一児の父 玉木宏さん「子どもが夢中になって観てくれた」、『シナぷしゅ THE MOVIE』に込めた思い
民放初の赤ちゃん向け番組『シナぷしゅ』(テレビ東京系/月曜~金曜あさ7:30~8:00)が、なんと映画化! 今回初登場する映画オリジナルキャラクターの声優に抜擢されたのは、一児の父でもある玉木宏さんでした。知られざる玉木さんの育児、そしてキャラクターに込めた思いについてお話を伺いました。
プロデューサーに「参加したい」と逆オファー!?
ーー現在、父親としての顔も持つ玉木さんですが、最近、お子さまの成長を見て心が動いた瞬間はありますか?
玉木宏さん(以下、玉木) 今はイヤイヤ期を過ぎて自我がすごく強い時期なんです。今までは洋服を着替える際に僕が着替えさせていましたが、最近は「自分でやる!」と言って、時間はかかるけれど自分で服を脱ぎ着できるようになりました。言葉も理解しているので、服が後ろ前逆になっていたときに「逆だよ」と伝えると、ちゃんとがんばって着替え直すんです。着替え直そうとがんばったけど背中部分の洋服が丸まってしまったときは「パパやって」と伝えてくれて。ちゃんとヘルプを出すこともできるようになり、成長を感じています。
ーーつい親が手を出してしまいがちですが、成長過程の子どもの自我に寄り添うことは大切ですよね。育児をするようになり、気をつけるようになったことはありますか?
玉木 親になる前に意識していなかったのは、「できなくて当然」ということです。子どもには”初めて”がたくさんあり、その目線になると、「できなくて当然」「時間がかかって当然」なんです。それを目の当たりにしたとき、自分自身が心にゆとりを持っていないとイライラしてしまうので、時間に余裕を持っておかないと危険だな、と注意しています。でも、朝はどうしてもバタバタしてしまうんです。「余裕を持って行動しているはずなのに、こんなに時間がかかってしまうのか……」ということは多々あります。
ーーそんな玉木さんが、『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』にタオルの妖精役「にゅう」の声優としてご出演する、ということは玉木さん自身もサプライズだったと思いますが、何かきっかけがあったんでしょうか。
玉木 『シナぷしゅ』統括プロデューサーの飯田佳奈子さんと手紙のやり取りをさせていただく機会がありまして、「できれば声だけでも参加させてもらえるとうれしい」ということを伝えたら、形にしていただけたんです。オファーをいただいたときは、願っていたことだったので「うれしい」の一言でした。
ーー玉木さんからの逆オファー!?
玉木 はい(笑)。僕も親になり、「子どもが好きな番組に参加したい」という気持ちが出てきたときだったので、その思いを言葉にして伝えたら形にしていただけました。
ーーお手紙のやり取りということは、もともと『シナぷしゅ』がお好きだったという気持ちが届く機会があったのですね。
玉木 とあるインタビュー記事で「『シナぷしゅ』が好き」と話したら、『シナぷしゅ』のスタッフの方が読んでいたようでグッズを送っていただいたんです。そのお礼状に先ほどの言葉を添え、今回に至ります。
セリフはほぼ「にゅう」! ニュアンスを大切に
ーーそれが見事に実現したんですね、ご出演について、周りのかたはどんな反応でしたか?
玉木 「いいなぁ」という反応で。みんな『シナぷしゅ』を観ている同世代の父親で、うらやましく思ってくれて鼻高々でした(笑)。
ーーもともと『シナぷしゅ』がお好きだったとのことですが、どんなところに魅力を感じていましたか?
玉木 いろいろなコーナーがあり、「この番組はこう」という固執がないんです。だからこそ、子どもの成長ごとにコーナーの反応に変化があったり、どの年齢でも多様な楽しみ方があったりするところが魅力的です。
また、色味がニュアンスカラーで目に優しく、心地よい音楽を使っていますし、スタッフの方々の愛情がたっぷり注がれた番組なのだと感じます。そんな番組を観て、自分の子どもが夢中になっている姿がかわいらしくて。大人も一緒になって楽しめますし、いい時間だなと思います。
ーー今回の役どころは、『シナぷしゅ』の主人公である「ぷしゅぷしゅ」のそばに寄り添う、映画オリジナルキャラクター、タオルの妖精「にゅう」です。台本を読まれたとき、どう思いましたか?
