みょうがを食べ過ぎると物忘れがひどくなる?適量の目安とみょうがの効果を解説【管理栄養士監修】
夏を代表する薬味の1つでもあるみょうがですが、食べ過ぎると「物忘れがひどくなる」といったことを聞いたことはないでしょうか。今回はこの説の真偽や、その他の食べ過ぎのリスクはあるのかをお伝えします。みょうがのうれしい効果についても確認していきましょう。
物忘れになるというのは本当? 由来は?
「みょうがを食べ過ぎると物忘れをする」という説に科学的な根拠はありません。由来には諸説あるようですが、仏教の故事が関係した言い伝えのようです。
仏教の故事が迷信として広まった
お釈迦様の弟子のひとり、周利槃特(しゅり・はんどく)という人は物覚えが悪く、自分の名前も覚えられないため、名札を身につけていました。この周利槃特は、お釈迦様の教えにより「ごみを払おう、ちりを除こう」と唱えながら掃除を続け、やがて悟りを開きました。亡くなった後、その墓に茂った見慣れぬ植物が「茗荷」(名前を荷なう人の意)と名付けられたといいます。あるいは、名札が「名荷」(みょうが)と呼ばれるものだったので、音が似ている「みょうが」と結び付けられていったという説も。
ちなみに昔話や落語にも、みょうがと物忘れにまつわるものが見られます。古典落語の「茗荷宿」は、宿屋の夫婦が大金を持った客にみょうが尽くしの料理を出し、大金を置き忘れてくれることを期待したが、うまくいかなかったというお話です。
みょうがを食べ過ぎるとどうなる?
これからの暑い時期におすすめでさっぱりとしたみょうが。独特の香りにはまってしまう方もいるかもしれませんね。食べ過ぎるはどのようなことが起きるでしょうか。
便秘や腹痛のリスク
野菜やきのこには食物繊維が多く含まれており、みょうがも100g中に2.1gの食物繊維が含まれています[*1]。みょうがの食物繊維の特徴として、不溶性食物繊維が1.7gと、その多くを占めることが挙げられます。
不溶性食物繊維は便のかさを増やし排便を促す働きがありますが、多量に摂取すると便が硬くなってかえって便秘になる恐れがあります。また、便が腸に刺激を与えすぎてしまい、腹痛を引き起こすことも考えられます。みょうがの食べ過ぎには注意しましょう。
口の中がイガイガする場合も
みょうがはアレルギー表示義務または推奨の対象となる「特定原材料」や「特定原材料に準ずるもの」の中には含まれません。比較的アレルギーの起きにくい食品といえるでしょう。
しかしながら、どの食材でもそうですが、いつ何時アレルギーを発症するかはわかりません。みょうがを食べて口の中がイガイガしたり、痒かったりなどの違和感を感じることもまれにあります。また、みょうがを触ることで皮膚炎が生じる場合も。そのような症状が感じられたときには医療機関を受診しましょう。
みょうがの適量はどのくらい?
みょうがは生で食べるほか、てんぷらや和え物、甘酢漬けなどで食べることが多いと思います。栽培が難しくないため、家庭菜園で作っている人も多いかもしれませんね。では、みょうがは1日にどれくらいを目安に食べてもよいのでしょうか。
適量の目安|1日2~3個くらい
残念ながらみょうがは他の野菜と違って、ビタミン類などの栄養素がほとんど含まれていません。香味野菜として適度に取り入れるのがよいでしょう。みょうがをたくさん食べてお腹を満たしてしまうと、他の食べ物が十分に摂れず、栄養が偏ってしまいます。みょうがは薬味としておいしく感じられる2~3個くらいを1日の適量と考えるのがおすすめです。
みょうがは独特な香りが特徴なので、それほど量を食べることはないかと思いますが、酢漬けなどをついつい食べ過ぎてしまうかもしれませんね。多くても1日10個までにとどめ、他の野菜をしっかり摂るように心がけてください。
みょうがのうれしい効果
何と言っても香りが特徴的なみょうがですが、栄養面では何かメリットがあるのでしょうか? 確認していきましょう。
みょうがに含まれる栄養素は?
