【医師監修】排卵日の排卵とオリモノの関係とは?
排卵とオリモノ。何となく結びつかないかもしれませんが、両方とも女性ホルモンの影響を受けていて、生理周期と密接な関わりがあるんです。ここでは排卵日の予測方法とオリモノとの関係についてみていきます。
排卵日とは?
思春期を過ぎた女性は更年期を迎えるまでの間、妊娠していない限り、ほぼ月に1回排卵を迎えます。この排卵には、女性ホルモンや生理周期が大きく関係してきます。
卵胞から卵子が飛び出した日のこと
排卵とは、卵巣内の卵胞(卵子を包む袋状のもの)から卵子が飛び出すことで、この排卵があった日を「排卵日」といいます。排卵日やその直後が、もっとも妊娠しやすい 時期となります。
排卵を境に女性ホルモンは変化する
毎月繰り返される生理周期のなかで、大きな役割を果たしているのがエストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモン。この2つの女性ホルモンのバランスが劇的に変わるタイミングが、生理と排卵です。
具体的には、生理が始まってから2週間ほどはエストロゲンがメインとなって働き、排卵を迎えた後はプロゲステロンの役割が大きくなります。そして生理を迎えると再び、エストロゲンがメインとなって働きます。
このホルモンバランスの変化がココロとカラダのコンディションを乱すことが多々あります。代表的なものが月経困難症やPMS(月経前症候群)ですが、排卵日前後に体調を崩すという人も少なくありません。
それでは、オリモノとは?
オリモノ(帯下:たいげ)とは、子宮や卵管、腟粘膜から分泌された分泌物の総称です。下着を汚すなどで不快に感じている女性もいるかもしれませんが、女性の体にとって重要な役割を持っていることをご存知でしょうか。
オリモノの作用は大きく2つ
オリモノの役割の一つが「自浄作用」、もう一つが「腟内を潤す作用」です。
正常なオリモノは、腟などに棲息する常在菌である乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)の働きによって酸性に保たれていて、侵入した細菌などが増殖しにくい環境をつくっています。
また、腟内を潤すことで乾燥によるトラブルから守っているだけでなく、精子を子宮内に受け入れやすい状態にもしています。
オリモノは女性ホルモンの影響で変化する
実は、オリモノも生理周期に伴って性質を変えています。そこには女性ホルモン が大きく影響しています。どう変化するのかみていきましょう。
排卵前(卵胞期)
一般的に、オリモノの分泌量や性状はエストロゲンの分泌の状態に応じて変わります。生理直後である卵胞期の前半はエストロゲンの量が少ないため、オリモノも少量でさらっと しています。
排卵日が近くなるとおりものの量が増えて、透明で水っぽい性質に変わっていきます。ベタベタした感じ(粘度)がなくなり、触るとスーッと糸を引くような伸びやすさが出てきます(専門的には、「牽糸性(けんしせい)が増える」といいます)。
排卵期
排卵の1日前になるとオリモノの分泌量がもっとも増え、 サラサラ感や伸びやすさがさらに増します。透明で量の多いオリモノのおかげで精子は子宮内に進入しやすくなります。 こうして精子を迎える状態を整えます。
排卵後(黄体期)
排卵後はプロゲステロンの作用によって粘液の 量が減り、粘り気が出て伸びにくくなります。色も透明から不透明に変わります。粘り気があり少ない量のオリモノであるため、精子は進入しにくくなり、同時に細菌などの異物も進入しにくくなるので感染防御にもなります。
排卵日はオリモノの状態で予測できる?
