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2024年09月02日 07:36 更新

「育児しながら週に2日働く」スタイルに挑戦したパパが痛感した難しさ #男性育休取ったらどうなった?

育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回はAI企業の広報として働くパパと、育休中のパートナーのママにお話を聞きました。

■パパが4カ月の育休を取得した山田さんファミリー

今回のパパ
山田克基さん/37歳/株式会社Rist(AI企業)・広報

●ご家族
妻:佳美さん/42歳/印刷業・パート・育休中
長男:斗真くん/2歳
長女:亜衣里ちゃん/5カ月 
※お子さんの名前は仮名です

●山田家のパパ育休
2024年1月下旬に2人目となる長女が誕生し、育児休業を取得。その際、産後パパ育休(出生時育児休業)や、育休の分割取得制度をフル活用。途中で週2の勤務日と有給を組み合わせる期間も1カ月半盛り込んだ。およそ4カ月の育休期間を経て6月頭から復帰。

山田家の育休中のタイムスケジュール

■不妊治療中にSNSで情報収集。そこで産後の大変さを知ることになり…

――克基さんが育休を取得した理由を教えてください。

克基さん 1人目のときの経験があったからです。2022年1月に長男が生まれたときに育休を3カ月取得したのですが、その期間、産後すぐの妻のケアと育児の大変さが身に沁みてわかったため、今回も同じように取得しようと決めました。

――1人目のお子さんのときはいつ育休を取得しようと考えたのですか?

克基さん 妊活時代から子どもを妊娠したら育休取得をしようと考えていましたね。我が家の場合、1人目も2人目も不妊治療を経ての妊娠・出産なのですが、1人目のときは治療期間がおよそ5年と長くかかりました。当時、僕は不妊治療専用のSNSアカウントを作って情報収集をしていたんですが、そうすると、不妊治療の知識はもちろん、妊娠後や産後のこんなことが大変だとか、ここをケアしないといけないとか、そういう情報も入ってきていたんですね。知識が増えるうち、男性側も長期の育休を取得して専念しないと、子育てしていくのは難しいんじゃないか、まして何もわからない一人目だし……と考えるようになりました。もちろん、取らないといけないという義務感ではなく、純粋に育休を取りたい気持ちが僕自身に強くあってのことですが。

――佳美さんは克基さんが育休を取得することに対してどのように考えていましたか?

佳美さん 夫の勤め先が男性も育休を取りやすい会社とのことで、確実に取れるようだったので、とても安心しました。

克基さん うちの会社は社員の仕事とプライベートの両立をすごく大事に考えている企業で、男性育休がとても取りやすい環境なんです。比較的若い社員が多く「みんなで助け合おう」という雰囲気ですし、自分が取得した際も周りの方がさまざまな場面で協力してくれました。

――会社の雰囲気って、子育てのしやすさにとても影響がありますよね。

克基さん そう思います。不妊治療の話になりますが、僕が今の会社に転職したのは2019年で、当時すでに治療の真っ只中でした。そのため、採用面談のときから「治療で突発的な休みが発生しますが、大丈夫ですか?」と伝えており、それでも会社側は快く受け入れてくれ、社長は治療と仕事の両立を応援してくれました。

ほかにも弊社は「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」(雇われる従業員がベビーシッターなどを利用したときに助成が出る国の制度。事業主が登録する)を使っていますが、この制度を知ったときに管理部の方に依頼したところ、すぐに社長と相談して会社としての登録に動いてくれたんです。とても柔軟な対応でありがたかったですし、2人目の妊娠3ヶ月ごろに子宮内部の出血があり、出産するまで妻が自宅安静になってしまい、保育園のお迎えなどで困ったときに、シッターさんを利用できて僕自身とても助かりました。

■少し働く✖️育児休業の両立をやってみたものの…

――育休の話に戻りますが、克基さんは複数の休業・休暇制度を組み合わせていたんですよね。

克基さん はい。説明すると、まず長女が生まれたのが1月下旬です。そこから2月末まで2回にわけて、産後パパ育休(出生時育児休業)を取得しました。そのあとの3月頭から4月中旬にかけては公的な育休制度を利用するのではなく、週2の勤務日と週3の有給を組み合わせていました。そして4月中旬から5月末までは通常の育休を取得。6月頭に復帰しました。

――ユニークな取り方ですね! なぜそうしたのでしょうか?

