
「子育ては過保護で良い」児童精神科の名医が伝える、子どもの自立に本当に大切なこと| 子育てのきほん #2
「過保護」というと、ネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれません。子どもを大事にしすぎることは、自立の妨げになるのでしょうか……?
\子育ては過保護でいい。/
児童精神科医として50年にわたり、多くの子どもと保護者に接してきた佐々木正美先生が伝える子どもの心とからだの発達のために本当に大切にしたいこと。
子育て中のママ・パパの悩みに寄り添う佐々木先生のメッセージを、書籍『子育てのきほん 新装版』(ポプラ社)から一部抜粋してお届けします。
過保護でだめになった子どもを私は見たことがありません

「保護」「干渉」といったときに、その意味合いの感じとり方に微妙な違いがあるかもしれません。保護とは、子どもが望んでいることを望んでいるとおりにしてあげること。干渉とは、子どもが望んでいるわけではないけれども、このことは伝えなければならないと親が思ってすること。そうご理解いただきたいと思います。
40年にわたって子どもと青年と家族の精神保健の臨床に携わってきて、過保護にしたためにだめになった子どもを、私は見たことがありません。子どもが望むことを望むとおりにしてあげすぎると、子どもは依頼心が強くなって自立しないということはまず絶対にありません。

たとえば、抱っこやおんぶをしすぎたから歩くのが遅れたという子はいません。どんなに親が抱っこやおんぶをしてあげたいと思っても、一定の量を超えると子どもは、自分でハイハイしたい、自分で歩きたいと言うのです。
ところが、早くから何でも上手にできるようにしようとして、早め早めに何かをさせようとすると、子どもはできることをするのも苦しくなってしまうのです。
私たちは正しいことをたくさん伝えるとよい子になると思いがちです。そうすればしっかり自立していくというふうに錯覚していらっしゃる人は非常に多いと思います。子どもの言うことを聞いてあげすぎると、子どもはつい図にのって、依頼心ばかり強くなるのではないか。いつまでも自立しないのではないか。そうおそれていらっしゃる方も多いかもしれませんが、けっしてそんなことはありません。とんでもない間違いです。自発性や意欲は、十分に保護された子どもにしか出てこないのです。

少し別の観点から言いますと、子どもは自分を信じてもらえると自信を持つのです。人から信じてもらえていないと自信を持つことはできないのです。自信がある子というのは、自分のことを信じてもらっている子です。それは同時に、自分も相手を信じることができているということです。
人を信じることと自分を信じることは表裏一体の概念であると、エリクソンは明瞭に説き明かしました。人は人を信じることなしに自分を信じて生きていくことはできないのです。
人を信じることができる子は、自分のことを信じてくれる人に出会えた子です。それが親であれば一番いいのですが、親でない人にそういう対象を見つけていかざるを得ない子どももたくさんいます。それは非常に苦労します。あまりにも困難で、不可能に思えて絶望的になって、自暴自棄になってしまったり、努力をすることをやめてしまったりすることが多いのです。
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この続きは、是非書籍でご覧ください。


※本記事は、『子育てのきほん 新装版』著:佐々木 正美、イラスト:100%ORANGE/ポプラ社)より抜粋・再編集して作成しました。