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2022年12月16日 15:36 更新

【医師解説】おもらしとおねしょは関係あるの?原因や治す順番、治療方法が知りたい!

お友達に比べておもらしがなかなかなくならなくて、さらにおねしょも続くと気になりますね。おもらしとおねしょの関係やその原因、治し方などを沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの川合志奈先生にうかがいました。

おもらしとおねしょ、どう違う?

おもらしやおねしょも、トイレ以外でおしっこしてしまう点は同じ。ではどんなところが違うのでしょうか? おもらしとおねしょで悩む前に、まずはその違いを見てみましょう。

昼間、起きている間のおもらしは「昼間尿失禁」

昼間におもらしをする場合、何か名前はあるのでしょうか?

川合先生 昼間、起きている時におしっこがもれるのを、医学的には「昼間尿失禁」と言います。

昼間尿失禁のお子さんに男女差はありますか?

川合先生 昼間尿失禁の原因は大きくわけて、
・尿の通り道のかたちに生まれつき問題がある場合
・排尿を調節する神経に問題がある場合
・排尿機能の発達がゆっくりである場合
があります。
「排尿機能の発達がゆっくりである場合」が最も多く、また昼間尿失禁の女子は男子よりも多いです
[*1]。

似てるけれど昼間尿失禁ではないパターン

赤ちゃんも昼夜関係なくおしっこをしますが、昼間尿失禁とはどう違うんでしょうか?

川合先生 4歳くらいで、昼間のおもらしがなくなる子が多いです。さらに5歳になるとほとんどの子は夜のおねしょもしなくなります。
この4~5歳を過ぎても、起きている昼間におもらしをしていたら「昼間尿失禁」です。赤ちゃんなどのような4~5歳以前のおもらしは、おしっこをする機能が育つ前なので当たり前のことで、昼間尿失禁ではありません。


おしっこが終わってから、パンツにわずかにもれる場合も昼間尿失禁でしょうか?

川合先生 排尿の後、尿道以外からわずかにもれることもあります。これは、昼間尿失禁ではありません。
男の子でかなりの包茎の場合、おしっこが包皮にたまって排尿の後からもれちゃう。
女子の場合は、膣におしっこが逆流して、排尿の後にそこから出てもれることがあります。


笑うともれるのは昼間尿失禁ですか?

川合先生 女の子に多いのですが、くすくす笑うとおしっこがもれるものもあります。
これは昼間尿失禁ではなく、「笑い失禁」と言い、脳機能に関わりがあると言われています
[*2]。

5歳以上に定期的に起こるおねしょは「夜尿症」

おねしょには、医学的な名前はありますか?

川合先生 夜眠っている間におしっこをもらすのは「夜尿症」です。
ちなみに昼間でも、お昼寝などで眠っている時のおもらしは「夜尿症」です。


夜尿症も診断される年齢は決まっていますか?

川合先生 国際小児禁制学会(International Children's Continence Society:ICCS)が定めた定義では、「5歳を過ぎてから、月に1回以上、夜間睡眠中におもらしをする」のが夜尿症とされています [*3]。

おもらしとおねしょの原因はいっしょ?

おもらしとおねしょの原因は同じなのでしょうか?

川合先生 昼間尿失禁と夜尿症のどちらもおしっこをもらしますが、それぞれの原因には、いろいろな要因がからみ合っています。

昼間尿失禁(起きている時のおもらし)の原因

川合先生 昼間尿失禁の原因の多くは、尿意を適切に認識できていないことだと言われています [*4]。上の図は、このことを説明する時に私が使っているものです。

図の「尿意の知覚」(グリーン)は膀胱におしっこが溜まっている感覚で、通常はこれと一致して尿意を認識します。
つまり「膀胱がおしっこでいっぱいになるぎりぎり」である最大尿意以外にも、「ちょっとおしっこしたい」とか「割としたい」などの通常尿意も認識できるため、自分の置かれている状況に応じて、トイレに行くかどうかを決められます。

これに対して、昼間尿失禁がある場合の「尿意の認識」(オレンジ)は、「ちょっとおしっこしたい」「割としたい」といった通常尿意の知覚を「おしっこない」と認識してしまい、最大尿意だけをいきなり認識します。そのため、トイレに行くのが間に合わない…ということになるのです。


おもらしをしやすいお子さんの親御さんの中には、「おしっこを我慢するクセがある」という人もいます。尿意は感じていないのに我慢しているということでしょうか?

