【医師監修】コーヒーのカフェイン含有量は? 妊娠や授乳中のリスクと目安量
コーヒーの得も言われぬ香りと味。コーヒー好きにはたまりません。日本人は平均すると週に10杯強のコーヒーを飲んでいると言われます[*1]。でも、妊娠中や授乳中にはコーヒーの特徴的な成分「カフェイン」の摂りすぎに、少し注意が必要です。
コーヒーのカフェイン含有量はどのくらい?
健康に良い、悪いと取りざたされることの多いカフェイン。まずはコーヒーにそのカフェインがどのくらい含まれているのか調べてみましょう。
コーヒーはやはりカフェインが多い飲み物
コーヒーに含まれているカフェインの量は、コーヒー豆の使用量、種類によって異なります。もちろん、お湯の量や抽出方法によっても違ってきます。そのため一概に言うことはできないのですが、標準的な飲み方、例えばコーヒー粉末10gを熱湯150mLを使ってドリップ抽出した場合、カフェイン量は100mLあたり60mgというデータがあります[*2][*3]。1杯の量はカップによって異なりますが、1カップ150mLとすると1杯あたりカフェインは90mg、1カップ200mLとすると1杯あたりカフェインは120mg含まれていることになります。
インスタントコーヒーではどうかというと、粉末100gに約4gのカフェインが含まれています。粉末を2g、熱湯140mLを用いた場合、100mLあたりカフェインは57mgとなり、ドリップのコーヒーとはほとんど変わらない含有量となります[*2]。
ほかの飲み物と比べてみると…
では、100mLあたり約60mgというコーヒーのカフェイン量は、極端に多いのでしょうか、それとも少し多い程度なのでしょうか。ほかの飲み物と比べてみましょう。
紅茶のカフェインはコーヒーの半分
例えば紅茶は茶葉5gを360mLの熱湯を使って1.5~4分間浸して淹れた場合、カフェイン量は100mLあたり30mgというデータがあります[*4]。紅茶にもコーヒーの約半分ほどのカフェインはあるということですね。
煎茶は少なめ、玉露は多い
日本茶については、まず煎茶では、茶葉10gを90℃、430mLのお湯で1分かけて作った場合、100mLあたり20mgのカフェイン量というデータがあります[*4]。紅茶よりもさらに少ない量です。ところが、高級な玉露では、茶葉10gを60℃のお湯60mLを使い2.5分かけて作ると、100mLあたりのカフェイン量は160mgと、コーヒーの3倍弱になります[*4]。
その他の飲み物
そのほか、細かい作り方は省いて(いずれも前記と同様に標準的な方法で作った場合)、カフェイン量だけを示すと、ほうじ茶は100mLあたり20mg[*2]、玄米茶は同10mg[*2]、ジャスミン茶やココアは同8~10mg[*5]というデータが報告されています。またコーラは1缶あたり36~46mgのカフェインがあります[*4]。これらに比べると、やはりコーヒーのカフェイン含有量は多いと言えます。
なお、麦茶やそば茶はカフェインを含んでいません。
コーヒーよりもカフェインが多い飲み物もある
さきほど「玉露のカフェイン量はコーヒーよりも多い」と書きましたが、コーヒーより注意が必要な飲み物はほかにもあります。
例えば、エナジードリンク。栄養ドリンクや目覚め効果をうたったドリンクには、製品による差がありますが、1本あたり36~150mgのカフェインが含まれています。これを100mLあたりに換算すると32~300mgにもなり、多くの製品でコーヒーのカフェイン含有量を大きく上回ります[*4]。
また、飲む機会は少なく、量もそれほど飲まないとは思いますが、抹茶は70mLで48mgと、コーヒー並みのカフェイン含有量です[*4]。
普段はどのくらいカフェインをとっているの?
それでは、一般的に日本人はどのくらいカフェインをとっているのでしょうか。これについては個人差もあることから正確なデータが少ないですが、1日に200mgに満たない程度ではないかとの報告があります[*6]。
これはコーヒー2杯程度。コーヒー好きの人にしてみれば、意外に感じるほど少ない量かと思いますが、平均的にはそのくらいの摂取量のようです。
カフェインが体に与える影響について
カフェインは体にさまざまな影響を及ぼすことがわかっています。それには良い面もあれば、あまりよくない面も。
良い影響
眠気がとれて、すっきりする
カフェインは、適量であれば頭が冴えて眠気も覚めます。また、リラックス効果も期待できます。実際、仕事などが忙しいとき、コーヒーを飲んですっきり気分転換、という工夫をしている人も少なくないのでは?
