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2024年09月23日 09:11 更新

日本の子ども・若者の半数超が「意見を聞いてもらえる権利」を知らず、諸外国との違いが歴然

子どもへの虐待や性加害、自殺者の多さなど、日本社会は子どもに関して様々な課題を抱えています。子どもがきちんと守られ、自分らしく生きられるためには子どもの声を聴く社会であることが欠かせません。そこで今回は、こども家庭庁が若年層に実施した調査をもとに、子どもの権利に対する意識や社会に対する意見をお伝えします。

日本を含む5カ国、13歳~29歳の男女に調査

こども家庭庁では、日本と諸外国の子ども・若者の意識を比較することで、日本の子ども・若者の意識の特徴などを的確に把握することを目的に「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」を実施しました。対象国は、日本のほか、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデンの計5カ国、対象者は13歳~29歳までの男女とし、各国1,000サンプルを集めました。今回はその中から、子どもの意見表明権や自国の社会に対する意識に関する部分を取り上げます。

若者
※画像はイメージです

子どもの意見表明権、日本は「聞いたことがない」が最多の5割超

日本の子どもや若者に対し、子どもには「自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえる権利(意見表明権)」があることを知っているかを聞いた設問では、「聞いたことがない」と回答した人の割合が50.3%で最も多く、半数超となりました。「名前だけ聞いたことがある」は28.1%、「どんな内容か少し知っている」は13.6%、「どんな内容かよく知っている」は8.0%でした。日本の子どもや若者には意見表明権をよく知らない人が多いといえます。

一方、5カ国の比較で見ると、スウェーデン、フランス、アメリカは3割超が「どんな内容かよく知っている」と回答しています。反対に、日本が半数以上だった「聞いたことがない」人の割合は、4カ国のいずれも2割未満でした。

あなたは、こどもには「自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえる権利」(意見表明権)があることを知っていますか。(回答は1つ)
あなたは、こどもには「自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえる権利」(意見表明権)があることを知っていますか。(回答は1つ)
―こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)」

【意見表明権とは】
意見表明権とは、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」における4つの原則の1つです。子どもの権利条約は、1989年11月に国連総会において採択されました。日本は1994年に批准しています。条約では、子ども(18歳未満の人)は守られる対象にあるだけではなく、権利をもつ主体であることを明確にし、子どもに対し大人同様に、ひとりの人間としてさまざまな権利を認めると同時に、成長の過程にあって保護や配慮が必要な権利を定めています。4つの原則のうち、残りの3つは「差別のないこと」、「子どもにとって最もよいこと」、「命を守られ成長できること」とされています。なお、この条約の締約国・地域の数は現在196[*1]です。

[*1]日本ユニセフ協会:子どもの権利条約 締約国

日本の若者の約6割が「意見を聞いてもらえる」と感じていない

次に、社会において子どもが自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえると感じているかを聞いた設問では、日本の子ども・若者で「感じていない」と「やや感じていない」と回答した人の割合が57.8%に上りました。約6割の子どもや若者は、自分の意見を聞いてもらえていると感じてないということです。

これを他国と比較すると、スウェーデン、ドイツでは日本と対照的に「感じている」「やや感じている」が7割を超えており、子どもたちが意見を聞いてもらいやすい社会であることが想像されます。残念ながら「感じている」「やや感じている」の合計が半数を下回っているのは、5カ国中で日本のみという結果でした。

あなたは、社会において、こどもが、自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえると感じていますか。
あなたは、社会において、こどもが、自分に関係することについて、意見や気持ちを聞いてもらえると感じていますか。(回答は1つ)
―こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)」

日本の若者の5割が社会に不満

前問の結果からは、日本の子どもや若者の多くは子どもの意見が世の中に通りにくいと感じていることがわかりました。そこで次に、自国の社会に対する満足度を見てみましょう。

自国の社会に満足しているかという設問に対し、日本の子ども・若者で「満足」「どちらかといえば満足」と回答した人の割合は34.6%でした。反対に、「不満」「どちらかといえば不満」と回答した人は50.8%におよんでいます。

他国と比較すると、「不満」「どちらかといえば不満」が半数を超えているのは日本のみでした。また、「満足」と回答した人の割合で日本の低さ(5.0%)が目立ちます。日本以外の4カ国が2割前後となっているのとは大きな違いです。そのほか、「わからない」の割合が比較的高い点も、日本の特徴として見られました。

あなたは、自国の社会に満足していますか、それとも不満ですか。
あなたは、自国の社会に満足していますか、それとも不満ですか。(回答は1つ)
―こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)」

日本の若者は「政治」への不満が大きい

続いて、自国の問題について、あてはまると思うものを選んでもらった結果がこちらです。

日本の子ども・若者で選んだ割合が最も高かったのが「よい政治が行われていない」で42.2%でした。次いで「まじめな者がむくわれない」38.8%、「学歴によって収入や仕事に格差がある」37.4%、「貧富の差がある」37.3%などとなっています。また、前回調査(平成30年度)と比べると、「よい政治が行われていない」が9.3ポイント、「若者の意見が反映されていない」が8.3ポイント高くなりました。

他国の結果を見ると、アメリカ、フランス、ドイツでは「人種によって差別がある」が最も高く、それぞれ48.9%、44.9%、38.2%でした。スウェーデンで最も高いのは「信じる宗教によって差別がある」が32.1%。各国の社会状況で異なる結果が見られました。

あなたは、どのようなことが自国の社会で問題だと思いますか。この中であてはまるものを、いくつでも選んでください。
あなたは、どのようなことが自国の社会で問題だと思いますか。この中であてはまるものを、いくつでも選んでください。
―こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)」

まとめ

今回は子どもの権利に対する認知度や社会観に関する調査結果をお伝えしました。日本は他の調査国と比較して、子どもの権利が浸透していないことがわかります。これは子どもや若者に限らず、日本社会全体の問題だと考えられます。実際、日本は国連から課題の勧告も受けています。教育を通じて子どもの権利をきちんと子どもたちに伝えていくことはもちろん、教える側の大人が子どもの権利について、理解を深めることが大切だと言えるでしょう。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

■我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査 (令和5年度)/こども家庭庁
調査対象国:日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデン
調査対象者:満13歳~29歳の男女
調査期間:2023年11月~12月
調査回収数:
日本:1,089、アメリカ:1,064、ドイツ:1,078、フランス:1,026、スウェーデン:1,026

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