- 掲載
- 2026年08月07日 10:31
3人目誕生で直面した現実。実家を頼れない5歳・2歳・0歳の育児を夫婦で乗り切ったパパ育休#男性育休取ったらどうなった?
育児休業を経験し、子育てに奮闘している当人の声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は、システムエンジニア(SE)として活躍しながら、3人目のお子さん誕生を機に2回目の育休を取得したパパにお話を聞きました。
3人目の誕生時に2ヶ月の育休を取得した野村ファミリー
今回のパパ
野村翔太さん(仮名)/31歳/ALSI(アルプス システム インテグレーション株式会社)システムエンジニア
●ご家族
パートナー様:夏乃さん/36歳/栄養士(育休中)
お子様:愛美ちゃん/6歳 優護くん/3歳 絵里奈ちゃん/0歳
※ご本人とご家族の名前は仮名です。
●野村家のパパ育休
3人目の出産に合わせて、2025年6月中旬から約2ヶ月の休業を取得。法的な育児休業制度を使用した期間は約1ヶ月間で、残りは有休と夏季休業を利用した。前回、2人目出産の際も3週間、休業(有休+年末年始休業)した経験がある。
野村さんのある日のタイムスケジュール(現在・テレワーク時)
■「実家に頼れない」3人目の出産。妻一人で回せるわけがない!
── 野村さんが今回、育児休業を取得しようと決めた背景を教えてください。
野村さん 最大の理由は、単純に「物理的な人手が絶対に足りなくなる」と分かっていたからです。今回は3人目の出産でしたが、当時、上の子たちは5歳と2歳。まだまだ手がかかり、目を離せない真っ盛りの時期でした。
それに加えて、過去2回は妻の実家に里帰りをしてサポートを受けることができたのですが、今回は実家側の受け入れが難しい状況でした。実家に里帰りできず、身近に頼れる親族がいないとなると、出産直後で体が万全ではない妻が、ひとりで上の2人と赤ちゃんをみるのはどう考えても不可能。「自分がまとまった育休を取らなければ家庭が絶対に回らない、休むしかない」と夫婦で話し合い、迷わず取得を決めました。
── 2人目のお子さんが生まれたときも、3週間ほどお休みを取られたそうですね。
野村さん はい、当時は年末年始の休暇に有給休暇をくっつける形で3週間ほど休みました。前回の経験があったので、育児のために仕事を休業することへの心理的なハードルはほとんどありませんでした。
妻は1人目も2人目も帝王切開での出産だったため、3人目も予定帝王切開になることが決まっていて……。産後も痛みを抱えながら動くのは本当に大変なようでした。しかも妻の入院中は、必然的に私がワンオペで上の子たちを世話しなければなりません。しかも2人目のときは早くに破水してしまい、緊急帝王切開となったんです。そういった背景からも、今回、お休みをいただくことは必須でした。
■育休に入る半年前から相談
── 育休を取得するにあたり、半年前というかなり早い段階から上司に相談されていたそうですね。
野村さん そうですね、前年の12月末頃には当時の上長に「来年の6月に育休を取得したいです」と伝えました。私の仕事は、クラウド上にお客様のご要望を満たすアプリや仕組みを構築する、システムインテグレーションのエンジニアです。早めに言っておいた方が社内でも色々と調整が利きやすいだろうという判断でした。
── 実際の引き継ぎや業務調整はどのように進められたのでしょうか。
野村さん 会社が私の育児休業を見越して、3月中旬頃に新しい外部のスタッフ(ビジネスパートナーと呼ばれる業務委託の人材)の方をチームに1人入れてくれたんです。私が抜ける期間はその方に仕事を代理担当してもらうため、約3ヶ月前から少しずつ業務のレクチャーや引き継ぎを始めました。
休みを取得すること自体に不安はなかったものの、直前の準備期間は通常業務の忙しさも重なってそれなりのプレッシャーやストレスがありましたね。でも、早い段階から準備ができたおかげで、直前はバタバタしたものの、最終的には不安なく育休を迎えることができました。
── 育休を申請した際、周囲の反応はいかがでしたか?
野村さん 会社全体としては、私のほかにも何人も育休を取得している男性社員がいるため、比較的休みを取りやすい雰囲気が醸成されつつあるなと感じました。
大変ありがたいことに、主要な取引先である親会社のお客様からも快く受け入れていただけただけでなく、温かい応援のお言葉までかけてくださり、本当に嬉しかったです。
■出産後ママ不在の1週間…子どもたちが寝ない!
── 実際に育休が始まってからの生活はいかがでしたか?
野村さん 覚悟はしていましたが、シンプルに子どもが3人に増えたことで、毎日が怒涛のように過ぎていきました。みんながそれぞれ同時に、まったく違うことをやりたがるので、大人2人がかりでも「身体がもう一つ足りない!」と思うことばかりでしたね。
育休中は、産後の妻が赤ちゃんのケアに付きっきりになれるよう、私が上の子二人の育児と家事を引き受ける形で完全に役割を分担していました。
── 夏乃さんが入院していた最初の1週間は、とくに大変だったのでは?