みょうがは100g中に12kcalとエネルギーが非常に低く、さらに水分が95.6%と非常に多いのも特徴です。残念ながらビタミン類はあまり含まれていません。唯一、マンガンが他の野菜より多いほか、体内の塩分量を整える働きのあるカリウムも、100g中に210mg含まれています[*1]。
全体的に栄養価が低いため、みょうがの栄養の効果を期待するよりは、料理に香りをもたらし、味を引き立ててくれる存在として取り入れるのが良いでしょう。
食欲のないときにさっぱり食べられる
みょうがの独特の香りはα-ピネン(アルファピネン)という成分です。α-ピネンは松などの樹木に含まれる精油成分であり、リラックスさせるなどの森林浴効果で知られます。食べ物では春菊にも含まれるとされます[*2]。
みょうがを食べることでα-ピネンの効果が得られるかは定かではありませんが、爽やかな香りは食欲のないときに食事をさっぱりさせてくれるでしょう。
抗菌作用がある
みょうがの辛みはミョウガジアールとミョウガナールによるものです。これらには抗菌作用や解毒作用があるとされています[*3]。
岐阜県美濃地方には「みょうがぼち」という、お餅をみょうがの葉で包んで蒸した伝統的なお菓子があります[*4]。みょうがの葉は携帯食に用いられてきたとされ、食品の保存性を高めるためにみょうがの葉が使われたと考えられます。
また、酢漬けのみょうがとマスを乗せた富山の押し寿し「みょうが寿し」などもあります。みょうがの抗菌作用は古くから伝統的に活用されてきたのですね。
みょうがの選び方
新鮮なみょうがは鮮やかな紅色でツヤがあります。ふっくらと膨らみがあって身が締まっているものがおすすめです。反対に次のような特徴は風味などがよくない場合があります。
・緑がかったもの:太陽に当たって日焼けしている
・白っぽいもの:未熟な可能性
・先端部分に花が咲いているもの、咲きかけのもの:繊維が硬めで食感が落ちている
・触ってみてふかふかするもの:花が咲いて落ちたもので、風味があまりよくない
みょうがで気を付けたい食中毒リスク
みょうがを食べるうえで、食中毒の可能性についても知っておきましょう。
寄生虫の感染に注意
まれではありますが、みょうがを食べて肝蛭症(かんてつしょう)[*5]という食中毒にかかる場合があります。肝蛭とは牛や豚などに寄生する虫で、みょうがやセリ、クレソンなど水辺の植物に卵や幼虫が付着することがあり、口にすることで発熱や吐き気、腹痛、下痢などの中毒症状を引き起こすと考えられます。
市販されているものは肝蛭が付着していることはまれですが、みょうがを生で食べる際にはしっかり洗いましょう。
また、妊婦さんなどが寄生虫による食中毒にかかってしまうと胎児にも影響してしまう恐れがあるため、妊娠中にみょうがを食べる際にはよく洗うとともに、加熱することをおすすめします。
みょうがに似た植物による食中毒に注意
みょうがを採集して食べることがある場合、似た植物と間違えないように注意が必要です。ユリ科の植物イヌサフランをみょうがと間違えて食べ、腹痛や嘔吐など食中毒を起こした事例があります[*6]。庭先や山などで収穫したものを食べる際には観察しましょう。
まとめ
みょうがを食べ過ぎて物忘れがひどくなることはありませんが、食べ過ぎると便秘や腹痛になる場合があります。栄養価も低いので、香味野菜として他の食材と一緒に適度な量を料理に用いましょう。夏バテして食欲がないときに添えると、食欲が出てくることもあるかもしれませんね。また、食中毒を防ぐためにしっかりと洗うことも大切ですよ。日本特有の食べ物として、ぜひ夏場にはみょうがを味わってもらいたいものです。
(文:茅野 陽 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]熊谷昌則:精油芳香がワーキングメモリ課題遂行時のNIRS脳血流変化量に及ぼす影響,秋田県総合食品研究センタ一報告 Vol.17 15-18 (2015)
[*3]阿部雅子, ミョウガの辛味関連化合物に関する研究, 日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.) Vol. 52,No. 1,1~7(2019)
[*4]農林水産省:うちの郷土料理「岐阜県 みょうがぼち」
[*5]食品安全委員会:寄生虫による食中毒にご注意ください
[*6]厚生労働省:自然毒のリスクプロファイル:高等植物:イヌサフラン
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます