お迎えの車の中、抗原検査キットの液を4歳の男の子が飲んでしまい…【親が知りたい子供の危険②】
身近なものが子供の安全を脅かすことがあります。しかし、前もって知っておくだけで防げる事故もあります。今回は「新型コロナウイルス抗原検査キット」で起こった事故事例をお伝えします。薬局でも販売開始以降、ますます身近となった検査キットですが、自宅に保管している人もいるのではないでしょうか。その取り扱いについて再度確認を!
月曜の保育園帰りの車内で起きた「抗原検査キット」の事故
ある2月の月曜日、Aくん(4歳10ヶ月・男児)は保育園へ迎えに来た母親が運転する車の助手席に乗っていました。その時、事故が起こります。
職場で感染者発生。配られた検査キットをダッシュボードへ
その日、母親は新型コロナウイルス抗原検査キットを持っていました。
職場で新型コロナウイルス感染者が発生したため、母親は職場で検査を受け、「家族も受けるように」と職場から検査キット4セットを渡されたのです。
母親は職場を出て、Aくんを迎えに保育園に行きます。そして、助手席に設置したチャイルドシートにAくんを乗せ、自宅に向かいました。その際、検査キットはダッシュボード上に置いてありました。
そして帰宅後、検査キットを使おうとすると、4本とも抽出液がないことに気づいたのです※。
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※母親が職場から渡されたのは、新型コロナウイルス抗原検査キットのうち、テストデバイス・検体抽出液入りの容器・綿棒のセット4回分だった
「のどが渇いて、蓋を開けたらりんごのにおいがしたから飲んだ」
思えば、検査キットは車のダッシュボード上に置いてあったので、助手席にいるAくんの手の届く位置にありました。また、自宅に着いたあとは先に母親が車から降りて、しばらくの間、車内にAくん1人だけの時間もありました。
母親がAくんに聞くと「中身を自分で開けて飲んだ」と打ち明けます。また、後日「のどが渇いた。ふたを開けたらりんごのにおいがしたので飲んだ」とAくんは事情を話しました。
その後、特に症状が現れなかったものの、Aくんは医療機関を受診し、胃洗浄などの処置を受けました[*1]。
検査キット関連の事故のうち、7割は「子供などの誤飲」
2022年3月に報告された日本中毒情報センターの調査によると、新型コロナウイルス抗原検査キット関連の事故が29件起きており、そのうち69%(20件)が子供などの誤飲でした[*2]。
小さな子供が多量に飲むと中毒の恐れ
今回Aくんが飲んでしまった液体に含まれ、新型コロナウイルス抗原検査キットの多くに使用される防腐剤の「アジ化ナトリウム」。この薬剤は、かつて高血圧の治療薬として使用されていましたが、集団中毒事件が起きたため、現在では低濃度(0.1%以下)の場合を除き毒物および劇物取締法の毒物に指定されています。
アジ化ナトリウムを口から摂取すると、頭痛や吐き気、めまいなどを起こすリスクがあります。Aくんが飲んでしまった抗原検査キット抽出液に含まれるアジ化ナトリウムは濃度が低く、4本飲んだようですが1つあたりの量も少量であるため、中毒症状(血圧低下によるめまい、ふらつき、吐き気など)が出なかったと考えられます。
一方で、“抽出液をボトルごと飲む” など小さい子供が多量に摂取すると中毒症状が現れる可能性があります[*3]。
手の届かない場所に保管。触れてしまったら即洗い流す
Aくんの事故は、「車のダッシュボード上」という “容易に手に取りやすいところ” に置かれていたことが一因と言えます。私たちができることとして、まずは子供の手が届く場所に抗原検査キットを置かないことが挙げられるでしょう(検査キットだけでなく、薬や洗剤、ボタン型電池なども同様に保管場所に注意が必要です)。
また、抽出液が誤って目や皮膚に触れてしまった場合は、速やかに水洗い流さなければいけません。この対処法も覚えておきましょう。
そして、注意すべきは保管と使用中だけではありません。検査が終わったらそのままにせず、使用後は速やかに廃棄しましょう。
ウイルス感染を心配し不安な気持ちの中、慣れない検査キットを扱うことで、思いもしないようなアクシデントを引き起こすこともあります。使用方法をしっかりと確認し、落ち着いて適切に取り扱いましょう。
(文・構成:マイナビ子育て編集部/監修:武井智昭 先生)
この記事は、日本小児科学会の「Injury Alert(傷害速報)」を元に作成しています。
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[*1] 日本小児科学会 Injury Alert(傷害速報)「No.114 新型コロナウイルス抗原検査キット抽出液の誤飲」
[*2] 公益財団法⼈⽇本中毒情報センター「新型コロナウイルス感染症の検査キットによる事故が増えています︕」
[*3] 日本小児科学会雑誌 第126巻 第8号 1208-10
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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