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2022年10月01日 07:35 更新

「子どものやる気がない」はほぼ親の思い込み。プロが教える、受験準備のポイント『親子で楽しむ小学校受験』#1

小学校受験を検討中でどのように対策をすればいいのか知りたい方も、受験対策真っ只中の方も必見!青山家庭教育サービスほしの会代表・高木宏子さんの著書『目指せ! 名門校合格 親子で楽しむ小学校受験』(幻冬舎)より、知っておきたい受験のコツや心構えを抜粋して連載形式でお届けします。

【小学校受験】どうやってやる気を引き出したらいい?

お子さんに「受験」の意味は分かりません

小学校受験の準備をなさっているご両親は、多かれ少なかれお子さんが受験に向かう姿勢に悩みを抱えています。じっと座って勉強してくれない、教えたことを覚えてくれない、気が散って集中してくれない……など具体的な悩みはそれぞれです。

私は小学校受験の家庭教師をしていますが、そうした悩みを詳しくうかがってみると、たいていは「子どもにやる気がない」と、ご両親が思い込んでいることに気づきます。

保護者の方からは、次のような声をよく聞きます。 「お教室の授業中は、それなりに取り組んでいるように見えます。でも、他のお子さんが積極的に発言してやる気満々に見えるのに対して、わが子はこなしているだけ。できなくてもいいや、そんな雰囲気でやる気が感じられないのです」と。あるいは、 「子どもがもうペーパーをやるのが嫌になってやる気がなくなっています。どうしたらよいでしょう。」という声もあります。

なぜ、ご両親にはお子さんが「やる気」を失って見えてしまうのでしょうか。

家庭で勉強をする時間帯やタイミング、学習のさせ方、教材の与え方などを間違ってしまうのはよくあることです。もしそうならば、本当は楽しく取り組めるものでもお子さんは一気に「つまらないもの」と感じて興味を示さなくなってしまいます。

つまり、お子さんは「やる気がない」のではありません。本当はやれば楽しく好きなものも、つまらなくなり、やる気がなくなっているのです。

「やらなければならない」と押し付けられているから、頑張ろうという気持ちが湧いてこないのです。大人だって「やる気」が出るのは、そのこと自体に興味が湧いて、自発的に取り組むことで結果的に楽しくなるのが分かっているからです。

取り組むことで結果的に楽しくなるのが分かっているからです。

秋に合格を手にしたあるご家庭では、毎日の勉強の時間を決めてコツコツと継続していました。しかし、お子さんが勉強を始めてから秋までの間は山あり谷あり、途中「僕はダメだ」 「お教室に行きたくない」というときもありました。しかしそんなときでもご両親は子どもを否定せずに受け止め、わが子の力を信じて励ましながら、落ちついて淡々とやるべきことをしっかりやり続けていかなければなりません。ご両親が終始一貫、志望校への熱意をもって、また、同時に子どもの力を信じて、日々の学習を積み重ねていくその姿勢が実を結んだのです。なお、学習する時間は、眠いとき、空腹のとき、疲れているときはさけることが大事です。

大切なお子さんがどんな教育環境で小学校生活を過ごしてほしいのかを考えるのは、ご両親の役目です。ご家庭の教育方針と学校の教育方針は合っているか、整った環境で学習させたい、豊かな交友関係も築いてほしい、また、通学時間や周囲の環境の安全、その先の進学状況など、よく考えて志望校を決めていきます。しかしお子さんにはその意思はありませんし、「受験する」意味も分かりません。それは多くの場合、ご両親が決めた目標ですが、子どもにとってもよりよい環境で過ごせるすてきな学校であることを折に触れてお子さんに伝えていってください。

「こんないい学校があるよ」と子どもに話したり、一緒に学校の見学会などに参加することで、「頑張ると、あの学校に通えるんだ」と両親の思いを子どもなりに感じて、ゴールまで到達しやすくなります。

幼いお子さんにとって、大好きな両親の存在はいちばんであり、親がいいという学校に入りたいと思うものです。それだけ両親の話は価値があり、興味を惹かれるのです。
お子さんはご両親の笑顔に「頑張るって楽しいな」と思え、やる気が出てきて「頑張る喜び」を感じられるようになります。

いきなり受験のための学習をスタートしても、お子さんは戸惑うだけです

これから受験準備に入る場合、特に意識してほしい点があります。

お教室で出されるペーパーや、市販の教材だけで学習をスタートさせないでほしいということです。何事にも準備が必要ですし、ペーパーや教材だけでは身につかない知識もたくさんあります。

そもそも、お子さんはまだ数年間しか実体験を積んでいません。それでも、何もできない赤ちゃんだった子が、わずか数年のうちに、自分で着替え、靴を履き、集団生活にも入っていく。目覚ましい成長は、日々の生活のなかで子どもがたくさんのことを吸収しているからにほかなりません。靴を履くという一つの動作にしても、靴の左右を見極める、片足で立つ、指先の力の入れ具合を調整するなど、多くの体の機能を使っています。少しずつ習得した技術を集結して、靴を履くという動作をしているのです。

学習も同じです。いきなり目の前の問題を解けと言われるのは、あまりに過酷です。

受験のための学習に入るには、日常生活のなかでできる多くの準備が必要になります。例えば、試験に頻出する物や生物の名前、季節の行事などは、家庭のなかで自然に触れていなければ、ペーパーに描かれた絵を見ても、何も感じることはできないでしょう。

山登りしたときに見つけた虫、庭に咲いていた花、おばあちゃんの家にあった道具など、実体験が伴ってこそ、受験のための学習は身についていくのです。

ペーパーで以前見たことのあるものが出題されたときに、手触りや重み、匂いなどを思い出し、「ああ、あれが〇〇だったんだ」と、経験と知識の結びつきが可能になります。事前に経験していたことが出題されることで、「知っているって楽しい」という喜びの体験にもなります。

机上の学びだけでなく体験を何より大切にして、受験準備を進めていきましょう。

(高木宏子『目指せ! 名門校合格 親子で楽しむ小学校受験』(幻冬舎)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)

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小学校受験家庭教師 青山家庭教育サービスほしの会代表・高木宏子さんが小学校受験を成功させるために必要な考え方と具体的なメソッドを解説。
お教室ではフォローしきれない日常生活にスポットが当てられています。
さらに、受験で起こりがちなアクシデントへの対処方法や、親の不安にこたえるアドバイスも掲載。

小学校受験対策の内容を知りたいご両親はもちろん、今の対策に行き詰ったご家庭にも、これから小学校受験を考えている方にもおすすめの一冊です。

【目次】
第1章 子どもに「受験」の意味は分かりません。どうやってやる気を引き出したらいい?
第2章 お教室での学習や、家庭学習がうまくいかない理由はどこにある? ペーパー学習より大切なこと
第3章 「試験ではどこを見られているのか」?を知れば、家庭でやるべきことが見えてくる
第4章 語彙を増やし、表現力と記憶力をアップさせる「言語メソッド10」
第5章 図形のセンスを磨き、生き物の知識を身につける「認知力メソッド10」
第6章 運動、工作、絵画……体や指先を使う試験に備える「巧緻性メソッド10」
第7章 親子で遊ぶ機会を増やして行動観察に強くなる「家族メソッド10」
第8章 試験当日まで、家庭環境次第で子どもは伸びる!メソッドを実践して楽しみながら合格をつかんだ親子たち

高木宏子さんのプロフィール

青山家庭教育サービスほしの会代表。
慶應義塾大学文学部卒業。
学生時代に家庭教師や塾講師として小中高生に勉強を教え、結婚後子育てをしながら大学受験の添削指導を行った経験をもつ。
その後、小学校受験教室の講師となり、大手幼児教室「伸芽会」勤務時代には青山・学習院クラスを担当。
小学校受験に長く携わるなかで、親が必死になるあまり、子どもの心を置き去りにしてしまったり、本来もっている学ぶ力、意欲が十分発揮されていない子どもたちがいることを痛感。
小学校受験のための家庭教師サービスを立ち上げ、学ぶ楽しさを実感してもらい、受験する子どものみならず、父母や弟妹など、家族へのケアにも力を注ぐ受験指導を行っている。
東京、神奈川、埼玉、千葉の有名小学校への合格実績多数。

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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