代表的な「おしっこを我慢する姿勢」

川合先生 昼間尿失禁のお子さんは「尿保持姿勢」といって、おしっこを我慢する姿勢をよくします。「足を交差させる」「陰茎をつまむ」「しゃがんで会陰部にかかとを押しつける」といった姿勢です。
身体はおしっこが出そうだとわかっているのでこういう姿勢をするのですが、それでもお子さん本人は尿意を認識していないので、「おしっこたまっていない」と言ってなかなかおしっこをしようとせず、「おしっこ!」と言った時は間に合わなくてもらすんです。

夜尿症(おねしょ)の原因

夜尿症の原因は何でしょうか?

川合先生 夜尿症の原因は、「睡眠中にたくさんおしっこが作られること」「睡眠中に膀胱に貯められるおしっこの量が少ないこと」「睡眠中に膀胱からおしっこがあふれそうになっても起きられないこと」などが関連し合っています。

なぜ睡眠中にたくさんおしっこが作られてしまうのでしょうか?

川合先生 成長すると、おしっこを作るのを抑える「抗利尿ホルモン」が眠っている最中に分泌されて、睡眠中に作られるおしっこの量が減り、おねしょをしなくなってきます。
夜尿症のお子さんの中には、「抗利尿ホルモン」の分泌量が少なかったり、神経発達や脳機能などに原因があって、「膀胱の中に貯められるおしっこの量」よりも「睡眠中に作られるおしっこの量」が多いため、おねしょをする子もいます。

夜尿症の原因は『睡眠中にたくさんおしっこが作られること』『睡眠中に膀胱に貯められるおしっこの量が少ないこと』『睡眠中に膀胱からおしっこがあふれそうになっても起きられないこと』などが関連し合っています
[*3]。

便秘が原因の1つということも

昼間尿失禁と夜尿症の両方が見られる場合は、うんちをチェックした方がいいと川合先生は言います。

川合先生 便秘で直腸にうんちが溜まると、膨らみ過ぎた直腸に膀胱が押されておしっこがもれやすくなります。

また、直腸が広がり過ぎると、神経が混乱してしまい、排便ではなく排尿するよう脳から指令が出てしまう、という説もあります
[*5]。

こうして便秘がきっかけで、昼間尿失禁と夜尿症が起こることがあるのです。
うんちがコロコロや硬めだったり、毎日しっかり量が出ていない場合は便秘の可能性があります。その場合には便秘治療も必要です。

怒っても効果はゼロ!

昼間尿失禁は、尿意を適切に認識できないことが多く、夜尿症は寝ている間に膀胱におしっこを貯められなかったり、たくさんおしっこを作ってしまったり。

どちらも自分ではコントロールできないということでしょうか?

川合先生 昼間尿失禁も夜尿症も、自分でコントロールすることはできません。
なので「おねしょやおもらしをした!」と怒っても、治ることはないんです。
昼間のおもらしやおねしょが続いたら、お子さんを怒るのではなく、医療機関に相談するのがおすすめです。

おしっこの機能はどう育っていく?

昼間尿失禁(おもらし)と夜尿症(おねしょ)の原因はまったく同じではないということがわかりました。
でも、おもらしとおねしょは、おしっこの機能に関わりがあります。
おしっこの機能の発達と、昼間尿失禁や夜尿症との関係を見ておきましょう。

年齢ごとのおしっこの機能

[*6]

昼間のおもらしやおねしょと、体の発達との関係を教えてください。

川合先生 昼間尿失禁も夜尿症も、排尿機能の発達と関係しています。
0~1歳頃は、反射的にちょろちょろとおしっこをします。
2歳になると、トイレに連れていってもらえばおしっこができる子が増えてきます。
3歳には、自分からトイレに行っておしっこするようになっていきます。
そして4歳には昼間おもらしをしなくなる子が多くなり、5歳には夜におねしょしない子が多くなります
[*6]。

年齢とともにおしっこの出し方が変わっていくわけですね。
4歳を過ぎても昼間のおもらしが残ったら「昼間尿失禁」、5歳を過ぎても夜のおねしょが続くなら「夜尿症」ですね。

おもらしとおねしょ、どっちを先に治す?

お子さんによっては、昼間尿失禁(おもらし)と夜尿症(おねしょ)の両方が見られることがあります。
その場合、昼間尿失禁と夜尿症、どちらの治療を優先した方がいいのでしょうか?

まずはおもらしから治しましょう

川合先生 昼間尿失禁と夜尿症の両方が見られる場合、昼間尿失禁の治療が先になります。
昼間におしっこが漏れると、社会生活への影響が夜尿症よりも大きいからです
[*7]。

なお便秘もある場合は、便秘の治療も行うことになります。

治療はどんなことをするの?

