【医師監修】子供の吃音 | どもる原因と支援方法
吃音(きつおん)にはさまざまな症状があり、症状の段階によって吃音の種類や対処も変わってきます。子供(幼児)が言おうとしていることをさえぎったりせず、どもりがあっても自分の言いたいことを言える環境を作ることが大切です。
吃音ってどういうもの?
※画像はイメージです
吃音とは?
吃音とは、言葉を発するときの滑らかさ、リズミカルな流れを乱す話し方のことです[*1]。
当人は、言いにくさやもどかしさを感じていません。人と話そうとすると自然にこのようになってしまうのであり、本人はたくさん話そうとします。相手と対面しない場面、例えば、独り言、歌、復唱では比較的スムーズです。また、怒って文句を言うときにはすらすらといえることが多いようです。これは相手に向けた言葉ではありますが、対話や説明というよりも怒りの爆発といった要素が強くなり、独り言に近くなるためです。
吃音のさまざまな症状
吃音の言語症状には主に3種類があります。
「おはようございます」と言おうとしている際の例をみてみましょう。
・連発型(連声型)……「お、お、おはようございます」と言う等、最初の言葉を連続して発する
・伸発型……「おーーーーはようございます」などと、最初の言葉を引き伸ばして発する
・難発型(無声型、無音型)……「お……」で止まってしまうなど、最初の言葉で詰まり、そのあとの言葉が続かない状態
次に一例を示します。多くの子供の場合、症状は連発型から始まり、それから伸発型が混ざった症状が出始めるようになります。さらに、吃音を自覚して気にしてしまい、難発型へと移行することが多いとされています。中には、話すこと自体を避けて、人との関わりが減ってしまう子供もいます。
このように、症状が悪化してしまうにつれて本人の悩みも大きくなり、より苦しむようになってしまいます。
吃音の種類
吃音は大きく2種類に分けられます。幼児期に発症するものは、発達性吃音とよばれ、原因がはっきりとはわかっていません。青年期以降に発症するものは獲得性吃音とよばれるもので、発症する原因によってさらに2種類に分けられます。吃音の大部分は幼児期に発症する発達性吃音が占めています。
吃音の特徴と原因
発達性吃音の特徴と原因
発達性吃音は2~5歳の幼児期に発症することが多く、しばらく症状が続くと思うと、ぱったりとでなくなる「波」があるのが特徴です。7~8割くらいは自然に治るといわれていますが、残り2~3割はだんだんと楽に話すことができなくなってきます。そして症状が進行していくと、話そうとしても言葉が出なくなることがあります。
原因はまだはっきりとはわかっていませんが、3つの説が考えられています。1つ目は体質的要因です。子供が、吃音になりやすい何かしらの特徴を持っているといわれています。
2つ目は発達的要因です。子供の、身体や言語、情緒などが急激に発達する時期の影響があると考えられています。3つ目は環境要因です。身近にいる人との関係性や日々生活していく上で起こる出来事などが影響するがあります。
子供の脳は言語機能が未発達であるため、どもるのは仕方がないことですが、そのことを叱られると、逆に意識して吃音が定着してしまいます。
子供の吃音への支援
環境をつくる
吃音が出てしまった場合、重要なのは不安を解消することです。あわてて話しているものではなく、緊張や不注意で発してしまっているものでもないので、まずは、「そのまま言ってもいいもの」ということを教えましょう。そして、気にせず話してよいということも伝えます。気にすると余計な力が入ってやがては言葉が出てこなくなったり、話せなくなったりしてしまいます。
このように、自然に出てくる言葉をそのまま認めてもらえる環境を作ることが、吃音のある子供の不安を解消することにつながります。親は、吃音に関しては責めない・怒らないという気持ちを持って接してください。
また、海外では新しい取り組みとして、リッカム・プログラム(※)による治療研究が多く報告されています。この治療法は、滑らかに話せたときには、そのことを子供に伝え、吃音が生じたときは、子供の負担にならない頻度でもう1度滑らかに話すよう誘導する、というものです。
(※)国立障害者リハビリテーションセンター ホームページ「吃音の指導(治療)」
http://www.rehab.go.jp/ri/kankaku/kituon/therapy.html
理解してもらう
吃音はいまだに偏見をもたれていたり理解を得られていなかったりする場合が多いのが現状です。家庭内で理解を得られたら、次は子供の周りの人たちの理解を得ることが大切です。それは吃音症状の指摘や問いは、家族よりもむしろ外の世界からのものが多いからです。
理解してもらうべき要点は2つあります。1つ目は、口や舌の動きには何も問題がないことです。何らかのストレスや緊張、あわてて話すことが問題ではないことや、世界で研究はされているが、原因は分かっていないことも理解してもらいましょう。
2つ目は、自然に生じる吃音は、そのまま言いつづけていても増加していくことはなく、むしろ次第に減少していくことが多いということです。また、吃音を出さないように気をつけるあまりに、かえって力んでしまって言葉を話すことができなくなってしまう場合があることも知ってもらいましょう。
それらを理解してもらうことで、幼稚園・保育園や学校でも気兼ねなく話せる環境を作っていきましょう。
まとめ
子供の話し方が気になってしまい、あれこれ言いたくなってしまうかもしれませんが、まず、辛抱強く話の内容を聞き取る努力をしましょう。親が子供の話をさえぎってしまうことが、子供が言いたかったのに言えなかった、というもどかしさやストレスを大きくしてしまい、吃音を悪化させてしまうこともあります。
また、幼児期は吃音か発達段階のものか判断しづらいと思います。もし子供が吃音かもしれないと思ったら、まずは小児科の医師や、お住いの市区町村の役所窓口、また、幼稚園・保育園の先生などに相談してみてください。吃音が対応できるしかるべきサポート先(言語聴覚士や小児の吃音診療ができる耳鼻咽喉科医師)を教えてくれるでしょう。一番大切なのは、ママ・パパが吃音についての正しい知識を持ち、子供と向き合っていくことなのです。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.20)