
「親が関わりすぎて悪いことなどひとつもない」絶対の安心感を持って育ってほしい| 子育てのきほん #3
いつまでも甘えさせていたら、自立できなくなるのでは……? そんな不安を感じたことはありませんか?
\子育ては過保護でいい。/
児童精神科医として50年にわたり、多くの子どもと保護者に接してきた佐々木正美先生が伝える子どもの心とからだの発達のために本当に大切にしたいこと。
子育て中のママ・パパの悩みに寄り添う佐々木先生のメッセージを、書籍『子育てのきほん 新装版』(ポプラ社)から一部抜粋してお届けします。
子どもに関わりすぎて悪いことなどなにひとつありません

お母さんは「どのていど子どもに関わればいいのだろう」「どのていど甘やかしていいのだろう」といろいろと考え込んでしまうと思います。
確かにのべつべったりそばにくっついているわけにもいかない、すべて言うことをきいてやるわけにもいかない、甘やかしすぎたらいつまでも自立できない、といったことを思うでしょうね。
これはそれぞれの家庭の事情や、お母さんの仕事などによってもいろいろ違うと思いますが、ひとつだけはっきりしているのは「関わりすぎて悪いことはない」ということです。関わりが薄くなることで問題点が出てくる可能性はあるけれど、関わりすぎで問題が生じることはない、と私は思っています。
子どもは幼稚園や保育園に行くようになり、ますます自由に行動したがるようになっても、ふと不安になって振り返ったときに、常に見守ってくれている人を求めています。それはお母さんに限らず、保育園の保育士さんかもしれない。

私は、保育士さんたちの前でお話しするときに、必ず言います。勝手放題をしているように見える子どもたちを、後ろから見守ってほしい、と。子どもたちが振り返ったときに先生がちゃんと見ていてくれた、という経験が、どれだけ子どもの将来に価値を持つことか、を知ってほしい。
それは幼稚園、保育園にいる間はわからないことかもしれません。けれども、これはとても重要なことだと思っているんです。
だからこそ、先生たちには、「どうか、子どもたちが卒園していくとき、この子たちは私が見守ってあげた子どもたちなんだ、と誇りを持って送り出してあげてほしい」とお話ししています。
不登校になっている児童、生徒には、全部ではないけれどかなりの頻度で抑鬱傾向が見られます。常になんともいえずにもの悲しく、意欲が出てこない。朝起きるのがとてもおっくうになり生活が夜型になる、といったかたちで表れてくるのですが、これは鬱病とは診断できなくとも、抑鬱傾向がある、鬱状態である、ということです。

私が大学で学んでいた当時、鬱病というのはだいたい30代ぐらいから始まっていく、というのが常識だったのですが、もはやこれはまったく通用しません。現在では、早い場合には小学生のころから、こうした抑鬱傾向の症状が現れているケースはめずらしくないのです。
なぜなのだろう、といつも考えているのですが、明確な答えは出せません。
ただ、時代の変化、文化の変化、生き方のスタイルが変化し、家庭のあり方、地域のあり方が変わってきたことは間違いがありません。やはり、こうした変化が、子どもたちの心に変化を与えてきたのではないでしょうか。「振り返れば必ず見守ってくれている人がいる」という絶対の安心感を持って育つことができなくなっているのではないか。それが、現代の子どもたちの心に不安定さとして表れ、人間関係を上手につくれないことにつながっているのではないか。
私には、それしか思い当たることがないのです。
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この続きは、是非書籍でご覧ください。


※本記事は、『子育てのきほん 新装版』著:佐々木 正美、イラスト:100%ORANGE/ポプラ社)より抜粋・再編集して作成しました。