玉木 まず、『シナぷしゅ』が映画になること自体にびっくりして。「どうやって話が繋がって、どう終わっていくんだろう?」と思っていたのですが、台本を読んで「なるほどな」と。その後、映像をもらい、「そういうことか」という納得感がありました。
ーーセリフがほぼ「にゅう」で構成されていますが、演じる際にどんなことを意識しましたか?
玉木 「にゅう」という言葉だけでいろんなニュアンスを表現しなければなりませんでした。優しい気持ちの「にゅう」、何かを発見したときの「にゅう」など、「こんなにいろんなパータンの”にゅう”があるのか」と新鮮で。演じる上でいちばん大事にしていたのは、ぷしゅぷしゅに寄り添うような、友だちのような気持ちでいることでした。僕自身も、演じながら優しい気持ちになれたと思います。
ーー監督から玉木さんにリクエストはありましたか?
玉木 「にゅう」のニュアンスを自分で予習しようと思っても、正解がまったくわからなくて(笑)。周りの人に聞いてもらっても「どうなんだろう?」という感じだったので、実際現場に入って声を出してみて、監督の思うところを探りながらやっていきました。その過程で、「もうちょっと、寄り添うようなニュアンスで」など求められたりしました。すごくていねいに、少しずつ仕上げていった記憶があります。
ーー愛情を意識された?
玉木 作り手の愛情、そしてそれを見てくれる子どもたちへの愛情も意識しました。そういうものはきっと伝わっていくと思うので、優しい気持ちで声入れをしていました。
メインキャラクターの声優は6歳、その表現力に感嘆
ーー好きなニュアンスの「にゅう」は?
玉木 ぷしゅぷしゅが落ち込んでいるときに、慰めるような優しい気持ちで、小さめに「にゅうにゅう」と言っているのがかわいらしいと思いました。
ーーそれが、今作のポイントでもある「赤ちゃんが安心するやさしい音質」ということですね。
玉木 僕の声質が「赤ちゃんが安心するやさしい音質」かはわかりませんが、そうであればいいなぁと思いました。そもそも、「にゅう」の話をいただいたときに、「自分の声では低すぎるのでは」と思いましたが、出演をOKしてもらえた段階で「そんなことは考えなくていいかな」と思えました。
ーー今回のアフレコを通して、新たに発見したことや気づいたことはありますか?
玉木 ぷしゅぷしゅの声優の岩本彩楓(いわもといろは)ちゃんは、すごく上手だなと思いました。擬音だけであんなに表現できるなんて。感覚が素晴らしいです。僕はどうしても頭でっかちになってしまいますが、感覚的にやることの大切さを実感しました。声が通って届きやすいこともすごいなぁと思います。
ーー今作で、今後の活動に繋がる手応えを感じましたか?
玉木 今回は今回で、すべて出したつもりですが、この経験により0が1になったので、次にこういった機会があればもうちょっとできるのではないかと思っています。
ーー今作で好きなシーンはありますか?
玉木 どのシーンも手が込んでいますが、「なくなったほっぺを探しにいく」というワンテーマで次のコーナーへと話が繋がっていくという構成がおもしろいですね。計算された、考えられたものだなと思います。個人的には、とにかくこの世界観に参加できることがうれしくて、その先の「子どもが見たらどう思うだろう」を想像しながらできる時間が幸せでした。
ーー玉木さんのお子さまはもうご覧になりましたか?
玉木 一足お先にでき上がった作品を子どもと一緒に拝見させていただきましたが、夢中になって観ていました。ぷしゅぷしゅのほっぺがないことが気になっていたようで(笑)、「あぁ、内容を理解しているんだな」という感動が大きかったですね。
ーーお父さん(玉木さん)の声には気づいていましたか?
玉木 僕の声に対してリアクションはありませんでした。CMやドラマなど、テレビに出ているときはリアクションを返してくれるのですが、声だけでは気づかなかったようです。
心残りなのが、完成版をスマホで見せてしまって。初めての映画は、劇場で見せるべきでした。でも、この映画で映画館デビューさせようと思っています。映画館に行くとさらに興奮度は上がると思うので、そのタイミングで僕が声優だということをタネ明かしして、気づくかどうか(笑)。
「にゅう」のスタンプをパパ友と使いたい
ーーテレビと違う、映画館で観ることの醍醐味はどんなところにあると思いますか?
