育児休業手当金(育休手当)の計算方法と貰うための3つの条件
育児休業手当金がどんな条件で貰えるのか、ご存知でしょうか?将来出産を考える女性は、出産・育児に伴う様々な給付金について知っておいて損はありません。 ここでは、働く人が育休中に経済的なサポートを受けるための育児休業給付金について解説します。貰える期間、条件、金額の計算方法、所得税の問題を整理しました。
どんな手当金?育児休業給付金とは
育児休業給付金とはどのような手当金なのでしょうか。
働いているパパやママには、赤ちゃんの育児のために一定期間仕事を休むことができる育児休暇(育休)という制度があります。しかしせっかく育児に専念できる良い制度でも、仕事を休んでいる間は基本的には勤務先からお給料は出ません。何かとお金のかかる時期にお給料がなくなってしまってはたいへんですよね。お金のことが心配で育休取得をためらってしまう人がいるかもしれません。
そこで、働くパパやママが安心して育休を取得できるように、仕事を休んでいる間に経済的な支援を受けられる制度があります。それが育児休業給付金制度です。
どこから貰えるの?
育児休暇中のお給料代わりとして、とても頼りになる育児休業給付金。この手当金はどこから貰えるのでしょうか。育児休業給付金は勤めている勤務先から出ると勘違いしている人も多いようですが、勤務先からは支給されません。手当金を出してくれるところは、職場によって異なります。
民間企業に勤務⇒雇用保険から
国家公務員⇒共済から
残念ながら自営業は雇用保険にも共済にも加入していないので、育児休業給付金は貰えません。民間企業にお勤めの方、公務員としてお役所勤めをしている方のための給付金制度です。
出産手当金・出産一時金とはどう違うの?
出産や育児に関する給付金には、この育児休業給付金のほかに出産手当金、出産育児一時金などがあり、混同してしまっている人もいるかもしれませんね。
ここで簡単に整理しておきましょう。
●出産手当金
働いている女性に産前・産後休暇の間(98日間)、標準日額の3分の2が支給されます。加入している健康保険組合から支給されます。
●出産育児一時金
子供一人につき42万円支給されます。最近は、出産した病院に支払う分娩費用と相殺され、差額を支払うだけの「直接支払制度」が一般的です。本人、もしくは配偶者の加入している健康保険組合から支給されます。(国民健康保険であれば各自治体より支給)
いつからいつまで?育児休業手当金の支給期間
育児休業給付金が貰える可能性がある・・・と分かったら、いつからいつまで手当てが出るのか、支給期間が気になりますよね。実は産休を取得できるママと、産休のないパパとでは受給できる期間が異なります。それぞれの支給期間を見ていきましょう。
●ママの場合
産休期間(産後8週間)後から、育児休業が開始し、赤ちゃんが1歳になるまでの期間、育児休業給付金の支給日に受け取ることができます。
●パパの場合
出生日または出産予定日から育児休業を取得可能で、ママと同様、赤ちゃんが1歳になるまでの期間、育児休業給付金を受け取ることができます
●パパもママも育休を取れば、給付期間が延長されることも!
パパ・ママ2人ともに育児休業を取得する場合「パパ・ママ育休プラス」という制度を使って、赤ちゃんが1歳2ヶ月になるまでの最大2ヶ月間延長できます。この制度はパパとママがどちらも育児休業を取得した場合に限り適用されるものです。
また、育休は連続した1回の取得が原則でしたが、パパがママの産後8週間以内に育休を取得した場合には、再度育休を取得できるようになりました。(再度の休業も合わせて1年を超えない範囲に限ります)
支給期間は延長できるの?
特別な理由がある場合、通常は1歳のところを1歳6ヶ月まで延長が可能です。
<特別な理由の例>
・配偶者が死亡した場合
・離婚などの事情で配偶者と別居することになった場合
・配偶者の病気やケガなどで養育困難になった場合
・認可保育園への入園を希望し、申し込みをしているが、入園できない場合
(認可外の保育園の場合は不可)
・6週間以内に出産の予定がある場合、または産後8週間を経過していない場合
などです。
どうやって支給期間を延長すればいいの?
