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2026年05月29日 16:01 更新

「一度選んだ人がまた選ぶ」理由とは? 甲府ジュエリー、100億円市場を支える“認定制度”が始動

結婚や出産、記念日の贈り物としても身近な「ジュエリー」。 実はその多くが、山梨県甲府市で作られていることをご存じでしょうか。“宝石のまち”として知られる甲府市が、このたび「甲府ジュエリー認定制度」を創設。品質や産地を市が公式に認める新たな仕組みをスタートさせます。

山梨県甲府市の樋口雄一市長は5月18日、「甲府ジュエリー認定制度」の創設に関する記者発表を実施。6月1日から運用を開始し、まずはふるさと納税の返礼品として提供されるジュエリーが対象となります。

甲府市内で一定以上の製造工程を経た製品を「甲府ジュエリー」として認定し、ブランド価値と信頼性の向上、さらには宝飾産業を通じた地域振興につなげる狙いです。

結婚記念日や出産祝い、節目の贈り物として選ばれることも多いジュエリー。今回の制度では、こうした特別なアイテムについて「どこで、どのように作られたか」を、自治体が“お墨付き”として示す仕組みとなります。

樋口市長は会見で、この新制度について、「甲府という地域の魅力を未来へ紡いでいくための大切な礎」と位置づけました。

「甲府ジュエリー認定制度」とは?

今回発表された「甲府ジュエリー認定制度」は、甲府市内で主に製造されたジュエリーを「甲府ジュエリー」として公式に認定し、その品質と付加価値を市が保証するものです。

山梨県は日本有数の宝飾産業の集積地として知られ、国内の宝飾品出荷額の約3割を占めています。その多くが甲府市に集まっており、企画から加工まで一貫して行える、世界的にも珍しい集積産地です。しかしながら、これまで“甲府産”であることを証明する統一された基準は存在しませんでした。

新制度では、ジュエリー製造における「商品企画」「原型製作」「細工加工」「素材成形」「納品前加工」といった主要工程のうち、“過半数以上”が甲府市内で行われていることを認定の条件とします。

審査は、日本で唯一の公益を目的とした宝石・貴金属の総合検査機関であり、専門的な知見を持つ一般社団法人宝石貴金属協会が行い、市と共同で認定。認定された商品には、専用の「甲府ジュエリー認定証」が同梱されます。

樋口市長は、制度創設の意義について、「この制度は単なる認定にとどまらず、甲府の職人の技と情熱、そして甲府という地域の魅力を未来へ紡いでいくための大切な礎。国内だけでなく、世界に誇れるブランドとして甲府ジュエリーが輝き続ける未来を作りたい」と述べました。

(樋口雄一甲府市長)

ふるさと納税で急成長、その理由とは

甲府市はこれまで、「宝石のまち」としての認知を高めるため、さまざまな取り組みを行ってきました。

東京ガールズコレクションへの出展、マイナビとの業務提携による発信、全国の高校生を対象とした「甲府ジュエリー甲子園」の開催など、多角的なプロモーションを継続的に取り組んできたことが、大きな成果となって表れ始めています。

「令和7年度は(寄付額が)初めて100億円を突破することができました。そのうち8割以上がジュエリー関連の返礼品によるもので、リピーター率は4割を超えます。これは、甲府ジュエリーの技術力と品質の高さが、寄付者の皆様からの期待に応えられているからこそだと考えています」(樋口市長)

つまり、“一度選んだ人が、もう一度甲府ジュエリーを選んでいる”——それだけ品質への信頼があることがうかがえます。

今後、甲府市はこの認定制度を通じて、ジュエリーの地域ブランドとしての価値向上とともに、ふるさと納税市場での差別化や地域活性化によるシビックプライド(市民の誇り)の醸成に取り組んでいく考えを示します。

「認定制度でさらに甲府ジュエリーの価値を高め、日本はもとより全世界に発信していきたい。例えば、鯖江ならメガネ、今治ならタオル、倉敷ならデニムがありますが、『甲府はジュエリー』と言っていただけるようになりたいと思っています」(樋口市長)

認定証のデザインに込められた想い

(一般社団法人宝石貴金属協会 松本一雄理事長)

制度の認定機関となる宝石貴金属協会の松本一雄理事長も、甲府のポテンシャルを強調します。

「甲府は世界でも類がないジュエリーの集積産地。この制度をきっかけに、さらに認知を高めていく必要があります」(松本理事長)

ジュエリーの認定についても、「あくまで品物一点一点を精査します」と解説。書類審査はもちろん、必要に応じて現地調査も行うなど、厳格なスキームを構築しています。

(KOFUプロモーションデザインディレクターの中野シロウさん)

認定された商品に同梱される「甲府ジュエリー認定証」のロゴマークは、日清食品の「ひよこちゃん」や日清シスコの「シスコーン」をデザインした、中野シロウさんがデザイン。武田信玄の「四菱」をモチーフに、ダイヤモンドの形を組み合わせたシンプルなデザインになっています。

中野さんはデザインに込めた想いを、「シンプルに、より長く使えるものをデザインさせていただきました。武田(信玄)の四菱をモチーフにしつつ、ジュエリーを象徴するダイヤモンドの形をイメージしています。子供でも描けるようなシンプルさを目指しました」と語りました。

認定証には、1枚ずつ個別のシリアル番号も付与。手元に届くジュエリーが世界にひとつだけの「甲府市が認めた本物」であることを担保する重要な役割を果たします。

信頼できる産地のジュエリーを、安心して選んでほしい

今回の制度について、甲府市の担当者にあらためて狙いを聞きました。

ーーなぜ今、この認定制度を立ち上げたのでしょうか?

「甲府は古くから宝飾産業が盛んで、ジュエリーの品質と技術は高く評価されてきましたが、その価値を全国の皆様にもっと知っていただくことが必要だと感じていました。
そのため、独自の認定制度を立ち上げ、この制度を通じて甲府ジュエリーのブランド力を更に高め、国内外にその魅力を発信していきたいと考えています」

ーー「認定」という形にした理由は?

「これまでは、同じ甲府のジュエリーであっても、どこまでが“甲府産”なのかを示す明確な基準がありませんでした。
認定制度を設けることで、製造工程の過半数が市内で行われていることを基準として可視化できます。
生産者側にとっては誇りにつながり、購入される方にとっては安心して選べる材料になると考えています」

ーーふるさと納税でジュエリーが人気な理由は?

「甲府ジュエリーは、分業体制の中で各工程の専門職人が関わることで、非常に品質の高いものづくりが実現されています。その技術力が結果として評価され、選ばれ続けているのではないかと感じています。実際に本市のジュエリーはリピーターが多く、一度手に取っていただいた方の満足度が高かったことが伺えます」

ーー私たち“選ぶ側”には、どんな変化がありますか?

「大切な人への贈り物や、人生の節目に選ぶジュエリーだからこそ、“どこで、誰が、どのように作ったものか”を安心して選べることは、とても重要だと思います。認定制度があることで、その背景まで含めて価値を感じていただけるようになる。そうした“見えない部分の信頼”を届けていきたいと考えています」

ーー子育て世代の方にとって、この制度の意味は?

「子育て中は、ご自身のための買い物だけでなく、家族やお子さんに関わる節目の贈り物を選ぶ機会も多いと思います。そうしたときに、“信頼できる産地のものを選びたい”“安心して贈りたい”と思われる方は多いのではないでしょうか。この制度が、その一つの判断基準になっていただければ幸いです」

ジュエリー選びの視点が変わる

「甲府ジュエリー認定制度」は当面、ふるさと納税の返礼品が対象となりますが、将来的には一般販売の宝飾品も対象とした認証システムへと普及させていく方針だといいます。

「宝石のまち」甲府が、その価値を証明する新たな“証”を手に入れた今回の取り組み。贈り物として選ぶときも、「どこで作られているか」を少し意識してみる……そんな視点の変化が、これからのジュエリー選びを変えていくかもしれません。

(取材・写真・文 猿川佑)

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