スポーツ能力がアップする可能性も
スポーツのパフォーマンスを高める効果に期待し、アスリートの間ではエルゴジェニックエイド(競技力向上サポート手段)としてカフェインが使われることが少なくありません。
病気のリスクを下げるという研究結果も
カフェインの適量の摂取で、がんや糖尿病、パーキンソン病などを抑制するように働くのではないかと考えられていて、それを示唆する科学的データも報告されています。また、鎮痛作用があるため、総合感冒薬や鎮痛薬などにも使われています。
悪い影響
カフェインのよくない面についても触れておきましょう。極端な話としては、ごく稀に、短期間の過剰摂取が原因と思われる死亡例の報告もありますが、それほどでなくても以下のような心配は日常的に起こり得ます。
過剰摂取によって急性症状が
カフェインを過剰に摂取すると、健康な成人でも心拍数が増えたり、めまいや興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気などが引き起こされることがあります。
長期間の過剰摂取では慢性的な影響
人によってはカフェインの摂取によって高血圧や循環器疾患(心臓や血管の病気)のリスクが高くなることがあります。
アルコールとの飲み合わせに要注意
コーヒーをアルコールと一緒に飲むのはよくありません。なぜかというと、アルコールの酔いをカフェインの興奮作用が覆い隠してしまい、酔いに気づかずブレーキが効かなくなる可能性があるからです。同じ理由で、カフェイン入りのエネルギードリンクをアルコールと一緒に飲むことも注意が必要です。
また、アルコールとカフェインはともに利尿作用があります。そのため、気づかないうちに脱水状態になってしまう危険も伴います。
妊娠中のカフェイン過剰摂取によるリスク
ここまではカフェインの一般的な話でしたが、ここからは妊婦さんや授乳婦のみなさんへの注意点をまとめます。まずは妊婦さんとカフェインの関係です。
妊娠中のトラブルが増える可能性
カフェインは前述のように、適量であれば健康に良い面が多いのですが、妊婦さんの場合、少し話が変わります。
具体的には、カフェインの過剰摂取により、流産、胎児の発育遅延、出生した際の低体重などが起こる可能性が示唆されています[*4]。妊娠中のカフェイン摂取量には、十分に留意すべきでしょう。
妊娠中はカフェインの影響がより大きい可能性
妊娠中には、カフェイン摂取の影響がより大きく現れる可能性もあります。それは、血液からカフェインが消失する速度が妊娠中は、通常より遅くなるためです。そのため、妊娠していない時に比べて、少量のカフェイン摂取でも、カフェインのよくない面が出てきやすいということです。
授乳中のカフェイン大量摂取によるリスク
続いて、授乳中のカフェイン摂取の注意について解説します。
さきほど述べたように、妊娠中は血液からカフェインが消失するまでの時間が通常より遅くなるため、少量でも普段よりその影響が大きくなることが懸念されますが、出産後の授乳であればこの点についての懸念はなくなります。ただし、微量ではあるものの、母乳を通して赤ちゃんもカフェインを摂取することになり、影響を及ぼす可能性があることが示唆されています。
子供がカフェインを多く摂取すると、不眠や興奮などのカフェインのよくない面が大人よりも強く現れる可能性があります。そのため、「カフェイン厳禁」とは言わないものの、妊娠中と同程度に摂取量に注意することが望ましいとされています。
妊娠中・授乳中のカフェイン摂取について
妊娠中や授乳中に、カフェインを全くとってはいけないわけではありません。ただし、ここまでに解説してきたように、妊娠中や授乳中にはカフェインのよくない面が現れやすいため、摂取量により注意する必要があります。
世界保健機関や各国のスタンスは?
国連において保健関連施策をリードする世界保健機関(WHO)では、1日のカフェイン摂取量が300mgを超える妊婦に対しては、流産や新生児の低体重リスクを低減するために、妊娠中はカフェイン摂取量を制限するように注意喚起しています[*4]。 アメリカ産婦人科学会では、妊婦さんのカフェイン摂取量として「1日200mg以下に抑えること」を推奨しています[*7]。また、カナダ保健省では、妊娠適齢女性の1日あたりカフェイン最高推奨摂取量を300mgとしています[*4]。
国内の基準は
国内では、内閣府および農林水産省消費・安全局食品安全政策課が、上記のWHOや各国の基準を紹介しています。また、厚生労働省も、ホームページ内に「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A」という情報を公開し、上記のような世界各国・機関の推奨事項をとりまとめて紹介しています。
カフェインの影響が気になるときの工夫
上記のようなWHOや各国政府のメッセージからわかることは、妊娠中や授乳中はできるだけカフェイン摂取を控えるのに越したことはないということです。
ですから、例えば1日に何杯かコーヒーを飲んでいたのならば、1~2杯コーヒーを楽しむほかはデカフェ(カフェインレス)に置き換えたり、常飲するのは麦茶やコーヒーに似た風味を味わえるたんぽぽ茶(たんぽぽコーヒー)などの、ノンカフェインを選ぶようにしましょう。適度に楽しみながらも、カフェイン摂取量が多くならない工夫をしてください。
まとめ
母体と赤ちゃんの健康被害をなくすためにも、妊娠中は1日に300mg、なるべくなら200mgを超えない量のカフェイン摂取が望ましいようです。また、授乳中のカフェインの摂りすぎは赤ちゃんに不眠や興奮などの影響をもたらす可能性が示唆されているので、授乳期間もやはり摂りすぎに注意しましょう。コーヒーが好きな方にとって、一時的であっても控えるのはつらいことかもしれませんが、完全NGというわけではありませんから、赤ちゃんの健康を第一に考えて量を調整しましょう。
(文:久保秀実/監修:直林奈月先生)
[*1]全日本コーヒー協会/日本のコーヒーの飲用状況
[*2]内閣府食品安全委員会【読み物版】生活の中の食品安全−食品中のカフェインについて−その1 平成30年1月12日配信
[*3]農林水産省/消費・安全 リスク管理(問題や事故を防ぐ取組) 個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質) カフェインの過剰摂取について
[*4]内閣府食品安全委員会ファクトシート 食品中のカフェイン
[*5]東京都福祉保健局「東京都食品安全FAQ」
[*6]東京福祉大大学紀要7(2),77-,2017
[*7]医学書院「週数別妊婦健診マニュアル」p355
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます