- 掲載
- 2026年08月14日 17:01
「宇宙開発に携わりたい」小2の本気に、JAXAが返した粋なリアクション
子どもの「やりたい」に対して、経験や常識から「無理だよ」と返してしまったことのある親御さんも多いのではないでしょうか。小2で宇宙飛行士の募集に挑んだ大森陽生さんと父・治幸さん。その後に待っていたのは、意外な展開でした。
6歳で天文宇宙検定3級に最年少合格、小学3年生で数学検定2級――“宇宙少年”として注目を集める、小学6年生の大森陽生さん。
大森家が実践してきたのは、“ほめる・叱る”に頼らず、親の「リアクション」にフォーカスした独自の子育てメソッド。この考え方をまとめた書籍書籍『みるみる自走する! 子育てはリアクションが9割』(著:大森治幸、大森陽生/新潮社)が、このたび刊行されました。
本記事では、親子で宇宙飛行士選抜試験に挑んだエピソードを、一部抜粋してご紹介します。
親子で応募した 宇宙飛行士選抜試験のリアクション
高まる宇宙への想い。大好きな雑誌は『Newton』
宇宙への関心が高まるにつれ、息子の読書は驚くべき進化を遂げていきました。図鑑から始まり、いつの間にか本棚に鎮座するようになったのは、科学雑誌の『Newton(ニュートン)』です。
最新の宇宙物理学や量子力学の解説が並ぶ、大人が読んでも歯応えのある雑誌を熱心に読みながら、
「お父やん、ブラックホールの蒸発ってさ……」
「宇宙の終わりは、ビッグリップっていう説とビッグチルっていう説で分かれててさ」などと話しかけてくる。誰がみても立派な「宇宙少年」です。
初代編集長の竹内均さんが福井県出身であることは知っていたので、なんとなく親近感は抱いていました。お得な割引を受けられるとあって、今では定期購読しています。
ある日、JAXAが13年ぶりに宇宙飛行士を募集するというニュースが飛び込んできました。
「下校班の班長」、JAXAに挑む
「大森さん、ニュースみました? 宇宙飛行士の募集ですって」
息子は放課後、近くの児童館にある児童クラブで過ごしていました。宇宙飛行士募集の知らせは児童館のスタッフさんたちにとっても明るいニュースだったようで、息子を迎えに行った時に水を向けられました。いや、水を向けられたというような生やさしいものではなく、バケツの水を浴びせられた、と言った方がしっくりくるかもしれません。
だって、募集の話題に続けてこうおっしゃったからです。
「はるきくんも受けてみたらどうですか?」
息子が宇宙飛行士に応募? いやいやいや。さすがにそれは! あ、でも、こういうのを社交辞令っていうんでしょうね。宇宙好きの少年の親に対しては旬の話題ですもんね。さすがベテランの先生。うまい! そんなことを思いながら、先生に返しました。
「いつか受けられるような人になったらいいですね」
すると、先生は畳みかけてくるではありませんか。
「今後じゃなくて、今回ですよ。学歴も問わないらしいし、夢があっていいじゃないですか。はるきくんならいけるかも」
情熱が宿った先生の目を見て悟りました。これは社交辞令ではない─。と同時に驚きと、ある種の敗北感も抱きました。宇宙飛行士募集のニュースに対するリアクションとしては、このベテラン先生は私のはるか上を行っていたからです。私も親として、今までに積み重ねてきた経験や常識を基にいろいろなことを判断します。でも、そうした経験や常識がある種のストッパーとなってしまっていることも事実。常識の檻から飛び出したベテラン先生の発言で、私は胸のなかに熱いものを感じていました。
息子も驚きとワクワクをまぜたような表情をしています。そこで、帰りの車のなかで、息子に話してみました。
「先生の発言はマジだったね。すごかった。いい大人なのに、めちゃくちゃおもしろいことを考えてる」
「僕もびっくりした。でも、応募してみたいな」
「お! いいねぇ!」
「でも、応募していいのかな」
「きまりみたいなものはあるから、帰ったら一緒に確認してみよう」
募集要項をネットで確認すると、当然ながら「実務経験3年以上」「身長149・5センチ以上」といった、小学2年生には到底クリアできない条件が並んでいます。普通なら「大人になったら挑戦しようね」と諭して終わる場面かもしれません。しかし、またとない機会だし、息子の気持ちはもう前に向いています。そこで、我が家は「非公式」の挑戦に打って出ることにしました。
「はっちゃん、正式な選考対象にはなれないけど、熱意を伝えることなら今すぐできるぞ。書類を作って郵送してみよう!」
それからの数日間、我が家は「選抜試験モード」に突入しました。応募書類をつくるためにパソコンに向かう息子は、軽快にキーボードを打ちます。応募書類の「役職」欄には、胸を張ってこう書き込みました。「下校班の班長、算数班リーダー」。さらに、自分で数学の本を書いたことなどを、たどたどしくも力強い英語でアピール。志望動機には「宇宙開発に携わりたい」という真っ直ぐな想いと、宇宙エレベーターや月への移住を実現したいという壮大な夢を詰め込みました。
私はその横で、
「その役職、最高やん!」
「JAXAの人も、まさか班長から応募が来るとは思うまい!」
と全力で煽りました。どうせ無理だと教えるのではなく、本気の遊びに親も本気で乗っかる。この「共犯者」のようなリアクションこそが、子どものエンジンをかかりやすくするのだと信じています。
JAXAからの粋なリアクション
書類を出してから2か月ほど経った3月のある日、JAXAから一通のメールが届きました。
「はっちゃん、メールが来たぞ!」
震える手で受信ボックスを開くと、そこには事務的な通知ではなく、一人の子どもの情熱に真っ正面から向き合ってくれた、温かい激励のメッセージがつづられていたのです。
メールには、その熱意に敬服したとした上で、未来の宇宙飛行士へ向けて「好き嫌いせずご飯を食べ、健康でいること」という、今まさに息子が取り組むべき「ミッション」が記されていました。さらに、JAXAの公式コメントとして「応募資格を満たしたら、未来の選抜に挑戦してほしい」という言葉までいただいたのです。
「うおぉー! 飯食って健康でいろってよ! JAXAの人と約束しちゃったね」
「いえーい! 好き嫌いがなくてよかったぁ! これからも給食を食べまくるぞ!」
その瞬間、彼にとって宇宙飛行士は「いつかなれたらいいな」という憧れから、「未来の選抜で再会するための具体的な目標」へと変わりました。JAXAという日本最高峰の組織が見せてくれた、あまりに粋な「リアクション」。
大人が本気で子どもに応えることの重みと、それを受け取った子どもの瞳がどれほど輝くか。私はその光景を、生涯忘れることはないでしょう。
=====
続きはぜひ書籍でご覧ください。
※本記事は、『みるみる自走する! 子育てはリアクションが9割』<著:大森治幸、大森陽生/新潮社>より抜粋・再編集して作成しました。
