2024年度から本格導入の「デジタル教科書」、保護者の認知度はどれくらい?
「デジタル教科書」は、学校で使う紙の教科書をデジタル化し、タブレットやパソコンで見られるようにしたものです。文部科学省は2024年度の本格導入を予定し、実証実験を行っています。デジタル教科書は、子どもたちにどのような影響を与えるのか、保護者の期待と不安の声をご紹介します。
2024年度から、小中学校で「デジタル教科書」が導入されることを知っていましたか?
「デジタル教科書」の本格導入は、2024年度。初めに小学校5年生から中学3年生の「英語」で導入され、その後「算数・数学」での導入も検討されています。
そこで、「デジタル教科書」について知っていたか保護者にアンケートをとったところ、「はい」と答えた人は約34%、「いいえ」と答えた人は約66%となりました。
合わせて、教科書のデジタル化について期待していることや懸念していることについても聞いてみたので、紹介します。
荷物が軽くなる!
●小学生の荷物が重いのはニュースで見て気になっていたので、電子化することで荷物が少しでも軽くなることはよいと思います。(女性/33歳/建設・土木/秘書・アシスタント職)
●エコにはなると思う。あとかさばらないから荷物が軽くていいのかな。(女性/39歳/筆耕)
●教科書の作成印刷を仕事としている身としては、デジタル教科書は自分の首を絞めることなのですが、親の立場からすれば、荷物が大幅に減らすことができ、教科書が雨に濡れてビショビショのヨレヨレになることもなく、机やカバンの奥に押し込められてぐしゃぐしゃにされることもないので、きれいに保てていいと思う。(女性/39歳/印刷・紙パルプ/オペレーター)
子どもの背負うランドセル、いったいどのくらいの重さがあるかご存じですか? 2018年にランドセルメーカーが行った調査によれば、ランドセル自体の重さを含め、重い日は平均6kgにもなるそうです。
重さの原因のひとつは、教科書。デジタル教科書になれば、すべての教科書はタブレットのなかに! 画期的に荷物が軽くなります。毎年大量の教科書が廃棄されることもなく、環境的にもエコですね。
デジタル教科書が導入されても、当面は紙の教科書との併用になるので、すぐに荷物が軽くなるわけではありません。しかし、いずれ持ち歩く教科書がデジタル教科書のみになれば、子どもたちの身体の負担を軽減することにもつながりそうです。
忘れ物が減りそう!
●忘れ物が減りそうで、前日の準備も簡易的になるのでよいと思います。(女性/35歳/学校・教育関連/事務系専門職)
●デジタルなので教科書の忘れ物がなくなりそうな点。(男性/35歳/医療・福祉/専門職)
いくつもの教科を準備していると、うっかり教科書を入れ忘れることもありますが、デジタル教科書なら安心です。その代わり、タブレットを忘れると全教科が教科書なしになってしまう可能性も……。学校に予備タブレットを配備し、クラウド保存の教科書を呼び出して使えるようにするなどの対策が必要になりそうですね。
壊れたときが心配
●破損した場合の課題もあるように思う。小学生の物の扱いはそこまで丁寧ではないので。(女性/41歳/ライター/クリエイティブ職)
●教科書が入るならありがたい。が、持ち運びは負担になるし、家に置いておくのも気を遣うので、家では紙、学校ではデジタルと使い分けてほしい。(女性/37歳/学校・教育関連/クリエイティブ職)
●子どもが使っているときに、タブレットやノートパソコンの不具合に対応できるか心配。目が悪くなりそうで心配。(女性/48歳/医療・福祉/事務系専門職)
機械は、壊れたときの心配があります。紙の教科書なら、破けたり失くしたりしても、修理したり買い替えたりできますが、タブレットは高価なもの。「壊したら親が弁償する必要があるのでは?」「息子は乱暴に扱いがちなので心配」という声もありました。
実生活で、パソコンが急にフリーズしたり、電源が入らなくなったりするトラブルを体験した大人も多いですよね。メンテナンスの簡便さや耐久性は、紙の教科書に軍配が上がるかも。液晶画面のひび割れや水濡れも心配です。
紙の本にもメリットがあるのでは?
●本の質感や紙をめくるワクワク感覚の不足は無いのだろうか。(女性/45歳/医療・福祉/専門職)
●電子機器ばかりになるのは、淋しい。紙で読むよさを知っていてほしい。電子書籍を使ったことがありますが、疲れます。(女性/43歳/ホテル・旅行・アミューズメント/事務系専門職)
●インプットはデジタル教科書を使い、アウトプットは実際の紙に書いてみるなど、手を動かすような工夫がほしい。(男性/28歳/情報・IT/営業職)
「本が好き」という人は、紙の感触が失われることに一抹の寂しさを覚えるかもしれません。教科書に使用される紙は、引っ張っても破れにくく加工されており、質がよく軽量です。
一方、デジタル教科書には、紙の教科書と同様に書き込みすることができたり、ページをめくったり、とばしたりすることもできます。ふりがな機能、音声読み上げ機能は、デジタル教科書ならではの特徴です。
心や身体に影響があるかも……
●学校に行けない子でも授業を受けられそうだが、ネット回線で友だちと繋がることでいじめがあったり、それに大人は気づけなくなりそう。(女性/33歳/商社・卸/事務系専門職)
●デジタル化になることで便利にはなるのでしょうが、人が育つ上では多少ベーシックで手間をかけた教育が必要だと思うので、その経験がない子どもたちが増えて影響がないか心配。(男性/38歳/機械・精密機器/技術職)
●単純に視力が悪くなる、目の疲れとストレス増加、書く力の低下、タイピングなどの能力格差。(女性/26歳/学校・教育関連/販売職・サービス系)
デジタル教科書自体には、お友だちと繋がる機能は付加されていません。また文部科学省では、当面のあいだ紙の教科書と併用して授業を進める方針で、子どもたちの負担を軽減し、心身に重大な影響がないよう慎重に運用する計画が進められています。
視力の低下、体験の不足など、心配な点に配慮しつつ、よりよい使い方ができるよう、見守っていく必要があるでしょう。
まとめ
デジタル教科書は、教育現場への本格導入に向けて現在実証事業が行われています。実際に使用してみた結果、さまざまな学習効果があることもわかってきました。保護者としては期待も不安もあるなか、子どもたちが楽しく学習できるよう、サポートしていきたいですね。文部科学省からは実証研究事業レポートも出ているので、興味がある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
学習者用デジタル教科書について/文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm
マイナビ子育て調べ
調査日時:2022年9月3日~4日
調査人数:116人(22歳~40代までのパパ・ママ)
(マイナビ子育て編集部)