さくらんぼを食べ過ぎると下痢になる?種には毒がある?適量と注意点【管理栄養士監修】
さくらんぼは、そのかわいらしい形などから愛される果物ですが、食べ過ぎると腹痛などを起こす可能性があります。また、小さい種を飲み込んでしまうこともありそうですが、種にも注意が必要です。安心してさくらんぼを楽しむために知っておきたいことをお伝えします。
さくらんぼの食べ過ぎで下痢になるのは本当?
さくらんぼを食べ過ぎると腹痛や下痢になるとも言われますが、どのような原因が考えられるのでしょうか?
一度にたくさん食べるのは注意
さくらんぼに限ったことではありませんが、一度に大量に摂取すると腹痛を起こしたり、消化不良による下痢などを招く可能性が考えられます。また、さくらんぼには食物繊維が含まれますが、通常であれば便通の改善に良い食物繊維も、摂り過ぎてしまうとかえって逆効果となることもあります。
腹痛や下痢の原因はソルビトール?
ソルビトールとは「糖アルコール」という糖質の一種で、砂糖の代わりとして使われたりしています。その特徴の1つとして知られるのが、お腹をゆるくする作用です。どのくらいの量で下痢になるかははっきりしていませんが、一説では20~30gとされています[*1]。
では、さくらんぼにはどのくらいのソルビトールが含まれるのでしょうか? 日本食品標準成分表にはさくらんぼのソルビトール含有量のデータはありません。ただし、種類の似ているアメリカンチェリーには100gあたり2.2g含まれています[*2]。りんご100gにソルビトールが0.7g含まれるのと比べると、アメリカンチェリーは確かにソルビトールが多いとはいえるでしょう。
しかし、下痢を引き起こすリスクとなる20~30gのソルビトールをアメリカンチェリーで摂るとしたら、約1kg(約150個)に及びます[*2]。1回で食べる量としてはほとんどありえない数字です。アメリカンチェリーやさくらんぼに含まれるソルビトールの影響によって、腹痛や下痢になる可能性は低いでしょう。
さくらんぼの適量はどのくらい?
では、さくらんぼの適量はどのくらいなのでしょうか? 果物の1日の摂取量の目安から考えてみましょう。
適量の目安|1日100g(15個ほど)
食事バランスガイドによると果物は1日200gが適量です[*3]。さくらんぼ1個の重さは種や軸を除くと6g程度なので、200gはだいたい30個になります。しかし、さくらんぼばかりでなく他の果物も摂取するのが望ましいため、日常的に食べるなら半分の100gとし、1日約15個を適量と考えましょう。
さくらんぼ狩りなどでたくさん食べたいときは、30個くらいを目安にするとよいですね。
さくらんぼとアメリカンチェリーでは栄養成分に若干の違いがありますが、適量はだいたい同じと考えましょう。
その他の果物の食べ過ぎはこちらでチェック!
さくらんぼはどんな栄養素がある?
さくらんぼを食べ過ぎた場合のリスクを確認しましたが、適量を摂取する分には全く問題ありません。その栄養の特徴についても見ていきましょう。
アスパラギン酸が豊富
アスパラギン酸とはアミノ酸の1つで、最初にアスパラから発見されたことがその名の由来です。体内で窒素代謝やエネルギー代謝などにかかわっているたため、疲労回復にも役立つことが期待できるといえるでしょう。
さくらんぼには、このアスパラギン酸が540mg含まれています[*2] 。アスパラガスは440mgですから[*2]、名前の由来となったアスパラガスよりも実は多いのです。アスパラギン酸は必須アミノ酸(※)ではありませんが、どのアミノ酸もたんぱく質の合成に欠かせないことは変わらないため、果物から摂れるのは嬉しいですね。
カロリーはどのくらい?
さくらんぼもアメリカンチェリーも、適量である100gのカロリーは64kcalです[*2]。他のポピュラーな果物と比べると若干多いといえますが、大きな違いはありません。適量であれば、カロリーオーバーを気にする必要はないでしょう。
<主な果物の100gあたりのカロリー>[*2]
もも(白)…38kcal
メロン…45kcal
みかん…49kcal
りんご…53kcal
ぶどう…58kcal
さくらんぼ…64kcal
バナナ…93kcal
さくらんぼはどんな果物?
