
真っ先に「やめなさい」は逆効果!? 子どもの気になる行動が出た時は、まず観察で原因を探る|こどもへの接し方に悩んだら #5
言う事を聞かずに文句を言ったり、物を投げたり壊したり……子どもの気になる行動を目の当たりにすると、大人はつい「やめさせなくては」と言う思いにかられますよね。しかし、子どもの行動にはすべて理由があるのだそうです。
和歌山大学教育学部教授 米澤好史先生は、こどもの愛着障害の第一人者であり、保育園・幼稚園、小中高校など幅広い現場に触れながら、親や教育者・支援者へ“愛着の問題”解消のアドバイスを行なっています。
前回に続き、今回は子どもの気になる行動が起こった時、実際にどんな対応をしていけばいいのか、具体的なメソッドについて米澤先生の解説を、著書『発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本』(フォレスト出版)よりお届けします。
3つの工程で解決策が見えてくる
毎日の生活のなかでこどもの気になる行動が起こったとき、実際にはどんな対応をしていけばいいのでしょうか。
「どうしたらいいんだろう」とつまずいたときにすぐできる、具体的なメソッドについてお話ししていきます。
このメソッドは、いわば日々の“心がけ”のようなもので、つぎの①から③の3つの工程を繰り返し実践していけば、こどもの気になる行動は確実に減っていきます。
どんなにつまずきが大きいケースの場合でも、必ず方向性が見えてきますから、焦らず肩の力を抜いて取り組んでください。
行きつ戻りつを繰り返すうちに、こどものことも自分自身のことも、よく見えてくるようになります。あなたの感受性が生き生きと働き出すのです。
では、その実践メソッドをご紹介していきましょう。
気になる行動が出ているなと思ったら
STEP① こどもの気になる行動の原因を探ってみる
STEP② 自分のかかわり方が、こどもの行動にどう関係しているか確認する
STEP③ かかわり方をひとつ変えてみる
こどもに困った行動があらわれた際は、ぜひこの3つの工程を行ってみてください。
③でひとつ試してみて、どんな変化が起きるかを観察してみましょう。もし何か問題が出てきたら、また②の工程に戻ります。
この①から③を、行きつ戻りつ繰り返していけば、「もう何をしてもダメなんじゃないか……」と諦めかけていた困りごとにも、必ず解決策が見えてきます。
ではここで、お悩みの多い困った行動をいくつか例にとって、実践メソッドの進め方をご説明してみましょう。
ただ、ここでご紹介するのはあくまでも例であって、現実にはひとつとして同じケースはありません。
ですから、実際のシチュエーションでは、あなたとお子さんにとってやりやすい進め方で、実践してください。
攻撃行動をしてしまう
STEP① まず「なぜ、攻撃行動をしてしまうのか」その原因を探ってみる

こどもの行動には、どんな行動にでも、必ず原因があります。
攻撃性というのは、自分の思いと違うことを強いられたり、こころに嫌な気持ちがたくさんわき起こっていたりすると、強くあらわれる傾向があります。
また、人とのかかわり方がわからず、自分の思いをうまく伝えられないために手が出てしまう、という場合もあるでしょう。
とくに攻撃性が強く出ているときは、今この瞬間だけではなく「以前に何か嫌な経験をしていないかな?」と振り返ってみましょう。
そうやって原因を探ると、「そういえば、この前のあのこと、放置していたかもしれない」と思い当たる節が見つかるかもしれません。
STEP② 自分のかかわり方が、こどもの「攻撃行動」に関係しているかを確認する

こどもの攻撃行動を目の当たりにすると、たいていの場合、反射的に止めに入ってしまいます。けれども、こどもにとっては、それがいちばん嫌なことですし、混乱します。
ですから、もし、あなたが「やめなさい」と止めに入っている場合、そのかかわり方は、攻撃行動を増幅していることになります。
まず、この事実を知っておくのが先決です。
そして、自分のかかわりを振り返ってみます。
STEP③ 止めずに、他のことに誘って気をそらしてみる(=かかわり方をひとつ変えてみる)

止めに入るのではなく、こどもが「いい気持ち」になるほうへと誘ってみます。
殴ったり暴れたりしたことをとがめるのではなく、気分を違う方向へとそらすのです。
腫れ物にさわらないようにするということではありません。いったん横に置いておいて、親も一緒に違う方向を向くのです。
たとえば、体を動かすと気持ちが変わったりしますから、ちょっと背中をさわってあげて、興奮状態をおさめて別のことをしてもいいかもしれません。
とりあえず場所を変えてみるのもいいでしょう。無理に移動に促すのではなく、好きなことにそらしたりしてみましょう。どうしても難しいときは、前からではなくこどもの後ろから抱きしめて、どこかへ連れていってもかまいません。
違う方向を見ることで、結果的に攻撃性を出す必要がなくなることがよくあります。
時間が経てば、どうして嫌な気持ちになったかの理由も振り返れます。
ことが起きたその瞬間に、その場で全部なんとかしようと思う必要はありません。
タイミングを逃してしまったら、あとでもう一度やってみればいいのです。
できることを少しずつやっていきます。
この3工程は、「心がけ」ですから、何度行っても、いつ行っても問題ないのです。
この記事は、米澤好史著『発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本』(フォレスト出版)より一部抜粋・再編集したものです。
書籍『発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本』
