【医師監修】子供の湿疹・発疹 | 症状別考えられる病気と対処法
子供に湿疹ができると、どうケアすればいいのか、受診した方がいいのか迷ってしまいますね。発熱があれば感染症も心配です。そこで、子供に湿疹ができたときに考えられる病気や受診の目安についてまとめました。
湿疹とはどんな状態?
まずは「湿疹」とはどのようなものか知っておきましょう。
湿疹=皮膚の炎症(赤み、かゆみ、水ぶくれ)
湿疹は、皮膚の最も外側の表皮で起こる炎症の総称。赤み、ぶつぶつ、水ぶくれ、かさぶたから、これらが慢性化して皮膚がゴワゴワになった状態も含まれます。かゆみのない湿疹もありますが、多くはかゆみを伴い、症状は数日で良くなるものもあれば数ヶ月続くものもあります。
原因は多岐にわたり、はっきりわからないことも
湿疹の原因はさまざまです。子供ではかぶれ(接触性皮膚炎)やアトピー性皮膚炎、赤ちゃんの乳児湿疹などが代表的なものですが、原因がはっきりとわからないこともあります。
治療方法は原因により異なりますが、皮膚を清潔にすることを指示されたり、ステロイドが含まれた塗り薬を処方されることが多いでしょう。
「湿疹」と「発疹」、「じんましん」のちがい
湿疹と並んでよく聞く皮膚症状として「発疹(ほっしん)」や「じんましん」があります。これらは同じものではなく、それぞれ意味合いが異なります。
「発疹」は、皮膚に現れる病的な変化の総称。湿疹もじんましんも発疹のひとつです。じんましんと湿疹は症状の出方が異なります。じんましんは、突然赤くて境目がはっきりとした皮膚の盛り上がりが出て、だいたい24時間以内に消えたり現れたりします。湿疹はじんましんのように短期間で症状が消えることはありません。
湿疹とじんましんでは対処が変わってきます。じんましんについて、詳しくは下記を参照してください。
また赤ちゃんの湿疹については下記を参照してください。
発熱を伴わない湿疹の原因
発熱を伴わない湿疹の原因の中から、子供に多いものをいくつか紹介します。
あせも
湿疹のできる場所:首、脇、肘の内側や膝の裏、お腹、背中、おむつ周り、頭など。汗をかきやすくたまりやすいところにできます。
特徴:1~2 mmほどの小さく赤みのある丘疹がたくさんできて、かゆみがあります。詳しくは下記を参照してください。
接触皮膚炎
湿疹のできる場所:原因となる物が触れた部分にできます。手、足、顔などの一部分に出やすいです。
特徴:一般に「かぶれ」と呼ばれる皮膚炎です。刺激物やアレルゲンによって起こり、湿疹の境界ははっきりしていることが多いです。化粧品、金属、薬、石鹸、植物、体液などさまざまな物が原因となります。
水いぼ
湿疹のできる場所:脇、脇腹、腕、太ももなど。
特徴:子供に多いウイルス感染症。1~5 mmの丸く光沢のある「いぼ」ができます。それ以外の症状はなく、かゆみや痛みはありません。詳しくは下記を参照してください。
とびひ
湿疹のできる場所:目・鼻・口の周りのほか、手・足や全身。
特徴:虫刺されやあせもなどを掻き壊すと、そこに細菌が感染して「飛び火」のように周辺に広がります。水ぶくれができる場合と厚めのかさぶたができる場合があります。皮膚の症状だけでなく、発熱やリンパ節の腫れ、のどの痛みなどを伴うことも。詳しくは下記を参照してください。
アトピー性皮膚炎
湿疹のできる場所:額、目・口・耳の周り、唇、首、手足の関節部など。
特徴:基本的に左右対称に湿疹が現れ、赤くなったり、かゆみのある盛り上がり(丘疹)が出ます。これらに小さな水ぶくれがあることが多く、それが悪化したり掻いたりすると滲出液が出てかさぶたになります。詳しくは下記を参照してください。
小児乾燥性湿疹
湿疹のできる場所:お腹、背中など。
特徴:乾燥によるかゆみから掻いてしまったところに粟粒大の小さなブツブツがたくさんできます。悪化すると皮膚の表面に粉をふき、赤みが出ることも。疑われるときは保湿をして、皮膚をこすったり湿疹を掻いたりしないようにします。
かゆみが強い場合は、ステロイド外用薬や内服の抗ヒスタミン剤が処方されることも。症状が長引く場合はアトピー性皮膚炎の疑いもあるため、かゆみが強い、長引く場合は受診しましょう。
熱のない湿疹:受診の目安
熱はなく湿疹が出ている場合、対処方法は原因となる病気にもよりますが、基本的に次にあてはまる場合は皮膚科を受診するようにしましょう。
・かゆみや痛みが強い
・家庭でのケアで改善せず、長引いたり広がったりしている
・原因不明の湿疹を繰り返す
・アトピー性皮膚炎が疑われる(湿疹が長引くなど)
・とびひが疑われる
なお、水いぼやとびひは周囲にも感染します。学校保健安全法で「学校感染症(第三種)」に指定されていて、病状によっては出席停止となることがあります。受診をして症状にあわせて対処することが大切です。
発熱を伴う発疹の原因
発熱を伴う発疹の多くは感染症によるものです。子供によく見られる発疹が出る病気を紹介します。
突発性発疹
発疹のできる場所:全身(体から手足、顔へ拡がる)。
特徴:突然38℃以上の熱が出て、3~5日続き、熱が下がったタイミングで赤くて小さな発疹が現れます。発疹の大きさは粟粒大~大豆大で、体から出始めて顔や手足へ広がったあと、数日で消えていきます。詳しくは下記を参照してください。
麻しん(はしか)
発疹のできる場所:全身(顔から体、手足へ拡がる)。
特徴:高熱と咳、全身の発疹、結膜炎が特徴です。激しい咳やくしゃみ、鼻水、咽頭痛といった呼吸器の症状や下痢、嘔吐、腹痛など消化器の症状も現れます。高熱が出てから数日で熱が少し下がり、半日くらいで再び高熱に戻ると同時に発疹(爪甲大までの浮腫性紅斑)が現れます。
麻しんの発疹は耳の後ろや額、首から出始めて顔に拡がり、体、上腕、手足の先へと拡がっていきます。口の中にはコプリック斑と呼ばれる白い斑点ができます。
感染力がとても強い病気で、重症度も高いうえに特異的な治療も無く命を落とす可能性もある病気です。感染予防にはワクチンしか有効な手段はありません。必ず決められた時期に予防接種を行ってください。詳しくは下記を参照してください。
水ぼうそう
発疹のできる場所:全身(頭から体、手足へ広がる)。
特徴:子供は発疹が初期症状となります。最初は頭皮に出て、次に体、手足に現れ、体に最も多くできます。発疹は最初に赤みで始まり、そのあと丘疹、水ぶくれ、かさぶたへ短期間で変わっていきますが、それぞれの段階のものが混在するようになります。水ぶくれができると、5~10日で乾燥してかさぶたになります。
水ぼうそうの発疹はかゆみを伴い、発疹のほか38℃前後の発熱が2~3日続きます。水ぼうそうも感染力のとても強い病気です。詳細は下記を参照してください。
風しん
発疹のできる場所:全身
特徴:発疹、発熱、耳の後ろのリンパ節の腫れがほとんど同時に現れます。粟粒大の丘疹が全身に出て、数日で消失します。結膜の充血も見られます。詳しくは下記を参照してください。
手足口病
発疹のできる場所:手、足、口など。
特徴:おもに手のひら、足の裏、口の中に2~3mmの小さな水ぶくれや丘疹が現れます。肘や膝、おしりに出ることもありますが、かゆみを伴うのはまれです。発熱は微熱~38℃程度で、全身状態は良好です。幼児では食欲不振や脱水、不機嫌な様子が見られることも。詳しくは下記を参照してください。
溶連菌感染症
発疹のできる場所:体、手、足。
特徴:発熱のほか、体や手足の小さな発疹、イチゴ舌(舌にイチゴのようにブツブツができる)、咽頭痛が特徴です。首などのリンパ節が腫れることも。咳や鼻水は目立ちません。
詳しくは下記を参照してください。
りんご病(伝染性紅斑)
発疹のできる場所:顔、手足など。
特徴:顔(おもに頬)に突然、境界がはっきりとした紅斑が左右対称にできます。続いて、手足に網目状、レース状などといわれる発疹が現れます。胸やお腹、背中に出ることも。手足の発疹はかゆいこともあります。発熱などの風邪のような症状、関節痛、咽頭痛、鼻症状、胃腸症状などが、発疹の前に現れることもあります。詳しくは下記を参照してください。
熱がある発疹:受診の目安
麻しん、水ぼうそう、風疹は学校感染症第二種に指定されていて、出席停止期間が定められています。手足口病、溶連菌感染症は第三種として扱われることがあり、その場合は医師が感染のおそれがないと判断するまで出席停止となります。
感染症は周囲にも影響するので、症状から自己判断せず、医師の診察を受けるようにしましょう。なお、受診するときは、前もって発疹と発熱があることを伝えておきましょう。
麻しんや水ぼうそうは、飛沫や接触感染だけでなく空気感染もする、感染力がとても強い病気です。特に麻しんが疑われるときは、肺炎・中耳炎・脳炎を合併しやすく、命にかかわることも少なくないため、ぐったりしている場合は時間外であっても必ず受診しましょう。その際は事前に電話で麻しんが疑われることを伝え、診てもらえるかどうか確認してから受診しましょう。
受診前にチェックしておくこと
目安として、熱がなければ皮膚科か小児科どちらでもよく、熱があれば小児科を受診するといいでしょう。受診の際は、次のことを医師に伝えられるようにまとめておくと、症状の説明に役立ちます。
・いつから湿疹・発疹が出たか
・発熱の有無
・咳、鼻、嘔吐、下痢など他の症状の有無
・水分が摂れているか
・食欲の有無
・薬を飲んでいるか
・おしっこ、うんちの回数や量
まとめ
子供の湿疹・発疹の原因は、ちょっとしたかぶれからアトピー性皮膚炎、感染症によるものなど、本当にさまざまです。すぐに治るケースもありますが、家庭で間違った対処を続けてしまうと症状が悪化することも。もし感染症が原因であれば、家族やお友達にうつしてしまうことも考えられます。症状によっては早めに受診をして、適切な治療を受けるようにしてください。
また、麻疹、風疹、水ぼうそうは多くの場合ワクチン接種で防げる病気です。必ず決められた時期にワクチン接種をするようにしましょう。
(文:佐藤華奈子/監修:大越陽一先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます