法律の対象外であっても、児童の権利を侵害するコンテンツは「規制するべき」が9割近くを占める<児童ポルノについての国民意意識調査>
インターネットやSNSの拡大で世界的にも問題が大きくなっている児童ポルノ。アプリを悪用して児童ポルノの動画や画像を販売した事件なども報じられ、日本でも深刻な社会問題となっています。今回はNPO法人チャイルド・ファンド・ジャパンが実施した調査をもとに、児童ポルノの規制に対する人々の考え方を見て行きます。
全国の15~79歳の男女1,200人が回答
アジアを中心に貧困の中で暮らす子どもたちへの支援活動を行う認定NPO法人チャイルド・ファンド・ジャパンでは、児童ポルノ等に関する国民の意識を把握し、今後の政府等への政策提言の参考とするために、全国15~79歳の男女を対象に「児童ポルノについての国民意識調査」を実施しました。その結果を見ると、現在、児童ポルノ禁止法の規制対象外となっているコンテンツについても、何らかの規制を求める声が多いことがわかりました。
児童の権利を害するコンテンツ、「法令で規制するべき」が約9割
まず、現在、児童ポルノ禁止法の規制対象外(※)ではあるものの、児童の権利を害するようなコンテンツ(映像、動画など)を法令で規制するべきかどうかについて、回答を見てみましょう。
全体では「規制するべきだと思う」が67.8%で多数を占めました。さらに、「どちらかと言えば規制すべきであると思う」18.1%を合わせると、85.9%の人が「規制するべき」だという考えであることがわかりました。
一方で、「規制するべきではない(どちらかといえば規制するべきだと思わない+規制するべきだと思わない)」はわずか4.3%。また、「わからない」という人が9.7%いました。
男女別で見ると、「規制するべき」と回答した人の割合は、女性の方が男性より多くなっています。また、年齢が高い方が「規制するべき」と考える人が多い傾向にあります。
※現行の児童ポルノ禁止法では、「児童ポルノ」は写真、動画などのことで、18歳未満の児童の姿を描写、もしくは実写したものを指します。規制の対象となっているのは以下の3つです。
➀児童による性交などの姿
②他人が児童の性器を触る、またはその反対の行為をしている児童の姿であって、性欲を興奮・刺激させるもの
③衣服を着けないか、または衣服の一部を着けない児童の姿であって、児童の性的な部位が露出・強調されているものであり、性欲を興奮・刺激させるもの
性的表現を含む児童の実写ではないコンテンツ、「規制するべき」が約8割
次に、性的表現を含む「児童の実写ではないコンテンツ(漫画、イラスト、動画など)」について聞いた結果を見てみます。なお、こうしたコンテンツには、実物のモデルを基に描いたり、CG加工などをする「模写」と、モデルが存在しない「空想上のもの」があります。
性的表現を含む「児童の実写ではないコンテンツ」を法令で規制することについて、全体では「規制するべきだと思う」が最も多く47.1%でした。これに「どちらかと言えば規制するべきだと思う」(27.9%)を合わせると、75.0%の人が「規制するべき」と回答しています。
一方、「規制するべきではない(どちらかといえば規制するべきだと思わない+規制するべきだと思わない)」と回答した人は10.8%で約1割を占めました。また、「わからない」という人が13.8%で、「規制するべきではない」をやや上回りました。
規制範囲は?|「空想上の児童のモデルでも規制すべき」約6割
では、児童の実写ではないコンテンツで性的表現が含まれるものに対して、どのような規制を設けるべきだと考えられるのでしょうか? 空想上のモデルでも規制すべきか、実際の児童がモデルとなっている場合に規制すべきか、さまざまな意見があるでしょう。
前問で「規制するべきだと思う」と回答した人を対象に規制範囲を尋ねた結果、全体では「見る者にとって、児童を描いたものと分かるものであれば、たとえモデルが存在しない空想上のものでも規制するべきである」が最も多く、58.1%と約6割を占めました。次に多かったのは「見る者にとって、誰をモデルにしたのか分からなくても、実際にモデルとなった児童が存在するなら規制するべきである」で、その割合は28.0%と約3割でした。
したがって、規制するべきだと考える人の多くは、たとえ実際のモデルが存在しない場合でも規制が必要だという意見であることがわかります。
性別・年齢別で見ると、とくに60~69歳の女性は厳しい規制を求める人が多い傾向が見られ、「空想上の児童がモデル」を選択した人が71.1%で唯一7割を超えています。
実在しない児童をモデルとした空想上のコンテンツ、「規制するべき」が約7割
前問で、性的表現を含む児童の実写ではないコンテンツの規制に賛成する人は、規制の範囲として、空想上のモデルを使ったものも対象とすべきだと考える人が多いことがわかりました。
今度は全員を対象に、空想上の児童をモデルにしたコンテンツへの規制に対する意見を見てみましょう。
回答を見ると、全体では「規制するべきだと思う」が最も多く41.8%、「どちらかと言えば規制するべきだと思う」27.1%でした。これらを合わせると、「規制するべきである」という人は68.9%で、7割近くにのぼりました。モデルが実在しない空想上のものであっても、児童のコンテンツは規制するべきだと考える人が多いようです。
一方で、「規制するべきではない(どちらかといえば規制するべきだと思わない+規制するべきだと思わない)」と回答した人は11.6%で1割超となっています。また、「わからない」という人が19.0%と、2割ほどいました。
性別・年齢別での特徴としては、男性に「規制するべきではない」という人が多い傾向が見られ、とくに30歳~39歳の男性は、「規制するべきではない」と回答した人が30.3%で最も多くなりました。
「非実在児童モデルの空想コンテンツ」を規制するべき理由
前問で、実在しない児童モデルの空想コンテンツを規制するべきだと回答した人を対象に、その理由を聞いたところ、全体で最も支持が高かったのは「児童ポルノの流通を助長するから」で67.1%、次いで「小児性愛への刺激」が59.7%、「児童の権利を害するものとして、影響はあると思うから」が51.9%で続いています。
「非実在児童モデルの空想コンテンツ」を規制するべきでない理由
さらに、実在しない児童モデルの空想コンテンツを規制対象としないことを支持した人を対象にも、その理由を尋ねています。
その結果、全体の67.6%が「表現の自由を侵害するから」と回答し、これがトップの理由となりました。さらに、36.7%が「児童の権利を害するものとは言えないから」、23.7%が「児童ポルノの流通を助長するなどの悪影響はないと思うから」を挙げています。
まとめ
インターネットやSNSの拡大によって、児童ポルノの問題が深刻化している現代。いったん拡散されてしまった画像データは完全に消すことが不可能だとも言われます。子どもたちが欲望のはけ口とされていることは、非常に大きな社会的問題です。今回の調査では、現在、児童ポルノ禁止法の規制対象外となっているコンテンツにおいても、その内容によっては規制するべきだと考える人が多いことがわかりました。児童の権利を害するようなコンテンツについては9割近くが規制すべきと回答。また、実写ではなくても、性的表現を含む児童のコンテンツは規制すべきだという人も8割近くにのぼりました。では、実際にどういった表現まで規制の範囲とするのか。多種多様なコンテンツがあるなかでの線引きは簡単ではありませんが、議論が進むことが望まれます。
(マイナビ子育て編集部)
調査概要
■児童ポルノについての国民意識調査/チャイルド・ファンド・ジャパン
調査対象:全国の15~79歳の男女
調査時期:2023年7⽉30⽇〜8月13⽇
回答数:1,200