野村さん はい。もともと長女は幼稚園、長男は妊娠後期から期間限定で保育園に入れたので、日中のことはなんとかなりましたが、夜の寝かしつけは、苦労しました。5歳と2歳の子どもたちにとって「夜にママがいない」というのはやっぱり寂しかったようです。上の子は最初、夜中に泣き出してしまったりもしました。あと、私一人だとなかなか寝てくれなくて……。
普段通り絵本を読んだり工夫はしたのですが、なぜか上手くいかない(苦笑)。最終的には無理やり部屋の電気をバチッと消して「さあ寝るよ!明日は幼稚園と保育園でしょ!」と語りかけるなど、試行錯誤の毎日でした。でも、その期間を乗り切ったおかげで、子どもたちをどうやって寝かせるかという「寝かしつけの術」にはかなり自信がつきましたね。
■長男のイヤイヤ対応に四苦八苦
── 夏乃さんが退院されて、5人での生活が始まってからはどうでしたか?
野村さん 当時2歳だった長男の「イヤイヤ期」とぐずりへの対応には苦慮しました。突然スイッチが入って「嫌だ嫌だ!」が始まると、何を提案しても、抱っこしようとしても全否定されてしまって……。当時住んでいた家が2DKと少し手狭だったこともあり、家の中にずっといると子どもも大人もストレスが溜まって機嫌が悪くなってしまうんです。
長女は変わらず幼稚園に通っていましたが、長男は期間限定の保育園が終了し、家にいたんですね。そのため、天気の良い日は私が公園などに積極的に連れ出していました。外の空気を吸わせて思い切りエネルギーを発散させると、機嫌も劇的に良くなるんです。
── 育休を取って、ご自身の中で良かったと感じる変化や、逆に反省点はありますか?
野村さん 産後の妻は体調が万全ではなかったため、上の子たちの面倒を見ながらの育児はやはり難しかったと思います。自分が家にいたのは本当に大正解でした。また、次女の成長もすぐ側で実感できました。
新生児期のわずかな期間しかできない「沐浴」も、3人目なのでかなり上達しましたね。何より、赤ちゃんがふとした瞬間にニコッと笑ってくれたり、手がパチパチと叩けるようになったりする愛らしい姿をすぐ目の前で見られたときは、日々の疲れが一瞬で吹き飛ぶほどかわいかったです。
ただ、ちょっとした反省点もありました。育休中から引っ越しを検討していたのですが、妻は「育休を取ってくれたのはありがたいけれど、物件探しのことで時間が取られていて、もっと家のことをしてほしかった」と少し不満を持っていたそうです。当時、自分は3人目が生まれるにあたってそれまで住んでいた家では絶対に手狭だからと、必死に不動産屋とやり取りをしていたのですが、妻からすれば「もっと目の前のことをしてよ!」という気持ちだったようです。
■テレワークとフレックスが命綱
── 復職されてから、現在の仕事と育児の両立はどのようにされていますか?
野村さん 現在、妻はまだ育休中なので、平日の日中の家事や送迎、突発的な発熱時の対応などは基本的に妻がメインで動いてくれています。その代わり、私が仕事を終えた後は、すぐに家事・育児のサポートに回る体制をとっています。お風呂掃除、布団出し、皿洗い、寝かしつけの絵本などは、ほぼ私が毎日のルーティンとして担当しています。
── 1日のタイムスケジュールを見ると、テレワークを非常にうまく活用されていますね。
野村さん はい、会社のテレワーク制度とフレックスタイム制がなければ、我が家の両立は成り立ちません。職場が自宅から離れていて通勤に往復で3時間近くかかります。そのため、出社日になるとどうしても平日のすべての負担が妻に偏ってしまうんです。
でも、テレワークであれば、たとえ夕方に残業が発生して自分が仕事を続けていたとしても、「家の中に私がいる」というだけで状況がまったく変わります。例えば、妻が子どもたちの幼稚園のお迎えに行く際、雨が降っていて赤ちゃんを連れていくのが困難なときがあります。そんなときは「ちょっと寝てる間だけ見ておいて!」と次女を置いていくことができるので、ありがたい制度ですね。
■諦めずに一歩を踏み出してほしい
── 最後に、これから出産や育休を検討している方へメッセージをお願いします。
野村さん 男性が育休を取得するにあたっては、職場の人間関係や「自分が抜けて現場は大丈夫か」という業務調整のプレッシャーなど、さまざまなハードルがあると思います。引き継ぎのために資料を作ったり、教える時間を設けたりと、休む前は一時的に仕事の負荷が上がって大変な時期もあるかもしれません。
しかし、そこで諦めないでいただきたいです。とりわけ、第二子や第三子を迎える家庭では、小さい上の子たちの面倒を見ながら新生児のお世話をするというのは、母親単独では身体的にも精神的にも非常に大きな負担です。実家のサポートを得られない環境であればなおさら、父親がたとえ短期間であっても育児休業を取得することの重要性を痛感しています。
── 育休中は、上の子と密な時間が取れるのもいいですね。
野村さん はい。育休を取得し、子どもたちと深く関わる時間をしっかりと持てたことは、我が家にとって大きなプラスでした。そのおかげもあってか、「子どもがパパに全然懐かない」というような寂しい思いをしたことは一度もありません(笑)。
結局のところ、家族は何よりも大切でかけがえのないもの。少子高齢化が進む今の日本において、社会の土台となるのはやはり家族であり、それを次の世代へと繋いでいくことが求められています。ですから、社会の最小単位である家族を大切にしていくという意味でも、ぜひこの育児休業はあり続けて欲しいし、多くの人に積極的に活用してほしいと思います。
(取材・文:江原めぐみ、イラスト:ぺぷり)
