「〇〇フリー」「〇〇無添加」「〇〇不使用」は本当に健康にいい? 小児科医に聞いた本当のところ。
スーパーに買い物に行くと見かける「〇〇フリー」「〇〇無添加」「〇〇不使用」などの表示。子供の健康のためには、あらゆるものが「フリー」でナチュラルな商品を選んだほうがいい気がして迷ってしまいますよね。そんな疑問に、小児科医の森戸先生が回答します。
流行している様々な「〇〇フリー」
世の中には「〇〇フリー」という言葉があふれています。どうも「〇〇フリー」と聞くと、その「〇〇」を避けたほうがいいもののように感じてしまいますね。食品添加物やグルテン、脂肪や砂糖などは「フリー」にしたほうがいいと言われがちです。
しかし実際のところ、避けなければいけない理由はないのです。一つずつ見ていきましょう。
<食品添加物フリー>
日本の食品添加物の基準は厳しく、食品安全委員会などが日本人の食事内容を参照して一生に渡って食べ続けても無害であると確かめた量(無毒性量)の通常は約100分の1を、1日摂取許容量にしています。新鮮なものをすぐに調理して食べられるなら保存料などは不要ですが、必ずしもそうできません。傷んだ食品を食べることによって起こる食中毒、食品ロスを減らすためにも保存料などは役立っています。
<グルテンフリー>
グルテンとは、麦などに含まれるたんぱく質の一種。このグルテンを食べないことを一部の著名人が勧めたことで「グルテンフリーはダイエットや健康に良い」というイメージが定着しました。でも、グルテンが健康に悪影響を及ぼすのは「セリアック病」の場合のみ。他の人はグルテンを摂っても健康に影響なく、いずれにせよダイエットとは無関係です。なお、「グルテンフリーならアレルギーがあってもOK」という文言を見かけることがありますが、小麦アレルギーがある場合はグルテンフリーであっても小麦は食べられません。
<ファットフリー/シュガーフリー>
子どもの場合、成長や発達のために脂肪はある程度は必要なもの。また砂糖も全く摂らないようにする必要はありません。日常的に大量に摂ったりしなければいいのです。
<ケミカルフリー>
ケミカルは、英語で「化学的な」という意味で、複数形になると化学物質・薬品のこと。オーガニック(添加物のないもの)の対義語のように使われます。化学的合成した美容成分などをケミカルと呼んだりしますが、その定義は定かではありません。自然の成分でもトラブルが起こることはあるので、ケミカルが必ずしも悪いとはいえないでしょう。
もちろん、好みで「〇〇フリー」を選ぶことに問題はないですし、例えば化粧品などが肌に合わない場合に「アルコールフリー」「パラベンフリー」を選んだり、アレルギーのある食品成分を避けたりするのは当然のことです。でも、必ずしも「〇〇フリー」がいいとは言えません。
「自然なもの」が体に良いとは限らない
ちまたに「〇〇フリー」「〇〇無添加」「〇〇不使用」などと書いてある商品が溢れかえっているのはなぜでしょうか? それは私たちの多くが「自然のものはやさしい」「人工物よりも天然がいい」「添加物は悪いもの」などと思い込んでしまっていて、セールスに役立つためです。
実際、今年の3月には消費者庁が「無添加」表示の規制を強化しました(※1)。何を添加していないのか、何を不使用なのかがわからないまま、ただ「無添加は健康で安全」というイメージだけが独り歩きすることを懸念したからです。
あらゆる衣類や食品をすべて手作りし、天然成分だけで腐らせることなく長く貯蔵し、多くの人たちが生きていくというのは現実的ではなく、安全な成分まで敵視して避ける必要はありません。
同様に農薬も安全な範囲で使われていますし、検査も行われています。一方、オーガニックの原料には、間違った安心感から思わぬアレルギーのリスクとなることも。また、農薬を使わないことによるカビ毒のリスクもあります。むしろそういったリスクを減らすために、現代では農薬が使われているのです。
しかも、そもそも天然成分や自然のものが必ずしも体にいいとは限りません。
当然のことですが、植物でかぶれることもあります。漆を触るとかぶれるのは有名ですし、過去には小麦の入った化粧品によってアレルギーやかぶれが起こったという報告もあり、天然成分や食品成分なら皮膚につけても安心というわけではありません。また、自然な植物や魚介類、肉類を食べて食中毒になることもあります。
今よりも自然が豊かで人工物が少なく、薬やワクチンもなかった時代は健康で長生きする人が多かったでしょうか? そんなことはありません。むしろ、昔は早くに亡くなる人が多く、現在は健康寿命も寿命も延び続けています。
「〇〇フリー」が必ずしもいいものではないことを、ぜひ知っておいてくださいね。
※1 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」
参照)森戸やすみ『子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)
(編集協力:大西まお)