【医師監修】妊娠初期に基礎体温が下がるのは何週から? 下がった場合に考えられる原因とは
体温が高いことをきっかけに、妊娠の兆候を感じる女性もいるでしょう。妊娠すると、体は一気に「胎児を守り育てる」仕組みにシフトし、日常を維持するモードから切り替わります。女性ホルモンの働きが活発になって、体内に大きな変化が出てきます。そのため顕著に変化があらわれるのが「体温」です。
妊娠したら基礎体温はどうなる?
妊娠しやすい時期を見逃さず、自分の体の状態を把握するために、基礎体温をつけながら排卵のタイミングを計っている女性も多いことでしょう。基礎体温の変化は、今の自分の身体状態を表すバロメーターとして役立ちます。
基礎体温は、就寝から目覚めたばかりの体(もっとも安静な状態にあるとき)の体温をいい、舌下で測らなければなりません。まだ体を動かしていないときの最低の体温と考えるとよいでしょう。では、一般的に、妊娠した女性の体温変化はどうなるのかを、ここでみておきましょう。
妊娠の可能性がある一般的な基礎体温パターン
ホルモンバランスが正常に保たれている場合、基礎体温は4ゾーンに分かれて変化します。卵胞が育ち始めて卵胞ホルモン(エストロゲン)を生成する「卵胞期」、排卵がある「排卵期」、排卵後に黄体ホルモン(プロゲステロン)が生成され妊娠しやすい体に変化する「黄体期」、そして内膜がはがれて出血する「月経期」です。基礎体温は、卵胞期には低く「低温相(低温期)」と呼ばれ、排卵を経て黄体期には高くなって、「高温相(高温期)」と呼ばれます。
排卵期から黄体期にかけては、受精した卵子が着床しやすいように黄体ホルモンが活発に働き始めます。黄体ホルモンの分泌によって、子宮膜は成熟し、受精卵が子宮に着床しやすくなります。ここで、受精卵が着床すればさらに黄体ホルモンの分泌は続き、高温相も長く続くことになります。
卵子の着床がなく妊娠が成立しなければ、黄体ホルモンの分泌量が減ります。そして、排出した卵子と子宮内膜をいったんリセットして、次の妊娠に備えるための新たなサイクルにに入ります。黄体ホルモンの作用は10~14日ほど続き、月経初日がきて低温相に戻ります。
一時的に体温が下がることも?
高温相では低温相の体温プラス0.3℃以上あるのが望ましいとされます。妊娠を望む女性にとっては、高温相に入ってからどのくらいの間、高い体温を維持するかが気になるところですね。高温相が17日以上続けば、黄体ホルモンを投与されているなどの場合を除けば、妊娠の可能性が高いと考えられます。この時期は、体温の微妙な変化にも一喜一憂してしまうかもしれませんね。
高温相にもわずかな体温変化が生じますし、1日だけの体温下降は測り間違いであることも多いものです。高温相に下がった体温を見て、「今月も妊娠しなかったのかな……」とがっかりしすぎないようにしてください。
妊娠中の基礎体温の変化について
妊娠までには、月経~排卵・着床・卵子の成熟と、体温変化を一つのバロメーターとして、妊娠の可能性を確認しますが、では妊娠後にどのような基礎体温の変化があるのでしょうか。
基礎体温は妊娠14週頃から下がる傾向に
妊娠して黄体ホルモンが活発に分泌される高温相。妊娠週数は最終月経開始日を0週0日として数え始めるので、高温相のころには、すでに妊娠2~4週目を迎えていることになります。基礎体温を測って高温相が続いていることを確認する以外には、普段とさほど変わりませんし、着床をしたという自覚症状もないでしょう。
いつもなら月経期に入り低温相に戻る妊娠4週目から7週目にかけて、人によってはつわりを感じ始めます。この時期も継続して高温相と同じくらいの基礎体温を維持しています。妊娠検査薬で陽性反応が出てくるのはこのころ。また、早ければ4週の後半ころから、産婦人科を受診すれば、超音波検査で赤ちゃんを包む袋である胎嚢(たいのう)が確認できます。
着床後、分泌が盛んになっていた黄体ホルモンは、胎盤を形成し出来上がったころから徐々に分泌量を減らしていきます。この胎盤形成にかかる時間は、およそ妊娠14週目あたりまでが目安となります。胎盤が形成され、基礎体温が下がれば、もう基礎体温をつける必要はないと、医師から言われることが多いでしょう。
14週未満に下がった! 考えられる原因は?
「14週までの高温相」よりも早い段階で基礎体温が低下する人もいます。14週未満での基礎体温低下の原因としては、「つわりがひどく十分に睡眠がとれていなかった」「きちんと体温が測れなかった」「胎盤形成が早かった」などという理由が考えらるかもしれません。人それぞれ身体状態も、バイオリズムも違いますので、14週という数字にとらわれすぎないようにしましょう。
ただ、体温変化だけで確実なことや予測ができるものではありませんが、流産の可能性も考えられます。胎嚢が確認できるまで、ほんの小さな体温変化や心配なことは尽きませんね。少しでも不安を感じたら、産婦人科を受診して安心を得ることも、心・体ともに元気なマタニティライフを送るうえで大切なことです。
基礎体温について知っておきたいこと
最後に、基礎体温について、おさらいをしておきましょう。ただし、人によってホルモンバランス、生活環境が違いますので、平均的な基礎体温の周期とは合致しないこともあります。妊娠を本格的に考える前から継続して基礎体温を測り、自分のバイオリズムを知っておくことがとても大切です。
基礎体温とは?
基礎体温とは、体がまだ活動を始めていない状態の体温をさします。最も安静な状態(就寝後めざめて体を動かしていない)は、そのひとの体にとって体温が最も低い状態ということです。この体温を基礎体温と呼びます。朝、目を覚ましたら、そのまま体を動かさずに、基礎体温計を舌下に置いて計測しましょう。
一般的な基礎体温
基礎体温は、一般的にホルモンバランスによって変動します。月経初日から月経終了までの「月経期」と、卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されて卵胞が形成され始める「卵胞期」から排卵活動が始まるまでの体温は低めです。この低温相は、基礎体温はおよそ36.0℃程度が理想値。排卵が起こってから黄体形成ホルモンが分泌されて、黄体ホルモン(プロゲステン)が活発になる間の「黄体期」が高温相です。
低温相と高温相は、排卵期を境におよそ2週間ほど続きます。高温相と低温相の温度差は、大体0.3℃以上ありますので、基礎体温計で計測を続けていると、その変化は顕著に現れるでしょう。
基礎体温に異常が見られるのは?
基礎体温は、ささいな体の動きにも関係します。たとえば睡眠時間が十分ではなかった・夜中に目が覚めてトイレに行った・飲み会があっていつもよりたくさんご飯を食べ、お酒を飲んだ……このような日常的な動作も、翌朝の基礎体温にかかわってきます。
ただし、毎日基礎体温を計測しているけれど、体温の変化がまったくあらわれない・高温相と低温相の区切りがはっきりしないという人もいます。このような場合は、ホルモンバランスが整っておらず、正常な排卵が起こっていない可能性があります。3ヶ月程度、基礎体温の計測を続けてみて、毎月同じように体温変化が乱れているようなら、一度産婦人科を受診することをお勧めします。その時は、基礎体温を計測した基礎体温表を忘れずに持参しましょう。
基礎体温の上手な測り方
基礎体温は、その人の生命維持に必要な最低レベルの活動のときの体温です。もちろん、体が動けば体温は上昇します。寝返りを打つなどの小さな動きも、体が活動していることになるため、体温上昇にかかわる動作です。寝たままの姿勢で安静にし、そのままの状態で体温を計測できるように体温計を準備しておくのがベストです。
前日に体温計をベッドのそばから持ち出してしまい、別の部屋に動いて取りに行った……となると、この日は正しい基礎体温の計測ができないでしょう。前の日から準備して目覚めてすぐに測ることを習慣にしましょう。
毎日同じ時間に計測することも、基礎体温をより正しく把握するために必要なことです。起床時間がずれてしまった、前日の就寝時間が遅かった……など、いつもと違う事柄があった日は、それを記録しておくと、後で見返した時に基礎体温のグラフのずれや乱れの原因を探るきっかけになります。ただ、この時も続けて検温はしましょう。毎日続けて測ることが大切です。
基礎体温の上手な見方
生活習慣や体質によって、基礎体温の周期は異なります。理想的な周期は28日前後で、高温相と低温相が排卵日を境にして移行しているか、また高温相が12~14日継続しているか。自分の生理周期を確認し、月経から次の月経までに、この条件が基礎体温グラフから確認できれば、まずは正常なリズムが整っていると捉えていいでしょう。
このような安定した基礎体温の周期が確認できるヒトで、次の月経が来ずに15日を超えて高温相が長く続けば妊娠の兆候と捉えてよいかもしれません。
反対に、高温相が10日未満と短い人・高温相中にも基礎体温が大きく上下する人は、黄体ホルモンのバランスが整っていないのかもしれません。黄体ホルモンの問題は不妊の原因になることもありますので、高温相を維持しているかに注目して、基礎体温の計測を続けていきましょう。
まとめ
基礎体温を測ることは、排卵日や妊娠しやすいタイミングを知る、妊娠の兆候を早く確認するためにとても有効です。また、自分の体のバイオリズムを知り、正常にホルモンバランスが保たれているかも探ることができます。ホルモンバランスの乱れ、生殖機能の異常や病気の有無を確認するためにも活用できる基本的に情報になります。妊娠を希望される方は、基礎体温の毎日の結果に一喜一憂しすぎることなく、計測を続けつつ健やかな毎日を送ることを目指しましょう。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)