昼間尿失禁(おもらし)も、夜尿症(おねしょ)も、治療方法には行動療法と薬物療法の2つがあります。
それぞれの治療方法を見てみましょう。

おもらしの治療|行動療法

川合先生 尿意の認識があってもなくても、2~3時間ごとにトイレに連れていって「おしっこの時間です」と声をかけます。
本人は尿意を認識していなくても、定時排尿でおしっこがしっかり出るのを見たり、おもらしをしない成功体験を積み重ねるうちに通常尿意が認識できるようになって、昼間尿失禁がなくなっていきます
[*8]。
定時排尿を平均8.2カ月続けたところ、38.1%のお子さんが昼間尿失禁が改善された、という報告もあります
[*9]。

おもらしの治療|薬物療法

薬を使った治療が行われることもあります。

川合先生 昼間尿失禁の治療は、行動療法が中心です。行動療法で効果が上がらなかった場合は、抗コリン薬を服用することもあります。
抗コリン薬には膀胱の緊張をゆるめる働きがあるため、「通常尿意」の時間が長くなります。そのため、定時排尿をする際におしっこをもらさないチャンスが増えます
[*8]。

おねしょの治療方法|薬物療法

川合先生 ミニリンメルトという抗利尿ホルモン剤を、寝る30分~1時間前に飲みます。
抗利尿ホルモンは、寝ている間におしっこを作る量を減らす役割をします。
そのため、抗利尿ホルモン剤を服用し続ける、寝ている間に作るおしっこの量が減っていき、夜尿症が治っていくと考えられています。

おねしょの治療方法|行動療法(アラーム療法)

アラーム療法は「おねしょをした瞬間に鳴るアラームを使う治療方法」です。

川合先生 毎晩、おしっこをした瞬間に鳴るアラームを装着して寝ます。
おねしょをするとアラームが鳴るので、保護者の方にはアラームを止めてお子さんを起こしていただき、残りのおしっこをトイレでさせてから、着替えてアラームははずし、もう一度寝てもらいます。
それを3~4カ月間続けると、朝までおしっこをもらさずためられるようになります。


アラーム療法と投薬治療では、どちらがよく行われますか?

川合先生 アラーム療法は、保護者の方がお子さんを起こさないといけないことが大半で、これが大きな負担になることもあります。また、日本では自分でアラームを購入する必要があります。このため結果として投薬療法をまず行うことが多いです。

まとめ

昼間尿失禁(おもらし)と夜尿症(おねしょ)の原因はまったく同じではありませんが、おしっこをする機能が未熟という共通点はあります。
昼間尿失禁の治療は「2~3時間おきにトイレでおしっこをする」という行動療法、夜尿症の場合は抗利尿ホルモン剤の投与や、アラーム療法が治療の中心となります。なお、昼間尿失禁と夜尿症の両方が見られる場合は昼間尿失禁の治療を優先することが多いです。
昼間尿失禁も夜尿症も、体に原因があって起こることです。叱りつけても治ることはないので、お子さんを責める前に小児科や泌尿器科、小児泌尿器科に相談して治療に取り組んでいきましょう。

(文:大崎典子/監修:沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 川合志奈先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]Kyrklund K, Taskinen S, Rintala RJ, Pakarinen MP. Lower urinary tract symptoms from childhood to adulthood: a population based study of 594 Finnish individuals 4 to 26 years old. J Urol 2012;188:588-93.
[*2]Austin PF, Bauer SB, Bower W, et al. The standardization of terminology of lower urinary tract function in children and adolescents: update report from the Standardization Committee of the International Children's Continence Society. J Urol 2014;191:1863-5.e13.
[*3]Neveus T, Fonseca E, Franco I, et al. Management and treatment of nocturnal enuresis-an updated standardization document from the International Children's Continence Society. J Pediatr Urol 2020.
[*4]Franco I. Overactive bladder in children. Part 1: Pathophysiology. J Urol 2007;178:761-8; discussion 8.
[*5]Burgers RE, Mugie SM, Chase J, et al. Management of functional constipation in children with lower urinary tract symptoms: report from the Standardization Committee of the International Children's Continence Society. J Urol 2013;190:29-36.
[*6]Campbell-Walsh-Wein Urology, 12th ed.
[*7]Neveus T, Eggert P, Evans J, et al. Evaluation of and treatment for monosymptomatic enuresis: a standardization document from the International Children's Continence Society. J Urol 2010;183:441-7.
[*8]Chang SJ, Van Laecke E, Bauer SB, et al. Treatment of daytime urinary incontinence: A standardization document from the International Children's Continence Society. Neurourology and urodynamics 2015.
[*9]Allen HA, Austin JC, Boyt MA, Hawtrey CE, Cooper CS. Initial trial of timed voiding is warranted for all children with daytime incontinence. Urology 2007;69:962-5.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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