【医師監修】妊娠初期に気をつけるべき事とは?症状と食事や生活について
妊娠期間は初期・中期・後期の3区分に分けられ、妊娠14週未満 が妊娠初期とされています。赤ちゃんの重要な器官が形作られていく大切な時期を健やかに過ごすために気をつけたいポイントをご紹介します。ご家族と一緒にお読みください。
妊娠初期 はどんな時期?
妊娠初期は妊娠14週未満です。とりわけ妊娠4週~10週 は急速に赤ちゃんの神経系、循環器系、消化器系、呼吸器系などの基本的な臓器ができていく大切な時期で、「器官形成期」とも呼ばれます。妊娠10週までに心臓や四肢、目、鼻、耳などほぼすべての器官が形作られます。
妊娠初期は母親の食事、病気、薬、アルコール、喫煙、ウイルスなどの 感染が赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があり、日常生活に配慮が求められます。
妊娠週数の数え方は、最終月経の初日を「妊娠0週0日」としてカウントします。排卵・受精が「妊娠2週」、子宮内膜に受精卵が着床して妊娠が成立するのが「妊娠3週」です。ですから、妊娠に気付くのは「妊娠4週」以降となり、その時点で既に「器官形成期」に入っていることになります。
妊娠初期の特徴と心がけたいこと
妊娠初期はおなかのふくらみも目立たず、周囲の人から妊娠していることを気付かれにくい ですが、赤ちゃんの器官が育っていく大切な時期。妊娠判明後の薬の服用 は、産婦人科医の指示のもとで行うようにしましょう。
妊娠4週~10週は器官形成期
妊娠4週~10週は「器官形成期」です。妊娠5週で脳や脊髄になる部分(神経管)の形成が始まりますが、心臓部分と主要血管はそれより早く作られ始め妊娠6週頃には超音波検査で心臓の鼓動をみることができます。妊娠7週で手や足が現れ始め、妊娠9週で骨と筋肉、顔と首が発達、脳波を検出できるようになります。 妊娠10週でほぼすべての器官ができあがります 。
この時期に薬の影響を受けると、赤ちゃんに形態異常などが起こることがあります。妊娠前から何らかの持病で薬を飲み続けている人は、妊娠がわかった時点で薬を処方した主治医と産婦人科医に相談してください。妊娠判明後の薬の服用は、産婦人科医の指示のもとで行うようにしましょう。
国立成育医療研究センターHPの「妊娠と薬情報センター」の項目には、「妊娠中・授乳中のお薬Q&A」や全国47都道府県の拠点病院(「妊娠と薬外来」がある病院)のリストなどが掲載されています。
ママも赤ちゃんも。とてもデリケートな妊娠初期
赤ちゃんにとって妊娠初期は重要な器官が次々に作られる大切なとき。また、ママもホルモンの変化が主な原因となってさまざまな不調が起こりやすくなります。
つわりの乗り切り方
妊娠初期に起こる不調を「つわり」といいます。妊娠初期の5~8割の妊婦さんがつわりを経験するといわれています。その程度には個人差がありますが、多くの方は妊娠12週ぐらいまでにおさまり、 遅くとも妊娠16週までにはほとんどの方の症状が軽快します。
脱水が悪影響を及ぼすと考えられており、水分補給を積極的に行います。重症になると、医療機関で点滴治療などを行います。
つわりの症状と対策
つわりの主な症状は、吐き気や嘔吐、頭痛、眠気、食欲不振、全身倦怠感(だるさ)などです。においに敏感になったり、食べ物の好みが変わったりもします。つわりのメカニズムは解明されておらず、「胎盤から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが影響している」という説もあります。
つわりを上手に乗り切るための工夫をあげます。
・口に合うものを食べたい時に食べる
・食べやすいものを小分けにして常備する
・周囲のにおいに敏感になるので、移動中や勤務先ではマスクを用意
・経口補水液やスポーツドリンク等でしっかりと水分補給
・早朝の空腹時に強く症状が出ることがあるので、枕元にすぐつまめる軽食を用意しておく
・安静にして、趣味など好きなことに集中したり、楽しいことを考えるようにする
・家事や仕事、育児で無理をしない
治療が必要な「重いつわり」も
つわりが重症になった状態を「妊娠悪阻(おそ)」といいます。「ほとんど何も食べられない」「水を飲んでも吐いてしまう」などの症状が一日中続くことにより脱水症状、栄養障害、体重の減少などが起こり、日常生活に支障をきたします。妊娠悪阻と診断された場合は、原則として入院し、心身を安静にして点滴などで脱水・栄養障害を補う治療を行います。
全妊婦の1~2%が妊娠悪阻により入院治療を要する状態になると言われています。 体重がどんどん減ってしまったり、だるくて仕方がないようなときは主治医に相談しましょう。
日々の食事の注意点
つわりの間は食欲もわかないかもしれませんが、できるだけバランスよく栄養素をとることが大切です。妊娠初期には葉酸を十分とり、カフェインは控えましょう。
DNAを合成する葉酸は多めに
妊娠中、積極的に摂りたい栄養素は、葉酸、カルシウム、鉄分、ミネラル、ビタミン類などです。特に葉酸はDNA合成に必要な水溶性ビタミン。妊娠初期に十分とらないと、赤ちゃんの脳や脊椎に成長障害が起こることがあります。