これまでみてきたように、生理周期によって変わるオリモノの性状。では、このオリモノの状態から排卵日を予測することは可能でしょうか。
自分で調べるのはちょっと難しいかも
残念ながら、パンツやパンティライナーについたオリモノの性状から、排卵日を正確に知るのは難しいといえます。
不妊治療を行っている医療機関などでは、不妊症の原因を調べる際、 粘液(オリモノ)を採取して、その性状を調べるという「頸管粘液検査」を実施することもあります。ただ、この検査は、粘液の性状から精子の受け入れやすさなど をみるために実施しているものであり、粘液の状態だけで排卵日を正確に予測することは、専門の機関でも困難だといわれています。
オリモノよりも基礎体温のほうが大事
排卵日を知るという意味では、オリモノの観察より有効な方法があります。それが「基礎体温」です。
基礎体温とは「睡眠後の起床時の安静状態で測った体温のこと」で、専用の体温計で測定。女性の場合、毎日測定することで、生理の周期や排卵の状態が推測できるとされています。
実際に基礎体温をつけてみるとわかりますが、生理後には体温が低くなり(低温相)、生理から約2週間後(個人差があります)に排卵を迎えると、それまでよりも0.3~0.5℃ほど体温が高くなります(高温相)。そして、再び生理が始まる直前になると、体温が下がります。
排卵に関していうと、先の低温相から高温相に移る直前の、「陥落期(体温陥落)」(体温がいったん下がる) があった日の前後に排卵が起こっている、つまりこのあたりが排卵日と推測されます。
排卵日の推測だけでなく、生理周期に伴うさまざまなもの、例えば生理日の予測やPMS(月経前症候群)の時期などがある程度把握できる基礎体温。
自分の女性の体の状態を知るにはとても便利なものですが、体の変化の傾向を知るにはたった1回(周期)の測定では不十分。少なくとも2~3回(周期)は続けてつけるようにしましょう。
排卵日予測検査薬を使う方法も
基礎体温では「排卵が起こった日」を推測することはできるものの、排卵日を事前に予測することはできません。ドラッグストアなどで扱っている「排卵日予測検査薬」を使用すると、これから排卵されるかどうかを調べることができます。
2016年から市販されているもの で、現在、数社から発売 。製品によって5回分~14回分までのセットで販売されており 、3000円前後の価格となっています。
排卵日予測検査薬が排卵を予測できるのは、女性ホルモンの変動をみているからです。
排卵の前になると、エストロゲンの分泌が増え、ある一定以上に達すると 、脳の下垂体からLH(黄体形成ホルモン)が一気に放出されます。これが「LHサージ」というもので、LHサージの開始から約34~36時間で排卵が起こります。このLHサージの時期を推測することで排卵日を予測するのが、排卵日予測検査薬です。
自分の生理周期から換算して次の生理開始予定日の17日前から使用します。毎日1または2回、ほぼ同じ時間帯に、試薬に尿をかけるだけ。陽性になった場合はその日あるいは翌日が排卵日と推測できます。なお、この検査は陰性であっても避妊目的には使用できません。
オリモノの状態で病気かどうかもわかる?
ここまでは排卵とオリモノの関係を見てきましたが、ここからは補足として、オリモノの知識を簡単にまとめたいと思います。
正常なオリモノとは?
オリモノの性質は年齢や生理周期、性交渉後などで変わりますが、基本的に正常なオリモノは、透明に近い白で卵白のような粘り気があり、下着などに付いて乾くと薄い黄色になります。
臭いは無臭か、わずかに甘酸っぱい臭いがします。これは腟の粘膜に棲んでいる常在菌の一つ、乳酸桿菌によるものです。
オリモノは年齢で変わる?
20代~40代半ばの性成熟期はオリモノは十分に分泌されますが、初潮から思春期にかけての時期や、更年期はオリモノの量は少なめになります。
老年期に入ると量はかなり減ります。そのため、腟内が乾燥してオリモノによる自浄作用が働かなくなり細菌感染を起こして萎縮性腟炎となり、治療が必要になることもあります。
臭う、量が多い……オリモノの変化は何のサイン?
オリモノの異常と病気については以下の通りです。
量が多い
妊娠するとエストロゲンの分泌量が増えるため、オリモノの量が増えます。このときのオリモノは水のような性質で、妊娠の週数が増えるほど量も多くなります。これは生理的なものなので心配ありません。
一方で、細菌性腟症、腟トリコモナス症、性器カンジダ症、性器クラミジア感染症などの感染症によりオリモノが増加することもあり、この場合は治療が必要です 。
色がついている
正常なオリモノは透明か、透明に近い白色です。真っ白で酒粕のようにボロボロしている 、灰色や黄緑色のおりものなどといった状態のときは、カビや細菌などによる感染や炎症の可能性があります。
血が混じる
子宮腟部びらんや子宮内膜炎、頻度は少ないですが、 子宮頸がん、子宮体がんにより血の混じったオリモノが出ることもあります。子宮頸がんの早期では、性行為の後に血が混じった赤いオリモノが出ることもあるので、注意しましょう。更年期以降で腟が萎縮してくると、血が混じって茶褐色のオリモノが出ることもあります。
悪臭がある
正常なオリモノは無臭か、少し甘酸っぱい臭いがします。細菌感染があると、腐敗臭のあるオリモノになることが多くなります。また、子宮頸がん、体がんでも悪臭を伴うオリモノが出る場合があります。
まとめ
不快でうっとうしい。そんなふうに思う人も多いオリモノですが、ここではおもに排卵とのかかわりについて紹介しました。オリモノは、排卵や女性ホルモンの動きにより変化するほか、体を守る働きや、病気を知らせる重要なサインになっているという特徴があり、女性の健康になくてはならない存在です。
毎日その変化をチェックして、日々の体調管理に役立てみてはいかがでしょう。
(文:山内リカ/監修:中林稔先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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