出産・産後 出産・産後
2023年10月15日 06:15 更新

男性は、女性の更年期はどう捉える?世代で異なるジェンダーの壁|高尾先生インタビュー<後編>

30~40代になると、漠然と感じる「更年期への不安」。 当事者である女性だけではなく、社会全体としてどんな心持ちで「更年期」、そして「体の不調」を受け止めればいいのか。――産婦人科医の高尾美穂先生に話をききました。

ジェンダーの流れと更年期。

「マイナビ子育て」さんは男性読者も多いとききました。更年期を語る際に、もはやジェンダーの話は避けて通れないように思えますから、そのあたりも交えてお話ししたいと思います。

日本が男女共同参画社会を推進したのは2000年あたりから。世界の流れでいうと、1995年に北京宣言があり、ここ30年ぐらいでジェンダー平等の動きがあるわけです。簡単にいうと「女性も男性も同じように生活と仕事ができる社会作り」を、世界のどの国も目指しているということ。

では、日本のいまの状況はどうか。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら世界の中で日本の順位はかなり低いんですね。世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」の2023年版報告書によると、日本は146カ国のうち125位! 昨年の116位から順位を落としていますし、いまここで大きく意識を変えないと今後も順位が落ちていくのではないでしょうか。


「今の自分」にこだわらない
「今の自分」にこだわらない毎日を。
「今の自分」は「これまでの自分」の積み重ね。
「今の自分」を脱ぎ去らなければ、「次の自分」は訪れない。
だから、「今の自分」を簡単に手放せるような私でいたい。
▶︎「人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉」より
撮影/難波雄史

ジェンダーの流れを理解することで、コミュニティでの立ち居振る舞いに変化が。

男性を年代別にわけて考えてみましょう。年代で分けて考えること自体、あまり意味がないくらい個人個人の理解に差があることはわかっていますが、あえて世代ごとに考えてみたいと思います。

現在60代半ばより上の世代の人――「女性は常に家にいて、なんなら三つ指ついて迎えてほしい」が普通であった時代を生きてきた世代。いまのジェンダーの流れを見たり聞いたりしても「自分には関係ない」で通す人が少なくない印象です。

この世代と対極にあるのが、いまの20代。「妻が出産したので、自分が育休を取ります」――当たり前にそう言う世代です。幼少の頃から、女性だから男性だからという育てられ方をされていない。たとえば、女性が生理で調子が悪そうなら温かい飲み物を買っていく、という行動を普通にとれるし、「女性ならではの体の不調ってある。男性もそれを知っといたほうがいいよね」という考えをすでに持っています。この世代が結婚し、妻が更年期に入ったら……それ以前に様々な情報をキャッチしているだろうし、臨機応変な対応ができそうですね。

次に30代後半~50代の男性。これこそ差が大きいため、とてもひとくくりにはできません。前向きに情報を吸収している方も多く、「女性の体や体調について得た学びは、会社の中だけではなく、自分の家庭、つまり妻や娘のことだと考えて理解できました」と話される方もいらっしゃいます。こういう男性はジェンダーの課題を理解し、社会におけるコミュニティでの立ち振る舞いが変わってくる。

社会である程度上の方の立ち位置にいらっしゃる方には、「会社として女性活躍を推進していかなければならない」と上層部からのプッシュがある。「耳が痛い、できれば避けて通りたい」と考える4、50代の方もいらっしゃると思います。でも、そんな考えをお持ちの男性に知っておいてほしいのは「あなたのその姿勢が評価のひとつになる時代です」ということ。

部下の中には、すでにジェンダーについて学び理解している人が増えている。それなのに、上司である人間が無理解となれば「あの人は仕事はできるけど、ジェンダーに理解がない」と判断される可能性が高い。そういう時代に、もうすでに入っているのです。

社内で部下が上司に進言するのが難しければ、せめて「お父さん、そういう考え方、あり得ない時代だよ」と娘さんや息子さんが話してくれればいいのですが……今後日本の社会が変わっていくそのスピード感は、30代から50代の男性の意識の変化にかかっていると私は考えます。

大切なのは、普段から「お互い様だよね」という空気を作ること。

とはいえ、女性の体について、事細かな部分まで知ってもらう必要はないんですよ。女性も「生理のことも、更年期のこともざっくり知っておいてくれたらいいよ」と考えるようにしたいもの。だって、「今日生理前でしょ」「更年期かな?」とよく知らないのにいわれたら、「更年期の辛さのなにを知ってるの」と女性もちょっとカチンときちゃうでしょ(笑)

そうではなく「調子が悪いときがあるんだよね」と知っておいてくれるぐらいでいいと思うんです。

これはなにも女性の体の話だけに限らないですよね。男性だってお腹や頭が痛くなったり、調子が悪いときがある。大事なのは、「お互いさま」という空気を社会でも家庭でも作るということ。

調子が悪いなら、休む。それが当たり前。「穴が開いたところは、みんなで埋め合おうね」という空気を、みんなが揃っている普段から作っておく。ここ、ポイントです。みんなが揃っているときに作っておかないと、誰かが体調悪くて休んだときに、そのしわ寄せが自分にくると「え、なんで私に!?」となりますから。普段から「みんなお互い様だよね」という空気を作っていくようにしたいものです。


誰かを応援することは 自分を応援すること
自分が大変な状況であっても他の誰かを応援することはできる。
大きなことをしなくてもいい。
ちょっとした言葉がけで空気が温かくなる、なんてこともあるのだから。
そしてそのアクションによって誰かが笑顔になってくれたら、きっと応援してよかったって思える。
それが自分自身を元気づけることにもつながる。
▶︎「人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉」より
撮影/難波雄史

不安や悩みは、女性のヘルスケアに強い専門医に相談を。

いま、スマホを少し触れば膨大な量の情報にヒットする時代です。更年期について検索する人も多いでしょう。でも、検索してヒットするものはご自身に100%マッチするものではないんですね。あくまで誰かの症状であり、誰かの経験です。

女性の体についての悩みがあれば婦人科医に、婦人科医の中でも女性のヘルスケアについて強い先生を探して病院に行き相談してみてください。「こんなことをきいたら恥ずかしいかな」と思わないでください。聞いちゃいけないことなんて、なんにもありませんから。きちんと正しく知れば、更年期についての不安はきっと少なくなっていくはずです。

(解説:高尾 美穂、聞き手・構成:源 祥子)

書籍「人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉」

人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉


産婦人科医・高尾先生が贈る、あなたをご機嫌にする言葉

長年、産婦人科の外来を通して患者さんの心と体に向き合ってきたからわかる、悩みや不安。
患者さんが病院で、自分の症状や心配事を上手に説明するってなかなか難しいもの。ときにはこんがらがってしまった話を丁寧にほぐしていき、どうしたらいいかの糸口をみつけてくれるのが高尾先生。その姿勢そのままに、どうしたらひとりひとりが自分の人生をよりよく生きられるのか、そのヒントがつまった本です。
いつもお守りのように手元に置いておいて、悩んだとき迷ったときに開いてみてください。きっと目の前がぱっと開けてくるはずです。

■書名:人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉
■著者:高尾美穂
■価格:1,650円(本体1,500円+税)
■ISBN:9784594094980
■発行元:扶桑社
人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉
¥ 1,650 (2023/10/15時点)
(2023/9/25 現在)

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-