ご存じのとおり、さくらんぼは桜の実ですが、正確には「桜桃(おうとう)」の果実です。花見で楽しむソメイヨシノなどとは別の種類の桜になります。さくらんぼの主な品種には、佐藤錦、ナポレオン、高砂などがありますね。
国産のさくらんぼは旬がはっきりしており、6~7月中心に出回ります。アメリカンチェリーなど外国産は季節問わず輸入されますが、やはり初夏あたりに多い印象です。
さくらんぼの種には毒がある?
食べ過ぎ以外にも、さくらんぼに関して注意したいことがあります。「さくらんぼの種には毒がある」という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。実際のところを確認しましょう。
有害物質「シアン化合物」が含まれる
さくらんぼの種にはアミグダリンという天然のシアン化合物が多く含まれます。さくらんぼ以外にも、ビワやあんず、梅、ももなどのバラ科の植物の種や未熟な果実に含まれており、体内で分解されると有害物質である青酸を産生します。シアン化合物とは、青酸を生じる物質を指す言葉なのです。シアン化合物を一度に大量に摂取すると、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐などの症状が現れるため、有害物質の1つとされています[*5]。
なお、以前、アミグダリンはビタミンB17と呼ばれ、がんに効果があるなどと言われたこともありますが、現在、アミグダリンをビタミンの一種とする説は否定されています。健康効果についても科学的根拠はありません[*5]。
種をうっかり食べてしまったら?
アミグダリンを多量に摂取すると青酸中毒になるリスクがあるため、種を食べないことが大切ですが、うっかり飲み込んでしまうこともあり得ますよね。
種に含まれるアミグダリンによる青酸中毒の危険性は、種を嚙み砕いて摂取した場合に高まります。丸ごと飲み込んだ場合には、消化されずにそのまま便として排出されることも少なくないでしょう。したがって、種を何個か誤って食べてしまっても、それほど心配する必要はありません。
ただし、どのくらいの種を摂取したら危険かということははっきりしていないので、いずれにしても、誤って食べないように注意することが重要です。
さくらんぼ狩りといった場面ではつい早食いになりやすいですが、慌てて食べたりしないようにしましょう。特に子どもが誤って種を飲み込んでしまわないよう、しっかりと大人が見守ってあげてください。
子どもが食べるときは特に注意
小さな子どもの場合、種を食べないように注意するだけでなく、さくらんぼ自体の食べ方にも気を付ける必要があります。
丸呑みして窒息するリスクがある
子どもも大好きなさくらんぼですが、実は、小さな子どもにはリスクのある食べ物なのをご存じでしょうか。さくらんぼの丸い実を丸呑みしてしまい、気管をふさいでしまう危険があるためです。
実際、保育園などの給食では使用に注意すべき食材の1つに該当します[*6]。
① 球形という形状が危険な食材(プチトマト、乾燥したナッツ・豆類、ウズラの卵、ぶどう、さくらんぼなど)
② 粘着性が高い食材(餅など)
③ 固すぎる食材(イカなど)
さくらんぼやぶどうは球状というだけでなく、皮が口の中に残りやすいことからも危険とされています。このような危険もある食べ物であることに留意し、食べさせるようにしましょう。
子どもにあげるときは4つに切る
小さなお子さんにあげるときは、皮も硬いので、必ず縦に十字に切って4分の1の大きさにするか、それ以下の大きさにして、種を除いてからあげるようにしましょう。万が一のことを考えてリスクを減らすことはとても大切なので、覚えておいてくださいね。
なお、離乳食期の赤ちゃんはいつから食べられるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。知りたい方はこちらをチェックしてください。
まとめ
そのフォルムが愛らしいさくらんぼ。さくらんぼ狩りなどで楽しむもこともありますが、食べ過ぎには注意したいものです。また、種には有害物質が含まれることも知っておきましょう。子どもの場合は丸い形状や硬い皮にも注意が必要ですね。リスクに気を配りつつ、楽しく味わいましょう。
(文・監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]中央果実協会:FACT Sheet 果物と健康 六訂版
[*2]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*3]農林水産省:食事バランスガイドについて
[*4]厚生労働省:e-ヘルスネット「アミノ酸」
[*5]農林水産省:ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう
[*6]内閣府:教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます