息切れ必至…夏休みの『学童弁当』マラソンの乗り越え方! 見栄え・好き嫌い・マンネリの対策って? 野上優佳子さんインタビュー#1
夏休みを学童で過ごす子にはお弁当が必要ですが、不慣れな弁当作りを一ヶ月近く続けることに不安を感じている保護者の方も少なくないでしょう。 今回は「マツコの知らない世界」(TBS系)に“お弁当の世界の人”として出演経験もあり、『学童弁当』(小学館クリエイティブ)の著者でもある野上優佳子さんを取材しました。
お話をしてくださった方
野上 優佳子 さん
(料理家・お弁当コンサルタント)
学童弁当のメニュー、毎日どうすればいい?
――普段は給食があるので、小学生の親御さんはお弁当を作り慣れていないことが多いですよね。学童のお弁当作りで大変なのは、毎日違うメニューを考えて作ることだと思います。栄養バランスも考えなくちゃいけないし、でも仕事も忙しいし……どうすればいいんでしょう?
野上優佳子さん(以下、野上) お弁当は「子どもが好きなもの」を入れるのがおすすめです! 野菜は朝と夜に食べればいいので、子どもが1人でも食べきれる、好きなものを入れてあげましょう。
――栄養バランスを考えて野菜を入れたりしなくてもいいんでしょうか?
野上 私は野菜は朝と夜に食べて補えばよし、ぐらいの気楽さで考えていました。朝食や夕食なら、おしゃべりしながら「それ食べてみたら」と保護者が食べさせたいものをすすめやすいですし。
せっかくお弁当に入れても、1人では食べたくなくて食べ残してしまうと、生ごみになってしまいます。それならその子が食べられるものを入れてあげた方がいいと思います。
「毎日肉巻きおにぎり」だってOK! 栄養バランスは朝晩の食事でとればいい
――子どもが自分で食べる気になれるメニューが少ない場合はどうしたらいいんでしょう?
野上 毎日違うお弁当を作らなくてもいい、気になるならご飯にかけるふりかけを変えるくらいの気持ちでいいです。
たとえば我が家では、中学生の息子の部活弁当は3年間ほぼ野菜がない「肉巻き酢飯おにぎり」です。食べやすいサイズで、身体を動かすのに必要な糖質とたんぱく質を優先して取れて、息子も好きなメニューです。
――味付けも変わらない、同じメニューだったんですか?
野上 そうです。同じ肉巻き酢飯おにぎりでした。
――同じメニューでもいいと思うと、気が楽になりますね。
野上 お弁当を作る時にはなぜか、栄養バランスが取れて見栄えもいい、100点満点のお弁当をめざしたくなりますよね。でも家にいたら、夏はお昼ご飯に素麺だけ食べることもあるはず。あまりナーバスにならずに、作る人がバテちゃわないのが一番です。
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彩り不足、寝坊で大慌て…お弁当で困った時の解消法は?
――お弁当作りが難しいなって思う理由の一つに、家の食事と違って「ほかの子と比べられる」かもしれないということがあります。お弁当で同じメニューばかり続いたりしたら学童の友だちにからかわれたりしないかなって……。
野上 うちの子に聞いてみたら「子どもの間では話のネタになる」って言ってました。「これすっげえうまいんだよ」「うちはいつもこれ」って。大人が気にするより、子どもたちはお弁当で優劣をつけることはないようです。
――なるほど! ネガティブな感じはなく、意外とあっさりしたものなんですね。SNSを見ているときれいなお弁当がたくさん載っていて、それに比べてうちの弁当は……と気後れしてしまうんですよ。
野上 SNSには綺麗なお弁当がたくさん投稿されていますが、それは実際に家庭で作られているお弁当全体のうちほんの一部の1割程度。それ以外のお弁当には野菜の切れ端が入ってるかもしれないし、肉一色かもしれない。みんながみんな栄養バランスや見栄えのいい、100点満点のお弁当を作ってるわけじゃないんです。
私も日々のお弁当をSNSに投稿していますが、「赤の彩りが足りないですね」なんてコメントをいただいたりもします。お弁当を仕事にしている私ですが、毎日カンペキ、なんてことはありません。あるものの中でつくるのが、毎日のお弁当です。
――彩り問題はありますよね。実は私も赤が足りないお弁当になりがちなので、思い切って赤色のお弁当箱を買いました(笑)。
野上 そうそう! 赤い彩りがほしい時には、赤いおかずカップもおすすめです(笑)。あとね、たらこふりかけと鮭フレークを使うと、華やかになりますよ。
彩りを添えるのが野菜でなくていいの? と言う人もいるかもしれませんが、お弁当の専門家でも誰でも「100点満点のお弁当じゃなくていい」って私は常に思っています。
寝坊をしても大丈夫! ピザトーストや焼きビーフン、ふりかけおにぎりだっていい
――大人が寝坊をしたり、子どものお世話で時間がかかってお弁当の調理時間が短くなることもあります。いつものお弁当は作れない、そんなピンチに使える方法とかってありますか?
野上 私が寝坊した時には、ピザトーストをお弁当に持たせました。具材と水を入れて蒸すだけでできる即席の焼きビーフンもすぐ作れておすすめです。あとは、ふりかけおにぎり。3種類のふりかけを使って、色味と味の違う3つのおにぎりを作るだけですが、場合によってはちょっと手をかけたおかずよりも喜ばれます。
――夜ご飯の残りをお弁当に入れるのもよさそうですが、どうでしょう?
野上 衛生面を考えると、夕食の残り物や余り物をお弁当に入れるのはおすすめできません。お弁当に入れる食べ物は、細菌が繁殖しやすい温度帯にできるだけ置かない方がいいからです。
夕食のおかずを入れるなら、最初から多めに作って、できたてをすぐに「お弁当用に取っておくもの」として取り分けて冷凍または冷蔵保存するのをおすすめします。
好き嫌いが多い子の弁当、何を入れる?
――野上さんは3人のお子さんがいらっしゃいますが、好き嫌いはどうでしたか? お弁当に食べられるものばかり入れていると、栄養バランスの面でも心配になってしまいます。
野上 子どもが食べないものがあると、一生それを食べないような気がして不安になりますよね。でも無理に食べさせようとしなくても、成長とともに好き嫌いは変わることが多いです。
――野上さんのお子さんにも好き嫌いはありましたか?
野上 うちは3人子どもがいて、長女が29歳、一番下の子が中学3年生なんですが、どの子も好き嫌いがあったし、そういう食の好みは変化していきました。今食べられないものがあっても、子どもが家の外で触れて食べるようになったりします。
今の日本は食べ物で溢れてるので、嫌いな食べ物があっても、その食品からしか摂れない栄養ってほとんどないと思います。その子が嫌いな物をお弁当に入れなくても、食べられるものから栄養分を補えば大丈夫ですよ。
2人以上の子どものお弁当を作る時には、全員の好きなメニューを選び抜いて
――きょうだいがそれぞれ好き嫌いする食べ物が違う場合、どうしたらいいでしょう?
野上 我が家の子ども3人は、それぞれ好き嫌いが違います。だから、3人分のお弁当を作る時には、「3人とも好きなもの」を選抜して入れていました。食べ残しは生ゴミになるだけなので、基本的には全員が絶対食べる物以外入れなかったです。
――1人でも嫌いな物は避けて、共通する好物を入れるんですね。
野上 そうです。
たとえば長女はキュウリが嫌いなので、長女の分もお弁当を作る日はキュウリを使った料理は入れなかったです。3人とも定番の甘辛い照り焼き味や、シンプルな塩味、お好み焼きや焼きそばなどのソース味、オムライスのようなケチャップ味などの王道が大好きだったので、そういう味付けのメニューを入れていました。
――なるほど、最大公約数的お弁当作りですね!
(解説:野上優佳子、取材・文:大崎典子)