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2026年03月07日 11:31 更新

1歳の娘に覚えた違和感…児童精神科医が語る発達障害との向き合い方【精神科医さわ】インタビュー

文部科学省が公表した最新調査では、通常学級に在籍しながら学習面・行動面で特別な支援を必要とする子どもは8.8%にのぼると推計されています。これは発達障害の診断の有無にかかわらず、日常生活で困りごとを抱える子どもの多さを示しています。また家庭でも、かんしゃくや睡眠の乱れなどの困難を抱え、悩める保護者は少なくありません。

こうした背景の中、児童精神科医でYouTubeなどでも活動する「精神科医さわ」さんは、診断名ではなくその子ひとりひとりの発達のユニークさを見る視点や、怒らない工夫・環境調整の重要性を発信し、家庭で悩む親たちの支えとなっています。自身も発達ユニークな二児を育てる母でもある精神科医さわさんに、発達ユニークな子どもとの向き合い方を聞きました。

■娘が1歳のときに感じた「あれ? みんなと違うのかも?」

(精神科医さわさん:提供写真)

ーーさわさんは昨年発売した書籍『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)で、あえて“発達障害”ではなく“発達ユニーク”という言葉を使っています。

精神科医さわ(以下、さわ) 私には二人の娘がいるのですが、どちらも発達障害の診断を受けています。長女はASD(自閉スペクトラム症)、次女はADHDとLD(学習障害)の診断です。発達障害はとても身近なものでしたが、取材などで娘たちのことを説明するときに、診断名をそのまま並べて話しても、みんながその意味を理解できるわけではありませんし、私自身もしっくりこない部分がありました。
そんなとき、「うちの子たちは発達がユニークなんだよね」という言葉が、ある日ふっと自分の中に降りてきたんです。その瞬間、この言葉がいいなと心から思えました。そもそも、私たち人間は誰一人として同じ発達をたどりません。たとえ双子であっても、話し始めるスピードも、背が伸びるスピードも違います。人間はみんな唯一無二で、まったく同じ発達段階をたどる人はいないというのが私の考えです。
その中で、特性のユニークさによって困りごとが生じ、サポートが必要な人に“発達障害”という診断名がつくだけで、根本的にはみんなユニークな存在であることに変わりはないんです。そのことを伝えたくて、この言葉を本のタイトルにも使いたいと思いました。

ーーお子さんの発達がユニークだと気付いたのはいつごろでしたか。

さわ 長女の発達に違和感を覚えたのは、実は幼稚園よりもっと前、1歳ごろのことでした。きっかけは、当時仲良くしていた先輩ママの、何気ない一言でした。「さわさん、子育てめっちゃ大変だね。よく頑張ってるね。娘ちゃんの子育て、大変でしょ?」と言われたんです。その一言でふと、「あれ? みんなと違うのかも?」と気づかされたような感覚がありました。
当時の娘は、思い通りにならないと床にひっくり返って泣き叫んだり、その泣き方もどこか普通じゃない気がしていました。医学的知識はあっても、初めての育児では「何が普通なのか」が本当に分かりませんでした。私も他のママと同じように、Googleで「1歳 寝ない 発達障害」「1歳 寝ない てんかん」などと検索しながら、自分なりに手探りで育てていました。その先輩ママの一言が、「もしかしたら定型発達じゃないのかもしれない」という気づきにつながりました。

■1時間おきの夜泣きに隣人からの苦情

(※画像はイメージです)

さわ 娘はとにかく寝ない子で、夜中に1時間おきに泣き叫ぶ。私たちは当時アメリカに住んでいたのですが、毎日のように隣人から苦情が来ました。最終的には、「ベッドルームでは寝かせないでほしい。別の部屋で寝かせてくれ」とまで言われました。ベッドはひとつしかないし、泣き叫ぶ娘を抱えて、寝不足で自分も追い込まれていきました。
夫は研究留学で朝4~5時に家を出て、夜11時に帰ってくる生活で、実質ワンオペでした。娘をベッドに叩きつけてしまいそうになる瞬間もあり、「虐待って他人事だと思ってたけど、他人事じゃないな」と、本当に怖かったのを覚えています。

ーーそれは本当に大変でしたよね。現在は愛知県名古屋市で心療内科・精神科・児童精神科のクリニックを開いていますが、日々の診療やSNSでの発信に対する反応で、発達障害という言葉への誤解を感じることはありますか?

さわ 「発達障害と診断されると、障害者になったみたいで嫌だ」「診断を受けたくない」という相談を受けることが多いのですが、これは一番大きな誤解だと感じています。発達特性の程度はスペクトラム(境界線が明確でない状態)で、濃淡があります。特性が濃くて日常生活に支障がある場合は必要に応じて障害認定を受けることもありますが、特性が薄い場合は障害認定はおりませんし、そういう人は大勢います。
そもそも医療現場では現在“発達障害”という言葉はあまり使わず、正式には「神経発達症」と呼びます。ただ、一般の人が理解しやすいので、私はYouTubeなどでは便宜上“発達障害”と呼んでいます。
診断名がついたからといって、その子自身が変わるわけではありません。太郎くんは太郎くんのまま、花子ちゃんは花子ちゃんのまま。特性はその子の一側面に過ぎない、ということを知ってほしいです。

