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2025年03月17日 16:01 更新

男の子・女の子で育て方に違いはあるの? 児童精神科の名医、佐々木正美先生の見解| 子育てのきほん #4

男の子育児は女の子に比べて大変! という声をよく耳にしますが、育て方に違いはあるのでしょうか?

\子育ては過保護でいい。/

児童精神科医として50年にわたり、多くの子どもと保護者に接してきた佐々木正美先生が伝える子どもの心とからだの発達のために本当に大切にしたいこと

子育て中のママ・パパの悩みに寄り添う佐々木先生のメッセージを、書籍『子育てのきほん 新装版』(ポプラ社)から一部抜粋してお届けします。

私は男の子、女の子の違いを意識して子どもと接したことはありません

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「男の子の育て方」について質問を受けることがよくありますが、私は基本的には、女の子と同じでいいと思っています。あえて接し方を変える必要はないのではないでしょうか。

たしかに、女性と男性は、肉体的にも精神的にも、それぞれ違いがあります。女性が弱く、男性が強いということではない。むしろ精神的な部分で考えると、男性のほうが精神的に弱いと感じる部分もあります。男性のほうが人間関係のストレスに弱いという印象です。けれども、これは社会的な環境、ある種封建的な「男子への期待」が男性に対して強く働くせいではないかと思います。

家内は家でピアノを教えていましたから、たくさんの幼児から青年期までの男の子、女の子の生徒さんがしょっちゅう家に来ていました。けれど家内はほとんど男女差は意識せずに教えたといいます。

しかもうちは私が3人きょうだい、家内が5人きょうだいで、それぞれどこの家にも男の子と女の子がいましたから、とてもたくさん甥と姪がいて、この子たちとしょっちゅう会っていました。私たちの親族は仲が良くて、みんなで会う機会がとても多かったのです。

私の子どもたちは3人とも男の子でしたが、そんなわけで家内の生徒さんたち、甥や姪を身近に見てきました。

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そうすると、やっぱり、「男の子だから」「女の子だから」という違いはあまり感じられませんでした。男の子のほうが集まると大騒ぎをしやすい、とかそういう傾向はあったかもしれないけれど、それに交じっている活発な女の子もいました。もちろん、男の子と女の子で遊び方や話題が違うというのはありましたけれど。

私たち夫婦も、また女の子を育てている親族も、とくに性別を考えて育て方や接し方を変えているということはなかったですね。

むしろ「男の子だからこうあるべき」「女の子はこうでなければいけない」という、親や周囲の圧力が、ときに子どもの心理に大きな負担を与えることになるのかもしれないと思います。

たしかに社会人になってからを見ていると、小さなメンツにこだわったり、プライドが高いのは男性です。人前で女性上司に叱責されて自尊心が傷ついた、なんてことはよく聞きます。けれどもこれはかならずしも男性のほうがもともと自尊心が傷つきやすく、プライドが高い、ということにはならないと思います。女性と男性の性差ではないだろうということです。

女性進出がすすんだとはいえ、まだ日本の社会というのは「男社会」です。女性がその男社会に順応する知恵をつけてきて、がんばっている、というのが現状でしょう。そういう意味では女性は社会のなかでとても苦労しているのかもしれません。

「男の子のくせに」「女の子なんだから」という気持ちは忘れてしまいましょう

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つけくわえるなら、英語に「男のくせに」「女のくせに」という表現は見つかりません。

私はカナダに留学して、その後何十回となくアメリカにも行き来をし、多くの研究者と接する機会がありました。欧米には女性の研究者、教授もたくさんいます。

アメリカは開拓者が築いた文化です。開拓者のなかには女性のほうが少なかったのです。だからこそ女性が大切にされてきたという文化があります。その文化があるから、政治でも学問でも、女性は尊重されるようになりました。大切にしてきた女性の活躍をみんなが喜び、そうあって当然だと思う社会なのですね。

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日本はそういう文化の社会ではありません。欧米化してきてはいるものの、伝統的に男性優位の考え方がまだ非常に強いのです。

女性に制限が強く、男性に有利な社会がつづいている。けれども、終身雇用制や年功序列などの雇用体系も含めて大きく変化しつつあることによって、男性も職場の環境によって大きなストレスを抱える人が多くなっているのかもしれません。しかも絶対数としては、圧倒的に男性のほうが多い職場が多数です。結局、男性のほうがストレスによって精神的にも追い詰められている人の数が多くなっているということなのだと思います。

実際、鬱病、あるいは鬱状態を訴える人は、男性のほうがたしかに多いです。けれども、それは「男性が精神的に弱い」からではないということです。

社会や職場の環境を、男性にとっても女性にとってもよりよいものにすることはもちろん必要なことです。しかしこれは、制度を含めて時間もかかり、多くの課題が残っています。

男の子にせよ、女の子にせよ、こうした社会に出ていく子どもたちのために、親ができることとは、「男らしく」とか「女らしく」とかを考えて育てることではないと思うのです。

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この続きは、是非書籍でご覧ください。

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※本記事は、『子育てのきほん 新装版』著:佐々木 正美、イラスト:100%ORANGE/ポプラ社)より抜粋・再編集して作成しました。

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