挫折は「希望やチャンス」に。パラアスリート・谷真海さん&栗山英樹さんが中学生に贈る“夢をかなえるヒント”
我が子の折れない心(=レジリエンス)をどう育めばよいか――多くの親にとって共通の悩みですよね。2026年2月、東京都が推進する「こどもスマイルムーブメント」の一環として、東京都日野市の中学校で特別授業が開催されました。パラアスリートの谷真海さんと栗山英樹さんが語る、「夢」「挫折」「挑戦」にまつわるメッセージとは?
東京都が取り組む活動「こどもスマイルムーブメント」とは?
東京都が“子どもの笑顔があふれる社会”を実現するために、企業や団体、行政が一体となって取り組んでいる「こどもスマイルムーブメント」。
2026年2月9日、この活動の一環として東京都日野市立日野第二中学校にて、特別な授業が行われました。東京パラリンピックでも活躍したパラアスリート・谷真海さんが講師として登壇され、さらにプロ野球・前日本代表監督の栗山英樹さんがビデオメッセージで参加。
多くの困難を乗り越え、世界の頂点を見てきた二人が語るメッセージには、子どもたちだけでなく、私たち親にとっても心に響くヒントが詰まっていました。
谷さんが語る「失ったからこそ見えた、前向きな自分」
大きな拍手の中ステージに登場したのは、パラアスリートの谷真海さん。早稲田大学時代に骨肉腫を発症し、右足の膝下を切断。その後走り幅跳びとトライアスロンでパラリンピックに4大会出場するという、驚異的なキャリアの持ち主です。
しかし、谷さんは最初から強かったわけではないと語ります。
「足を失った直後は、将来が不安でものすごく落ち込みました。でも、人生で一番前向きだった自分はいつだろう?と振り返ったとき、そこにはいつも『スポーツをして笑っている自分』がいたんです」(谷さん)
谷さんはステージ上で、実際に競技で使用する「走るための義足」を披露してくれました。カーボン製のバネがついた義足を一瞬で装着する姿に、生徒たちからは驚きの声が上がりました。
「最初は転んでばかりでした。でも、また風を感じて走れることが、ただ嬉しかった。義足になったことは大きな挫折でしたが、それが私にとっての『新しい希望』との出会いになったんです」
そんな谷さんの支えになったのは、入院中にお母様からかけられたという言葉だそう。
「神様はその人に乗り越えられない試練は与えないんだよ」というメッセージを胸に、谷さんは過酷なリハビリや、慣れない英語での「東京パラリンピック2020大会」の招致スピーチという挑戦を乗り越えてきました。
「誰にでも、自分の力ではどうにもならないことは起こります。でも、その試練を『自分なら乗り越えられるはずだ』と信じること。そして、地味な練習をコツコツ積み重ねること。誰も見ていなくても続けたことが、いつか大きな舞台につながります」という谷さんの言葉に、多くの中学生が深くうなずいていたのが印象的でした。
続いて行われた中学生からの質問コーナーでは、「今後挑戦してみたいことは?」という問いに対し、次のパラリンピック出場を目指していると笑顔で答えた谷さん。お子さん2人を育てる中で、朝6時半から自転車のトレーニングをするなど努力を続けているのだとか。感服です!
栗山英樹監督が教える「失敗の正しい捉え方」
谷さんに続き、ビデオメッセージで登場したのは、2023年に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表を世界一に導いた栗山英樹さん。生徒たちからのさまざまな質問に対し、栗山流の深いアドバイスが飛び出しました。
まず最初の質問は、野球部の副キャプテンを務める生徒さんから。「どうすれば後輩を引っ張っていけるか」と問われた栗山さんは、こう答えます。
「人は全員違います。無理にまとめようとするのではなく、その都度行きたい場所(目標)だけをはっきりさせる。あとは、自分がやってほしいことを自分で行動して見せること。挨拶を返してほしければ、自分から先に大きな声で挨拶する。その背中を、仲間は必ず見ています」
バレーボール部で頑張る生徒が抱える「努力しても結果が出ない」という悩み。栗山さんは自身の経験を交えて優しく語りかけました。
「実は、一番苦しいのは『他人との比較』なんです。2しか進めない自分と、10進む他人を比べてしまう。でも、ゆっくり進む人は、一つひとつを確実に自分のものにしています。今は結果が出なくても、それは畑を耕して栄養を入れている時期。後で必ず、大きな実がなると信じましょう!」
また、WBC優勝監督という華々しい活躍を成し遂げた栗山さんにも、失敗に悩むときがあったそうです。
「僕は失敗ばかりの人生でした。でも、失敗しないと、自分の何が足りないのか、どう工夫すればいいのかは分からないんです。失敗したときは『よし、チャンスだ!』と思ってください。本気で考えた失敗こそが、前進するための最大のエネルギーになります」
プロ野球選手時代はあまり活躍できず、WBCの監督も自信がなくて実は一度断ったと語った栗山さん。決して順風満帆ではなく、挫折や失敗を経験したからこその言葉には説得力があり、子育て中のパパママにも響くものがあるのではないでしょうか?
子どもたちが描く「未来へのエール」!
授業の最後には、全校生徒がそれぞれの夢や自分への応援メッセージを書いた巨大な横断幕が披露されました。
「努力の先に花が咲く」「諦めなければ夢は実る」「自分を信じて突き進もう」――色とりどりのメッセージを眺めながら、谷さんは「自分へのエールは、読むだけで周りにも力を与えますね」と微笑んでいました。
谷さんは子どもたち、そして親御さんへのメッセージでこの日の授業を締めくくりました。
「大きな夢がなくてもいい。まずは目の前にある、好きなことや得意なことを目標にしてみてください。そして、絶対に自分と他人を比べないこと。自分らしい頑張り方で、自分を好きになってあげてください」
谷さんや栗山監督のような“超一流”と呼ばれる人たちも、失敗に落ち込み、他人と比べて焦ることがある。それでも彼らが輝いているのは、「自分との約束を守り、今日できる一歩を積み重ねてきたから」に他なりません。
私たち親ができるのは、子どもが失敗したときに「チャンスだよ!」と笑って言える強さを持つこと、そして、子どもが何か目標を見つけたときに、他人と比べずにその歩みを応援してあげること。
「こどもスマイルムーブメント」が目指す笑顔あふれる社会の第一歩は、家庭での小さな声掛けから始まるのかもしれません。
こどもスマイルムーブメント|東京都
https://kodomo-smile.metro.tokyo.lg.jp/
(取材・文:マイナビ子育て編集部)
