俊二さん。

事前にお互い了解をとっていることもあり、遅く帰った日に家事・育児で特別なフォローをすることはないそうだ。「あっても、洗濯物をたたんでしまうなど、普段は分担しているその日の残りの家事を『あとは僕が』とひとりでする程度です」と俊二さん。

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特に麗奈さんに負担が偏っていると感じたときには、ケーキを買って帰ることもあるという俊二さん

麗奈さんは自身が時短勤務をすることに対して、「自分の中で子どものウェイトが高く、特に自分を犠牲にしているとは思っていないんです。それに、夫の仕事内容を尊重してこれがベストだと思って時短勤務をしているので、納得しています」と話す。

夫婦でベストな形を選んでいても、日々の忙しさに追われ、お互いに「なんで自分ばっかり」と感じてしまうのはよくあることだ。田辺夫婦は、“感謝の気持ち”という大切なことをきちんと言葉にすることで、そうした行き違いを回避している。

7ルール-7 【妻】 イベントは全力でする

田辺家が特に盛り上がるのは、ハロウィンやクリスマス、誕生日などのイベント時だ。

「家を飾ったり子どもたちにドレスアップをさせたり、全力で楽しむことにしています。子どもたちに、『小さいころ、こういう楽しいことがあったな』という思い出を作ってもらいたいから」(麗奈さん)

もともとイベントごとが好きだったが、子どもが生まれたことをきっかけに、より力を入れるようになったという。

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イベントの準備は主に親の役目で、子どもたちにはサプライズで進めることも。ただし、とっておきの衣装は子どもたちも一緒に決めるそう
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姉妹おそろいのドレスを着てポーズ! 小さいころから続けているから、ふたりともモデルになることにすっかり慣れて楽しんでいる

何をするかの相談や確認は俊二さんにも必ずして、飾り付けなどの細かい作業は夫婦協同でする。イベントが平日だろうと、当然のように俊二さんも仕事を調整して家族全員で楽しむ。

「当日は写真をたくさん撮って、その写真をテレビにスライドショーで映してよく子どもたちと『楽しかったね』と見返しています。子どもたちもイベントの日のことを思い出してごっこ遊びをしたり、『またやりたい!』と言ったりして、喜んでくれていますね」(麗奈さん)

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ときにはプロに頼んで撮影し、ときにはイベントでなりきって。左下の写真のお姉ちゃんのラプンツェルの髪型から、麗奈さんの力の入れっぷりが伺える

この話を聞いていて、田辺家はイベントも寝かしつけも、家族全員でしていて本当に仲が良いな、と思った。子どもたちは家族で楽しんだイベントのことを、きっと忘れないことだろう。

彼らの7ルールを一言で言うと……?

田辺夫婦の話で印象的だったのは、忙しいなかでも「夫婦のコミュニケーションは十分取れています」と声をそろえて言っていたことだ。

育児中の共働き夫婦で、どのくらいの人が自信を持ってこう言えるだろう。

とはいえ、始めからそうだったわけではない。

「子どもが生まれてからは日々を乗り切るのが大変で、よくケンカをしました。妻がこまめに不満を挙げてくれるので、僕も『それならこっちもこう思っているんだけど』と建設的なケンカができていた気がします」と俊二さん。

麗奈さんは、「思い返せば、このころのケンカは大体『大事にする・しない』や『優先度が高い・低い』など、お互いの価値観が合わないことが問題で、その都度『じゃあ今後はどうすればいいか』とすり合わせ、ルールができていったように思います」と振り返る。

2人のケンカは、価値観を合わせるために必要な作業だった。そして、価値観をルールにまとめることができた現在は、「かなりケンカも少なくなり、スムーズに日々を回せるようになっています」と麗奈さん。

価値観を合わせたうえで、日々の感謝の気持ちはきちんと言葉にし、Webサービスでもコミュニケーションをとることによって、楽しく充実した家族の日々を送っている。

“人は子どもを持って初めて「親」として成長する”、とはよく言うが、共働き夫婦も家事・育児と仕事の両立をして初めて、夫婦や親として成長する。ケンカもWebサービスも、田辺夫婦にとって欠かせないコミュニケーションだったのだな、と感じた。

(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)

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