厚生労働省では、妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月の女性に対し、毎日食事からとる葉酸にプラスして、栄養補助食品(サプリメント)から400μg (マイクログラム)の葉酸をとるよう推奨しています。葉酸が多く含まれる食品の例はほうれん草、小松菜、春菊、いちご、納豆などです。
とり過ぎてはいけない栄養素と食品
ビタミンAは必要な栄養素ですが、妊娠初期に過剰摂取すると赤ちゃんに奇形が起こるリスクがあります。ビタミンAを含むサプリメントには注意が必要です。また、カフェインが多い飲み物(コーヒー、紅茶など)は1日1杯程度に控えてください。
タバコ・アルコールはNG
タバコとアルコールは胎児へのさまざまなリスクがあるのでNGです。副流煙も要注意です。
風疹の予防
風疹は子供の病気と思われがちですが、実際には大人の間で感染が広がっています。妊娠初期の女性が風疹に感染すると、おなかの赤ちゃんにも感染してしまいます。妊娠中には風疹のワクチンを打つことができないため、妊娠前の予防が重要です。妊婦さん自身はもちろん、パートナーや家族、周囲の人を含めた社会全体での対策が必要です。
妊婦さんからお腹のなかで赤ちゃんに感染する病気には、風疹のほかにもサイトメガロウイルス、梅毒、トキソプラズマなどがありそれぞれ注意が必要ですが、ここでは最近、感染が拡大している風疹について解説します。
妊娠中に風疹にかかった場合のリスク
妊娠初期の女性が風疹に感染すると、胎盤を通して胎内感染し、赤ちゃんが病気を持って生まれてくる可能性があります。これを「先天性風疹症候群」といいます。主な症状としては、先天性の目や耳の病気(白内障や難聴など)、心臓の病気(先天性心疾患など)、発達の遅れ などです。風疹にかかった時期により、先天性風疹症候群がおこる可能性には違いがあり、妊娠12週までが高くなっています。
妊娠を希望する女性と同居家族は、お住まいの自治体で風疹抗体検査を無料で受けることができます。2018年は風疹が流行しています。厚生労働省は12月、子供のころに予防接種の機会がなかった39~56歳の男性に対し、19年春から3年間、抗体検査とワクチン接種を原則無料にすると発表しています。
妊婦健診で抗体がないことがわかった時の対処法
もし妊娠初期の妊婦健診で「風疹の抗体が不十分」とわかったら、徹底した予防を心がける必要があります。妊娠中には風疹の予防接種を打つことができないためです。風疹は感染力が強く、せきやくしゃみからも感染してしまいます。しかも、感染しているのに まったく自覚症状がない人もいます。
ですから、できる限り人混みを避け、外出にはマスクを着用し、家族や同僚も含めて風疹に感染しないように注意を払いましょう。
次の妊娠を考えている方は、出産後すぐに予防接種を受けましょう。授乳中でも可能です。風疹ワクチンの効果は1回接種で約95%、2回接種で約99%のため、妊娠していない時期での2回のワクチン接種が推奨されています。
パートナー・家族は抗体検査・ワクチン接種を
妊婦さんのパートナーや家族も風疹には厳重警戒が必要です。風疹に一度かかっていれば免疫がつきますが、かかったかどうかよく覚えていない場合は医療機関で抗体検査を受け、抗体がなかったら予防接種を受けましょう。
1990年4月2日以降に生まれた世代は、2回予防接種を受けています。それ以前の世代は1回の接種だったり、まったく受けていない世代(1979年4月2日以前生まれの男子など)もいます。 親世代・祖父母世代も含め、風疹を予防することが大切です。
周囲のサポート を活用
まだおなかのふくらみも目立たず、周囲からは妊娠を気付かれにくいのが妊娠初期です。つわりや体調の変化で不安になった時は、遠慮なく周囲の人々のサポートを求めましょう。
パートナーの心得
「だるい」「何も食べたくない」「吐き気がする」。こんな状態を妊娠初期の妊婦さんは一人で我慢しています。ホルモンの影響や疲労から、精神的に不安定になることもあります。パートナーは妊婦さんに寄り添い、話を聞き、一緒に考え、サポートに努めましょう。できる限り家事も引き受け、妊婦さんを休ませてあげてください。妊娠中の信頼関係は、産後の家庭生活にも影響を及ぼします。
医師から職場への連絡は「母健連絡カード」で
「母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)」は主治医などによる指導事項を勤務先に提出するための書面です。働く妊婦さんが満員電車を避けて時差通勤する権利や時間外労働・休日出勤・深夜労働の制限などは法律で保障されています。
不調を感じた時はドクターに相談してこのカードを書いてもらいましょう。母子手帳や厚生労働省HPに記載されている様式をコピーして使用します。
まとめ
妊娠初期は赤ちゃんのほぼすべての器官が形成される大切な時期です。妊娠中期に入るまでは、風疹などのウイルス感染、薬、アルコール、喫煙などの影響が出やすいので日常生活には気をつけてください。 妊娠初期はつわりのつらい症状も出やすいですが、早ければ妊娠12週、遅くとも16週にはおさまるので上手な乗り切り方を工夫し、パートナーや周囲の協力を得ながら無理をしないように過ごしましょう。
(萩原明子/毎日新聞出版MMJ編集部)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます