いくら貰えるの? 申請方法は? 出産で貰える手当金
出産は新しい命の誕生であると同時に、あらゆる面で経済的な負担がかかってくるもの。そんな出産予定のある家計の負担を軽減するためにあるのが、行政の手当金による助成。それでは、手当金ってどのようにしていくら貰えるものなのでしょうか? 出産における手当金についてご紹介します。
出産における手当金ってどんなものがあるの?
出産における手当金は、自分自身が加入している健康保険組合から受け取ることができます。手当金は大まかに、産休時・出産時に対応するものがあります。
①産休中の手当て
出産のために仕事を休むとその分の給料は入ってこなくなってしまうため、産休中は無収入となることが前提になってきます。そんな働くママたちの産休期間を支えるために、収入に応じて支給される「出産手当金」というものがあります。
②出産時の手当て
出産のために医療機関などを利用すると、分娩費用や入院費用、また入院中の赤ちゃんのお世話にかかる費用などがかかってきて、額もかなりのものになってきます。その費用をまかなうために、「出産育児一時金」という手当てがあります。また、組合によってはさらにお祝いとして数万円の「出産育児一時金付加金」がもらえる場合もあります。
<産休中>出産手当金って?
無収入となってしまう産休中のママを助ける出産手当金。働いていれば誰でも貰えるのか、どれぐらいの額を受け取れるのか、どうやって請求するのか、気になりますよね。出産手当金の詳細については、以下のようになっています。
もらえる条件
まず、働いていることと出産後に復職する予定にあることが条件となりますが、さらに自身が勤務する職場の社会保険に加入している必要があります。夫の社会保険の扶養に入っている場合には、受給の対象になりません。また、国民健康保険も出産手当金に対応していないため、加入者は受給対象外となります。
もらえる期間・金額は?
●もらえる期間……出産日前の42日(多胎妊娠の場合は98日)〜出産日の翌日以降56日の期間において、給料の支払いがなかった期間が受給対象となります。出産が予定日よりも後になった場合には産前の計算は出産予定日を、産後は実際の出産日を基準に計算します。出産日は、産前期間に含まれます。
受給対象期間に退職した場合には、退職日までに1年以上の被保険者期間がある人のみ、引き続き出産手当金を受けることができます。ただし、退職日に出勤した場合には継続して受給することはできません。
●もらえる金額……日給の3分の2の額を1日分として支給されます(上限あり)。日給は、支給開始日前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額を30日で割って算出します。支給開始日前の期間が12ヶ月未満の場合は、支給開始日の月以前の標準報酬月額の平均額で計算されます。
また、対象期間内に出産手当金の額より少ない給料が支払われている場合は、その差額を受給することができます。
手続きの方法
まず、申請に必要な書類として「健康保険出産手当金支給申請書」があります。これは職場の担当部署や健康保険組合、会社を管轄する年金事務所にて取り寄せが可能です。
書類には自身が記入する欄のほかに出産した医療機関などが記入する事項もあるため、出産後に病院に申請する必要があります。書類の提出先は、加入している健康保険によって異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
提出は、産休明けの産後56日経過後。期限は産休開始の翌日から2年までとなっているので、くれぐれも忘れずに注意しておきたいところです。
<出産時>出産育児一時金って?
出産する際、分娩や入院の費用としてどうしても40万円〜50万円程度の出費となってしまいます。その出費をまかなってくれるのが「出産育児一時金」。もらえる条件や金額、申請方法は次のようになっています。
もらえる条件
働くママでなくても受給対象となるのが出産手当金との大きな違いと言えるでしょう。受給対象となる条件は、次の2つです。
・健康保険に加入している
・妊娠85日以上(妊娠4ヶ月以上)で出産している(流産、死産、人工妊娠中絶を含む)
もらえる金額は?
受給できる金額は、出産する医療機関などが「産科医療補償制度」に加入しているかどうかによって異なります。「産科医療補償制度」とは分娩を取り扱う医療機関などが加入する制度のこと。同制度に加入している医療機関などでは、分娩の際に何らかのトラブルにより赤ちゃんが重度脳性麻痺となった場合に子供と家族の経済的負担の補償に対応します。
同制度に加入している医療機関などで出産した場合は、赤ちゃん1人につき42万円の手当が出ます。双子の場合には84万円、三つ子の場合には、126万円。また、同制度に加入していない医療機関などでの出産の場合には、1人につき40.4万円の手当となります。
手続きの方法
●申請方法と申請先
加入している健康保険組合に「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」「健康保険出産育児一時金支給申請書」にて申請する形となります。申請先は、職場の社会保険加入の場合には職場の健康保健担当の窓口、夫の扶養になっている場合には夫の職場の健康保険窓口、国民健康保険加入の場合は住んでいる自治体の役所の健康保険窓口となります。
退職してから半年以内に出産した場合は、在職時に加入していた社会保険か国民健康保険のいずれかを選択できます。ただし、在職時の社会保険を利用するには、1年以上の被保険者期間がある事が条件となります。
●「直接支払制度」を利用する場合
「出産育児一時金」では、組合が病院・産院に補助金を直接支払ってくれる「直接支払制度」も利用できます。これにより、出産した医療機関などでの会計の際に請求されるのは差額のみとなります。同制度を利用する際の手続きは、出産予定の医療機関などにて、分娩予約をする段階で行います。手続きの際には「健康保険証」または「健康保険被保険者資格喪失等証明書」が必要となります。
「直接支払制度」を利用したものの、実際にかかった費用が「出産育児一時金」よりも安かった場合には、その差額を請求する必要があります。申請方法は、申請時期に「支給決定通知書」が自宅に届いているかどうかで異なります。「支給決定通知書」とは医療機関などへの手当金支払いが終了した旨を伝える通知のこと。
同書が届く前に申請する場合は、「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」に加え、医療機関などから交付される直接支払制度の代理契約に関する文書のコピー、出産費用の領収・明細書のコピーを申請先に提出します。「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」では医師・助産婦または市区町村長の出産に関する証明を受ける必要がありますが、証明を受けられない場合には戸籍謄本や戸籍事項記載証明書、登録原票記載事項証明書、出生届受理証明書、母子健康手帳(出生届出済証明がされているもの)など出産を証明できるものの添付が必要となります。
「支給決定通知書」が届いた後に申請する場合には、「健康保険出産育児一時金差額申請書」を提出します。添付する必要のある書類は、ありません。
●「直接支払制度」を利用しない場合
「直接支払制度」に対応していない医療機関などでの分娩などの理由で同制度を利用しない場合には、「健康保険出産育児一時金支給申請書」に医療機関などから交付される直接支払制度の代理契約に関する文書のコピーと出産費用の領収・明細書のコピーを添付して提出します。
「健康保険出産育児一時金支給申請書」では、医師・助産婦または市区町村長による出産に関する証明が必要となります。証明が受けられない場合には、戸籍謄本、戸籍事項記載証明書、登録原票記載事項証明書、出生届受理証明書、母子健康手帳(出生届出済証明がされているもの)など出産を証明できるものを添付する必要があります。
手当金受給においての注意点2つ
手当金は、「出産すればとりあえずもらえる」「欲しい時にもらえる」などと自分の都合に良いように受給されるものではありません。きちんと手続きの準備をしておく事や受給されるタイミングを確認した上での生活を心がけることが必要になってきます。次の事には、要注意。
申請方法をチェック
手当金申請の手続きをするにあたっては、なるべく早い段階で申請先や必要書類の把握や提出するタイミングを把握しておくことが大切。書類によっては、自分で記入する欄だけでなく職場や医療機関などに記入してもらう欄もあるので、想定以上に手間や時間がかかってしまう可能性があります。ギリギリまでのんびりしていると、期限に間に合わなかったりバタバタすることに。できれば妊娠中に書類の取り寄せから準備をすすめておきましょう。
もらえるのは後から
「出産手当金」については、実際に受給できるのは対象期間の後。そうなると、産休の期間にはやはり無収入であることを前提に生活のやりくりをする必要が出てきます。また、「出産育児一時金」も「直接支払制度」を利用しなかった場合や付加金には退院した後に受給されるのが基本であり、出産費用は自分自身で支払うことになります。それらを考えると、やはりある程度のまとまったお金を確保しておかなければならなくなります。
まとめ
働く女性の産休期間や出産時にかかる出費など、出産によって起こる経済的な負担を補助する手当金。各制度には退職後の対応や「直接支払制度」の導入など柔軟性がある一方で、申請方法が多少複雑であったり実際に受給できるタイミングが後日であることなど、ネックとなる部分もあります。「出産時に手当金がもらえる」といった大まかな知識にとどまらず、各手当金の仕組みをきちんと理解し、それに沿って事前準備しておくことも重要になってきます。