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- 2026年08月27日 07:11
保育園・幼稚園が実践している! 親子の会話の質を上げる、意外なツールとは|「ことばで伝える」ができない子どもたち #2
子どもの「ことばの力」の成長には、家庭での環境や日々の会話が大きく影響するといいます。では、私たちは普段、子どもとどんなやりとりをしているのでしょう? 会話を文字化して客観的に見てみることで、思いがけない気づきがあるかもしれません。
書籍『「ことばで伝える」ができない子どもたち』(著:石井 光太 /日本実業出版社)は、1,000人以上への取材をもとに、子どもたちの「ことばの力」が育ちにくくなっている現状をひも解き、家庭でできる声かけや関わり方など、子どもの「伝える力」を育むヒントをまとめた一冊です。
今回は、ある園で実施されている「親子の会話メモ」という取り組み。その取り組みを通して見えてきた、子どもの「ことばの力」への効果について、本書より一部抜粋してご紹介します。
「親子の会話メモ」で会話を客観視してみる
保育園や幼稚園に勤める先生は、日々子どもの言葉の成長をリアルタイムで見ています。それゆえ、家庭環境によって子どもたちの〈ことばの力〉が強くもなれば、弱くもなる現実を嫌というほど目にしています。
ただ、多くの先生は、家庭に原因があると感じていても、保護者との関係を悪くしないようにそれを言葉にして指摘することはほとんどありません。
それでも、私が知っているいくつかの園では、入園前にきちんと子どもの成長を最優先していることを理解してもらい、〈ことばの力〉を伸ばすために家庭にさまざまな働きかけをするようにしています。そうした園の一つで行なわれていて、明らかに効果が現れると感じる取り組みが、「親子の会話メモ」です。
園が配布しているのが次ページのようなメモ用紙です(図は記入例)。それに、印象に残った親子の会話をメモしてもらいます。左側に親が発した言葉、右側に子どもが発した言葉を書き、どのようなやりとりだったかを文字にします。
親はそれを完成させると、言葉のやりとりを見直して、感想を書きます。子どものことを考えて声かけができていたか、それに対して子どもは何を考えて答えていたか、ここから言語による新たな思考が生まれているか……。
園長もそれを読んでコメントを記します。親のかけた言葉をほめたり、子どもの成長を喜んだり、改善策を提案したりするのです。
どうしてこのような手間のかかることをするのでしょうか。
女性の園長先生は次のように話していました。
親が頭の中でちゃんと子どもの気持ちを引き出したと思っていても、現実にはそうでないことはあります。子どもがしっかりと受け答えしていると思っても、型通りの返事をしているだけのこともあります。
家族の対話を文字にすれば、そうしたことが目に見える形で明らかになるだけでなく、どのように言葉がけをしたらいいのかがわかります。それが親子の対話の質を高めるだけでなく、親子関係をも良いものにしていくのです。
定期的にこれをやると、最初は面倒だと思っている親も、次第にその効果を実感し、進んでメモをするようになっていきます。
園長先生が指摘しているのは、自分の会話を一歩引いたところから客観視することの大切さです。これをしっかりとやっている家庭と、そうでない家庭とでは、子どもの会話や思考に明確な違いが出てきます。
話が少しずれるように感じるかもしれませんが、DV加害者に対する矯正プログラムを見学すると、そのことをつくづく感じます。
近年のDVは身体的な暴力ではなく、言葉によって精神的に追い詰める心理的な暴力に変わりつつあります。心理的DV加害者の特徴は、自分が言葉によって相手を傷つけているという自覚がほとんどないことです。加害者はあくまで自分なりの正論を言っているだけで、悪いのは相手だという認識なのです。
そのため矯正プログラムでは、加害者と被害者の間で行なわれた会話のやりとりをホワイトボード上に文字で記した上で、参加者全員がそれを見ながら討論します。
自分では正論だと思っていても相手にとってはそうではないとか、自分では相手の気持ちを考えているつもりでも相手にとってはそうではないなどと指摘する。これによって、加害者に自分の言葉の加害性を認識させ、改善策を見つけていくのです。
ここからわかるのは、大人であったとしても自分で発した言葉や、それが相手にどういう影響を与えているのかについて意外に無自覚だということです。わかっていたつもりでも、文字化してみると、印象がまったく違っていたりする。
それは親子の会話においても同じなのです。だからこそ、親子の会話メモによって文字化したものを見ることで、親の言葉がけが子どもの思考や表現にどう影響を与えているかよりわかるのです。
子どもに対して適切な言葉がけをしたければ、数カ月に一度でいいので、親子の会話を文字に起こしてみてください。そこに必ず新しい発見があるはずです。
POINT
子どもの頭の中にある言葉を引き出す問いかけ型の会話を意識しつつ、「親子の会話メモ」などで会話を客観視する
続きはぜひ書籍でご覧ください。
※本記事は、『「ことばで伝える」ができない子どもたち』<著:石井 光太/日本実業出版社>より抜粋・再編集して作成しました。