育児休業給付金の支給期間を延長したい時は、育児休業基本給付金支給申請書に必要事項を記入し、延長理由ごとの必要な書類とともに管轄のハローワークに提出します。延長理由によって揃えなければならない書類が異なります。
・離婚や配偶者の死別の場合:世帯全員の記載がある住民票の写し
・配偶者の病気やケガの場合:医師の診断書
・保育園の入園待ちの場合:入園不承諾の通知書など
・6週間以内に出産の予定がある場合、または産後8週間を経過していない場合:母子手帳
育児休業手当金が出る3つの条件
育児休業給付金は、赤ちゃんの生まれた誰もが給付対象になるわけではありません。それでは具体的にどんな人が給付対象なのでしょうか?
<育児休業給付金をもらえる人の条件>
・雇用保険に加入している一般被保険者(65歳未満)であること
・育児休業に入る前の2年間の間に、11日以上働いた月が12か月以上ある人
・育児休業終了後に引き続き雇用される見込みがある人
契約社員・パート勤務でも給付対象になる?
契約社員やパート勤務などの期間雇用者であっても、上に挙げた条件に加えて、次の3つの条件を満たしていれば給付の対象になります。
・育児休業を開始する時に同一の事業主の元で、1年以上の雇用が続いていること
・子供が1歳の誕生日以降も引き続き雇用をされることが見込まれること
・子供の 2 歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、 契約が更新されないことが明らかでないこと
要注意!貰えない人の条件
●雇用保険に加入していない人
●育児休業中に勤務先から8割以上の給料をもらっている人
●妊娠中に育児休業を取らないで仕事を辞めてしまう人
●育児休業を取得するが、育児休業終了後に退職をするつもりの人
●育児休業を取得しないで仕事復帰しようと思っている人
専業主婦や自営業は貰えないの?
そもそも育児休業給付金の制度は、働いている(雇用保険に入っている)人が、育児により休業している間の無給期間を経済的に支援する制度です。そのため、残念ながら専業主婦には給付される資格がありません。
自営業の場合、経営している会社が会社組織になっていて、自身が社員扱いになっている場合は給付金が出る可能性があります。ただ、基本的に自営業の人自身が雇用保険に入っていることはないので、貰えないケースの方が多いです。
どれくらい貰えるか分かる計算方法
では実際に育児休業給付金はどれくらいもらえるのでしょうか? その計算方法をご紹介します。
育児休業給付金の計算方法 〜3ステップ〜
育児休業給付金の支給額はその期間により下記のように定められています。
・育児休業開始日〜(6ヶ月):月給の67%
・6ヶ月経過後〜休み最終日まで:月給の50%
※月給は残業代などを含む、休業開始前6ヶ月の平均額(上限424,500円)
① 開始日〜6ヶ月までの給付金を算出する
[ 月給 × 67% × 6ヶ月 ]
② 6ヶ月経過後〜終了日までの給付金を算出する
[ 月給 × 50% ÷ 30日 = 給付日額 ]
[ 給付日額 × (6ヶ月経過後〜終了日までの日数)]
③ ①と②を足し上げる。
具体的に計算してみましょう
① 開始日~6ヶ月の給付金
[ 30万円 × 0.67 × 6ヶ月 = 1,206,000円 ]
② 6ヶ月経過後~終了日の給付金
[ 30万円 × 0.5 ÷ 30 = 5,000円(給付日額) ]
[ (給付日額)5,000円 × 120日 = 600,000円 ]
③ 総支給額
[(①1,206,000円) + (②600,000円) = 1,806,000円 ]
●自動計算できるサイトもあります
受給金額の上限と下限
育児休業給付金の上限額は、67%の期間で284,415円、50%の期間で212,250円と定められています。下限は68,700円を下回る場合は一律68,700円となります。(毎年8月1日に改定があります。)
