生活リズムを整えることは「完璧な生活を目指す」ことではない。予定通り動けない日に思い出してほしいこと
「勉強しなさい」「今やらないと後悔するよ」と、つい先回りして正論をぶつけてしまったり、周りが習い事を始めたと聞いて焦って予定を詰め込んでしまったり……。すべては子どものためを思ってのことですが、その「よかれと思って」の行動が、実は子どもの成長を妨げる要因になっているかもしれません。
書籍『子ども脳疲労』(著:成田奈緒子/日本文芸社)は、小児科専門医である著者が、現代の子どもに起きているその“見えにくい変化”と、回復に必要な生活習慣を解説した一冊です。
今回は、子どもの脳疲労をためないために、親が「やめる」ことについて、一部抜粋してお届けします。
子どもを思っての“正論”をやめる
正しいことをいえばよいとは限らない
子どもの将来を思うと、不安になるのは当然です。このままで困らないだろうか、あとで苦労しないだろうか。そう感じたとき、「正しいこと」を伝えたくなります。「今やっておかないとあとで大変だよ」「ちゃんと勉強しないと将来困るよ」などは、どれももっともな言葉です。
けれども、その正論を重ねられた子どもはどう感じるでしょうか。反論しにくい内容だからこそ、黙って従うしかないと思うことがあります。すると、「なぜやるのか」を自分で考えるよりも、「いわれたからやる」という構造が出来上がります。
たとえば、親が「このままだと将来困るから、ちゃんと勉強しなさい」といい、子どもがそれに渋々従う様子はよく見られるものです。しかし、それは子どもが自分で選んだ行動ではありません。外から与えられた理由に従っただけです。
本来、自制心は自分で状況を見て判断するなかで育っていきます。時間を逆算し、優先順位を考え、今やるべきことを決める。そうした思考の積み重ねが、脳を鍛えます。にもかかわらず、親が先にやるべきことを提示してしまうと、子どもは脳を鍛える機会を失って自制心を育てることができないのです。
そこで、不安が湧いたとき、すぐに正論で押さえ込まないように心がけましょう。脳が疲れておらず、十分に育った状態なら、子どもは自分で考えられるようになります。「寝る時間までに宿題を終わらせたいから、そろそろゲームをやめたほうがよさそうだ」と、自分なりに行動を組み立てることもできるようになるのです。
子どもの行動に口出ししたくなるのは、親としてごく当たり前のことですが、それは一時的な安心を生むにすぎません。子どもにしっかりしてほしいと思えばこそ、不安でもいったん自由に行動させて、自制心を育んでいくことが大切です。
早いうちからの習い事はさせない
「からだの脳」を育てる生活リズムが優先
親御さんのなかには、早いうちから子どもに習い事をさせる人が多くいます。周囲が塾や習い事に通いはじめると、出遅れてはいけないという思いも生まれます。少しでも早く力を伸ばしてあげたい。その焦りは、わが子を大切に思う気持ちから出てくるものです。
しかし、その結果、予定が増えていきます。放課後は習い事、週末も練習や試合。学ぶ機会が増えること自体は悪いわけではないものの、まだ土台が整っていない時期に負荷を重ねると、疲れがたまってしまうばかりであまりいいことがありません。とくに小さいころは、まず「からだの脳」を育てることが優先です。
からだの脳は、規則正しい生活リズムのなかで育ちます。朝日を浴びて目を覚まし、毎日ほぼ同じ時刻に食事を取り、暗くなったら眠る。そうした繰り返しのなかで、自律神経の働きが安定していきます。体が整ってはじめて、その上に集中力や思考力が積み上がるのです。
もし習い事で帰宅が遅くなり、食事や就寝の時刻が乱れれば、疲れは抜けにくくなります。眠りが浅くなれば、翌日の活動にも影響が出ます。子どもの力を伸ばす機会を増やしたつもりが、かえってその土台を弱らせてしまうこともあるのです。