玉木 お子さんがいる親御さんは、「どのタイミングで映画館デビューさせようか」ということをすごく考えると思うんです。その点この映画は、「泣いたって大丈夫」や「上映中は優しい照明・音量」など、子連れにとってうれしいポイントを掲げているので、親子で一緒に観に行きやすい作品になっていることが一番の醍醐味だと思います。
ーー玉木さんご自身の映画館デビュー作は覚えていますか?
玉木 保育園の年長のころ、祖父と一緒に行った『ゴジラ』だったと思います。すごく人気の作品だったので、劇場に入ったのがだいぶ遅い時間帯で……。一番前の一番真ん中の席しか空いていなくて、首が痛かった思い出しかないんです。内容は覚えていないのですが、「これは首が痛いぞ……」と(笑)。僕はおじいちゃんっ子だったので、おじいちゃんとしたことはいろいろ記憶に残っているんです。この映画を観てくれる子どもたちのなかにも、「小さいころ、これを親と観に行ったな」と記憶に残ってくれたらベストだなと思います。
ーー「にゅう」を見て、その造形についてどんな印象を持ちましたか?
玉木 「にゅう」の造形は、監督のお子さんが普段からタオルを大事にしていて、そこからヒントを得られたようです。きっとどんな子どもも大事に持っているものがあると思いますが、「そういう気持ちを持って、そばに置いておいてほしいのが”キャラクター”」だと、監督はおっしゃっていました。
ーー玉木さんご自身が子どものころ、大事にしていたものは覚えていますか?
玉木 小さすぎて記憶にないですが、子どものころのおもちゃを残しておけばよかったです。今ならプレミアがついたり、結構いい値段になったんじゃないかなと(笑)。大人ならではのしたたなか考えですけど(笑)。逆に、子どもが今持っているおもちゃを残しておいてあげたいなと思います。
ーーお子さまお気に入りのおもちゃはありますか?
玉木 日々いろいろ移り変わっていまして、「今日はこれ」「今日はこれ」といった感じです。今回の映画をきっかけに、「にゅう」のぬいぐるみを渡して大事にしてもらおうかなと思っています。
ーー「にゅう」はぬいぐるみ化するんですね。
玉木 このぬいぐるみ、すごく肌触りがいいんですよ!
ーーほかに「にゅう」がグッズ化するとしたら何が欲しいですか?
玉木 何でもグッズになって欲しいですね。形として残っていたら僕もうれしいですし。あとはSNSのスタンプが欲しいですね(笑)。
ーー最後に、子育て中の方々にエールをお願いします。
玉木 子どもに手がかかる、自分のことが後回しになるなど、今はすごく大変な時期だと思います。でも、それと同じくらい、見守っていて幸せなことはたくさんあると思います。パパとママが息抜きをすることは本当に必要だと思うので、できる限りその時間を作ってほしいですね。この映画も、みなさんの息抜きの時間になれたらと思います。
【information】民放初の乳幼児向け子ども番組『シナぷしゅ』が映画化!
「子どもに見せたいと思える」「親が見せて安心できる」番組を作りたい……。そんな番組プロデューサー飯田さんの呼びかけに集まったのは、テレビ東京で子育て奮闘中の社員たち。そして生まれた民放初の0〜2歳の赤ちゃんをターゲットにした異色すぎるテレビ番組『シナぷしゅ』が、2023年春、ついに映画化! 赤ちゃんにとっての「はじめての映画体験」は、赤ちゃんはもちろん親にとっても特別な瞬間になるはず。親子でぜひ足を運んでみてくださいね。
『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』概要
2023年5月19日(金)ユナイテッド・シネマ豊洲、新宿ピカデリーほかぷしゅっと全国ロードショー
監督:清水貴栄
劇伴音楽:信澤宣明
企画・プロデュース:飯田佳奈子
推薦:東京大学赤ちゃんラボ 開一夫教授推薦作品
制作:テレビ東京・CEKAI
配給:ローソンエンタテインメント
本編情報:上映時間約50分/日本カラービスタ/5.1ch
©SPMOVIE2023
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/synapusyu_movie/
玉木宏さん/俳優
映画、テレビ、CM、舞台、音楽など幅広い分野で活躍。近年は『極主夫道』(日本テレビ系)や『桜の塔』(テレビ朝日系)、『だから殺せなかった』(WOWWOW)など立て続けに主演に抜擢されている。また出演映画『キングダム 運命の炎』が7月28日に公開される。『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』では映画オリジナルのキャラクター「にゅう」の声を担当し、新境地を開拓。
(取材・文:有山千春 撮影:松野葉子/マイナビ子育て編集部)