決して月給100万円の人が67%の期間に67万円、50%の期間に50万円貰えるわけではありませんので、注意しましょう。
育児休業給付金の申請方法
育児休業給付金の申請書類は管轄のハローワークに提出します。しかし、ほとんどの場合、勤務先が本人に代わって手続きをしてくれます。なので、勤務先に産休・育休取得の意向と出産予定日などを伝えたら、基本的には勤務先の指示に従って期日までに規定の書類を準備すれば問題ありません。
申請の流れ
①産休前、もしくは産休中に育児休業取得の意向と出産予定日を伝えます。
※育児休業の申出の期限は、法律で「休業開始予定日の1ヶ月前まで」と定められていますので、早めに勤務先に相談しましょう。
(出産予定日前に子が出征したこと等の事由が生じた場合は休業開始予定日の1週間前まで)
②勤務先から「育児休業受給資格確認票」と「育児休業基本給付金支給申請書」を受け取ります。
③「育児休業受給資格確認票」と「育児休業基本給付金支給申請書」を記入し、給付金受け取り口座の通帳のコピーなどと一緒に勤務先に提出します。
④産休が明ける頃に、勤務先が必要書類をハローワークへ提出します。
⑤2〜5ヶ月後に給付金が振込まれます。
2ヶ月ごとの追加申請を忘れずに!
ハローワークへの申請は、その後2ヶ月ごとに追加で申請しなくてはいけません。こちらも通常は勤務先が代わりに手続きをしてくれますが、手続きのために自分でも対応しなくてはいけないことがあります。
最初の申請手続きがハローワークで完了すると、
・支給決定通知書
・次回申請書
の2点が勤務先を通じて送られてきます。
支給決定通知書は受け取るだけで良い書類ですが、次回申請書は内容を確認した上で捺印、署名をし、2ヶ月ごとに勤務先に送り返す必要があります。
これは嬉しい! 育休中は社会保険料の免除も!
毎月給与から差し引かれている社会保険料って意外と高いですよね。育児休業期間中は、給付金がもらえるだけではなく、社会保険料(健康保険と厚生年金)が免除されます。これはかなり嬉しいですね! (産前産後休業期間中も社会保険料の免除が受けられます)
この産休・育児休業期間中の社会保険料の免除も、勤務先が本人に代わって年金事務所へ申請してくれますが、書類は準備しなくてはなりません。こちらも勤務先に確認をし、忘れずに提出しましょう。
手当金に所得税はかかるの?
育児休業給付金は所得扱いされるのでしょうか。もしそうなら所得税を支払わなければなりませんよね。結論から申し上げますと、育児休業給付金などの手当金は課税対象には含まれません。また、手当金をもらっている間、今まで配偶者控除の対象外だった人も、休暇中に扶養に入ることができます。出産する年だけ扶養に入りたい、と考えている方も少なくありません。
厚生年金も配慮
ただし、社会保険の扶養に入ると、年金は休業中3号被保険者扱いになり、厚生年金がかからなくなります。つまり、一時的に控除対象配偶者になることで、将来年金を受け取る時に額が少なくなる可能性があるので、頭に入れておいて下さい。扶養に入るかどうか、今後のこともよく考慮した上で決めなければいけません。
まとめ
いかがでしたか。育児休業給付金の受給条件、金額、計算方法などについてまとめました。延長を希望する場合の手続き方法や所得税に関する情報もお伝えしました。生まれてくる赤ちゃんのベビー用品費用などを含めると、出産前後にかかる費用は平均して100万円とも言われています。出産は新しい家族が仲間入りする大きな喜びをもたらす一方で、家計にとっては大きな出費となることも事実です。
ご紹介した育児休業給付金は、産後約1年にわたって月給の67%(期間により50%)も支給されるので、何かと出費がかさむこの時期には嬉しいですね。
ここ数年は、企業も行政もパパの積極的な育児参加を促す取り組みを模索しています。働くママはもちろんのこと、パパもこの給付金制度をうまく利用することによって、安心して仕事を休み、育児に積極的になってもらえるようになるといいですね。