発達が気になる子の「偏食」は放置しない。放置することで起こりうる悪循環とは?【小児科医解説】
子どもは習い事や塾、子ども自身の好き嫌い、親は共働きで忙しく食事が「手早く・好きな物中心」になりやすいという家庭も多いでしょう。文科省『学校保健統計調査』は肥満傾向児の推移を、厚労省『国民健康・栄養調査』は朝食欠食などの食習慣について言及しています。子どもの食について、私たち親はどう考えればよいのでしょうか?
\子どもには子どもの『栄養学』がある/
イライラしている、元気がない、朝スッキリ起きられない……。その不調、もしかすると毎日の食事が関係しているかもしれません。
小児科医として毎年約3万人を診療し、医学と分子栄養学の両面から多くの子どもたちの不調をサポートしてきた著者が、病気にならない体を作る食事術を伝授します。
今回は、発達に特徴のある子どもの食事で親が気をつけたいポイントについて、書籍『うちの子、今の食事で栄養的に大丈夫ですか? 医師が教える 子どもの元気をつくる食事術』(著:面家健太郎/日本実業出版社)から一部抜粋してお届けします。
発達に特徴があるわが子。栄養面で気をつけたほうがいいことはありますか?
鉄不足は精神面にも影響を与える
近年、発達障害(神経発達症)と診断される子や、発達障害のグレーゾーンの子(確定診断には至らないものの発達障害の特性が見られる子)が増えています。
この「発達障害」と「栄養障害」が関係していると指摘する専門家も多数います。
発達障害は、もともとの遺伝的な素因(生まれつきの脳の特性)に加えて、成長期の環境要因や生活習慣、栄養状態などが重なって表れると考えられています。
たとえば、血液中にある「フェリチン(貯蔵鉄)」という鉄の貯金のような指標物質が少ない子どもは、集中力や注意力が続かない、落ち着きがない、衝動的に動いてしまうといった注意欠如・多動症(ADHD)の症状が強く出やすいと言われているのです。
鉄というのは、脳内でドーパミンなどの神経伝達物質をつくり出すうえで欠かせない存在です。
そのため、鉄不足になると、集中力や行動をコントロールする力が弱まる可能性があるのです。
実際に、海外の大規模な研究ではADHDと鉄不足の関係を示す結果が多数報告されていますし、発達に障害のある子どもの血液検査をすると、かなりの割合で鉄欠乏が確認されるというデータもあります。*1 *2
また、鉄不足は精神面だけでなく、運動機能にも影響を与えます。
私が診てきたなかにも、足と手などを同時に動かす協調運動が苦手だったり、姿勢を保ち続けるのが難しかったりする子どもに鉄分を与えていった結果、精神面の落ち着きだけでなく、運動機能が徐々に改善していくケースがありました。
自閉スペクトラム症には小麦・乳製品に注意する
自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ子どもについては、小麦に含まれるグルテンや乳製品に含まれるカゼインを消化しづらいという説もあります。*3
これがアレルギーや腸内環境の乱れにつながり、結果として脳機能に影響を与えるのではないか、という考え方があるのです。
この説は専門家のあいだでも意見が分かれており、まだ確立した見解とは言えない部分もありますが、この観点からASDの子にグルテンフリーやカゼインフリーの食事を提案している専門家もいます。
ただし、成長途中の子どもにこうした制限食を実践するためには、豊富な知識と経験が欠かせません。自分たちだけで判断せず、必ず専門の医師や管理栄養士に相談して指導を受けるようにしましょう。
偏食はそのままにしない
発達障害を持つ子どもについて、もう1つ見逃せないのが「偏食」です。
とくにASDの子は、味や食感に強い敏感さやこだわりを持つことが多く、食べられる食品がかぎられがちです。その結果、ビタミンやミネラルなどの栄養が不足しやすくなり、栄養バランスが大きく崩れてしまうことがあります。
この栄養バランスを整えることでASDの症状自体がよくなるという明確なデータは出ていないようですが、かんしゃくなど二次症状を減らす可能性は認められつつあります。
その反対に、偏食を放置したままだと栄養バランスが崩れ、さらに症状が悪化していくことが考えられます。
すると、ますます偏食傾向も強くなり、食べられるものがどんどん減っていき、症状も強くなるという悪循環におちいってしまうことがあるのです。
以前、クリニックにアレルギー外来で来たお子さんは、発達障害の診断を受けていて、かかりつけの医師から処方されていた薬のなかに食欲が落ちやすい副作用がある薬がありました。食事についてたずねてみると、もともと偏食の傾向が強く、食べられるものがかぎられていると言います。
そのお母さんは、「なんとかわが子に栄養を摂ってほしいから、食べられるものだけでも食べてほしい」と話していました。たしかに「なんでもいいから食べてほしい」という気持ちは、親御さんとして当然の願いだと思います。
ただし、「好きなお菓子だけを食べさせる」というようなことを続けていると、発達障害の症状がさらに強くなるリスクもあります。
とくに鉄を多く含むレバーや赤身の肉、魚介、青菜などは、子どもが苦手な食材も多いので、食べさせるのが難しい場合は、サプリメントを利用するという手もあります。
もしも日常生活のなかで本人や家族がつらい思いをしているなら、まず栄養面を見直してみることも1つの方法です。
発達障害に先天的な要因はありますが、成長環境や栄養状態など、さまざまな要因が重なって現れます。
薬や療育だけでなく、食事やサプリメントなどの複合的なアプローチを考えることで、本人や家族が楽になる道が広がっていくかもしれません。
Point
鉄が不足すると、集中力や行動を
コントロールする力が弱まる可能性がある
*1: Konofal E, et al.a (2004). Iron Deficiency in Children With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder. Arch Pediatr Adolesc Med, 158(12),1113 -1115.
*2: Konofal E, et al. (2008)Effects of Iron Supplementation on Attention Deficit Hyperactivity Disorder in Children. Pediatr Neurol, 38, 20 - 26.
*3: Salvador Marí-Bauset, DPharm, Itziar Zazpe, MD, PhD, et al. (2014) Evidence of the gluten-free and casein-free diet in autism spectrum disorders: a systematic review. Journal of Child Neurology,29 (12)
※本記事は、『うちの子、今の食事で栄養的に大丈夫ですか? 医師が教える 子どもの元気をつくる食事術』<著:面家健太郎/日本実業出版社>より抜粋・再編集して作成しました。
続きはぜひ書籍でご覧ください。