■ADHDの子が「怒られやすい」理由

『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』

ーー発達ユニークなお子さんは、本人は頑張っているのにそれに気づいてもらえず、「頑張りが足りない」「甘えている」などと悪く評価される場面もあります。

さわ そうですね。たとえばADHDの子は、じっと座っていることすら大変です。定型発達の子が苦もなくできることが、彼らにとっては生まれ持った特性上、とても難しい。集中力の持続時間が生まれもって違うんですよね。「みんなと同じにすることが、そもそもとても頑張っている状態なんだ」ということです。にもかかわらず、「怠けている」「やんちゃしている」と誤解され、家庭でも学校でも怒られやすい子たちです。

ーー保護者が適切なサポートを試みていても、周囲から「甘やかし」「しつけ不足」と誹りを受けることもありますよね。

さわ 学習面がやっぱりわかりやすいと思うのですが、たとえば私の娘は学習障害があって、読み書き計算全部苦手なタイプ。一回見た文字を覚えて文字に起こすことができないので、漢字テストは書きではなく読みのテストに変えてもらうなど、合理的配慮を受けています。
もしかしたら、みんなより10倍、20倍……100倍時間をかければ彼女もできるようになるかもしれないし、それを「甘え」だという人はやっぱりいますよね。
だけど無理にやらせようとするのではなくて、その子に合ったテストにするというのは、やっぱり必要な支援じゃないかと私は思います。本当にどう教えてもできないことがある。だからこそ、その子が努力した「過程」を大人がちゃんと見てあげることが大切だと感じています。

ーー発達ユニークな子に対する声かけで、気を付けたいことを教えてください。

さわ 根本的に、発達ユニークな子の子育てと定型発達の子の子育てで、本当に大事なことは何も変わらないという前提ですが、特に気をつけて欲しいのは「とにかく怒らないでください」ということです。まったく怒らない、叱らないことが正しいというわけではありませんが、特にADHDのお子さんは非常に怒られやすく、わざと悪いことをしているわけではないのに怒られ続けたら、自己肯定感はどんどん下がってしまいます。だから私は、「とにかく怒らないであげてください」と伝えています。
それでも「危ない!」「やめて!」とか、咄嗟に大きな声で止めなければならない場面はありますよね。だから仕組みを整えてあげる必要があると思います。

■変えるべきは「子ども」ではなく「仕組み」

(※画像はイメージです)
(※画像はイメージです)

ーー仕組み化が大事なのですね。どのような「仕組み」が必要なのでしょうか。

さわ 何かが「できない」というとき、大人はつい「その子を変えよう」としてしまいがちです。たとえば、椅子にじっと座っていられない子を、我慢して座れるようにしようとする。でもそうじゃなくて、じゃあその子が興味のあるものを机の上に置いてあげて“座りやすい仕組み”を整える。子どもを変えるのではなく、仕組みや環境を変えてあげるという視点がすごく必要だなと思いますね。

ーーそれでもやはり、どんなお子さんでも、保護者が叱らざるを得ない場面は出てくると思うのですが、どんな点を意識すると子どもの自己肯定感を守れるでしょうか。

さわ 感情的に怒ってしまったら、できるだけ早く謝ることです。私自身も、駐車場など危険が伴う場面では大きな声を出してしまうことがあります。また、本当は落ち着いて説明するのが理想でも、親も余裕がなく感情的になってしまうことがありますよね。そんなときは、できるだけ早く「さっきは大きな声で怒ってごめんね」と謝るようにしています。翌日でもいいので、きちんと謝ることが大切です。親も子どもと一緒に成長していけばいいんです。

ーー「親も一緒に成長していけばいい」という言葉に救われます。「子どもの困難は、自分の育て方のせいではないか」と悩んでしまう保護者もいると思います。先生だったら、そうしたふうに悩む親御さんに、どんな言葉をかけますか。

さわ 子育てって自分がやってみないとわからないじゃないですか。私も、「何で誰も教えてくれなかったんだろう」と思ってしまったことがあります。こんなに夜も眠れないものだって教えてほしかったな、とか(苦笑)。でも親も初めて親になるので、できなくて当然なんですよね。トライアンドエラーで、「やってしまった」と思ったらそれを少しずつ修正していけばいい。
母親というのはひとつの大切な役割ではありますが、親である前にやっぱり1人の人間で、休むことも必要ですし、自分のすべてを犠牲にして子どもに尽くさなければならないわけではありません。人それぞれ方法は違うと思いますが、自分の心を休める方法を知っておいてほしいと思います。
また、親は子どもを案ずるがあまり「こうしたほうが、ああしたほうが」と先回りして考えがちですが、親と子はまったく別の人格。親が良いと思うことがその子にも本当にいいかはわからないですし、その子が何を感じて、何をしたくて、何が楽しくて、何を喜びと感じるのか、子どもが主体的に生きることを応援できることがすごく大事です。そのためには、根拠がなくてもいいから、親が「きっとこの子は大丈夫だ」と思えることが大切だと思います。

児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること
(2026/03/07時点)

(取材・構成 マイナビ子育て編集部)

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