克基さん ちょうど1人目の育休と2人目の育休の間に育児・介護休業法の法改正が施行されたんです。改正ポイントとして産後パパ育休(出生時育児休業・子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能)が創設されたり、分割取得ができるようになったりがありました。そこで再び育休を取得するからには、これらの制度を目一杯活用し、実体験として制度自体のメリット・デメリットを感じたいと思ったんです。

あと、この新設された産後パパ育休は通常の育休と異なり、条件つきで一部仕事ができる制度になっていますが、当時の弊社の規程上、それが難しかったんですね。そのため、擬似的な環境を作り出そうと、週2日勤務し、週3日有給を取って休む働き方にチャレンジすることにしました。

――実際、「休業しながら働く」というのはいかがでしたか?

克基さん めちゃくちゃ大変でしたね。当時、僕は月曜から水曜まで休業し、木曜と金曜に働いていたんです。週の前半は休んでいるから、木曜の午前中はまず水曜までの情報収集やメールの対応に追われます。そこから1日半でたまった仕事をやり終えないといけない。

今思えば「週2日しか働かないから、これとこれとこれしかしません」という明確な線引きをしておくべきでした。といっても、マネージャーという役割でほかの社員の確認作業が多かったりという僕の仕事の性質上、それも難しいのですが…。基本的に線引きをしっかりできる業務に就く方以外は、仕事はまったくせずに家庭に徹したほうがいいかなと思います。これはこの働き方をしてみたからこそ、わかったことですね。

もちろん産後パパ育休で多少仕事をしながら育児休業を取れるというのは、育児休業が取りづらい職場環境で働く方にはとても良い制度だと思います。ただ、それはやはり入り口に過ぎません。育児にちゃんと向き合うことを考えた場合、会社の持つ価値観や取り組み方、社会環境の改善がまだまだ必要ですし、当たり前に育児に向き合える社会にしていくためには課題が多いと思います。

2才でお兄ちゃんとなった息子くんですが、赤ちゃん返りはほぼなかったそう。「下の子が生まれる少し前に『だいすき ぎゅっぎゅっ』という絵本をいただき、夫婦にも妹にも全身で愛情を表現してくれるのがとても愛おしいです」(克基さん)

■問い合わせ先の一元化を求む!

――ほかにも実際に育休を取ってわかったことや感じたことはありましたか?

克基さん 制度自体も問い合わせ先もとにかくややこしいなと感じました。例えば、僕が取得する少し前に育児休業取得中の社会保険料の免除要件が見直されました。これは男女ともに関係のある話ですが、長期間取得する女性よりも短くスポット的に取得する男性側のほうがより影響しやすい問題で、取得する時期や期間が少し異なるだけで、社会保険料が免除されるか否かが変わります。だけど、とてもわかりにくくて…。

僕が問い合わせ先に尋ねたときも、相手方がよくわかっていませんでした。それがストレスでしたね。そもそも育休関連のことって問い合わせ先がばらばらなんですよ。社会保険料の免除に関しては年金事務所で、育児休業そのものの制度に関する問い合わせは、各都道府県の労働局・雇用環境均等室。育児休業給付金はハローワーク(公共職業安定所)です。何を聞くかによって連絡先を変えないといけないのは大変なので、一元化してほしいですし、このややこしさが男性の育児休業に対する積極性を下げている可能性もあると思います。

――確かに! 

