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2022年09月16日 10:25 更新

日本橋いろどり皮膚科クリニック 横井彩先生|肌トラブルでメイクを楽しめない女性の力になりたい

コロナ禍真っ只中の2021年2月に、日本橋いろどり皮膚科クリニックを開業した横井彩先生。大学病院での勤務を経て、アレルギーについて学んだ経験をもち、現在は皮膚科専門医として日々ニキビやアトピー性皮膚炎の患者さんと向き合う横井先生。彼女が重視する診療方針とは? お話をうかがいました。

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日本橋いろどり皮膚科クリニックの開業のきっかけは?

まずは横井先生にクリニックを開かれた経緯についてお聞きします。

理想の医療を患者さんに提供したい

入り口近くの先生

開業の理由としては、自分が理想とする医療を提供したいというのが大きかったです。

皆さんご存知かと思いますが、病院で受ける治療には、国などが治療費の大半を負担してくれる健康保険の範囲で行う治療と、全額自己負担で受けるいわゆる自由診療(保険外診療、自費診療)があります。

わかりやすい例でいうと、現在進行形のニキビの治療薬は、保険の使えるお薬の選択肢がたくさんありますが、できてしまった「ニキビ痕」の場合は、保険が適用される有効な治療がほとんどないんです。

日本の医療システムは手厚く、どんな高額な治療を受けても金額の上限が決まっていて、誰もが安心して医療を受けられるようになっています。しかしその医療費の負担は公的なお金から出るため、適用される優先順位は決まっています。皆さんがいわゆる「病気」として思い描くような命や体調に関わる疾患に関しては、最新の治療も順に保険が適用されます。しかし公的なお金は無限ではありません。体調ではなく見た目のみに関する分野においては、医学的に有効と証明された治療でも保険が適用されることはなかなか難しいのだと思います。

このため内科や外科などと違い、命や体調に直接影響しない症状が多い皮膚科においては、医療機関によって診療の内容が大きく変わることになります。

例えば、自由診療に特化したクリニックだと保険診療を行わない、つまり疾患の治療は行わないこともありえます。逆に公的な病院など保険診療が主体の医療機関だと、そのための薬剤や機器を導入していなければ保険適用外の治療を提案することはできません。

つまり、保険適用/適用外の治療をどう選んで提供するかが、その医療機関の方針・特色となります。

患者さんの話を聞く先生

このため勤務医の間は、本来なら提供したい治療を患者さんに提案できないジレンマを感じることがありました。

その点自分のクリニックでは、自分が提供したいと思う治療を選択して導入することができます。ただし私は大学病院に勤めていた期間が長かったので、可能な限り保険診療での治療を優先という考え方が根本にはあります。ですから、保険適用の治療では効果が得られなかった場合、またはそもそも保険適用の治療がない症状の場合に関して、自由診療を提案するという方針でやっています。

日本橋いろどり皮ふ科クリニックの診療の特徴は?

実際に、横井先生のクリニックではどのような診療が行われているのでしょうか。特徴をお聞きします。

患者さんの悩みに合った治療と正しいスキンケア指導

まずは保険診療を中心に、自費診療もうまく使い分けながら、患者さんの悩みに合った適切な治療を提案できることです。そして、スキンケア指導にも力を入れていることが強みだと考えています。

私自身、学生時代はニキビに悩まされてきたので、手っ取り早くニキビを消したいと思っていました。でも皮膚科医になってニキビは慢性の皮膚疾患だということを知って、根気よく治療していく必要があるということを、身をもって痛感したんです。ニキビは一朝一夕で治るものではなくて、場合によっては治療に何ヶ月、何年も要することもあります。

横井先生の診察風景

ニキビができにくい状態にするために、治療だけでなく、洗浄や保湿、紫外線カットなど皮膚科学に基づいた正しいスキンケアの知識はとても大切です。

ニキビの原因になるからと、チョコレートなど特定の食べ物を過度に避けたりする人もいるのですが、何か一つの食べ物を止めるとニキビができなくなるわけではありません。ニキビは食事以外にスキンケアや睡眠やホルモンバランスなど複数の要因が複雑に絡んで発症する疾患です。特定の何かを避けるような過度な食事制限は疲れてしまいますし、何より楽しくありませんよね。

ニキビは特に若い患者さんが多いので、費用面でも、毎日の習慣という面でも、無理せずに継続できる治療を大切にしています。塗り薬に加えて、体の調子を内側から整える漢方薬を併用することも多いです。

治療のセオリーはある程度エビデンスに基づいて決まっていますが、実際にどんな治療が合っているかは個人差が大きいので、患者さんと一緒にトライ&エラーをしながら伴走する医師でありたいなと思っています。

治療にあたって、特に大切にしていることは?

正しいスキンケアの知識などを指導されている横井先生ですが、治療の際に重視していることはどんなことなのでしょうか。

患者さんが理解できるよう丁寧なコミュニケーションを

治療に関する情報を、わかりやすく説明することでしょうか。

今までどういった治療やスキンケアをしてきて現在の状態なのか、丁寧にヒアリングしたうえで、今後の治療方針を決めていきます。塗り薬が治療の主体となる皮膚疾患においては、患者さん本人が塗ろうと思ってくれない限りは、お薬を処方しても治療は始まりません。教科書的には正しい治療だとしても、患者さんが過去に苦手だと感じたことのある薬剤を無理に奨めることはありません

医療用語には一般の方が聞きなれない言葉も多く、最初の説明で全てをわかってもらうことは難しいですが、患者さん自身にゴールが見えていないと治療はうまくいきません。少しずつゴールをすり合わせ、納得した上で治療を受けてもらうため、丁寧にコミュニケーションができるように心がけています。

患者に説明する横井先生

ニキビの治療薬では、使い始めの頃に副作用が起きて一時的にヒリヒリした刺激を感じることがあります。これは皮膚科医としては想定内のことですが、これを理解していないと、肌に合わないかも、と思い込んで治療をやめてしまったり、不安になったりしますよね。最初に「反応が起きても、お薬が合わないからではなく、作用として当然起きうることだ」と伝えて、その作用が最も強く出ていると思われる時期に再び状態を見せてもらい治療が順調かどうか確認し、このまま続けていくことを伝えるようにしています。

また美容診療の施術後には、肌が通常の状態に戻るまで、一時的に赤みが出たり、かさぶたができたりする、「ダウンタイム」という期間が存在します。施術の内容にもよるのですが、半日から長いときは半年くらいまで及ぶこともあります。この時期が長いと患者さんは不安になりますが、これも当然起こることで特に何もせず様子を見ましょうということを繰り返しお伝えしています。

ダウンタイムの存在自体を知らない患者さんも多いので、施術直後からすぐに綺麗になるかのように考えていることもあります。最初の説明でそのことをよくお伝えして、ダウンタイムの時期に大切な予定がないか確認したり、また心の準備ができていなかったり不安が残ったりするようであれば一旦持ち帰って考えてもらうこともよくあります。

治療に関する疑問や不安を極力減らせるよう、ホームページを充実させたり、Instagramでも情報発信したりしています。

日頃から患者さんと接していて感じるのは、例えばせっかく日焼け止めに気をつかっているのに、クレンジングや洗顔でゴシゴシこすっていたり、良かれと思って使っている化粧品が肌質や状態に合っていなかったりと、基本的なところで少し残念なケアになってしまっていることも少なくないんですね。

そういった小さな勘違いが、肌荒れの原因になってしまうこともあります。Instagramでは、より多くの人にスキンケアに関するリテラシーを高めてもらえるよう、コンテンツの工夫もしています。

今後、どのような診療に力を入れていく予定ですか?

これからの展望についてお聞きします。

女性の需要が高い“化粧品トラブル”の専門外来

はい、「化粧品トラブル」の専門外来に力を入れたいと考えています。

ニキビや湿疹・イボなどのできもののように皮膚疾患と違い、パッと見すごく荒れている訳ではないけれど、いろんな化粧品が合わないと感じているーーー例えば、特定の化粧品を使った時に、ヒリヒリしたりかさついたりしたので、「肌に合わなかったな」と思うことってありますよね。

これはまずは、良かれと思い使っている化粧品が、肌のバリア機能が低下している状態にとっては刺激になってしまっていることが考えられます。ですから、肌が敏感に傾いている時には、できる限り化粧品の数を減らしてシンプルケアをお願いしています。

パウダールーム

そのほかに、実は化粧品に含まれる特定の成分にアレルギーを起こしていた場合はそのせいで肌が常に荒れてしまっている可能性もあります。
この場合は、試しに化粧品を変えてみても、その成分が多くの化粧品に共通して含まれている成分だったりすると、あれこれ試したけど全部ダメ、なんてこともありえます。
そういった場合に、パッチテストによるアレルギー検査なども含めて、自分に合った化粧品を選ぶお手伝いをできればと思っています。

踏み込んだパッチテストで原因を特定

特定のアレルゲン(アレルギーの原因になるタンパク質)を含ませたシールを背中に貼って、皮膚に起きている反応を見る検査です。シールを剥がした直後だけでなく数日後にも所見を見る必要があり、何度も通ったりと、医師も患者さんも根気のいる作業です。そのため皮膚科ならどこでもこの検査に対応しているといえるほどには普及していません

ワンステップで終わる血液検査と違って、通院の予定をたてないといけないですが、アレルゲンになっている成分や、逆にアレルギーでないことがはっきりすれば、今後のスキンケアやメイクの選択肢が見えてきます。

検査の手順に手間がかかる点もそうですし、保険診療のパッチテストでは調べられるアレルゲンの種類が限られていることもあり、化粧品に関してのパッチテストは皮膚科の中でもアレルギーを専門にしている一部の医師に限られていると思います。

保険診療でできる範囲ではない成分などに関しては、自由診療でもう少し踏み込んだ検査もできるようにと考えているところです。

肌荒れで化粧を楽しめない人の力になりたい

ただ、アレルギー検査に進む前に、まずその肌荒れを適切に治療することが一番大事です。本人は「化粧品が合わない」というちょっとした不調のつもりで受診したけど、皮膚科医から見ると湿疹という皮膚疾患であり、「治療した後は普通に化粧品が使えた」という人も開業以来数多くみています。

「肌の調子が悪い」という言葉の背景には、ニキビや湿疹など皮膚疾患、疾患の一歩手前のバリア機能低下の状態、そして皮膚のアレルギーなど、色々な要因が隠れています。治療とスキンケア指導で改善できるのか、アレルギーが隠れていてその成分を突き詰める必要があるのかを、治療と経過を見ながら専門医がきちんと判断することが必要です。

私自身化粧品が大好きなので、肌荒れが常態化してしまい化粧品を楽しめなくなってしまっている人の力になりたいというのが皮膚科医になった理由であり、今後自分のクリニックで力を入れていきたいと考えています。

みなさんへメッセージ

私が専門とするニキビやアトピー性皮膚炎などの慢性皮膚疾患は、症状としてはそんなに深刻じゃなくても、深く思い詰めている患者さんに出会うことがあります。

私も若い頃、ニキビに悩まされていた時期があるので、肌の状態で一喜一憂する気持ちはすごくわかります。日本橋いろどり皮ふ科クリニックは、エビデンスに基づいた治療と、普段のスキンケアを含めた指導を取り入れた皮膚科です。皮膚疾患の治療は保険診療で、ニキビ痕など保険が適用されない症状には希望に応じて自費診療を提案しています。

美容クリニックではなく皮膚科クリニックですので、皮膚という臓器の健康を一番に考えています。スマホのフィルターのような真っ白な肌を手に入れるのではなく、本来の健やかな素肌を取り戻すことを目指しています。
またパッチテストなどアレルギー検査も行うことで、トラブルを起こしやすい肌の人が安心して化粧品を楽しめるようなお手伝いをしていくことにも力を入れています。

再発予防のために、スキンケア指導や漢方の処方など、保険診療を中心に、患者さんの負担にならない治療を推進しています。スキンケアの悩み、イボやほくろの悩み、皮膚に関する相談は小さなことでも構いませんので、気軽に寄って頂けたらと思います。

日本橋いろどり皮ふ科クリニック

■住所:東京都中央区日本橋3-8-16ぶよおビル2F
■診療時間:
診療時間
11:00-14:30
16:00-19:00

△土曜の診療時間は11:00〜13:00、14:00〜16:00
※受付終了時間 平日14:15/19:00 土曜12:45/16:00
■休診日:月曜・日曜・祝日
■HP:https://www.irodori-hifuka.jp/
■アクセス
・東京メトロ/都営地下鉄「日本橋」駅より徒歩2分、各線「東京」駅から徒歩7分

(取材・文:マイナビ子育て編集部)

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