成長を促す方法は、何かを足すことだけではありません。むしろ、余計な負担を減らすことのほうが効果的です。朝きちんと起きられる、落ち着いて食事ができる、夜にしっかり眠れる。その基本が守られていれば、子どもはすくすくと育っていきます。
とくに、5歳くらいまでは早く寝かす、朝起きられるようになる、これで十分です。子どもが自分から好きなことを見つけられるようになるためにも、まずは脳疲労をためないことを目指しましょう。
生活リズムのためのスケジュールは決めすぎない
ゆとりがなければ疲れは癒やせない
子どもの脳を疲労から守るために、生活リズムを整えることは大切です。朝早く起きること、毎日ほぼ同じ時刻に3食を取ること、夜はしっかり眠ること。こうした基本が保たれていれば、脳の働きは安定しやすくなります。土台が安定することで、日中の集中力が保たれ、気分の波も小さくなり、結果として毎日を穏やかに過ごしやすくなります。
ただし、それがいつの間にか「完璧な生活を目指す」ことに変わっていないか注意が必要です。やることが明確であるほど安心感は得られますが、その一方で、息を抜く時間は削られていきます。整然とした毎日は一見理想的に見えても、心のどこかで時計を気にする状態が続けば、それ自体が負担になってしまうのです。
とくに子どもは、予定通りに動ける日ばかりではありません。気分が乗らない日もあれば、思いがけず何かに夢中になって時間を忘れる日もあります。友だちとケンカして気持ちが揺れる日もあるでしょう。そのたびに軌道修正を急ぎ、「予定通りに戻さなければ」と働きかけ続けると、生活そのものが窮屈に感じられます。子どもに健康的な生活を送らせるつもりが、結果として疲れをため込む構造になってしまえば本末転倒です。
大枠だけ整っていればいい
生活リズムは、大枠が保たれていればそれで十分です。多少時間が前後したり、急な予定が入ったりしても、大きな問題にはなりません。ところが、すべてをきちんと守ろうと躍起になると、本来は体と心を安定させるための習慣が、達成すべき目標へとすり替わります。「今日は予定を全部こなせた」「時間通りに進んだ」という評価が前に出れば、少しの乱れが不安材料になります。守れなかった日が失敗のように感じられ、余計な落ち込みが生まれてしまうのです。
そこで、生活を整えすぎないためには、「絶対に守るもの」と「ズレてもよいもの」を分けて考えることが役に立ちます。就寝時刻と起床時刻の目安、食事のリズムなど、土台に関わる部分だけを意識し、それ以外は日ごとの体調や気分に合わせて調整します。
たとえば、予定が押しても少し休む時間を優先する。予定のない日をあえてつくる。宿題を先にするかお風呂に先に入るか、順番はその日の様子に任せる。そうしたゆとりを持たせることで、生活は呼吸を取り戻します。整っているけれど、締めつけられてはいない状態です。
また、完璧な生活を目指し続けると、親自身の余裕も削られていってしまいます。計画通りに進まないことにイラ立ちが生まれれば、その空気は家庭全体に広がります。子どもは敏感にそれを感じ取り、「うまくやらなければ」という意識を強めるかもしれません。
生活リズムは、日常を縛るための鎖ではなく、支えるための骨組みです。この骨組みさえ保たれていれば、細部が多少動いても崩れてしまうことはありません。イレギュラーなことがあっても受け入れられる柔軟さがあるほうが、疲れはたまりにくく、回復したあともよい状態を保ちやすくなります。
組み立てた予定通りに進む完璧な一日を目指すのではなく、無理のない健康的な日々を続けさせていくことを意識しましょう。
予定はあくまで目安にする
生活リズムは大切ですが、すべてをきちんと守ろうとすると息苦しくなります。土台を意識しながら、その日の様子に合わせて調整できるゆとりが大切です。
続きはぜひ書籍でご覧ください。
※本記事は、『子ども脳疲労』<著:成田 奈緒子/日本文芸社>より抜粋・再編集して作成しました。