克基さん また、収入の面も気になる点です。育児休業給付金の振り込まれるスピード感が遅いので、収入に対する不安がつきまとうことになります。だいたい多くの家庭は女性のほうが長く育休を取得することが多いはず。その女性側の育休期間と育児休業給付金のタイミングを考えた上で、男性側がどのくらいの期間なら生活をおびやかさずに育休を取れるか? みたいな話も出てくると思うんです。そこで問い合わせが必要となりますが、とてもややこしいので聞くのを諦めて、すごく効率の悪い取得の仕方をしている方も中にはいるんじゃないでしょうか。

ギターや漫画、美味しいもの探訪など、多趣味な克基さん。家族とのキャンプも趣味の一つ。息子くんもキャンプが大好きで、ほらこの通り、テントを立てるお手伝いも!

■たくさんの人とかかわりながら、子育てしていく

――育休は取得してよかったでしょうか?

克基さん もちろんです! 新生児期を見守れるというのは何事にも代え難い、親としてとても嬉しい瞬間です。ちょうど上の子がどんどん言葉を覚えている時期で、感情も豊かになってきて、兄になった複雑な気持ちと嬉しい気持ち、妹をかわいがる様子など、彼の感情の成長を見守れたのはとても幸せでした。また、妻、子どもたち、同居している妻の両親と、コミュニケーションの機会が増えたこともとてもよかったと思います。

佳美さん 夫がいてくれて本当によかったです。やっぱり1人だったら結構精神的にもしんどい部分は絶対あったと思うので、 2人で育休を取れてよかったですね。

――育休を取得後、夫婦の関係性は変わりましたか?

佳美さん 家事も育児も夫が協力してくれたことで、感謝の気持ちが以前よりもさらに強く感じられました。

克基さん 前から夫婦の時間は取っていましたが、子供の成長の話や老後の話も含めて色々と話せる機会が多く、絆が強くなったように思います。長く辛い不妊治療を夫婦で協力してできたこと、 2人も子どもに恵まれ、子ども達の笑顔や子ども達を見つめる妻の顔を見ているだけで、妻と頑張れて良かったなと思います。4人で並んで寝た時に子供の寝息を聞きながら、妻が小さな声で「幸せだね」と言ってくれた時には夫婦で頑張ってきて、この家族ができて本当に幸せだなと思いました。

――素敵な言葉! 復帰後の暮らしはいかがですか?

克基さん 今は妻が育休中なので、まかせている部分が正直多いです。ただリモート勤務のときは仕事が終わったり、途中で切れればお風呂、料理も作るなどの分担をしています。仕事が夜遅くまでかかるときや、外出時の晩御飯やお風呂は両親にサポートもしてもらっています。

佳美さん 1人目が生まれたときは両親と子どもの関わりも薄かったのですが、上の子が大きくなってきてコミュニケーションが増えたのと、下の子を妊娠・出産してから私たちも大変になってきたので、積極的に頼るようになりました。普段はご飯を作っているときに子どもを見ててもらったりすることが多いですね。

克基さん 復帰後すぐにあった僕の出張も両親のサポートを受けながら、乗り切りました。

――サポートという面でももちろん助かりますが、関わる人が増えることで、お子さんの世界も広がるでしょうね。

克基さん はい。僕は社外でも個人でPRやまちづくりなどの仕事をしていて、たくさんの人にお会いする機会があります。子どもたちを連れて行くこともあり、そういう関わりがある中でお金を使ってもできない経験をさせてあげられているのではないかと思っているんです。

ほかにも仕事で出会った方と共同で畑をしているのですが、上の子はその影響からか野菜が大好きです。畑はさまざまな人が出会う場になっていたり、子どもが手放しで遊べたり、できた野菜を近所に持って行ったりして、食育はもちろん、ほかにもたくさんのことを学ぶきっかけとなっていますね。

昨年から農業にチャレンジしている克基さん。野菜、果物とさまざまな作物にトライしていますが、このときは大きな玉ねぎを収穫。息子くんの「とったどー!」って表情、最高ですね! 

(取材・文:江原めぐみ、イラスト:ぺぷり)

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